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こじらせぼっちはハーレムエンドを目指さない  作者: 猫派
二章 このハーレムは重すぎる
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一節 その恋、一夜にして為るべく



 ーーこの部屋では既にかなりの間沈黙が続いていた。


 ここは私にゆかりのあるとある男子高校生の部屋である。今、この部屋には私ともう一人、女子がいる。部屋の主は現在、家族との話し合いのため席を外している。


 主のいない部屋で、互いに面識のない客人二人がいあわせたら、このような空気になるのは当然と言えるだろう。


 そう、私とこの女子は知り合いではない。


 つい先ほどの事だ。部屋の主である彼が私一人を置いて部屋を出て行ってすぐ、この子が入ってきた。妹さんの友達だそうだが、彼に用があるので戻ってくるまでここで待っているとか……


 二言三言の会話はそこで途絶え、後には気まずい沈黙が残るばかり……かくして、男子高校生の部屋にお互いを知らないJK二人という異様な構図が出来あがった。


 それから十数分が経つ。私はベッドに、彼女は部屋にひとつだけある椅子に座って彼を待っている。それにしても彼女は一体、彼とどういった間柄なのだろうか?


 妹の友達と言っていたが、こんな夜更けに用事があって訪ねてくるからには、兄の方ともそれなりに親しいのだろう。


 ーーやはり恋人……なのだろうか?




「あの」


「っ! は、はい」




 ……思わぬタイミングで話しかけられ、少し動揺してしまった。


 目の前に座る彼女を見る。一見して地味な印象を受ける子だ。顔立ちはかなり整っているのに、不思議と目を引かない。背丈は平均的か、少し低めだろうか。セミロングの髪を後ろで纏め、ポニーテールにしている。服装は私服なので、高校生と判断したのは私の勘だ。




「暇だから、少し話しても良いかな……?」


「……えぇ、構いませんよ」


「あなたは……彼の後輩さん、でいいのかな?」




 彼、というのはこの部屋の主である男子高校生の事だろう。




「はい。あの人とは、中学の時の先輩後輩にあたりますね」




 私の『あの人』という言葉に、彼女が僅かに目を細める。




「そう……私は、彼の今のクラスメイトだよ。妹ちゃんの友達でもあるけどね」




 互いに名乗り、自己紹介。彼のクラスメイトという事は、私の一つ上になる。敬語を使っておいて正解だった。そこでふと違和感に気付く。彼女はなぜ、私が彼の後輩だと分かったのだろう? ひとつしか違わないはずなのに。




「……私の事、彼から聞いてたんですか?」


「ううん、聞いてないよ。彼からは何も……だから私は、あなたと彼の間に何があったのか、何も知らないんだ」


「は、はぁ……」




 少し引っかかる言い方だ。もしかして私は彼女に、彼との関係を疑われているのだろうか? だとしたら誤解を解く前に、彼女が彼とどこまで親しい仲なのか、それとなく訊いておくのが良いか……と、私は算段を立てる。




「ええと……あなたはあの人に用事があって来たんですよね? どんな用事か、訊いても良いですか?」


「あぁ……用事、用事ね……強いて言えば、ここでこうしているのが用事かな」


「それは、どういう……」


「私も、今日はお泊りにきたんだ」


「えっ」




 私『も』、という事は……私が今夜ここに泊まる事を知っている……?


 私を見る彼女の、値踏みするような視線に思わずぞくっとする。彼女が美形であるにも関わらず、あまり社交的に見えない理由がなんとなく分かった。


 彼女の方が、どこか他人に期待していないように見えて、それが彼女の内に潜む闇を感じさせ、どことなく近づきがたい印象を受けるのだ。


 そんな彼女の、ともすれば不敵に感じる視線を受け、私は考える。ここでこうしているのが用事……?


 彼女が言わんとしている事は分からないが、私は彼女に敵視されているのかもしれない。いずれにせよ、彼女もこの家に泊まるとなると、少し面倒な事になる。


 楽しいお泊りとは行かなそうだ……




「……ところで、さ」


「はい?」




 何やら俄かに彼女がそわそわしだした。目線は私ではなく、私の座っている彼のベッドに向かっている。




「ものは相談なんだけど……ベッド、代わってくれないかな?」

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