六月最後の土曜日 5
5-a.
あぁ、私は一体何を考えているのだろう……
自室のベッドに横たわりながら、こんな休日の夜に私は、あのくそ忌々しいライバル様の事を考えていた。それと言うのも昨日、あいつが言っていた事が気になって仕方がないからだ。
癪だがあいつがどんな女の子とデートするのか非常に気になる。いつかの後輩の子でないのは確かだ。あの子相手にあいつが気を使ったりするようには全く見えない。
せいぜいファストフード店とゲーセンに寄って一緒に帰るくらいが関の山だろう。まぁ、一方で家に上げたりとかしててもおかしくなさそうな雰囲気ではあったが。
そもそもどこの誰ともしれない女子とデートなんかして、あいつにご執心の例のあの子が黙っているはずがない。あいつの命が心配だ……
あいつにメールして聞いてみようかとも思ったが、よく考えたら私、あいつの連絡先知らないし。もし知ってたとしてもそんなにあいつの事気にしてると思われるの嫌だし……全然気にしてないし!
そんなこんなで悶々としながら、6月最後の土曜日の夜は更けていくのであった。
5-b.
「ただいまー」
「あっ兄ちゃんおかえりー。彼女さん来てるよー」
「おーう。……おう?!」
「お帰りなさい。休日なのに夜までお出かけとは、あなたも隅におけませんね……ふふ……」
「なーホントになーこんな可愛い彼女さんがいるのに兄ちゃんったらなー」
「いや……えっえ? なんでいるの? あとお前は思考停止しないでな? 俺に彼女なんていないからな?」
「色々あって数日泊めていただくことになりました。ご両親には話を通してありますので。しばらくお世話になりますね」
「ちょっおま、誤解を解くの誰だと思って……うお?! めっちゃL○NE来てる! なんで? なんでこいつ俺の家庭内事情知ってんの? 盗聴なの?! 俺のプライバシーべっこり侵害されてない?!」
「あーあと同級生の人からも電話あったよ。また後で連絡するってー」
「この間の彼女さんからですか? 彼女さんほったらかしにしちゃ駄目じゃないですか本当にあなたはクズですね」
「酷くない?! っていうか彼女はお前だったんじゃないの?! いや違うけど! 彼女じゃないけど!!」
「兄ちゃん三股かよサイッテー」
「これ以上話をややこしくしないでくれ頼むから!」
その後、兄ちゃんは彼女さんを連れて部屋に入って行った。まさか本当に兄ちゃんに彼女ができてしまうとは……兄ちゃんをいじるネタが増えるのは嬉しいけど、正直ちょっと寂しい。これからもたまにはあたしとゲームに付き合ってくれよな……!
あと、同級生の人には兄ちゃんのスマホの連絡先を教えておいた。兄ちゃん……修羅場にも負けず、強く生きてくれよな……!




