六月最後の土曜日 4
やけになって涙目でご主人様を連呼してきた彼女を頭を撫でて黙らせながら、俺たちは遊園地を後にした。途中、おみやげを買うところまで含めて遊園地だよ、とか言うので売店に寄ってから出口へ向かう。
こんなローカルな遊園地でおみやげも何もないだろうと思ったが、彼女はキャラクターの描かれたペンなどの小物をいくつか買っていた。俺はというと、今日に至るまでの様々な出費で所持金が尽き、見て見ぬ振りをした。我ながら情け無さすぎる……
門を出てから、いつの間にか降り出していた雨に気づく。
「雨、降ってきたな。傘持ってるか?」
「あ、うん。あるよ」
いつの間にか彼女は一本のビニール傘を手にしていた。さっきの売店で買ったのだろう。と、それをこちらに差し出してくる。
「ん?」
「君の方が背が高いでしょ。君が持ってよ」
理解した。どうやら彼女は、世に言う相合い傘をご所望らしい。確かに俺は傘を持ってないが……
「普通、主人に傘持たせるか……?」
「ちがうちがう、君は勘違いしてるよ。私は君の奴隷になりたいって訳じゃなくてね……」
「あれ、違ったか?」
「いや、それも悪くないけど……えっとほら、ペットだよペット。愛玩動物的な、そういうの」
「ち○ち○」
「くぅーん……ってそうじゃなくて!」
「おぉ、芸もできるのか。良い子だ。撫でてやろう」
「わふぅ……」
なるほど、彼女はそう言われて見るとどこか犬っぽいようにも感じる。とにかく、彼女の中でそういう設定なら、俺もそれを尊重しよう。
「あ、そうだ。連絡先交換してよ」
「おう」
一つ傘の下で見る彼女は、俺が思っていたよりずっと小さくて、普通の女の子だった。いつかの季節に出会った少女と今目の前にいる彼女が、初めて重なった気がした。
こうして俺の人生初デートは終わりを告げた。セクハラされたり振り回されたり呆気に取られたりセクハラされたり驚かされたりオトされそうになったりしたが、総じて楽しい一日だった。やたらと疲れたが。
あと、とても可愛いペットができた。




