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こじらせぼっちはハーレムエンドを目指さない  作者: 猫派
一章 こじらせ男と三匹の嫁
23/60

六月最後の土曜日 1



 8時40分、約束の20分前に俺は待ち合わせ場所に到着した。梅雨明け間近の今日、朝の空はほぼ全面に雲がかかり、雨こそ降っていないもののかなり怪しい天気となっている。


 そんな曇り空の下、人の行き交う駅前のロータリーに佇む少女が一人……少し早すぎるかとも思ったのだが、それどころか待たせてしまうとは。足早に歩き寄る俺に気づき、弛む口元は一足先んじた優越感からか……考えすぎか。




「すまん。待たせた」


「待ってないよ。今来たとこ」




 お約束のやり取りだが、できれば配役は逆を取りたかったところである。密かに反省する間も無く、俺は彼女の服装に目を奪われる。


 それは、ワンピースにカーディガン、だろうか? ひらひらした服を纏った姿は、普段の淡々とした、というかどこか冷めたイメージを見事に打ち払い、彼女の容姿そのものからくる儚げな印象を強調している。


 疎いのでよく分からないが、とにかく普段地味めな女の子の私服というのは、なんと言うか特別感があって良い。『私服で意中の彼をオトす!』というよく見るようなキャッチフレーズの意味が今、身をもって分かった気がする。


 有り体に言って、すごく可愛かった。


 思わずじっと見つめてしまった俺の前で、彼女はわずかに頬を染めて俯いた。




「ふぅん……」


「……どうした?」


「ううん。君のそんな顔は、初めて見るから……ふふ……」


「そうか。よく見てるんだな」




 ……主導権を握るつもりが早くも先手を取られてしまったようだ。




「さて、朝早くからの呼び出しだが、どこか行きたい場所でもあるのか?」


「ううん、ほんとにどこでも良いよ。朝早いのは私の都合」


「そうか。それじゃあそうだな、俺も考えて来たんだが……遊園地に行かないか?」


「……良いね。行こう」




 遊園地。デートの王道にして鉄板である。楽しい雰囲気にあてられて会話は盛り上がり、数々のアトラクションが口下手なカップルの間を保たせてくれる。


 この辺りの近場にはそこそこの規模のテーマパークが一つある。今日は学校は休みだが土曜日なので、あまり並ばずに済むはずだ。


 そして何より……




「観覧車、あるらしいぞ」




 彼女は少しだけ目を見開いたように見えた。




「……ふぅん……良いね、観覧車。最後に乗ろう、最後に……」




 景色の良い所、というお題に対して100点の回答と言えるかは分からないが、今回のデートの趣旨を考えればうってつけの場所だろう。


 まぁ後は、俺の持てるなけなしの男気を尽くして彼女を楽しませてやるだけだ。


 俺は彼女の手を取って、駅の改札へ向かった。

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