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こじらせぼっちはハーレムエンドを目指さない  作者: 猫派
一章 こじらせ男と三匹の嫁
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初めての恋が終わった日 1



 私は一目惚れというものを信じない。


 『一目見て惚れました』なんて言うのは『あなたを気に入りました』のちょっと大げさな言い方か、そうでなければ『自分はなりふり構わない色狂いだ』とふれ回っているようなものだ。


 私は違う。私が高校入学まで男遊びの一つもせず生真面目に生きてきたのは、周囲のノリの軽い男子たちや浮かれ騒ぐ女友達を心の内で見下してきたからだ。


 大人ぶりたいあまりに自分の品性をも貶めていると、私は絶対にそんな愚かな事はしないと、そうやって年相応に肥大化した自意識を一生懸命守ってきたのだ。


 思えば、今の私の所業はその反動なのかもしれない。


 最初は確かに単純な興味、好奇心であったはずだ。あの入学式の日、ともすれば気障ともとれるような事をしたり顔で嘯く彼は、私の目にも厄介な病をだいぶ拗らせているように見えた。


 ただ何となく、彼はそんな気取った生き方を、傘越しに見る桜を、本当に心から楽しんでいるように見えたから……私は彼に興味を持った。


 高校一年生となった私は、それまで通りまぁそつなくやっていた。もともと目立つ方ではなかったので友達100人とは行かなかったが、入学から二、三ヶ月もすれば行動を共にする相方もできた。


 入学式の時の彼とはクラスが違ったけれど、目に入る度にそれとなく気にしてはいた。彼は見れば見るほどおかしな奴だった。周りの人間を無視している訳ではない、それでいて生まれてこの方、人間関係に悩んだ事なんてないとでもいうような気楽な顔をして……私は彼の生き方に憧れたのかもしれない。


 私は彼の行く場所をチェックするようになった。彼はとても単純な人だ。休み時間はスマホを弄って過ごし、昼休みになると食堂の決まった席でカレーかラーメンか麻婆豆腐(夏場は冷やし中華の事もある)を食べる。


 晴れていて暑くも寒くもない日には午後の授業をさぼって昼寝を洒落込む事もある。放課後は誰とも話さずまっすぐ家に帰る。


 成績は中の下で運動神経は下の中。3歳下の妹がいる。趣味はゲームとネットの掲示板を見ること。これらは相方の協力によって得られた情報だ。彼はちょっとした世間話程度なら3日経てば忘れてしまうらしい。


 入学して半年も経つ頃には、彼の観察はすっかり私の日課になってしまった。私は自分の行動に違和感を覚えていた。なぜ私はこれほどまでに彼に執着するのだろう。なぜ彼を見つめ、人知れず彼と行動を共にする事がこんなにも楽しいのだろう。


 初めは好奇心だった。それが憧れになって、今は……


 自分が守ってきたものを、彼に認めて欲しかったのだろうか?


 彼と共にいる事で、自分もその生き方に近づこうとしたのだろうか?


 あるいは彼に執心する自分を演じる事で、抑圧されたものを発散したかった?


 彼あっての自分でありたい、彼といつまでも一緒にいたい、それを……


 恋というのではなかったか。


 私のこの恋は一目惚れではない。他人を見下して生きてきた、捻くれた私が初めて得た彼への興味は、憧憬は、欲情は……私の初恋は、嘘でも方便でもない。


 その初恋を終わらせるために、今私はここにいる。


 現在時刻は8時30分。約束の時間まであと30分だ。

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