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こじらせぼっちはハーレムエンドを目指さない  作者: 猫派
一章 こじらせ男と三匹の嫁
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六月の雨の日 2



 行き当たりばったりな俺だが、今回ばかりは流石に少し逡巡した。明日は確かに暇だが、彼女の名前もろくに知らなかった俺が休日にご一緒しても良いものだろうか。


 まして、このように唐突に俺に誘いがかかったからには、明日の休日デートには何らかの目的があると見て良いだろう。それを知らないままにのこのこ着いて行ったら最悪、罠に掛かって貶められるということもあり得る。あり得ると言ったらあり得る。


 そう考えた俺は、とにかく情報を集める事にした。あの日、友達のためにパンを買いに走っていた社交的なあの子なら、何か知っているかもしれない。


 という訳で、昼休みの食堂の窓際席で定食にがっついていたパン少女にインタビューを敢行した。パン少女と一緒に食べていた友達は、勝手にあれこれ解釈して席を外した。




「……あの子の事?」


「いつだったか、何か知ってるような事を言ってなかったか?」


「それに関しては、やっぱり私からは何も言う事はないよ。下手な事言って目を付けられたら嫌だし……」




 あいつは一体何者なんだ?




「って言うか、私から言わせて貰えば、あんたが何も知らない事の方が納得いかないんだけど」


「は? 俺?」


「たぶん、何か知ってるはずだよ。何か……本当に心当たりはない?」




 俺はもう一度、考える。しかし、いくら考えてみたところで、何か意味のありそうな事が彼女との間にあったとは、やはり思えなかった。




「……いや。本当にさっぱり、見当もつかん」


「あ、そう……まぁ、どうしても心当たりがないって言うなら、あの子の友達にでも聞けば? ほら、あの子とよく一緒にいる髪の長い子がいたじゃない」




 俺はあいつを勝手にぼっちだと断定していたが、どうやら彼女には友達がいたらしい。これは有力な情報である。




「……あぁ、そうするよ。ありがとな」


「まぁ、私としても、そろそろお隣さんの視線が痛いから教室に戻るね」




 席を立つパン少女がチラとよこした視線の先……お隣さんとは、俺の指定席の隣のテーブルの事であったようだ。 俺と目が合いそうになって慌てて逸らしたあの地味そうな女子は……




「……どういうことだ?」


「あの子、いつもあんたの隣のテーブルでご飯食べてたよ。気付いてなかったの?」




 全然気付かなかった……


 俺は考える。最近は雨の日が続き、テラス席が使えない関係上、どうしても屋内スペースの人口密度は高くなっていた。


 これから梅雨が明け、夏を迎えても、日差しを遮る物のないテラス席よりクーラーの効いた屋内で食べようというのが大多数であろう。俺もそろそろ、新しいぼっちプレイスを探す必要があるかもしれない。


 その時はせめて、隣人の顔くらいは確認するとしよう。

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