六月の晴れた日 5
5-a.
私は彼が廊下を歩き去っていく足音を聞きながら、まだぼんやりとはっきりしない頭で考えていた。
彼は今日、昼休みに入ってすぐに教室を出て行った。校舎裏にも食堂にもいなかったから、校外に出たんだろうと思って教室で待っていたけど……
ちょっと彼の席に座ってみるだけのつもりが、うっかり寝てしまったみたい……いつの間にか、外はもうすっかり暗くなっている。
でも、おかげで彼と会話ができた。今でもまだ、彼と話していると、気分が高揚して顔がにやけるのを抑えきれない。
明日は多分、彼は一日中家にいるはず。友達には、部屋を覗くのは犯罪臭がするからやめろって言われたけど、やっぱり一日に一回は彼の顔を見ないと……
誰もいなくなった教室を後に、足取りも軽く私は廊下を歩く。ふふ……今日はよく眠れそう……
5-b.
「ただいまー」
「ゔぇええ兄ちゃん遅すぎー! もうみんなご飯食べちゃったよー」
「急に鳴き声を上げるな。いいよ、温めて食べるから」
「え、ないよ?」
「は?」
「だから、兄ちゃんの分のご飯、もうないよ」
「……はぁ?!」
結局、兄ちゃんはコンビニ弁当を買ってきて食べていた。昼も夜も弁当かよ……とか何とかぶつぶつ言ってたけど、最近あたしを差し置いて楽しそうにしている罰だ。あたしだってたまには一緒に遊びたい……明日はゲームにとことん付き合わせてやろうと決めた。