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12/17

「じゃあ決定だな。全部そいつの妄想だ。これで世界の平和は保たれた、めでたしめでたし」

『外に出てこい』


 誘拐をされてクタクタになった翌朝、突然メールで送られてきた文はたいそう簡潔なものだった。

 携帯電話を片手に蒼泉は首を捻る。

 送信してきた相手は秀一だ。

 彼の突発的な行動は今に始まったことでないが、一体今回は何の用だというのか。

 遊ぶ約束はしていなかったし、そもそも遊ぶにしては随分と素っ気無い文面である。

 秀一は「女の子を待たせるなんて言語道断だからな!」という宣言のもと、メールの早打ちを修行していた時期があるので、メールを打つのに余裕がないということはないはずだ。

 面倒だったのか、彼の何かしらの気持ちが反映しているのか。

 昨日の疲れもあったが、やはり一人の友人として気になる。


「静江さん、ちょっと出かけてくるね」

「蒼泉っ」


 上着を羽織りながら告げた蒼泉に、静江が不安そうな瞳を向けてくる。

 昨日の出来事は彼女にとってもよほどショックだったようだ。

 無事に帰ってきてからも、彼女は片時も離さないとばかりに蒼泉にへばりついていた。

 松山の叱咤が飛ぶまでその状態だったのだから彼女の気持ちは相当である。


 それに対し、松山の態度はやはり冷たかった。

 倉田のフォローがあったせいか厳しく怒られることはなかったが、反対に、無関心だと全力でアピールするかのようでさえあった。

 蒼泉は結局、昨日、ほとんど松山と会話を交わすこともなかった。


 怒られるのは怖いし、嫌だ。

 だが、そこまで無関心を装われるというのも悲しいものがある。

 だからこそかえって彼女の心配はありがたい。

 気にかけてもらえることが嬉しかった。


 だがそればかりでは蒼泉も動けない。

 蒼泉は何とか笑みを作ってみせた。


「遅くなるようだったら連絡するから大丈夫」

「でも」

「友達も一緒だから」

「何かあったらすぐ連絡するのよ? 危険だったらとにかく逃げるのよっ?」

「うん、気をつける」


 うなずき、これ以上何か言われる前にと家を出る。

 と。


「あれ?」


 家の敷地を出てすぐに友人の姿があり、蒼泉は目をみはった。

 ――なるほど。確かに「外に出てこい」だけで事が足りるわけだ。


「秀一。どうしたんだよ、一体」


 薄く寒そうな上着の両ポケットに手を突っ込んだまま立っている秀一に駆け寄る。

 彼はマフラーで顔が半分ほど埋もれていた。

 そこから見える彼の鼻の頭はうっすら赤く染まっている。

 少し待たせてしまったらしい。


「寒い? どこか行こっか。本当は家に入れてあげられればいいんだけど、松山が機嫌悪くなるから。近くの店でいい? ……秀一?」


 てっきり「暇だから遊べ」とでも言ってくるのだろうと思っていたが、秀一の反応は鈍かった。

 蒼泉は訝しげに未だ立ったままの彼を見やる。

 秀一らしくない。普段、一方的に言葉を浴びせてくるのは彼の方だというのに。


「……あのな、蒼泉」

「うん?」

「おまえ、悩みがあるならいつでも俺に相談しろよ」

「? はあ」


 ようやく口を開いたかと思えば意味がわからない。

 それでいて彼の口調は真剣だ。

 蒼泉は曖昧にうなずくしかなかった。

 秀一の熱い視線から避けるようにして思考を働かせる。

 昨日の誘拐のことがもう伝わったのかと思ったが、それにしては「悩み」という単語が繋がらない。


 結論。

 恐らく、寒いから頭がショートしかけているのだろう。


「とりあえず寒いんじゃない? 近くのゲーセンにでも……」

「俺、勉強はダメでも友達関係とか恋愛相談とかなら少しは役に立てるからよ!」

「はい!?」


 ポケットに突っ込まれていた両手が勢いよく飛び出してきた。

 その手は蒼泉の両肩をつかみゆさゆさと揺さぶりをかけてくる。

 世界がぐるぐる回って気持ち悪い。

 ショートしかけているのではなくすでに手遅れだったのか。


「いいか? だから絶対に死のうとか考えるなっ」

「はあ……!?」

「生きてりゃ絶対にいいことあるからよ! いや絶対とまではいかなくても多分きっと恐らくもしかしたらあるって! な!? だから早まるな、おまえまだ若いんだから! せめてもっと世界中の女を知ってからにしろ、じゃなきゃぜってー後悔するっ!」

「ちょ、ストップ! ストップ!」

「おまえが死んだら、俺はどうすりゃいいんだよ……っ」

「聞けぇっ!!」


 全身全霊。全てを叩き込むかのように。

 持てる限りの力を込めて蹴りを放つ。

 それは秀一の鳩尾に食い込んだ。

 つかまれていた両肩の拘束が緩む。

 そこでようやくホッと息をつくことが出来た。

 戻ってきた世界の何と美しいことか。

 吸い込んだキンとした空気も清々しい。

 友人の口から白いモヤモヤとした煙が出て見えるのはきっと気のせいだ。


「全くもう……。落ち着いた?」

「お、おう……。一瞬死んだじいちゃんに膝枕してもらってる夢を見たぜ……固かった」


 どうやら無事らしい。相変わらず打たれ強い。


「で、何の話さ。意味がわからないんですけど」

「何の、って。だっておまえが自殺するかもしれないって言われて、だから俺」

「……誰がそんなことを?」


 秀一の顔はどう見ても本気だった。ふざけているようには思えない。

 そもそも、いくら秀一でも言っていい冗談と悪い冗談の区別くらいはつくはずだ。


 難しい顔をして尋ねると、秀一は戸惑ったように眉を下げて説明してくれた。

 一昨日の下校中、高校生らしき少女二人に呼び止められたこと。

 その二人に蒼泉について質問されたこと。

 そしてその二人が、蒼泉が自殺するかもしれないと口にしたこと。


「何それ、嘘に決まってるじゃん。そんなの真に受けたの?」

「だって嘘とは思えない迫力だったぜ!」


 そう言われても蒼泉には反応のしようがない。


「……それにしたって誰がそんなこと……」


 悪ふざけにしてはタチが悪い。

 人のことを自殺しようとしているなどと言いふらすのは、とてもでないが高尚な趣味とは言えなかった。

 蒼泉にはそんなことをして得をする人間がわからない。


(女子高生にそんなことをしそうな知り合い、いたっけ?)


 考えてみるが全く浮かばない。

 女子高生の知り合いという時点で候補者はほとんどいなかった。

 隣では、今になって騙されたと納得したのか、秀一が晴れ晴れとした表情で背筋を伸ばしている。

 昨日とは打って変わった曇り空だというのに眩しそうに目を細めた。


「いやぁ~、何にしろ間違いで良かった良かった。人生って素晴らしいな蒼泉!」

「はあ……。そういえば言われたのって一昨日なんでしょ?」

「おう、終業式の日だったからな。ちゃーんと覚えてるぜ!」

「それで来るのが何で今日なわけ?」

「んぁ?」


 間抜けな声。

 蒼泉は苦笑して彼を見やった。

 鼻がますます赤くなっている。彼は痛覚どころか寒さの感覚も麻痺しているのかもしれない。


「心配してくれたのは嬉しいけどさ。ふつう、一昨日に言われたならその後すぐオレのところに来ない? それか翌日。二日後って何かやたらタイムラグを感じるんだけど」


 素朴な疑問だった。

 蒼泉が秀一の立場だったなら、気になって早めに行動に移してしまう。

 自分の中で出来事を整理するために時間を食ったとしても、一日ならともかく二日はかかりすぎだ。


 秀一は再び目を細めた。

 ヘラリと緊張感のない笑顔。


「そりゃおまえ、聞いた日――一昨日は悩んで悩んで知恵熱を出してだな」

「うわあ」

「そんで昨日は一日中ナンパしてて余裕なかったもんよ」

「は?」


 ナンパ。

 ナンパと申したか。

 しかも一日中。

 一日中ずっとナンパ。


 ――――――――――――――ちょっっっと待って。


「何!? 友達が自殺するかもしれないってのにナンパしてたの!?」

「おまっ、ナンパを馬鹿にすんなよ! ちゃんとナンパしながら悶々としてたんだからな!」

「その悶々は性欲じゃないのかバカっ!」

「性欲は人間の偉大な三大欲求じゃっ!」

「否定しろよバカ!!」

「バカバカ言うんじゃねえよバカって言う奴がバカなんだからな!!」


 ぜぇぜぇ。ぜぇはぁ。

 あまりにも全力で怒鳴り合ったため酸欠になりそうだった。

 クラリと微かに目眩がし、蒼泉はようやく我に返る。くだらない。心底くだらない。

 ため息をつきたかったが、貴重な酸素が無駄になる。

 代わりに深呼吸をして息を整えた。


「……で、そのナンパの成果は?」

「蒼泉。男は過去を振り返らないもんだぜ」

「……ゼロなのね」


 くだらなさすぎて「ざまあみろ」とすら思えない。

 彼のナンパが日課、いや、彼にとっては儀式であることを蒼泉は知っていた。

 そして成果が出ていないこともお決まりの流れなのであるが、ともかく、彼は本当にナンパをすることで冷静になろうとしていたのかもしれない。

 そう思っておく。


「あ」

「ん?」

「――あ」


 順に秀一、蒼泉、そして――向こうから倉田と共に歩いてきた少女。

 少女は以前、痴漢の件で知り合った紗雪であった。

 また会うとは思っていなかった。

 あちらも同じなのだろう、この偶然に目を丸くしている。

 それにしても彼女と倉田が知り合いだったとは。


 秀一が蒼泉を引き寄せた。

 耳元で囁いてくる。


「蒼泉。あの人……」

「あ、男の人は倉田さん。松山の秘書で」

「ちげぇよバカ、男に興味ねぇし! そうじゃなくて、隣の女の人」

「またナンパしたいわけ? やめた方がいいよ、すごく強かったし」

「だからそうでもなくてっ。ああでもちくしょうコブつきかよ確かにすっげー損した気分!」

「どこがどう違うのさ」

「あの人なんだよ、おまえのことを質問してきたの」

「……え?」


 それはつまり、蒼泉が自殺をするかもしれないと狂言した少女たちというわけで。

 蒼泉はとっさに秀一の話を脳内で再生した。

 彼の話によると狂言者は少女二人。

 一人が紗雪ということは、もう一人は恐らく――確か深紅、といったか。


(あれ?)


 デジャヴ。


(ちょっと待って)


 紗雪。彼女と共にいた深紅。

 そして今彼女と共にいる、倉田。

 この組み合わせは。

 これは前にどこかで――。


「……あ……っ」


『すいません』

『ああ、いや』

『朔夜、危ないでしょ~』

『しっかりしなよ』


 ああ。

 ――ああ!


「そうだ! 前にいた!」

「蒼泉?」


 家の前にいた三人。

 組み合わせがバラバラだと思った以外には特に気に留めていなかったため今の今まで忘れていた。

 しかし間違いない。あの三人だ。

 この家の前で蒼泉に話しかけてきた三人組だ!


(何これ……偶然?)


 偶然にしては、蒼泉はこの数日でその三人と関わりを持ちすぎた。

 電車での痴漢騒動の件。

 そして秘書としての倉田。

 昨日の誘拐事件。

 これをただの偶然として、何でもないものとして片付けていいものなのか。


(待って、落ち着け……っ)


 そもそもなぜ三人はこの家の前にいた? 蒼泉に話しかけてきた?


(まさか)


 ――仕組まれていたことなのでは。


 そんな考えが頭をよぎった。

 痴漢騒動でも誘拐事件でも、少女二人と倉田はそれぞれ蒼泉を助けてくれた。

 しかしもしかすると、それすら仕組まれていたのではないだろうか。

 そうでないならば、誘拐事件のとき、倉田はどうやって蒼泉の居場所を突き止めた?


 飛躍しているかもしれないと思う。

 だが、否定するための材料もない。


 思考の渦は止まらない。

 秀一に肩をつつかれてハッとすると、いつの間にか倉田の顔が目の前にあった。

 あまりにも近くてぎょっとする。

 思わず後退り、危うく不自然に固まっていた雪の山につまずくところだった。危ない。


「く、倉田さん」

「よう。相変わらず小せぇな」


 ――ぶちり。


 そんな、音が、した。


 人が必死に悩んでいるときに、人が密かに気にしていることをよくもズケズケと。


 キッと倉田を睨みつける。

 そのときにも見上げなければいけないのが無性に悔しかったが、かえって怒りで我を忘れた。

 何とでもなれ。そんな気分になってくる。


「倉田さんこそ相変わらず怪しいようでっ」

「ほう?」


 あまり気にした様子もなく問い返されてムッとする。

 隣を見やると紗雪もまた無表情にこちらを見ていた。

 倉田といい彼女といい表情の読めないコンビだ。嫌になる。


「わかってるんですよっ! 何なんですかコソコソと人の周りを嗅ぎ回って。挙句の果てには人を自殺願望者扱い! 変質者ですかストーカーですか大人になり切れない大きな子どもですか!?」

「おいおい、自分がストーカーしてもらえるなんて自意識過剰になるのは良くない傾向だぜ?」

「どこまでも失礼な人だな!!」


 あまりの言い草に思わず敬語も忘れた。

 だが倉田の態度は変わらず飄々としている。

 彼は口笛でも吹きかねない口調で紗雪に尋ねた。


「おまえ、何のことか知ってるか?」

「知らない」


 いい根性をしている。こうも堂々としらばくれるとは。


「……こっちには証人がいるんですよ」


 その証人とやらは、いきなりの展開についていけず途方に暮れている。

 構わずにぐいと押し出すと悲鳴を上げてしがみついてきた。

 頼りにならない。ものすごく。


「ひぃいい!? ぅあの、よくわからないけど平和にいきましょーよ、ね、ねっ?」

「……その証人が嘘をついていない証拠は?」

「じゃああなた方が嘘をついていない証拠はあるんですか」


 紗雪、蒼泉と双方に無視され、秀一は行き場をなくしたようだった。

 不自然なポーズのまま立ち往生している。

 助けを求めるかのように倉田に視線を送った彼だが、倉田の目つきに恐れをなしたのだろう。

 そのまま縮こまり再び孤立状態に陥った。


「秀一、ぼけっとしてないで説明してやってよ。会ったんでしょ、一昨日に?」

「え、ああ、おう! もちろん! 俺は嘘つかないぜ」


 腕を突かれた秀一が慌てて胸を張る。

 そのまま彼は前に重心をかけ、ぐっと拳を握り締めた。


「一昨日、それは雪の降り積もる日だった。蒼泉と別れた俺は二人の少女に声を掛けられた。少女二人はそれはそれは可愛くてきれいで籠に入れて飾っておきたいほどでとにかくストライクゾーンど真ん中の超絶美少女と言ってもおかしくないくらいで」

「早く進めよ」


 倉田の呆れた声。

 調子付いてきたのだろう、秀一は特にたじろいだ様子もなく咳払いをして続けた。


「『あの、秀一さんですよね』


 少女二人は可憐な声でそう言って俺へ駆け寄ってきた。


『秀一さん。実は私、生まれる前からずっとあなたが好きでした!』


 二人は声を揃えて俺に言った。はにかむような笑顔。うっすら染められた頬。潤んだ瞳。パーフェクト。俺を生んでくれてお父さんお母さんありがとう。……だけどそこからが悲劇の始まりだ。


『ちょっとあんた、私の方が長く秀一さんを好きだったのよ!』

『何言ってるのよ、愛に長さなんて関係ないわ! 愛に大事なのは質よ、量よ!』


 なんということか。二人の取っ組み合いが始まった。花びらを掃除機の逆噴射のごとく撒き散らしながら天を駆けずり回る二人。だけど俺は二人の可憐な少女が争うのなんて見たくない。愛とは時に罪だ。俺はたまらずに叫んだ。


『待って、私のために争わないでぇ!』」


「何でおまえまで女言葉なんだよ!」


 遠慮なく拳を振り落とす。

 それは見事に秀一の頭へ吸い込まれた。

 それにしても、あまりにもアホすぎてツッコミが遅れたことが悔やまれる。


(ああもう)


 何もかもが駄目すぎる。蒼泉は大きな脱力感に襲われた。

 秀一が証人である時点で蒼泉の敗北は決まっていたのかもしれない。

 一方、倉田はわかりやすいほど呆れているようだが、その隣の紗雪は怖いくらいに無表情だった。


「あなたの友達、多大な妄想癖ある?」

「う、はあ、まあ」


 いくら何でも今の演説の後では否定出来ない。


「じゃあ決定だな。全部そいつの妄想だ。これで世界の平和は保たれた、めでたしめでたし」

「ちょぉぉおお!? 調子に乗ったのは認めますけど俺そこまで悪の根源じゃないですから! しょせん小物止まりのちっちぇ男ですからっ!」

「確かに色々ちっちゃそう」

「何!? 色々って何!?」


 ぽそっと呟いた紗雪に、「器ですか心ですかそれとも男のシンボルですか!」と秀一が喚く。

 蒼泉はそれを無視することにした。

 もうメチャクチャだ。どうにでもなってほしい。


 ポン、と肩が叩かれる。

 顔を上げると倉田が笑っていた。

 あの、どこまでも読めない不敵な表情で。


「その勢いは認めるが、おまえはどうも詰めが甘いな。――じゃ、後でな紗雪」

「うん」

「え、ちょっ……」


 慌てる蒼泉に構わず、ヒラリと手を振った倉田は家へ入っていく。

 紗雪もまた何事もなかったかのようにスタスタと通りを歩いて行ってしまった。

 その場に残っているのは、蒼泉と秀一の二人だけ。

 逃げられた。あっさりと。


「~~悔しい」


 ものすごく馬鹿にされたような気がするのは気のせいなのだろうか。

 がっくりうなだれる。

 それを見た秀一は感嘆の息をついた。


「何かすごそうな人だなぁ。俺をボロボロにする蒼泉がこうもボロボロにされるなんて。てか、蒼泉があそこまで爆発するのも久々っつーか。それだけあの人の無神経さがすごかったってことなんだろうけど」

「……まあね。確かに得体が知れないし物言いがやたらズケズケしてるし」

「蒼泉、珍しく突っかかっていったもんなぁ~」

「あー……別に嫌ってるわけじゃないよ。あの人に遠慮はいらないって悟っただけで」

「そうなのか?」


 俺だったら即投げるぞ、と秀一が顔をしかめる。

 蒼泉は苦笑した。

 蒼泉に言わせれば、倉田相手で放棄してしまうなら、秀一との友人付き合いなどとてもでないがやっていられない。

 ある意味秀一の方が飛びぬけているのだ。


「まあ……言い方はともかく的外れなことを言ってるわけじゃないし、ちゃんとオレをオレとして扱ってくれるから、さ」

「ふうん?」

「とにかく! 秀一、これから暇? 暇ならちょっと付き合ってよ」

「あ? どこに?」

「図書館」

「――は?」

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