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始まりは

始まったお話。


始まってしまったお話。

この世界には“バケモノ”がいた。


涙を流すだけで他人の傷を癒す事が出来る人魚や、糸を生み出し他者を操る羊頭…影を切り取り生命を絶ってしまうモノ等…実に、様々な“バケモノ”達がひっそりと暮らしていた。


人間達は、それらを『コトダマ族』と呼び、支配下に置いたり仕事を依頼したりして共存していた。


ある日、何度殺されても死なない“バケモノ”が現れた。


一部の人間達にとって長年の望みである“不老不死”の秘密をその体に宿す“バケモノ”を、人間達は追い求めた。



ある人間は[それ]を捕まえ、解剖した。


望む結果は得られなかったものの、非常に親しくなり、最期は満足して死んでいった。



ある人間は、[それ]を幾度となく、様々な方法で殺し続けてみた。


最初は抵抗していた[それ]も、だんだんと大人しくなり、表情すら見せなくなった。


人間は[それ]に飽き、見向きもしなくなった。


[それ]は遠くへと消えた。



ある人間達は、[それ]に酷似した存在を作り出した。


酷似した何かは[それ]を追いかけ続けているが、いつも失敗に終わっていた。


やがて人間達は諦め、どこかへ散っていった。


酷似した何かはきっと、今も[それ]を追い続けているのだろう。



ある人間達は、水の満ち引きのある井戸の底へと[それ]を固定した。


何度も溺死し、何度も生き返る[それ]を何十年も観察し続けた。


[それ]は抵抗もせず、言葉も話さなかった。


やがて人間達は死に、井戸の底に[それ]だけが取り残された。


更に何十年も経ち、縛っていたロープが朽ち果て、地上へ出られても、[それ]はほんの少しの人間への恨みを持っただけだった。



一部の人間達は考えた。


「何故我らには限りのある命しかなくて、“バケモノ”には限りの無い命が宿るのだ」


「恨めしい。うらやましい。我らにも命をよこせ」


「あのような化け物ではなく、我らにこそ永遠の命はふさわしい」


恨みが降り積もったある日、見知らぬ子どもが現れた。


その子どもは嗤って言った。


「殺してあげようか?君達が恨んでいるモノを。君達が嫌いな神様を」


人間達はその子どもに縋った。


永遠の命を持つ[それ]を殺してもらうために。


“バケモノ”を生み出している神を消し去ってもらうために。


人間達の恨みや妬み、懇願を聞いて、子どもは頷いた。


そして、口をにんまりと三日月の様に歪ませて嗤い、言う。


「さぁ、狩りの始まりだよ。最初は、誰にしようかな。」

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