1話~想像より長くなった。~
緋廻綺さんは生きる。
ちなみに、ルリトは日本人の中二の女子の身長の平均より小さいですが、この世界の人達は皆して日本人より長身です。ルリトはレキの胸までないです。同い年です。レキは低いほうです。
自分は今、レキ様のお部屋をでてこの國の皇であるリアン=マナフ氏がいるという部屋に向かっているらしいです。ちなみに、ジュリア様が一番前で後ろに自分が付いているのですが右手がレキ様の左手に握られています。禿げそう。会話無し、使用人の類いの人も無しで禿げそう。大事な(ry
と、そんな迷走をしていると窓から見える空に十数匹の竜が見えた。これ以上の迷走は危険と思いその竜を眺めていたら、何を思ったかジュリア様が自分をチラリと見て自分の視線の行方を探して空の大海原を泳ぐ竜を捉えた。そして、とうとうこの長い沈黙を破った。
「あれは我が國の竜騎士達だね。今は、新人逹の飛行訓練中なんだろう。」
新人と言っても真っ直ぐに翔べている様に見えるからそこそこの期間は経っているのだろうが。
「あれは、全て元野生なのですか?」
「そうだね、今期は全て竜の都から買っている竜達だからそのはずだよ。」
「そうなんですか。」
「まぁ、『子竜の儀』を行うには莫大なお金と適性があるからね。何処の國も子竜がいないことは無いけど珍しいからね。」
子竜の儀と云うのは、世界中に点在する全ての竜の母と言い伝えられている女神様の『マヤ』が干渉できる森に入り子竜を授かる儀式だ。
しかし、子竜の儀を行うには、まず体に竜を宿せる適性が必要なのだ。これがまず珍しい、ちなみに自分がたてた仮説は『適性』よりも『魔力』なのだが此れはいま関係ないからこの仮説について詳しい説明は省く。次に必要なのが、莫大なお金だ。何故金が必要なのかというと、マヤが干渉できる森通称『マヤの森』はそれぞれの國が管理していて儀式を行う時以外は必ず入れないというのが世界共通なのだ。その國が厳重に管理するものをたった一人のために解放するのだ。当然解放している時は警備を増やしに増やす。すると、なんやかんやで色々金がかかる。
余談だが、子竜の語源は「儀式を受けるヒトは子を身籠り、其が竜なだけ。」というマヤが子竜を大事にしてもらうために言った言葉らしい。だから、『(私の)子(は)竜』という意らしい。知ってるひとは極少数だが。
「男の子は大抵が騎士に憧れる前に竜騎士に憧れる。」とは父様談だ。その時の父様は苦笑いったら苦笑い。これでもか!ってほどの苦笑い。
「竜騎士に興味があるのかい?」
「いえ、全く。」
「はは、だろうね。……レキそんなに睨まないでくれ別にルリト君を盗ったりしないよ。」
あれ?今の『とる』ってニュアンスがちがわなかったか?気のせいか?
ってかレキ様はジュリア様を睨んでたのか全く気づかなかったわ。
ジュリア様と会話する前は、盗み見ると直ぐに気づいて薄く笑ってくるだけだったし。雰囲気というオーラは「物凄く嬉しいです!」だったけど。
「……っと、着いたよここにお父上がいるんだ。」
と着いたのは他の扉とは全く違う…なんてことはなく他の扉と一緒で白を基調とした他と変わっているところが無い扉。この中に、この國を治める皇がいるのか…………死なないよね?
「失礼します。」
ノックもせずに扉を開けるジュリア様……いくら家族だからって皇に向かって失礼なんじゃないのですかね?
硬直している自分を置いて部屋の中に入るジュリア様。
「…………あまり気にしない方が良いよルリト。何時もだから。もちろん、中に身内しかいないって分かってる時だけだけど。」
横からレキ様が説明(?)をしてくれる。ってかそれで良いのか皇族。
「そう……なのですか。」
レキ様が歩き出したので、一緒に歩くしかない自分は引っ張られないように歩き出す。
この部屋は客間なのか、長椅子とテーブルしかないシンプルな内装だった。入って左の長椅子に座っているのが、向こう側がジュリア様だから手前がこの國の皇リアン=マナフ様なのか。そんなことを呆然と考えつつ、レキ様につられるようにして右の長椅子に座る。テーブルを挟んで向かいに座るのがマナフ様。父様とあまり年は離れてないように見え-----ッ!ここで気づく。何呑気なこと考えているんだ自分!何を言えば良いのか分からず、レキ様の時みたいに無表情で焦りだす自分にリアン様が喋りかけてくる。
「ルリト君。」
「は、はい。」
「こうして話すのは初めてだね。リアン=マナフだ。」
「ル、ルルル、ルリト=サファードです。」
緊張しているとリアン様は笑って
「そう緊張しなくてもいい。」
と、ジュリア様みたいな泣きそうな言葉をかけてくるのだ。
「が、頑張ります。」
「うむ。頑張ってくれたまえ。」
と、笑うリアン様。………何度だって言おう、それで良いのか皇族。
「それでさっそくなんだが、今回の件は聞いてるね?」
「それは、許嫁の件…なのでしょうか?」
「その件だな。まぁ、いきなり「貴方には許嫁がいてそれは皇族です。」なんて言われたら混乱するし、戸惑いもするだろう。君みたいな何の関係ない者ならば、尚更だ。だから、理由を教えようと思うのだがその前に一つ。ルリト君は今、どう思っているのかね?皇族とかは一切関係無しでだ。」
「何歳からでも、いや、もう生まれる前からでも結婚が成立するこの國で許嫁という形がとられているのは、何か意味が在るのかもしれません。が、この先ずっと独り身だと思ってたので相手が良いのなら。と、正直なところ思っているのですが。レキ様は---」
言葉の途中で服を引っ張られ、リアン様に失礼だとは思いつつも自分の服を引っ張ったレキ様の方を見ると、レキ様が真剣な表情で。
「………レキ。」
と、一言。
「えっと……。」
「………レキ。」
「………呼び方。」
納得。
「え、で、ですが。」
「レキ。」
「ぁぅ……。」
「レキ。」
レキ様に言い寄られていると。リアン様が。
「フフフ、フハハハハハハ!」
大声で笑いだした。怖い。よく見たら、ジュリア様も涙目で笑いを堪えているが、肩が震えている。そして。
「レキ。」
これである。何これこのカオス。
取り敢えず二人の権力者様が落ち着くのを待って、その間にレキ様を呼び捨てにすることに決定。なんかリアン様が笑いながら「ククク、いいんじゃない…か?ッブ、ハハハハハハ!」なんて言ってたから少なくともこの四人の時は大丈夫なのだと思う。…レキ様もといレキがそれ以外の場合で様付けをして納得するかは分からないのだが。
「ルリト。」
「何でしょうか、レキ…。」
様を付けたい。主に精神安定のために。
「さっき、私がルリトのことをよく知らないみたいなことを言おうとしていたみたいだけど、」
よくご存じで。
「でも、そんなことは無い…と思ってるよ?」
「と、言いますと?」
「えっと、好きな食べ物はレニシュで、フルーツはほとんどダメで、…」
ふむ、ここまでは基本(?)だな。ちなみに、レニシュとは物凄く酸っぱい食べ物ということだけ述べておく。
「人は嫌いまではいかないけど余り信用も頼りにもしない。自分から、嫌われる様に情報工作までする。体を動かさないのは運動が出来ないからじゃなく面倒だから、耳と首筋が弱くて、くすぐったい様な感じに軽く撫でられるのも弱くて、生暖かく撫でる様な風もダメ。考え事や泣きたいとき、悲しい時、寂しい時、何もすることが無い時には町のそばにある丘の上にある木の下で寝転がる。後は--------」
「ちょ、ちょっと待ってください。」
何で、親も知らないことまで知ってるんですかね。
と、目を回しているとリアン様が。
「こんな感じにこの子は、君のことをよく知っている。」
そして、間を空けて。
「つまり、もう婚約成立なんじゃないかね?」
ソウデスネ。
「まぁ、正式なものはもっとお互いのことを知ってからでも遅く無いだろう。一緒にいると態度が変わる場合もあるからね。さて、次の話題に入りたいのだが…二人ともちょっと出ていってくれないか?」
「わかりました。」
そう返事をして立ち上がるジュリア様。レキ…は不満オーラを出しながら無言で出て行く。
二人が部屋から出ると、リアン様の話がはじまる。
「次の話題はこれからのことだ。」
「これからのことですか?」
「うむ、といってもとても大雑把なザックリとしたものだが。」
「ルリト君は、魔道専攻科に興味があるのだろう?」
「ええ、まぁ。でも、お金がありませんから。」
「実は、レキも彼処に入学予定なのだがね。」
「はぁ。」
「ルリト君も行く?と言うか行って欲しいのだけど。」
「………え?」
「お金はこっちで持つから、お願い!」
そう言って頭を下げるリアン様。……まって、何で自分は皇に頭下げられてるの?
「あ、頭をあげてください!」
「うむ…」
「あ、えっと、行けるのなら有難いと言いますかなんと言いますか、と、とにかく!喜んで行かせて貰います!」
「そうか!それはよかった。」
んん?なんか、嵌められた感じするけど気のせいかな?
「学園のことも決まったことだし、次だね。」
話の切り替えが早いし…やっぱ嵌められたかな。
「ルリト君に専属メイドが付きます!ドンドンパフパフー♪」
「は?」
いかん。急すぎて間抜けな声が出てしまった。其にしても、メイドとな?メイドってあのメイドでいいんだよな?なんでまた…ああ、監視か。
一人で納得していると、それに気づいたのかリアン様が
「監視の意味も、無いことには無いけどね。本命は、他なんだよ。」
他、他とな?自分に付き人を付ける理由…
「ほら、癖とか行動とか予め知っていて親しい人一人いたら楽じゃん?メイドとして。後は、事情を知ってて愚痴とか言える人要るんじゃないかなーって。」
分からんことないが、相手が皇族と繋がっていると分かっているのに果たして自分は愚痴れるのだろうか。
「ちょっと癖のある子だけど、レキともまともに交流できる数少ない人だから。名前はアヤネ=ミナミっていうんだけどね。」
ん?アヤネ=ミナミ?
「南 綾音?」
なんだ?転生ファンタジー系でよくある東国とか極東みたいな日本によく似たところの出身者かなにかか?
「ん?ルリト君は極西の名前事情まで知っているのかい?今時、博識なものだねぇ。」
って、西かよっ!
「じゃ、次だね。…軽い方からいこうか。」
「今日からルリト君には冬休みが終わるまでここに泊まってもらいまーす。」
「あの、しゅ、宿題がまだ…。」
「ん?ああ、大丈夫大丈夫。其処は権力で、ね?いやぁ難しいよ。権力というものは、行使しすぎても、しなさすぎても駄目だからね。」
いや、使うところ間違えてるだろ。確実に。
「はい。最後の話に移ろうか。」
速くない?まぁ良いけれども。
「ルリト君にはね、子竜の儀を執り行ってもらう。」
「……………へ?」
「そ、それは何故なのでしょうか。」
「これは、ルリト君をレキの相手と認めたことにも関係する話なのだけれど。私はね、魔眼持ちなんだよ。それも、SSランクを両目にね。正直、これのお陰で今まで生きてこれたと言っても過言じゃあないよ。」
『魔眼持ち』それは、普通の人が見えないモノを知覚することができる目を持つひとを指す言葉の一つだ。魔眼と、いっても様々な種類が存在する。例えば、透視であったり、相手の言葉が嘘がどうかわかったり、心が読めたりといった具合に。中には、必要性が全く感じられないものもある。
魔眼には、F〜SSのランクがあり、その能力性や程度により、分けられる。同じ『嘘を見抜く』という能力でも、正答率が1割を切ってくるならFランクかギリギリFFランクだけれど、九割以上ならAランク〜Sランクに分類される。何故か、ランクが上位になるほど、今までに記録されてきた魔眼の数が減っていくのだが。
何故魔眼を持つ人と持たない人がいるのかはまだわかってはいないが、これも仮説があったりするのだが、一旦置く。
「ほ、本当ですか!」
ダンッ、と音を立てて目の前の机を叩きながら前のめりの姿勢になってしまう。
魔眼は、片目だけに現れることが多い。両目の魔眼持ちの人は両目ともがFランクの下の下だとしても、国宝並の価値があるのだ。
「ああ、本当だもの。何が見えるかについては、私も全てを知っている訳じゃないけれどね。大雑把に言うならば視覚内の調べたいモノの情報。かな。ルリト君を信用出来ると思っているのも、子竜の儀が成功することが分かっているのもこの目のお陰だよ。」
あまりに、高性能すぎて声を失っていると。
「冬休みは短いからね、明後日マヤの森にいくよ。」
「え…」
軽すぎですってば、皇族。
机を叩くシーンで、扉の前でレキが暴走しようとしたのをジュリアが必死に止めていたとか、いなかったとか。
魔眼のランクですか、F<FF<Eといった感じで続いていきます。
神の像をみると、その神から神託を託される系の魔眼とか考えてます。使う予定ないけど。というか、明日になると忘れてそうだけど。
感想とか色々待ってます。