プラトーン
十九世紀のドイツ統一戦争に関する史料を読んでいて、プロイセンはいち早く後装銃を軍に取り入れていたが、他国はまだ前装銃を使用しており、プロイセンの姿勢を変えることなく素早く銃弾を装填できる後装銃の威力に圧倒されたとの、記述が出てきます。
ここで映像として頭に浮かんだのは、火縄銃。火縄銃も前装式の銃ですね。銃口から銃弾を詰めて棒で押し込んで、装填。
十九世紀ヨーロッパなので、火縄で点火するものではないですが、装填方法はまあそんなものだろうと、おぼろげながら想像しました。
後装銃、元籠め銃とも言いますが、手元で銃弾を装填できます。いちいち銃身を縦にする必要がないので、狙撃の腹這いの姿勢でも銃撃が続けられます。(発砲時銃身がぶれにくい)
NHKの大河ドラマ『八重の桜』の戊辰戦争では、奥羽越列藩同盟側の諸藩は、火縄銃などの旧式の銃しか持っていません。しかし、新政府軍は新式の銃を揃えられたようです。主人公の八重の家は鉄砲を扱う家柄でしたので、新式の銃を揃えたいと進言していましたが、予算や諸々の事情で揃えられませんでした。
新政府軍が銃を撃つのに、刀や薙刀で切り込もうとする武士やその妻女たちは動く的でしかありません。
八重は兄から送られた新式の連発銃を持ち、城に籠城して見事に鉄砲隊を指揮します。指揮官一人を狙撃し、負傷退場させる腕前でした。
『八重の桜』では「白虎隊」より、西郷頼母の妻女たちの自害や「二本松少年隊」により時間を割いていたように記憶しています。
「二本松少年隊」は実際にはばらつきがあって十二歳から十七歳くらいまでの年齢の者がいたそうですが、ドラマでは演出のためか、小学生くらいの男の子ばかりでした。小学生くらいの男の子たちが銃を持って、新政府軍に向かって行きますが、多勢に無勢、すぐに撃たれてしまいます。相手方も撃ってから、子どもじゃないか、死なせるな、とびっくりします。
滅びゆく者の悲劇のドラマとして観てしまいますが、熟練と体力が必要なそれまでの武道に比べて、最新兵器は訓練すれば女子供でも扱えるという、問題を含んでいます。
アメリカ合衆国で一時期ベトナム戦争を題材とした映画が何本か制作されました。わたしが観たのは『プラトーン』だけ。それもビデオとテレビ放映の時の二回くらいかな、大分昔です。
プラトーンという言葉が小隊を意味すると知ったのは、もっと後でした。通信室に貼りついていた白い服の男性が士官で、迷彩服を着ていたのが兵士たちだな、くらいしか当時解りませんでした。小隊を指揮すべき士官がそんなので、トム・ベレンジャーやウィレム・デフォー演じる、小隊の中の分隊長か班長に当たる人が仕切っている、そんな記憶。
フルオートの銃を持って、草原やジャングルを走って攻撃するのと、十九世紀の戦争を簡単に比較できませんが、テレビとは違うロングショットを思い出して、あれこれと考えていました。
日本は地平線が見えるくらいの平原がないから、騎兵の機動力や大砲や銃の有効射程距離とか、本陣の敷き方とか、大陸とは戦術が違うんじゃないんだろうとか、わたしの想像力には限界があるのだなぁ、としみじみ思いました。
だからといって戦争映画を観てみる勇気もなく、文献漁りをしているのでした。




