胸毛があればモテるのか
ショーン・コネリーがジェームズ・ボンドの『007は二度死ぬ』をビデオで観た時、お風呂場(だったと思う)で、半裸の女性たちがわっとジェームズ・ボンドに群がるシーンがありました。日本の情報機関の幹部で丹波哲郎演じるタイガー・田中が、「胸毛があると女性にモテる」と言っていました。確かにショーン・コネリーに胸毛があり、丹波哲郎にはなかったのでした。当時のわたしは女子校におり、恋愛経験がなかったので、男性の魅力はそんなところに感じるのだろうかとはなはだ疑問なのでこざんした。
そおんな純情可憐な年頃を忘れてしまうほど歳月が過ぎ、十年くらい前にアメリカ映画の『トロイ』を観ました。ブラッド・ピッドがアキレスで、オーランド・ブルームがパリス役でした。トロイヤ王のプリアモス役にピーター・オトゥールで、失礼ながらまだ生きてた、と驚いたものでした(その後お亡くなりになっております)。ヘレン役の女優がイマイチと言われていたらしいですが、ヘレンの鼻が高かろうが低かろうが、オーランド・ブルームに誘惑されたら、そりゃ付いて行っちゃうよねぇといったパリスの方の魅力満載でした(戦闘シーンでパリスはまるで駄目でしたけどね)。
良人と一緒に観に行って、面白かったね、とお互い感想を言い合っていたのですが、ぼそっと良人が言いました。
「ブラッド・ピッド、ツルツルで気持ちが悪い」
ブラッド・ピッドはトロイヤの女性と恋に落ち、ラブシーンがありました。体毛がないように見えたのが、そんな感想になったようでした。
「は?」
「男として変じゃないか」
「……」
いやあ、別に……。
男性の身体的魅力について、時代は胸毛ありから、すべすべお肌に移っていると言えましょう。
「そんなことより、アキレスがトロイの木馬に入っている方が変だわ」
映画としてまとめたとはいえ、ギリシア悲劇がアメリカナイズされているあたりが不満と言えば不満でした。
胸毛があろうとなかろうと、別にいいじゃん、と思いました。




