両耳から煙モクモク、歯は悲鳴
なんか暗い話ばかり続けてしまいました。思想史の講義は、二本の映画の分析の後は、「イエスの方舟」事件になりました。週刊誌ネタを拾い、世間がどう見ていたか、などの解説を含んでのお話でしたが、よく覚えていません。先生はもっと深い考察をもっていらっしゃったと推察しますが、こちらは週刊誌もアホな記事載せるなぁくらいでした。だいたい狭いアパートを転々としている集団がハーレムのようなものではないと考える方がまともであって、いかがわしく考えちゃいけないよう、と思います。
大分年数が経ってから、テレビで「イエスの方舟」事件を特集していた番組で、ある識者が、「娘が好きな男と暮らすために出ていくと言われたら家族も解っただろうけど、神様に付いていくと言われても理解できない」と言っていました。成程です。
瀬戸内寂聴が『源氏物語』に関する対談で、自身が出家した時に自分の知り合いの女性たちから、その当時夫たちが仕事から早く帰ってくるようになった、優しくなったと聞かされたと言うのです。(話題は女三の宮の出家に関してでした)対談相手が誰だか忘れましたが男性でした。
それは解ると対談相手が答えていました。妻が浮気するより、尼さんになってしまう方が男としては、辛いし、情けないと。
確かに、妻に浮気され、逃げられるのは男性としては世間体が悪い。しかし、出家とされるとなると、「あの女は浮気性で、浪費家で」と悪態も吐けないし、周囲も「あの奥さんは我が儘だったらしい」なんて思ってくれないでしょう。逆に妻の悩みに気付けなかった、満足させられなかった、と言われてしまいます。
んでもって、光源氏は年弱で頼りない性格とあなどっていた女三の宮が出産後に出家すると言い出しで、仰天してしまう、それも兄貴で女三宮の父である朱雀院が来ているので、やめさせることもできません。
身分の低い召人(女房――侍女――の身分の愛人)や長年の付き合いのある中流くらいの身分の女性ならともかく、一番格上の身分の内親王の仰せです。紫の上の出家に反対し続けていた上に、女三の宮はほかの若い男性と通じていたんだと表沙汰にできないので、光源氏の面子は丸潰れです。
男性に、トロフィーワイフが間男したのと、結婚生活に希望を持てないから尼さんになると実行するのと、どっちがショックが大きいかお訊きしてみたいです。ま、光源氏の場合はダブルですけど。
え? この題名はなんだですって?
自分自身、暗い気分が続いていたので、気分転換に図書館で借りてきた本の原題をテキトーに訳してみました。
邦題は『世にも奇妙な人体実験の歴史』、トレヴァー・ノートン著、赤根洋子訳、で文藝春秋から出ています。原題は”SMOKING EARS AND SCREAMING TEETH”です。自分自身を実験台にして、自然科学の発展に寄与した科学者の紹介です。まだ第4章までしか読んでいませんが、スゴイもんです。原題からして、もっとユーモラスな文章に訳してもいいのでは、と思うのですが、文章も内容も大真面目です。笑ってはいけないのです。でも、ちょっと……。だから題名にしてみました。




