怪談は語り口が大切だ
ビジュアルで怖いものを見るのは苦手ですが、怖い話は大好きです。官能ものなんかは映像で観るより、活字が好きです。そこは置いといて、スプラッターものやホラー映画は観に行きませんが、怪談は大好きで、よく読みます。
歴史が好きですから、それにまつわる因縁話は良く聞かされます。戦でここは戦場になったとか、この古い建物には、幽霊や妖怪の言い伝えがあるよ、という奴です。
長男は歴史を学んでいますが、怖い話は大の苦手です。以前、「山形の城跡(現在復元中)に白鳥十郎の首置き石があるから肝試しに行ってみよう」と誘ったら、即拒否されました。
「え~、だってさあ、山形のお城に限らずお城とか古い建物には因縁話とか、誰それが死んだ恨みが残っているとか、人柱が埋められたとかあるじゃない。それに古戦場に行くと、落ち武者の幽霊がぞろぞろとかさあ、噂に出るじゃない」
と、話をしますが聞いていません。よくそれで、城跡や遺跡を回れるもんだと思っちゃうのですが、それでも勉強をしていました。
ある時、家族が怖い話を皆でするものだから、自分も仕返しに怖い話をしてやろうと考えたらしく、小学校の先生から聞いたという本当にあった怖い話を始めました。しかし、日頃から人を怖がらせる語り方に慣れていないせいで、どこが怖いのか、何がオチなのか解りませんでした。
「えーと、つまり校外学習で児童を連れてその先生が広瀬川の川原に出掛けたのね。そしたら、川原の崖の上に人がいた。ずっとその人がいた。学校に戻るまで、その人がいた」
「うん」
「帰ろうとしたら、その人が落ちてきた?」
「うん」
「それは事故じゃないって話でいいの」
「うん」
「小学生たちが帰ろうとするまで、その人は飛び降り自殺するのを待っていたってオチな訳?」
「そうそう」
「説明の仕方が解りにくい」
「う~」
なんて言っていると、広瀬川の崖の地層の話に移り替わって、別の家人曰く、「学術的に広瀬川の地層か研究価値があるそうだけど、自殺者が多くて、日が暮れたら気味の悪い事象が起こるとかで近付けないから、研究ができないと聞いた。こんな話が……」
「おー、そりゃ怖いし大変だ」
不謹慎ながら、そっちの方が怖いと盛り上がったのでございました。
恐ろしい出来事も、淡々と事実の羅列しただけでは怖く感じない、語り口が大切だよなぁと、かなしくもおかしな会話でござんした。
広瀬川で自殺者が多いと言われる場所は限られています。上流の、山がちというか、崖っぷちのある場所です。現在は柵が設けられています。