民法第752条
最高裁判所で、夫婦同姓は合憲判断が出ました。民法の第750条で、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。」と定められています。一応法の下では男女平等なので、96%の夫婦が夫の姓を選択している事実があっても、法の番人は、平等な立場での選択、の立場を崩せなかったというかなんというか。詰まらない結果となりました。
夫婦が別姓であった歴史の方が長いですし、最初の明治の民法では「権妻」といって、お妾さん、二号さんを認めていたくせに、すぐにそこは改定したそうで、日本では重婚は認められていません。これは現在の民法でも当然、そのように定められています。
ちょこちょこと当エッセイや活動報告にも書いているので、ご存知の方もおいでかと思いますが、わたしの良人は単身赴任中。わたしたち夫婦は民法違反しているのです。
だって民法第752条には、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定められていますから、別々に暮らしているので民法の違反になっちゃいます。
確か、転勤や単身赴任は家族の一体感を損ね、子どもが父との触れ合いをなくすと、裁判になった覚えがあります。成人前の出来事ですが敗訴したような記憶が……、どうだったかしら……。
仕事関係で一定期間夫婦の片方が住所を移すのは別居にあたらないとか、糸くずを伸ばすような屁理屈が付いているようです。可可可可可可……と、わたしは笑ったり泣いたりしていますけどね。
姓を変更するのが不便、不利益を被ると別姓、事実婚を選択している方々もいらっしゃるようです。そういった方々は既に対策を講じていらっしゃると思いますが、民法だけでなく、税法でも事実婚は優遇なしです。事実婚で、もし相手に先立たれた時、民法による相続ができないし、遺言などで相続できるようにしていても、今度は相続税の控除対象者になれないと、法律上の保護が掛からなくなっています。現行法に従え、と言わんばかりな訳でございます。
健康保険法と年金保険法は事実婚を認めています。健康保険法の第三条7では、「この法律において「被扶養者」とは、次に掲げるものをいう。――略―― 一 被保険者(日雇特例被保険者であった者を含む。以下この項において同じ。)直系尊属、配偶者(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある物を含む。以下この項において同じ。)、子、孫、および弟妹であって、主としてその被保険者により生計を維持するもの。」及び、厚生年金保険法第三条2「この法律において、「配偶者」、「夫」及び「妻」には、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする。」、国民年金保険法でも、第五条7で、「この法律において、「配偶者」、「夫」及び「妻」には、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする。」
まあ、真面目にお読みいただかなくても結構です。事実婚の相手でも保険証の扶養に入れられるし、万が一の場合でも遺族年金を受け取れるよ~、と受け取っていただいて差支えございません。
これは進んでいるのではなくて、現行ではなく、旧制の厚生年金保険法や健康保険法が制定された時は、昭和十六年とか、大正年間とか、高速道路も新幹線も飛行機もない時代に、地方から都市部に出て働く労働者が、親に紹介しないまま伴侶を見付けて、という事態を考慮して、事実優先と定められたと聞いております。
勿論、この諸法律上認められているからといって、法律上の配偶者が存在している場合は、重婚的な関係は許されません。身辺を整理するか、お役所(今は役所ではない、健康保険協会と年金事務所ですが)の人たちが納得するような法廷にも提出できるような、客観的な証拠を書類にして出すしかありません。そして、民法上禁じられている近親者間の事実婚も、公序良俗に反すると却下されます。なんでもありはなしです。そのような間柄でなくても、実際手続きは面倒臭いそうです。
以前、叔父姪の結婚で、遺族年金を受け取れるかで最高裁判所まで行きました。結果としては、長年の事実関係を重視して、遺族年金を受け取ることができると判断されました。これは昔、きょうだいが五、六人いて、長子と末子が十以上年齢が離れている例が多い時代のお話で、長子の娘が独身の末弟の身の周りを世話しているうちに夫婦になっちゃったよ、とのことで、想像たくましい方々には残念ながら、当事者の方には失礼を承知しております、お耽美とかグランドロマンの世界ではなかったようです。そして叔父姪という三親等の関係だから、まだ考慮されたのだと思います。もし親子やきょうだい間の事実婚なら認められなかったのではないのでしょうか。
日本は法治国家ですから、法律を知って、味方に付けていかないと、損をするし、一応申請主義なので、自分で動かないといけないんですよねぇ。
健康保険法の被扶養者の項目に、「弟妹」はあっても「兄姉」がないんですね。これも上のきょうだいが、親代わりに弟妹の面倒をみることだけを考えていた時代の名残で、少子高齢社会、非正規雇用者の拡大した現状に合っていないと思いませんか。きょうだいは他人の始まり、と割り切れる人は別ですが。