お天道様
佐藤賢一の『小説フランス革命』を読んでいた時に、登場人物の一人、サン=ジュストがドイツとの戦争でアルザスに赴き、フランスとは違う弱いドイツの陽光を受け、フランス語で太陽は男性名詞だが、ドイツ語では女性名詞であるのに納得するシーンがありました。はい? 確かサン=ジュストは北仏のピカルディ出身だから、アルザスあたりと緯度は変わらないのでは? と思いました。アルザスだとより内陸なので、気候が厳しいから余計に寒さがしみるのかしらん。
世界地図を見ると、だいたい北フランスと南ドイツが同じくらいの緯度。山が近いとか、より大陸性の気候で乾燥が強いとなれば、寒さの感じ方も違うでしょう。少しの条件の差で気候は変わります。それに樺太あたりと同じくらいの緯度と聞けば、さぶいだろうと想像しただけでブルブルブル。「君知るや南の国」と謳われるイタリアが日本と同じくらいの緯度なわけで、大概のヨーロッパ圏は日本より高緯度なことを忘れがちになります。
北欧、それも北極圏の白夜や極夜のある地域にお住いの方々はなんぼ寒いんだか、油断禁物でございます。
日本の国旗は日の丸で、太陽を意味していますが、逆に低緯度地帯、赤道付近の国々では国旗に月や星がモチーフにされています。『日本史の謎は「地形」で解ける』(PHP文庫、竹村公太郎著)では、赤道付近では太陽は灼熱で恩恵よりも疲弊をもたらすからかと、分析しておいででした。
そうなのかしら、どうなんでしょうね。
昭和八年に山形県山形市で四十度八分の日本最高気温を記録し、その後平成に入ってから、埼玉の熊谷市や高知の四万十で一分きざみに最高気温が伸びていて、なんかこれは温暖化云々より、温度計の精度でない? と言いたくなります。
季節風の関係でフェーン現象があり、内陸で盆地の山形市は夏熱いです。子どもの頃はアスファルト道路が柔らかくなってました。九州や沖縄の人に言っても信じてもらえなかったのですが、誓って本当です。昔は、冬はタイヤのチェーンやスパイクで道路に轍ができていましたが、夏は熱さで道路がフニャフニャとなり轍ができていました。車どおりの少ないアスファルト道路で、足跡を付けたり、棒っきれでつついて凹ませたりして遊びました。今はアスファルトの品質が改良されたようで、そんなことはできません。
エアコンがなかった時代でしたので、亡き祖母がスイカを買っていてくれたので、それをバクバクと食べていました。(塩を振れば、スポーツドリンクと似たような成分なわけです)
冬はこれまた季節風の関係で、雪がたんと降り積もります。現在は昔ほどではなくなりましたが、幼少時は、父や亡き祖父が屋根の雪下ろしをしておりました。雪下ろしの足場や落雪を考えて、瓦葺の屋根は少なかったですね。同じ降雪地帯でも、強風が吹く沿岸部の庄内地方(佐藤賢一や藤沢周平、丸谷才一の出身地です)は瓦屋根が多いです。十年くらい前、JRの在来線が強風に煽られて脱線事故が起きています。防風林の松が倒れるくらいで、ただの強風ではなく、突風か竜巻かとも言われているそうですが、吹雪の中の出来事だったそうです。
これからの気候変動、どういった建物が備えに一番いいのか、読めませんねぇ。
お天道様は灼熱や厄災をもたらすのではなく、恩恵をもたらす存在と思っていますし、そうあり続けて欲しいものです。
稲も野菜も太陽光がなければ育たないし、人もビタミンDを作れません。