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豆腐の角で怪我するぞ  作者: 惠美子
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野坂昭如の訃報を聞いて

 長いこと療養中とは聞いていましたが、まさかの訃報でございました。もうウヰスキーやダニ除けの薬剤のCMソングを拝聴できないのかなぁと寂しくなります。

 桜庭一樹の『赤朽葉家の伝説』や阿部和重の『シンセミア』を読んだので、こりゃあガルシア=マルケスの『百年の孤独』を読まなぁと、あの同じ名前の登場人物ばかり何代にも亘って繰り返し出てくる小説を読みました。読み終わったら、反射的に野坂昭如の『骨餓身峠死人葛』を思い出しました。『ほねがみとうげほとけかずら』と読みます。相当昔に読んだので、ほとんど内容を覚えていないのに、頭に浮かんできました。片や長編、片や短編ですが、一つの街というか集落で起きる一族の興亡、生とその営み、死。錯綜した人間関係。共通しているといえばいえるのかも知れません。読後感が良くないのも似ているかも。

 野坂昭如の小説は何本か読んだだけなので、ここで追悼と銘打つような身の程知らずではございません。

 戦争に限らず争い事の狂気や、それに巻き込まれた側のどう努力しても逃れられずに悲劇になっていくストーリー、センテンスの長い、戯作めいた文章で綴られていくのは一種独特の世界でした。ある短編小説で、母親から育児放棄された幼いきょうだいの物語は単に可哀想を飛び越えて、グロテスクでさえありました。保護の必要な子ども達が恋多き女の母から置いてきぼりにされ、幼いお兄ちゃんが頑張るけれども、次第に飢えていく経過を克明に描き、その死は悲惨以上としか語れません。

 野坂昭如は霊能力者の霊視について、東京は空襲であちこちで人が死んだんだ、それが視えないのはおかしいと批判していました。焼跡派は言うことが違うと変な感心をしていましたが、もっともです。人が横死した場所に無念が残るのなら、東京には霊が沢山いるでしょう。

 下手ではないけれど、上手でもないお歌の響きも好きでした。大哲学者や文学者でなくても、それぞれみなが悩んで大きくなっています。

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