ウサギが主人公の長編アニメ映画
小学生の頃、『ウォーターシップダウンのうさぎたち』というイギリスのアニメ映画を観ました。子ども心にリアルで残酷な描写の映画だと思いました。
記憶に基づいて綴ります。
創造主は動物たちを創りました。始めはすべて草食でした。しかし、うさぎは繁殖力が強く、仲間を増やし食べ物である草を食べ、ほかの動物たちが食べる分がなくなるほどでした。創造主は一部の動物たちに爪や牙を与え、うさぎを食べてよいようにしました。あっという間にうさぎは捕まえられていきます。創造主はうさぎに早く走る足と光る尻尾、そしてよく聞こえる耳と、逃れる術を与えました。
それがうさぎたちに受け継がれている言い伝えでした。
主人公ヘイゼルとその仲間たちが暮らす草原に人間の開発の手が入り、生活できなくなりました。ヘイゼルの弟の予知能力により、事前に逃れ、ヘイゼルたちは安住できる場所を求めて、旅に出ます。予言を信じなかった仲間の一部も、命からがら逃げてきて加わります。土を掘り返され、ねぐらの穴を埋められと、リアルで怖い開発の描写がありました。
車道を通りかかって、うさぎたちは自動車は自分たちを狩りはしないが危険だ、と試してみたりします。
養兎場に行きあたり、そこのうさぎに楽して暮らせると言われますが、餌や外敵の心配はないがいずれは食肉として殺されると知り、ヘイゼルたちは去ります。
ほかのうさぎの群れと(この群れが大変好戦的で、共存してくれそうにないのです)の戦いがあり、知恵を絞って人間が飼っている犬にわざと好戦的なうさぎを追いかけさせ、なんとか新しい縄張りを確保して、安住します。
うさぎたちの長い旅と冒険の物語でした。年老いたヘイゼルに黒い死のうさぎが来て、一緒に去って行きます。
このアニメ映画を観て怖い映画だと思ったのは、うさぎは野生動物の餌にされてしまう、まさにそれでした。犬や狐、猛禽だけでなく、家猫にまでうさぎは狙われます。主人公ヘイゼルは家猫に捕まえられて、からかうような言葉を掛けられます。たまたま猫の飼い主らしき人間の女の子が、「可哀想でしょ」と声を掛けたために猫はヘイゼルを離しますが、そのままだったらヘイゼルは猫に嚙まれていたかも知れないし、人間の方がよくやったと台所に持っていちゃう可能性もあったわけです。
『不思議の国のアリス』とは違って擬人化していませんが、独自の口承文化を伝える真剣で人間臭いうさぎの物語でした。
可愛いだけじゃないうさぎ、外敵から逃げるための足、そしてあの長い耳は音を拾うためではなく、早く走るため体温を放熱するラジエーターなのです。
ペットショップからの購入ではなく、野うさぎを捕まえて飼っていた人は、よく爪で引っかかれたそうですし、なかなか馴れなかったと聞きました。野生動物としての獰猛さは草食動物でも持っています。
わたしが住んでいる地域に昔は野うさぎがいて、猟銃を持った人が狩りをして、焼いて食べたなんて話を聞きましたが、今ではうさぎを見掛けません。庭や畑の食害で聞くのはほかの動物ばかり。野うさぎはどこに行ったのでしょう。ヘイゼルたちのように理想の住処を求めて、人間のいない土地に去って行ったのでしょうか。




