昔の名前
食べ物についての歴史の本を読んでおりますと、よく解らない名詞が出てきます。特に海藻類は、現在ではどんな種類か限定できない物もあるようです。また、呼び名が変わっている、現代ではあまり食用に採集されていない、と本に載っていたりします。
『万葉集』に「ナノリソ」と呼ばれている海藻が「玉藻」と考えられるだろう、「ナノリソ」は現代の「ホンダワラ」である、と説明されていて、「ホンダワラ」ってなんだべ? っとなってしまいました。
ほんだわらを辞書で引くと、海藻、正月飾りに使ったとあるので、上古の時代にはおめでたい時の食べ物だったのかしらと思いました。
陸奥国の昆布は奈良時代から都に納められていたと記録されています。ただ、平安時代の初めまで陸奥国で叛乱が起きていましたので、昆布の上納は途絶えることがあったかも知れません。でも、こんな昔から都に昆布が運ばれていたので、関西は昆布だしが主なのかしらと、勝手な想像をしております。
昔と呼び名が違うと言えば朝顔もあります。今の小学生が植物の観察で種を蒔く朝顔、morning gloryは外来植物です。平安時代の初期に漢方薬の材料として輸入されました。なので、『万葉集』で歌われる朝顔は今の桔梗なのだそうです。で、いつ頃からmorning gloryは観賞用になったのでしょう。
子どもの頃読んだ『源氏物語』の解説書の「朝顔」の巻には槿の写真が載せられていました。でも、実際に「朝顔」の巻を読むと、「朝顔の、これかれにはひまつはれて」と出てくるので、槿ではなく、蔓草の描写です。紫式部の時代には、現代の朝顔と一致して、つとめての花として、鑑賞していたのでしょう。
参考 『奈良朝食生活の研究』関根真隆 吉川弘文館
『「食いもの」の神語り』木村紀子 角川選書
『古典植物辞典』松田修 講談社学術文庫
『源氏物語』 大塚ひかり訳 ちくま文庫




