灰かぶりは猫かぶりか
イタリアの説話集の『ペンタメローネ』の中に「灰かぶりの猫」という題のお話が出てきます。猫は出てこないです。『灰かぶり』の類話つうか、イタリア版つうか、中世的つうか、オチはそれでいいのかと言いたくなる部分があります。
まずお話冒頭から、ヒロインのゼゾッラは継母に悩まされています。そして家庭教師の女性に、「先生がお母さんだったら良かったのに」とこぼしていました。
家庭教師の女性はとんでもないことを提案します。
「お義母さんを殺してしまいなさい。喪が明ける頃、お父さんにわたしをお母さんに欲しいと結婚を勧めてみなさい」
と、継母の殺害方法まで伝授するのです。
ヨーロッパのおとぎ話によく出てくる、残酷シーン、大きな衣装箱を覗きこんだ時に蓋を閉めて首を折るやり方でヒロインは継母を殺害します。
ヒロインゼゾッラ何も考えていません。言われるままに、家庭教師を後妻に迎えて欲しいと父親にねだります。
そんなこと提案する女性が優しい継母になってくれるはずないのです。家庭教師は六人(!)もの娘を連れて家にやってきます。
バルコニーにゼゾッラがいると、妖精の鳩が「困ったことがあったら頼りなさい」と告げていきます。後はお決まりの通りのヒロインいびり、ゼゾッラは家事に使われ、名前も呼ばれず「灰かぶり猫」と呼ばれるようになりました。
仕事で旅に出た父親がゼゾッラから妖精によろしく伝えて欲しいと頼まれて、その通りに妖精に会いに行きます。妖精はナツメの木をプレゼントし、受け取ったゼゾッラはそのナツメの木を大事に育てます。
お祭の日に、連れ子の姉たちが着飾って出掛けていきます。ゼゾッラはナツメの木に頼みますと、妖精が出てきて、灰かぶり猫は美しいお姫様に変身。その姿はお祭に来ていた王様の目に留まります。王様は家来に命じて後を付けさせますが、ゼゾッラは金貨や宝石を投げ、尾行を撒きます。これが繰り返され、遂に三回目、尾行を振り切りますが、履物を落としてしまいました。
王様は祭の後の斎の日に娘たちを集め、片方だけの履物が合う女性を探します。磁石に吸い寄せられるように、履物はゼゾッラの足にぴったり。こうして、メデタシメデタシ。
おーい、ちょっと待ったあ!
ゼゾッラの継母殺害の罪はどうでもいいのかあ、とツッコミを入れたいです。
そして、そんな愚かさを持った娘にどうして妖精が肩入れしてやるんだろうと謎です。父親は娘を溺愛しているとはじめに語られながら、灰かぶり猫と呼ばれるまで落ちぶれて、自業自得としか言えません。助けてやるなら、一人目の継母の時に助けてやるべきじゃないのでしょうか。(グリムもペローも舞踏会まで待ってないで、さっさと助けてやんなさいと思います)
ゼゾッラの罪は後妻に納まった継母や継娘からのイビリで償われたとでもいうのでしょうか? 家庭教師がいくら苛めるからって弱味があるから逆らえないだけじゃないのかしら? 同じ手で排除はできませんからね。
王様も王様で、美しいからって、それだけで選んじゃっていいんでしょうか。もう少し性格をチェックすべきだと思います。
ここら辺が中世的とでもいうのでしょうか。




