赤の女王仮説ってなんだっけ?
唐突に「赤の女王仮説」という言葉を思い出し、確か生物学、進化論だかだっけ? とぱらぱらと生物学を紹介しながら、ユニークなトンデモ学説を展開している竹内久美子とその師匠の日高敏隆の師弟対談本に説明が出ていました。
ルイス・キャロルの『鏡の国アリス』で登場人物の赤の女王が「その場に留まりたければ、全力で走らなくてはならない」と言っていたのをもじって、生物間の生存競争が進化を促す仮説をいったものだそうです。
「生き残りたければ、子孫を残したければ、寄生する生物、捕食しようといる生物から身を守るように、進化し、適応していかなければならない」
説明にイマイチ自信がないですが、何故単純に子孫を残す為に効率の悪い有性生殖があるかの仮説の一つらしいです。自分のクローンを生むような単性生殖は効率が良いけれども、環境の変化、新しい病原菌など天敵の出現に対応するのには弱い。生き延びる為には遺伝子をmixさせて、子孫にバリエーションを付けていく方が万が一の時に子孫が少しでも生き残れるだろう。
どうもわたしは白の女王の言葉と勘違いしていたようでした。家に『不思議の国のアリス』も『鏡の国のアリス』もないので、『アリスの国の不思議なお料理』(ジョン・フィッシャー 開高道子訳 新潮文庫)を引っ張り出して、ぽつぽつと拾い読みしました。お料理のレシピとともに、その料理のヒントになった文章が載せられています。
アリスは「鏡の国」で赤の女王に手を引っ張られて猛ダッシュしたシーンがあったはず。ああ、ありました。『特製かた焼きビスケット』。そこで赤の女王は、「同じ場所に居たいなら、全力で走る」必要があると言っています。
アリスは走った所為で、暑くて喉が渇いたと申し上げると、赤の女王様はビスケットを与えて、「乾きは癒されたか」とのたまうのでした。
別の場面で、白の女王様はアリスに乱れた髪を整えてもらいながら、自分に仕えないかとのたまわれます。アリスは丁寧にお断りしますが、白の女王様は不思議なことをのたまわれます。給与として一日おきに与えられるジャムは、昨日食べたものか、明日もらえるかと夢見るもので、今日のものに決してならないものなのだと、『永遠にもらえないジャム』。
「後ろ向きに生きている」
アリスはこんがらがってしまいます。
読んでいる方もこんがらがってきます。ルイス・キャロルの造語であるかばん語についても小さな解説が付いていますが、それが主眼の本ではないので、英単語が解らないと楽しめないのかな、と不安になります。
お料理の本ですので、日本で使う単位に直してありますが、パウンドやパイントが元なので、分量が450グラム、570ミリリットルなどと表示してありますし、特に断りがない場合は四人分とありますが、日本人の胃袋では倍の人数ぶんくらいになりそうです。『疑似亀スープ』では、仔牛の頭1/2頭分、スープストック2300ミリリットルとあり、スープって鳥ガラや豚骨だけじゃないのね、と一瞬ビビります。
『鏡の国のアリス』の原題は、“THROUGH THE LOOKING-GLASS”。“looking-glass”は「正反対の」の意味があるそうで、その場に居るために全力で走る、後ろ向きに生きる、この世界とは違う趣なのでしょう。
非才の身にはナンノコトヤラさっぱり解りませんが。




