蔵王キツネ村に行ってきました 其の一
六月のある晴れた日、良人の発案で「蔵王キツネ村」に行くことになりました。長男は仕事の日、同居の姑は山奥に行くのはちょっと……、と言うので、良人とわたしと、何故か稲荷信仰の篤い二男と三人で。
良人は、ペーパードライバーの二男が運転を忘れないように二男を運転手にすると言い、車通りの少ない場所で慣らし運転をさせてから、出発しました。
勘はすぐに戻ったようですが、やはりスピードを出すのに勇気がいるのと、行先は山の中、カーブが多くてなかなか時間が掛かります。
「どうして蔵王町でなくて白石市にあるのに『蔵王キツネ村』っていうの?」
わたしの質問に、宮城県南出身の良人が答えました。
「白石の方は南蔵王というんだよ。だから蔵王っていっていいの」
「ほほう」
二男は運転集中。
数々の坂道とカーブを乗り越えて、なんとかかんとか目的地に到着しました。バックに自信がないというので、駐車は良人がしてました。
「ここは本当にキツネ村か?」
良人が声を上げました。入口には、どうしてなのかゴリラの大きな人形が諸手を上げて歓迎していました。諸手の更に上にはちゃんとキツネ村の看板が出ているので間違いはないです。
「さ、入口はこっち。行こう」
二男はゴリラの写真を撮っていました。
入口に入って、受付で大人三枚とチケットを買うと、「初めての方ですか」と尋ねられて、「はい」と答えると、注意するべき点を説明されました。
「狐に触らないこと。触りたい場合はふれあいコーナーがあるので、そこでスタッフ立ち合いの許で行うこと。狐に手を出すと、必ず嚙みます。
狐が群がってくることがあります。ズボンの裾を嚙んだり、引っ張ったりすることがあります。近付いてきたら、少し歩いてください。それで離れます。
物を落とさないでください。狐が拾って穴に埋めてしまいます。
餌を与えたい場合は、餌やり台として場所を設けていますので、そこで餌を買ってそこの場所だけで与えてください。
以上自己責任でお願いします」
簡単ですが、しっかりと注意されまして、中に入りました。
まずはCAGEに入れられた狐さんを見ました。丁度ふれあいコーナーの実演というか、そのお客さんが複数いたようで、専用の上着を着せられて説明を受けていました。わたしどもはモフモフ目当てではないので、どうするとか言いながら、ぐるりと回っていました。
様々な注意書きの看板が出ています。防疫体制はしっかりしていると消毒や、狐たちの検査内容など、ほかには五歳未満の子ども入れませんとか、お子さま連れの方はお子さまの手をしっかりつないでいてくださいとか。そして、近くに養豚場があり、その臭いが昇ってきます、狐が臭いのではありませんの看板がありました。そうかも知れないけれど、一応新陳代謝の激しい恒温動物、匂い付け(マーキング)で縄張りの主張、仲間の確認を行う哺乳類ですから、臭いがあって当然。それで逃げ出しゃしません。もしかしたら、狐たちにとって我々人間の方が臭いかも知れません。
檻に入っている狐たちは暑い日差しを避けて、日陰に寄って昼寝中。狩りの必要がなければそうだよね。
巣から落ちたのを保護したという烏が二羽いました。ふうん、野鳥を保護、飼育する場合は許可が必要と聞いていますが、そういう施設も兼ねているのかなぁ、烏だけど。(烏を差別するのではなく、烏まで保護するんだとの驚嘆です)
狐のほかにマーラという大きな鼠の一種や山羊、ミニホース、兎、モルモットがいました。
モルモットって意外と大きいんだなぁと眺めておりました。そして良人にこっそりと言いました。
「兎やモルモットはお客がいない時とかに、狐にぽーんと投げてやったりするのかなぁ」
「そりゃないんじゃないか」
「そうだろうか」
かなり失礼なことを考えつつ、檻に入れられた飼育コーナーを見終わり、今度は放し飼いコーナーに向かいます。
まだ続きます。




