一番麦汁は甘かった
去年の十月に『仙台うみの杜水族館』に行った帰り、近くのキリンビール工場のレストランで昼食を摂りました。そこでは黒ビールソフトがデザートメニューに載っていましたが、夫婦二人して水族館でソフトクリームを食べてしまっていたので、黒ビールソフトは今度機会があったら食べようと、涙を呑んで諦めたのでした。二個も三個もソフトクリームを平らげられるような年齢じゃなかったし、真夏でもなかったのですもの。
五月の連休中のある日、仙台港の近くのキリンビール工場の見学をしようと、唐突に決まりました。カレンダーとおりの休みの良人と、カレンダーとおりの休みではない社会人一年生の長男が同じ屋根の下にいて、お出掛け好きの良人は泊りがけの遠出ができないと退屈しておりました。仕事に出ている長男を放っておいて、残りの家族でキリンビール工場に出掛けました。
出掛けるのが昼近くになっていたので、まずキリンビール工場内のレストランで昼食を摂りました。しかし、この日は通常のランチメニューがお休みでした。一品ずつ頼んだら、かなりのボリュームになり、デザートに黒ビールソフトどころではなくなりました。
「そんなに頼んだつもりじゃなかったのに、お腹一杯」
泣けてくる気分です。でも牛肉のビール煮込みのナンタラカンタラソースは美味でした。
「ビール飲みながら、シェアするようなメニューだった」
と良人が呟いていました。ちなみに良人の食した堅焼きそばは好みの味ではなかったそうです。
お腹が苦しいと言いながら、今度は工場見学。工場内を歩くそうで、お腹がこなれそうです。
待ち時間の間に簡単な紹介ビデオを観ていました。見学の人数がそれほどでもなく、ゆるゆると見学開始です。
入口の所に、ホップが植えられていて、これから蔓を伸ばして緑のカーテンになるようでした。入っていって、ガラス越しに工場内の発酵タンクやら貯蔵タンクやらを眺め、お姉さんの説明を聞いていました。
大麦麦芽の選別や、発酵を経て、今度はそれをろ過していきます。その時の麦汁には一番搾りと二番絞がありますとの説明。麦汁を一回絞った後、お湯を加えて、残りをちゃんと搾り切るのが通常のやり方だそうです。
ビールの商品名にもなっている「一番搾り」どこが違うのでしょうと、一番搾り麦汁と二番搾り麦汁の飲み比べをさせてくれました。発酵前ですので、子どもや運転手、下戸が飲んでも大丈夫です。
「コップを二つお渡しします。まず二番搾りをお飲みになってから、一番搾りをお飲みください」
小さなプラスチックコップに一センチくらいの麦汁が注がれたものを渡されました。二番搾りは薄甘い汁でしたが、一番搾りはジュースのように甘いのでした。流石は水飴の原材料。
「この一番搾り麦汁のみを使用して発酵させたものが当社の一番搾りです」
確かに、この薄甘いだけのお湯を足して発酵させるより、糖分が濃いからまた味わいも違うだろうと説明そっちのけで感心したのでした。
発酵、ろ過、貯蔵と手順を聞き、後はビンや缶に詰めていく作業です。現在ビンビールは飲食店に卸す程度になっていますので、週に一回ラインを動かすのだそうです。後は缶が大部分で毎日缶に詰めています。缶の蓋を機械で留めていく工程なども実演してくれました。何故かそれで作った缶ビール貯金箱を姑が当ててしまい、自宅の台所に飾っています。
後は、見学終了で、試飲とお土産コーナーとなりました。良人は運転手ですので飲めません、姑は下戸、二男は二十歳に何か月か足りない未成年。わたしは投薬中で本来飲めないのですが、良人の代わりにというか、ビール程度のアルコール度数で昼なら翌日に影響ないだろうと、飲みました、一番搾り!
昼酒は美味い。
じゃなくて、一番搾り麦汁と二番搾りの違いを知ると尚更有難味が違います。ああ、美味しうございました。長男へのお土産にビールゼリー入りチョコを買って帰りました。




