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豆腐の角で怪我するぞ  作者: 惠美子
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ゴドーはどこにいるのか

『ゴドーを待ちながら』のお芝居を観たのは大分昔。宮城県の南部の大河原町の町営のホールだかでの公演で、串田和美と緒方拳の二人が主演。子どもを姑に頼んで良人と観にいきました。

 開場してホールに入るのに並んでいましたら、良人が、「上司がいる」と言いました。うわ、それはちょっとプライベートでは困るから、別の入口から入ろうと、ホールに入りました。しかし、舞台は真ん中に設定されており、その舞台を囲むようにぐるりと椅子が並べられているのでした。なんも考えずに座っていると、再び良人が囁きました。向かい側に上司が奥さんと座っていると。席は自由でしたが、今更見やすそうな場所の席を移動する気にならず、二人して顔を隠すようにしてパンフレットを読む振りをしていました。

 やっと開演時間になりました。

 二人のホームレスさん、串田和美と緒方拳が出てきて色々と遣り取りをしているのが楽しい。ただ、緒方拳が風邪気味らしくて、元気がないし、咳き込んで痰が絡んだようになって辛そうな様子でした。

 ラッキーとポッツォと呼ばれる妙な主従が絡んだりして、お話が迷走していきますが、日暮れ、緒方拳がどうすると相方に尋ねます。

 串田和美が、「ゴドーを待たなくては」と言います。

「なら仕方がない」

 そこへ男の子が現れます。

「ゴドーさんは来られません」

 二人は、ゴドーは来ないのか、と舞台にうずくまります。

 翌日なのか、数日後なのか、第二幕。

 また同じように二人の遣り取り。帽子、靴。外出時に男性は帽子を被るのが身だしなみの時代の、家の中でも靴を履く習慣の国の物語だから、これは人間の尊厳や世間体を表すのか、それとも読み過ぎなのか。ホームレスさんたちは身の周りの品をどうしようか、代わりにここに置きっぱなしの物を戴いちゃおうかと会話しています。

 再び現れるラッキーとポッツォ、しかし、前日二人に会ったのを覚えていないし、様子も違います。

 日暮れ、緒方拳がどうすると相方に尋ねます。

 串田和美は「ゴドーを待たなくては」と言います。

「なら仕方ない」

 そこへ前日の男の子が現れます。

「ゴドーさんは来られません」

「お前さんは昨日も来たね」

「いいえ、ここへ来るのは初めてです」

「嘘を吐くな!」

「わぁっ!」

 不思議な余韻を残して、お芝居は終わります。

 果たしてゴドーは何者で、なぜ二人はゴドーを待たなくてはならないのか、全く解りません。そして、ラッキーとポッツォの主従もどうして繰り返し現れるのかも解りません。

 ゴドーは現れない、それも夕方になってから来られないと伝言を持ってくる、不可解。不気味なのか、滑稽なのか。

 良人とは緒方拳が元気なさそうなのは演技なのか、本当に体調不良なのかとも言い合っていました。串田和美は初めて観た役者さんでしたが、舞台中心に活躍しているのかな、だから地方では知らないんだろうな、でも上手で面白い俳優さんだったとお互い感想を持ちました。

 後日、良人は書類の決裁について、内容を直接確認したいと、舞台で見掛けた上司どのに呼び出されました。今まであった(ためし)のないことです。上司夫妻はお芝居をよく観にいく方々なのでしょう。一幕目を観て帰っていました。普段ないことが起こる、これも不条理というものでしょう。

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