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【第一話】 炎のピスカ

「あれは……」


 キトラが目を凝らすと、乱舞する炎の中にオレンジ色の翼が見えた。

 翼を持った黒髪の女が炎を操り、空で踊っている。

 眩しさに目がくらみそうになりながら、キトラはその姿を確かめようと水の中でもがいた。

 一体、何が起きているのだろうか。


「うわ……っ!」


 キトラのすぐ脇で水しぶきが上がった。

 水面に浮かんできたのは火ぶくれになったアーガの死骸。

 鋭く尖った歯と紫色の歯茎とをむき出し、苦悶の表情を浮かべて果てていた。

 

 一体、アレは何なのだろう。

 あの翼は、恐らくピスカ族だ。

 ピスカには鳥の翼を持つ者がおり、訓練を積んだ者の飛行能力はかなり高くなる。

 だが、炎を操るなんて聞いたことがない。

 あれは何かの武器なのだろうか。

 そう思っていると、またアーガの咆哮が辺りに響いた。


「キィイイイイイイイ!」


 咆えたのは上空にいたひときわ大きな一頭だった。

 群れはその周囲に集まり、ざわざわと撤収を始めた。

 真っ黒い雲のような大群は形を変えながら遠ざかり、北の空に吸い込まれていく。

 そして、十分も経たないうちにアーガの群れは消え、辺りには死んだもの以外一頭もいなくなった。


「何なんだ……一体」


 キトラは水から上がり、靴を脱いだ。

 上空にいた女は炎を纏ったまま、麦刈りが済んだばかりの畑の上に降りた。

 オレンジ色の火炎が一度ボッ、と大きく燃え上がり、空気に溶ける様に消える。

 僅かに焦げ臭い匂いが風に乗ってキトラの鼻孔を擽った。

 幻などではない。

 確かに、あの炎がアーガの群れを焼いたのだ。


「ごめんなさい、乱暴して! 怪我はなかった?」


 女は翼をたたみ、キトラの方へ歩いてきた。

 着慣らされた白のタンクトップに緑のショートパンツ。

 健康的な小麦色の肌に、革製の茶色いサンダル。

 長い黒髪は腰まであり、目は翼と同じオレンジ色をしている。

 そして、左腕には幅の広い大きな銀色の腕輪がはめられ、陽光を反射して眩しく光っていた。


「ユピテル先生のお客さんでしょ? 違う?」

「え……あ、ああ」

「良かった、間に合って。歩ける?」


 女はキトラに近づき、濡れた上着を勝手に脱がした。

 そして、血で染まったキトラの服を見てうわー、と声を上げた。


「これはひどいわ。アーガ族の血は洗っても落ちないの。この服はもう洗濯してもダメね」

「あ、あの君は」

「ああ、ごめん。私はプラジアーナ。ユピテル先生の助手よ」


 ユピテル先生の助手、プラジアーナ。

 そう名乗った女はキトラをひとまず集落の中に案内した。

 家々はどこもみんなひどく荒らされていたが、唯一どの家からも離れている礼拝堂は無事だった。

 祭壇近くの床板を外すと、そこには非常用の食料や着替えなどの生活用品が蓄えてあった。

 プラジアーナは適当に選んで服を着ろとキトラに言った。


「多分、今回もここを使うことになると思うのよね。みんなを呼んでくるから、 とりあえず着替えて待っててくれる?」

「他の人はどこにいるの?」

「この地区の人はみんな向こうの山に避難してるの。だから全員無事よ」

 

 オレンジ色の翼を広げ、プラジアーナは礼拝堂の扉を開けて飛び立っていった。

 キトラは服の中から動きやすそうなものを選んだ。

 深緑色のベストとカーゴパンツ。

 これらはどうやら作業着のようだった。


「ああ、そうだ荷物……」

 

 アーガ族を見て飛び出してしまったため、持ってきたものはみんなほったらかしになってしまっている。

 キトラは礼拝堂の場所を覚え、舗装されていない土の細道を下った。

 集落の入り口に降りると、荷物はキトラが放り出したときのままそこにあった。

 麦畑に落としたブッシュナイフもそのままになっており、ゴブリンの血が乾いてこびりついていた。

 

 これはもう、当分使いたくない。

 キトラはナイフをため池の水で洗い、丁寧に磨いてからまたあの鍵つきの箱にしまった。

 礼拝堂に戻ると、避難していた地域の人たちが既に集まっていた。

 彼らにおびえた様子はなく、互いに声を掛け合いながら荒らされた住宅の修繕や非常用の食料の分配をする作業を始めている。

 キトラがプラジアーナの姿を探していると、荷物を運んでいた男が声をかけてきた。


「お前さんかい、先生のお客ってのは」

「あ、はい。この度はこのような事になってしまって……」

「いやいや。もう三度目だから慣れたもんさ」

「さ、三度目って」

「参っちまうよなぁ。とりあえず、先生向こうにいるから会ってこいよ」


 男はキトラを連れて建物の裏へ回った。

 そこには人だかりができており、大きな穴の中で火が燃えていた。

 何をしているのかと聞くと、これからアーガの死骸を焼くのだと言った。


「前回はでかい穴掘って埋めたんだがな。それだと動物が荒らすし、匂いを嗅ぎ つけてまた別の奴らが来ちまうみたいなんだ」

「三度目って言ってましたけど、ここにはそんなに頻繁に奴らが?」

「まぁな。ああ、先生いたぜ」

 

 ユピテルと言う男は焚火の傍に座り、若者たちに指示して木をくべさせていた。

 その顔を見て、キトラはハッとなった。

 

 彼の黒い肌や体つき、そしてその顔。

 さっき自分が戦い、襲われたあのアーガ族達に極めてよく似ていた。

 いや、アーガ族そのものだった。


「先生、お客を案内して来たぜ」

「おお。無事だったか」

「あ、あの……」

「すまないな、いきなりこんな事になってしまって」

 

 火の中で焼かれようとしている真っ黒な死体。

 その一つが起き上がって、キトラに声をかける。

 そんな光景だった。

 キトラは思わず引きつった。

 だが、周囲の者たちは平然としている。

 どういうことなのだろうか。


「ああ、大丈夫だ。私はこの集落の人間だよ」


 訳が分からなくなっているキトラを見て、ユピテルはそう言った。


「父親がアーガ族、母親が君と同じルーデンス。ハーフなんだよ、私は」

「失礼しました、驚いてしまって。初めまして……キトラ・センバです」

「ヴト・ユピテルだ。ミス・ウェフリーから聞いていなかったようだな。まった く、一言言っておいてくれればよいものを」


 ユピテルは喉に何かが引っかかったようなごろごろとした声でそう言った。

 鋭い眼差し、グローブのような手、山のような大きな黒い身体、そして、牡牛のような鋭い二本の角。

 その背中には集落を襲ったアーガ族のような翼はない。

 しかし、それ以外はさっきの怪物となんら変わらない姿である。

 キトラは正直言ってユピテルが怖かった。

 だが、村人は普通に彼に接している。

 きっと、悪い人物ではないのだろう。

 キトラは「家に案内する」というユピテルの後について集落の奥へ入っていった。


「あの、ミスター・ユピテル、さっきの助手の女の子は……?」

「プラジアには集落の周りを見に行かせた。まだ残党が残っているかもしれない からな」

「さっきの人も言ってたんですが、ああいう事はよくあるんですか?」

「一昨年の暮れから……もう三度目だな」

 

 キトラは前を歩くユピテルの立派な二本の角を見ながら歩いた。

 背には頭部から続く真っ黒なたてがみ。

 服の隙間から、首元から背にかけてみみず腫れのようなものがあるのが見えた。

 これはピスカ族によくある翼を落とした跡だった。


 ピスカには、翼のある者と無い者がいる。

 生まれたときには皆一様に翼をもっている。

 だが、最近では手術で翼を落としてしまう者が多いのだ。

 今は昔と違って便利な交通手段があり、翼がなくとも生活に困らない。

 だから自分の翼を使わなくてもいいではないか。

 都会に行けばいくほどそんな考えのピスカ族が多く、「翼がある=田舎者」とみる傾向すらある。


 ルーデンスのキトラから見れば、それはかなりもったいないように思えた。

 翼を鍛えれば自分で自由に空を飛ぶことができ、また翼を広げて立つその姿にも他の種族にはない美しさがある。

 だが、翼は毎日手入れしなければならず、また飛ばずにたたんだままにしておくと病気になることも多いのだという。

 なかには、「一生のうち四分の一は翼の手入れで終わってしまう」などと大げさに言う者もいるくらいだ。


 だからキトラが大学で知り合ったピスカの多くは翼がなかった。

 彼ら曰く、翼を落とすのはピアスの穴を開ける程度の事、という話だった。

 アーガの翼事情はよく分からないが、ユピテルもそんな風に翼を落とした一人なのだろうか。

 キトラがそんな風に思っていると、道の向こうに小さな家が見えてきた。


「良かった。ウチは何もされてないな」

「先生のお宅ですか?」

「まぁな。自宅兼事務所といったところだ」


 中に入ると、中はきれいに片付いていて、リンの研究室と同じツンとした紙のにおいが漂ってきた。

 ユピテルは春に摘んだ小麦の若芽とスパイスや干し果物を一緒に煮出し、スッキリした甘いお茶を煎れてくれた。


「ここまでは船で来たのか?」

「いえ、歩いてきました」

「何だと? 一人でか?」

「ええ。結構ヤバかったんですけどね」


 灼熱地獄を何時間も一人で歩き、迷子になり、熱中症になりかけ……。

 キトラが死ぬかもしれないと思ったと話すと、ユピテルはそれはそうだと言って笑った。

 今は一年で最も熱くなる時期。

 ただでさえ暑い砂漠を一人で歩いてくるなど現地人でもしない。

 この赤の砂漠では「砂船」と呼ばれる動物に乗り物に乗って移動するのが普通。

 たとえ短い距離であっても、砂漠を徒歩で行くのは自殺行為なのだ。


「何でそんな無謀な真似をするかな。ミス・ウェフリーが旅費をケチったの   か?」

「いえ。何かあった時にと思って、できるだけ使わずに残したかったんです」

「バカだな。何かあってからでは遅いだろう。砂漠で野垂れ死にでもしたら、家 族を泣かせることになるぞ」

「ところで……預かってきた資料なんですが」

「ああ、そうだったな」

 

 リンから渡された資料はマイクロチップの中に入っていた。

 ユピテルは天袋を開け、久しく使っていなそうな古い端末を引っ張り出した。

 表面をユピテルの分厚い手が撫でると埃が雪のように舞い、テーブルの上に降り積もった。

 恐らく、数年は使わずに放ってあったのだろう。

 使い方を忘れてしまった様な様子で、ユピテルは端末を傾けたりひっくり返したりしていた。


「さて、電源はどこだったかな」

「先生、これはいつのものですか?」

「十……いや、二十年くらい前に大学の恩師からもらったものだな」


 動くのだろうか。

 キトラは少し心配になったが、端末は何とか無事に起動し、データの表示画面が立ち上がった。

 リンから預かった資料の中身を見るのはキトラもこれが初めてだった。

 どうやら論文として書き上げる前のメモらしい。

 だがその内容は、リンが研究室で扱っている人類学に関するものではなかった。


「これ、遺跡の調査資料ですか?」

「ああ。北の方のだね」

「ウェフリー先生がこんなに詳細な考古学の内容を扱っているのは初めて見ました」

「まぁ、これは私がやってる研究だからね。ミス・ウェフリーにとっては内職みたいなもんだ」


 資料には何枚もの画像が添付されていた。

 その多くは遺跡から出土した人骨で、それぞれに番号がつけられていた。

 キトラは以前、リンに言われて考古学の講義も受けていた。

 人類学では人類の進化についての内容を扱うため、考古学的な内容も頭に入れておかねばならないのだ。

 そのため、ユピテルが扱っている内容についても少しはついていくことができた。


「この集落には最も古い時代で一万五千年くらい前の遺跡が出ている。だいた 

 い、南州で国家による大農園の経営が始まるか始まらないかの頃かな」

「中央で『帝国』が確立した頃ですね」

「その通り。私はここでね、それより以前の遺跡が出ないか調査をしているんだ」

「古代帝国期以前の遺跡っていうことですね」

「今はだいたい、一万八千年前くらいの地層を掘っている。今のところまだ何にも出ないんだけどね」


 ユピテルによれば、人が生活した痕跡を残した遺跡の中で最古のものは二万五千年前くらいだという。

 それ以前のものは存在するだろうとはいわれているものの、未だ誰も発見しておらず、未確認のままなのだ。

 もしそのまだ見つかっていない遺跡があるとすれば、恐らくはこのハシダテ集落周辺で発見できるに違いない。

 ユピテルはそう確信し、八年ほど前からここに住んでいるとのことだった。


「だがまぁ、ここ三年くらいは成果らしい成果がないね。今回の発掘で何も出な ければ、私はこの集落を出ようと思っている」

「調査をおやめになるのですか?」

「私にはちゃんとした『パトロン』がいないからね。研究資金もそろそろ限界……潮時って事だな」

 

 大学の教授であるリンには大学から研究資金が提供されており、研究室の運営はそれで成り立っている。

 だが、ユピテルは全くの個人で研究を行っている学者であり、それにかかる費用は全て自費だ。

 今までは貯金を切り崩したり、近くの学校で非常勤教師を務めるなどして研究費を工面してきたという。

 

 だが、いつまでも成果が上がらなければ限界もくる。

 ユピテルは今回の発掘を最後にこの地での研究を諦めようと考えていた。


「昔はミス・ウェフリーと一緒に帝都大で教えていたんだよ」

「そうだったんですか」

「ここを出たら彼女に口を聞いてもらって大学に戻れればと思っているが……今 は学生が減っているから難しいかもしれないねぇ」

 

 キトラがユピテルと話をしていると、見回りに出ていたプラジアーナが戻ってきた。

 その手にはたくさんの新鮮な野菜と、さっき礼拝堂の中で見た非常用の食料。

 集落の者たちに言われ、三人分を確保して来たとのことだった。


「先生、おばあちゃんたちが先生のお茶が欲しいっていうの。貰っていいかし  ら?」

「ああ、全部持ってって配って構わないよ」

「この缶?」

「ああ、それと奥のもだな」

 

 ユピテルに言われ、プラジアーナが持っていこうとしていたのは一つ十キロはありそうな四角い大きな缶だった。

 女の子一人に持っていかせるにはあまりにも無謀な量。

 キトラは慌てて手伝いを申し出た。


「オレも一緒に行きます」

「ハハ、プラジアは力持ちだから大丈夫だぞ」

「いえ、でも手伝いますから」

 

 キトラはプラジアーナが持とうとしていた二つの缶を担ぎ上げた。

 子供一人分くらいの重さ。普通の女子には大変な重量だった。


「私、これくらい大丈夫なのに」

「女の子がそんなこと言っちゃだめだよ。どこまで?」

「ありがとう、キトラさん。じゃあ、さっきの礼拝堂までお願い」

「えーっと、この先の道を左で……」

「案内するわ。ついて来て」


 プラジアーナはキトラに合わせ、でこぼこ道をゆっくり歩いて案内してくれた。

 彼女の翼はよく手入れされ、濃いオレンジがつやつやと美しかった。

 近くで見ると、プラジアーナは細身に見えて、かなり筋肉質な体形をしているのが分かった。


 プラジアーナはいわゆる「バードタイプ」と呼ばれる鳥の翼を持ったピスカだ。

 バードタイプはあらゆるピスカ族の中で最も飛ぶのが得意とされ、身長よりやや長いくらいの翼にびっしりと羽毛が生えている。

 翼を支える骨格は肩甲骨のやや上から分岐し、そこに翼を動かすための「運翼筋」というピスカ独特の筋肉がつく。

 運翼筋は胸襟へと繋がっており、この二つの筋肉を鍛える事でピスカ族はより力強く飛ぶことができるのだ。


 キトラは自分を助けてくれたプラジアの姿を思い出しながら、ノースリーブから見え隠れする彼女の背中をついじっくりと見てしまった。

 無駄な贅肉など一切ない、引き締まった背中だった。


「ねぇ、キトラさん」

「あ、キトラでいいよ」

「じゃあ、キトラね。さっき、ユピテル先生と何の話してたの?」


 プラジアーナはトン、と跳ねるようにして振り返り、キトラの方を見た。

 キトラはユピテルが今回の発掘成果次第ではここを離れるかもしれないと言っていたことを伝えた。

 すると、プラジアーナは「やっぱり」と言ってため息をついた。


「最近、先生がずっと悩んでたからそうじゃないかと思ってたの。探してるもの がずっと見つかってないから」

「帝国期以前の遺跡、だったかな」

「それもそうなんだけど、先生にはもっと具体的に見つけたいものがあるのよ」

「見つけたいもの?」

「私たち人間の、元になった生き物の骨よ」

 

 今日までの研究で、今生きている様々な種族の人々はもとは同じ生き物だったと言われている。

 一番原種に近いと言われる「クォール」の祖先から分かれ、生息地に合わせて様々に進化したというのが定説なのだ。

 しかし、ユピテルはその説を支持していないとプラジアーナは言った。

 クォールと他の種族では骨格やその他、身体の造りに違いがありすぎるため、そこから種族が分かれて進化したと考えるには無理があるというのだ。


「特に、クォールとセピア……この二つの種族では接点がなさすぎるの。だから 先生は、少なくともこの二つは別の生き物から進化したんじゃないかって考え てるわ」

「大胆な仮説だね」

「うん。だから、まだ先生はこの考えを誰にも言ってないの。あなたの先生以外 にはね」

 

 話をしているうちに礼拝堂についた。

 プラジアーナは持ってきた荷物を集落の女たちに預けると、そのままキトラを発掘現場まで案内した。

 そこはキトラがゴブリン達に襲われた畑のすぐ北側。

 最近まで放置されていた廃屋を取り壊し、その下を発掘しているということだった。


「ここは、だいたい一万年前の遺跡よ。でも、この下の地層には何にもないらし いの。山火事で焼けた森林の痕跡が出ただけ」

「ユピテル先生は、ここを掘ったら終わりにするつもりなのかな」

「集落の中はけっこう調査が済んでるし……多分、そのつもりだと思う」

「プラジアって、元々この辺の人なの?」

「うん。ユピテル先生と知り合ったのは、私が十歳の頃。その頃から発掘を手伝 い始めて、気が付いたら助手になってた感じね」

 

 プラジアーナは四年前に亡くなった集落の長の娘だという。

 父親が亡くなってからはずっと一人暮らしで、村の子供たちに読み書きを教えながらユピテルの手伝いをしているとの事だ。

 助手としての仕事はほぼボランティアなため、ユピテルがいなくなっても金銭的に困ることはない。

 だが、十年近く一緒に過ごしてきた彼をプラジアは父親のように慕っていた。


「先生には私も一緒に連れてって欲しいって言ってるんだけど、ダメだっていう のよね」

「どうして?」

「最近起きてるアーガ族の襲撃は……もしかしたら自分のせいじゃないかって先生は 気にしてるの」


 ユピテルはキトラに、自分はアーガとルーデンスのハーフだと話していた。

 だが、その容姿はほとんどアーガ族そのものだ。

 アーガは匂いに敏感で、自分たちと同じ匂いを持つ者に引き寄せられる習性がある。

 だから、もしかしたら自分がいるせいでハシダテ集落にアーガ族の群れが興味を持ってしまうのではないか。

 プラジアーナ曰く、ユピテルはそんな事を考えているようだった。


「自分について来ればアーガ族に襲われる。だから、お前はついてくるな、っ  て。そう言うの」

「そんな事、あるのかな?」

「私も他の人たちもそんな事は思ってないんだけどね。先生の考えすぎなのよ」

 

 ユピテルのように他の種族に交じって生きているハーフのアーガ族は確かに珍しい。

 だが、そのせいでほかのアーガ族が襲ってくるなどあまりにも迷信めいた話だった。

 地域の他の住民がそう言いだすならまだしも、本人が気にするのは大げさすぎる。

 キトラがそう言うと、プラジアーナは頷いた。


「先生が原因な訳がないわよね。学者の癖に迷信じみたこと言って、先生らしく ないわ」

「ゴブリンと何の接点もない地域も襲撃されてるんだし、関係ないよ」

「そうよね。私もみんなも何度もそう言ってるんだけどな」

「あ、そういえばお礼を言ってなくてごめん。助けてくれて、ありがとう」

「えっ、ああ、どういたしまして」


 急に話を変えたキトラに、プラジアーナはちょっと驚いた顔をして見せた。

 だが、これ以上ユピテルの話を続ければどんどん雰囲気が重くなりそうだった。

 キトラは構わずに話を続けた。


「すごい戦いだったね。あの炎、どうやってるの?」

「えっと……あれは……」

「あ、もしかして君もこっそり何か爆薬とか使ってる人なのかな? だったら言 わないから気にしなくていいよ。オレのナイフも、バレれば軍に連行されるや つだし」

「違うの。あれは、武器とかじゃなくて私の『能力』なの」

「えっ?」

「説明するのは難しいんだけど、火薬とかは一切使ってないわ」

「どういうこと? 超能力とか?」

「うーん、どう言ったらいいか……。ちょっとやって見せるわ。そこにいて」

 

 プラジアは、少し離れて立っていて欲しいとキトラに言った。

 傍には発掘の際に解体された廃墟のゴミがまだ山になって残っていた。

 一体何をする気なのかとキトラが見ていると、プラジアーナはゴミの山に向かって手をかざした。

 すると、一瞬にして炎が出現し、うず高く積まれた木材や屋根材のアシなどがゴォッと燃え上がった。


「なっ……!」

 

 キトラには、プラジアーナが何をしたのか全く分からなかった。

 廃材はあっという間に燃え尽き、やがて真っ黒な炭になった。

 ポカンとするキトラを見て、プラジアーナはクスッと笑った。


「どう? すごい?」

「どうって……いや、何なのこれ」

「私にもよく分からないんだけど、小さい頃に『気功』を始めたらなぜかこれが できるようになっちゃったのよ」

「キコウって、あの瞑想したり体操したりするアレ?」

「うん。よく、おじいちゃんおばあちゃんがやってたりするあの健康法的なやつ よ」

 

 小さい頃、プラジアーナは身体が弱かったという。

 今と違って翼も弱弱しく、飛ぶことなどできなかった。

 そこで、父親はプラジアーナが健康になるように気功を教えた。

 物体が持つエネルギーをコントロールし、主に健康を維持・コントロールする目的で行われる気功。

 心身をリラックスさせ、体調を整えていくことが当初の目的だったという。

だが、プラジアーナが気功を続けた結果、思わぬ事態が発生した。

 気功法を行う彼女の体が、しばしば炎を帯びた気を発生させるようになったのだ。


「私が目を閉じて瞑想をしてるところにお父さんが真っ青になって飛び込んでき て、何かと思ったら全身が炎に包まれてたのよ。驚いたわ」

「うん……そりゃ驚くよね」

「気功の先生に見てもらったら、私は生まれつき『気』のエネルギーがものすご く強いんですって。だから少しずつコントロールして、今はけっこう自分の思 うとおりに炎を操れるようになったってわけ」

 

 キトラは気功について詳しくはない。

 だが、常識的に考えて「気のエネルギーがものすごく強い」からと言ってそう簡単に炎が手から出るようになったりするだろうか。

 少なくとも、キトラの知り合いでそんな特殊能力を開花させた人間はいない。

 なんだか、キトラにはプラジアーナが人知を超えた得体のしれない存在に思えてならなかった。


「だ、だけど、すごいよね。あんな数のアーガ族に襲われたら、普通怖くて何も できないのに」

「私も最初は怖かったわ。でも、アーガの襲撃に唯一対抗できるのって炎だけだ から、私が戦うしかないの」

 

 プラジアーナの炎は強力だ。

 だが、それがあったとしても、一人であの大群と戦うのが怖くないはずがない。

 彼らは完全武装した帝国軍を相手に素手で立ち向かう者たちである。

 キトラが見ていた限り、アーガ族は燃え盛るプラジアーナの炎を見ても恐れることなく彼女に襲いかかっていた。

 最終的に撤収をかけたのはリーダーとみられる一頭の号令。

 何十頭ものアーガが負傷し、もう勝ち目がないと判断してからようやく逃げたようだった。

 

 ハシダテ地区は今まで三回アーガ族の襲撃に遭ったという。

 そして、その襲撃の度にアーガ族は狂暴性を増しているのだ。


「最初は数も少なかったし、プラジアの炎をちらっと見せるだけで追い払えたん だ」

 

 夕食時、ユピテルはそんな事を言った。

 食事は礼拝堂で配られた食料を使い、プラジアが作ってくれた。

 トマトやナスなどの夏野菜がたっぷり入ったカレーのような煮込みと竈で簡単に焼いたパン。

 そして、メインは炭火で炙った大きな川魚だった。


「周辺の地区が順番に襲われて、みんなで警戒していたら夜中に来られた。け 

 ど、次からは昼に来るようになっちまった。奴らの数も倍になってな」


 ユピテルは眉間に皺を寄せ、苦々しい口調で語った。

 二回目の奇襲では犠牲者も出た。

 そのため、ハシダテ集落の長は近隣の集落の長たちと話し合い、対策を練った。

 そして話し合いの結果、アーガ族に対抗できるのはやはり軍隊ではないかという結論に達した。

 

 ハシダテ集落は帝国の中で「南州」という地域に属し、州王<しゅうおう>の統治下に置かれている。

 南州政府は地域住民の訴えを受け、王命で南州軍をアーガ族対策に当てる事を決定した。

 だが、ハシダテ集落は砂漠の真ん中にあるため軍もそう簡単には来られない。

 軍は集落に、「救援が来るまでは住民全員が安全な場所に避難してやり過ごすように」と通知を送ってきた。


「だから、今回は全員シェルターに隠れた。プラジアにはセンバ君が来るのを見

張ってもらっていたんだがな」

「そっか……何か悪かったね」

「いいのよ。キトラに無事にここまで来てもらえてよかったわ」

 

若い娘のプラジアーナに集落を守らせるなど、キトラにとっては申し訳なくなってしまう事だった。

 ユピテルもプラジアーナも何だか「さも当然」という顔をしているし、あれだけの戦闘力があれば問題ないのかもしれない。

 だが、もしリンがこの事を聞けば「女の子に危ない事をやらせるなんて!」と目を吊り上げそうだとキトラは思った。

 こうやって食卓を囲んでいる時のプラジアは、キトラの大学にいる普通の女子となんら変わらない、年頃の若い娘さんなのだ。

 そんな彼女が興味を持ったのは、自分の「先生」であるユピテルとリンとの関係についてだった。


「ところでユピテル先生、キトラの先生とはどんな関係なの?」

「どんな関係ってなんだ」

「大学の頃のお知り合いとか、幼馴染とか」

「うーん。そうだな」


 プラジアーナの質問に、ユピテルは答えづらそうな顔をした。

 彼女は明らかに恋愛がらみの何某かを期待している様子だ。

 だが、ユピテルはそんな話を軽々にするような人間ではないらしい。

 あくまで無難に。

 そんな感じで言葉を選んだ。


「知り合ったのは大学のときだ。同じ学部で、向こうから声をかけてきた」

「ウェフリー先生から?」

「ああ。当時私はスカーフで顔を隠して誰とも話さないようにして、他の学生と

の接触は避けていたんだがな」


 当時のリンはミス・キャンパスのオファーが来るほどの美女で、かなり目立つ存在だった。

 陽に透ける銀髪。

 アメジストの輝きを秘めた紫の瞳。

 その神秘的な美しさは、見る者を惹きつけた。

 ただし、それはリンが「黙って大人しくしている時」に限った事だった。


「あいつは一言で言えば『変態』だ」


 ユピテルはためらいもなく言った。


「いい意味でも悪い意味でもな」


 その頃の彼女は今以上の相当な変わり者で、周囲の輪からはみ出しているようなタイプの学生ばかり選んで付き合っていた。

 そんなリンに目をつけられたユピテルは、毎日彼女に付きまとわれるようになった。


「来ないでくれ」「構わないでくれ」というユピテルの後を追い回し、リンはしつこく「友達になれ」「顔を見せろ」と迫った。

 そのため、ついに頭にきたユピテルは大学の裏庭にリンを呼び出し、自分の正体を明かしてやった。


 誰もが恐れるアーガ族の姿。

 ユピテルはリンが悲鳴を上げて逃げていくことを期待した。

 ところが。


「センバ君、彼女は何て言ったと思う?」

「……大喜びしたんですね」

「その通りだ。私は呆れてしまったよ」


 リンはユピテルの姿を見て目を輝かせた。

 あなたほどのユニークな人はいない。

 あなたこそ私が求めていた理想のキャンパスメイトだ、と。

 まるで珍獣を発見したかのような態度に、ユピテルは若干腹が立ちもした。

 だが、リンと共に過ごすうち、次第に自分が変わっていくのをユピテルは感じた。

 そして、少しずつ自分を外に出していくことができるようになったのだ。


「ミス・ウェフリーが変わり者だったおかげだな。だんだん、私の方がマシなん

じゃないかと思い始めてね」


 同じ大学の友人たちや教授を交えた飲み会があった際、ユピテルは初めてリン以外の者たちに自分の素顔を明かした。

 酔った勢いでの行動だった。

 その場にいた者たちは一瞬酔いが醒めたような顔をした。

 だが、すぐに納得したような顔になった。


「大学に入った時からミス・ウェフリーが私をあれだけしつこく追い回していた

理由がようやく分かった、とみんなで大笑いだよ」


 その事をきっかけに、ユピテルはスカーフをせずに大学内を歩けるようになった。

 当然、「何でアーガ族がいるんだ」とやかましく騒ぎたがる者もいた。

だが、リンや周りの仲間たちはユピテルの居場所を守った。

 そして、気づけばユピテルはリンと一緒に学者への道を歩み始めていた。


「全ては彼女の変わり者っぷりのおかげさ。私はミス・ウェフリーに救われた。

そして、今もな」


 リンの事を話すユピテルの目は優しく、その言葉には何か特別な想いが感じられた。

 プラジアーナは案の定、ユピテルとリンが恋仲なのではないかと言い出した。

 ユピテルはのらりくらりとかわしてしまって深く語らず、最後は酒を飲んで寝てしまった。

だが、なんとなく二人が「そういう」関係なのではないか、という事に関してはプラジアーナは確信を得たようだ。

夕食の片づけをしながらずっとその話をしていた。


「キトラは、ウェフリー教授からそういうお話は聞いてないの?」

「いやぁ……先生は研究が恋人みたいなものだと思ってたから。確かに、美人だ

からモテるのは確かみたいだけど」

「ユピテル先生も普段は発掘、発掘で女の人になんか見向きもしないのよ。きっ

と、そういう二人は気が合うと思うわ」


 知り合いを勝手にカップリングしたがる。

 これは、年頃の女子にありがちな事だ。

 アーガとの戦いでは人間離れして見えた。

だがやはり、プラジアーナは普通の女の子と変わらないのだ。

 キトラはいっぱいになったゴミバケツを片づけようとしていたプラジアーナの脇からそっと手を差し伸べた。


「重いのはオレがやるよ。プラジアは洗い物お願い」

「あ、ありがとう。でも、大丈夫よ、私力持ちだし」

「女の子にばっかり力仕事させると、いつもウェフリー先生に怒られるんだ。空

気が読めない男は出世できない、って」

「キトラも、教授とか学者を目指してるの?」

「もちろん。そのために、ウェフリー先生の研究室に入ったんだ」


 キトラには学者になるという夢があった。

 人類学者になり、この世界に存在する「人間」についての謎を解明したいと思っていた。

 現在、世界には「ヒト」とみなされる四種族がいる。

そして、それに準ずる、もしくは近いとされる「類人種」も何種類も存在する。

 しかし、それぞれの種族がいつどこで生まれ、どのように進化して来たかについては今現在まだよく分かっていない部分が多い。

 キトラはその謎を解き明かすことを生涯のテーマにしたいと考えているのだ。


「オレみたいなルーデンスも、プラジア達ピスカ族も、何から進化して、どうや

ってヒトになったのかまだよく分かってないんだ。仮説はやまほどあるんだけど

ね」

「ユピテル先生がやってる研究にも、何か似てるかも」

「そうだね。人類が進化してきた証拠は、遺跡を発掘したり化石を探したりしな

いと分からないから」


 プラジアーナにそんな説明をしながら、キトラはリンが自分をここに来させた理由が本当はその事にあるのではないかと思った。

 もしかしたら、データを届けるのは口実で、キトラをユピテルに会わせたかったのではないか……と。


「プラジアも、ユピテル先生の研究に興味があって助手をやってるの?」

「うーん、半分半分かな」

「半分半分?」

「私いつか、この集落を出たいと思ってるの」


 ハシダテ集落には、一生集落や赤い砂漠の外に出ず、一生を終える者が多い。

 集落の住民はそうやって何世代も暮らしてきたし、それで十分幸せだと思っている者も多い。

 だが、プラジアーナはいずれ生まれ育ったこの場所を出て、世界を見て見たいと考えていた。


「先生はここに来る前、いろんな場所を回っていたの。だから、ついていけばそ

うやって、私の知らない地域に行けると思って」

「そっか」

「亡くなったお父さんにも先生にも、私はここにいるべきだって言われたんだけ

どね。アーガ族の襲撃がこれからもあるかもしれないし、私がいなくなったら困

る人が多いからって」


 この集落はプラジアーナに守られている。

 彼女の戦闘力は、軍が保有する戦車や巨大なミサイルにも匹敵するだろう。

 プラジアーナはハシダテ集落の守り神と言ってもいいかもしれない。

 だが、その事がプラジアをこの集落に縛り付けているともいえた。


 田舎に住む多くの若者は都会に出ていくことを希望する。

 プラジアーナが自分の知らない世界に興味を持ち、見たい、知りたいと思うのは当然のことなのだ。

 自分もかつてそんな若者の一人だったキトラには、プラジアーナの気持ちがよく分かった。


「アーガ族が何でいろんな場所を襲うようになったのか、それが分かれば問題も 解決するよ。そしたら一度、ここから出てみるといいよ。ユピテル先生関係な くさ」

「えっ」

「とりあえず、帝都においでよ。オレも、研究室の仲間も歓迎する。気さくな連 中だから、女子の誰かが家に泊めてくれるし」

「でも……」

「大丈夫だよ。君はこれからいろんなことを知る権利がある。オレはそれを応援 したいな」

「……ありがとう」


 プラジアーナははにかむように笑った。

 もしかしたら、今まで自分の気持ちを応援してくれる人に出会った事がなかったのかもしれない。

 だったらオレが最初の一人になってやろう。

 キトラはそんな風に思った。


「あっ!」


 食事の片づけを終えると、プラジアーナは何かを思い出したような声を上げた。

 時計は十時を過ぎていた。

 プラジアーナは前掛けを洗濯かごに突っ込むと、キトラに家の外に出ようと言った。


「外からのお客さんなのに、すっかり忘れてたわ。見せたいものがあるの!」

「見せたいもの?」

「ついて来て!」

 

 プラジアーナは竈の傍に落ちていた棒切れを手に取ると、松明代わりに火をつけた。

 そして外に出ると、集落の高台に向かって早足で登り始めた。

 ユピテルの家の周りは木が茂っていて真っ暗だった。

 だが、視界が開けて来るにつれ、キトラは砂漠の方が妙に明るいのに気づいた。

 

 夕焼けのような紅く霞んだ光。

 砂漠が見渡せる高さまで上ると、そこには驚くべき光景が広がっていた。


「うわっ……!」

「すごいでしょう? 『月蜃気楼』よ」

「信じられない……」

 

 何もないはずの夜の砂漠。

 そこに浮かび上がっていたのは、遠い都会の街だった。

 陽炎に霞む眠らない街。

 サーチライトが夜空を走り、夜行の天空船が闇夜を泳ぐクジラのように横切って行く。

 ゆっくりと回る巨大な輪は遊園地の観覧車か。

 高層の摩天楼には企業の広告が踊り、音こそ聞こえないものの、にぎわう街の喧騒がはっきりと伝わってきた。

 

 この「月蜃気楼」という自然現象について、キトラも話には聞いていた。

 月の光を赤の砂漠の砂反射し、屈折させることによって遠い町が浮かび上がって見えるという、この地方独特の現象だ。

 だが、北国のオーロラ以上に珍しい現象で、現地の人間でも年に数回しか見られないらしい。

 キトラもどうせダメだろうと思い、何も期待せずに来たのだ。

 しかし、砂漠は今、昼間以上に輝きを放ち、キトラの目の前にあった。

 あまりの事に言葉も出ないキトラを見て、プラジアーナがクスクスと笑った。


「驚いた? ここに住んでる人は子供の頃から何度も見てるから珍しくないけ  ど、お客さんが来たら見ないで帰らせるわけにはいかないわよね」

「すごいや。昼間の事があって散々だったけど、これで帳消しだよ。ありがと  う、プラジア」

「うふふ。それはよかった」

 

 嬉しそうに笑うプラジアーナの横顔。

 この少女とあの荒々しい炎の使い手が同一人物なのだ。

 屈託のない素直な笑顔と、強敵を前に一瞬たりとも怯むことのない戦神の相……。

 どちらが本当の彼女なのだろう。

 もっとプラジアーナの事を知りたい。

 キトラはこの時プラジアーナのこの不思議な魅力に惹かれ始めていた。


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