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【第十五話】 アーガの集落へ


「うおっ! 何だあいつは!」

「バウアー、大声出したら怖がっちゃうわよ。チッチッチッ、ほーらこっちおいでー」

「チッチッチってお前な……相手は野生動物ではないんだぞ、プラジアーナ」


 エクウスが立ち上がり、川を渡った。

 そして、無理に近づかずに少し離れて立った。

 しゃがみ込み、「おいで」と優しく声をかける。


 見慣れないアーガ族の女。

 子供たちは暫く緊張した顔でいたが、暫くしてそろそろと近づいてきた。

 そして幼い声で、「ウーガ」という言葉を口にした。


「ウーガ?」

「ホホウ、ウーガ?」

「ホホウ?」


 子供たちがエクウスの周りに集まり、口々に話しかけた。

 額にはまだ角がないが、背中には小さな翼がある。

 三人とも男の子のようだった。


「テェアヘペロ殿、この子たちは何と言っている?」

「多分……あなたはアーガ族かって聞いてるんだと思うけど」

「ウーガ」


 エクウスは自分を指差して答えた。

 自分はアーガ族だと示し、笑いかける。

 すると、子供たちはきゃあ、と声をあげた。


「ウーガ?」

「ウーガ」

「ウーガ!」

「ウーガウーガ!」

 

 通じたらしい。

 子供たちはきゃっきゃっと言ってはしゃいでいた。

 そして、エクウスの手を引いて立ち上がらせた。

 どこかに連れて行きたいらしい。

 その様子を見て、エクウスは柔らかな笑顔を浮かべた。


「キトラ、子供たちが家に案内してくれるようだぞ」

「え、本当?」

「多分な」


 子供たちはエクウスの手を引き、森の奥へ連れて行こうとしている。

 行き先は恐らく、彼らの住処だろう。

 一行はとりあえず、ついて行ってみる事にした。


 森はどんどん深くなり、気温も高くなっていく。

 湿気が強く、辺りには霧が立ち込めている。

 その霧に乗って、僅かに硫黄の匂いが漂ってきた。

 汗が流れ出て止まらない。

 足元は背の高い草が生え、その下はびしゃびしゃとぬかるんでいる。

 子供たちやエクウスの姿を見失わぬように足を速めると、たちまち柔らかい泥に足をとられた。


 北の大森林というからには、本来ならば凍えるように寒い針葉樹の森でなければならないのである。

 そしてキトラには毛皮や綿入れの服を着て、雪の中を歩く覚悟があった。

 しかし今、自分たちは草いきれと熱帯の鳥たちの声、そして北の森にはないはずの濃く瑞々しい緑に囲まれて歩いている。

 やはり、この森は異様だ。

 アーガ族だけが知る、秘密の世界なのだ。

 キトラは自分の心臓が急に早くなるのを感じた。


「大丈夫かな……何か緊張してきた」

「怖がらなくても平気だよキトラ君。向こうが警戒してるなら、子供を森で遊ばせたりしないもん」

「テェアヘペロ、やっぱり場馴れしてるね」

「何度も会ってるからね。久しぶりに知り合いに会うのも楽しみだ」


 子供たちは歌を歌いながら、三十分ほど森の道を歩いた。

 そして、「アァ!」と声を上げるとエクウスの手を引いて突然走り始めた。

 もつれる足を引きずりながら、息を切らし彼らを追う。

 すると突然視界が開け、大地に開いた大きな縦穴が現れた。


 直径およそ五百メートル、深さ百メートルはありそうな大きな岩穴。

 そこに滝が落ち込み、鳥の群れが舞い、幻想的な風景をつくっていた。

 目を凝らすと、立ち込めた霧の向こうに家のようなものが見えた。

 断崖の岩の窪みに大きなシダの葉で作られた家がある。

 そして、そこに大人のアーガ族の姿が見えた。


「すっごい……ここがアーガ族の集落なんだ」

「ここ、どうやって降りるの?」

「ナップ!」


 子供たちは、エクウスを手招きしてがけの淵から飛び降りた。

 見下ろすと、遥か下に大きな葉を持つヤシの木が見える。

 子供たちはその上で跳びはね、また「ナップ!」と叫んだ。

 恐らく、まだ飛べない者は葉をクッションにしてああやって下まで降りるのだ。

 しかし、その高さは軽く十メーターを越えていた。


「ちょっと! 怪我しないのこれ!」

「子供が大丈夫なら行けるでしょ? ほら行きましょ、キトラ。ジャンプよ」

「プラジアは翼があるから平気だけどさ!」

「軟弱な奴め。ほら行け」

「ちょっ! エクウスやめてぇええ!」


 キトラはエクウスに無理やり突き落とされて落下した。

 そのまま大きな葉の上に落ちて、ぼよんと跳ね返る。

 その無様な恰好を見て、エクウスも子供たちもゲラゲラ笑っていた。


「ほら、平気だっただろう?」

「こっ、この乱暴者!」

「一回落ちてしまえば後は平気みたいね。この木、集落まで続いてるわ」


 プラジアーナが指差した先に、ヤシの木が列になって続いていた。

 子供たちはヤシの葉の上を飛び跳ねながら進んでいく。

 一番奥のヤシの葉を降りると、そこはちょうど滝の真下。

 そこまで来ると、子供の一人が大きな声で叫んだ。


「ウウウウウウウウーーーラァアアアア!」


 甲高い声が岩壁に反響し、幾重にも重なって飛んでいく。

 その声は、キトラがいつか聞いた、アーガ族の戦士が仲間を呼ぶ声に似ていた。

 暫くすると、子供たちが帰ってきたのを察したらしく、大人たちが数人現れた。

 出迎えにやってきたのだ。

 五人が地面に降り立つと、彼らはその周囲を取り囲むように立った。


「巫女の村の者か」


 若い女のアーガ族がキトラ達にも分かる言葉で言った。

 彼女は警戒の目を向けていた。

 その周りにはやはりまだ若いと思われるアーガ族の男たち。

 口々に何か言いながら、彼らは吟味するようにキトラ達を見ていた。

 若い女は「ヤク!」と言って彼らを制し、こちらに歩み寄ってきた。


「そこにいるのはテェアヘペロ殿か。何の用で森に来た」

「あなたは……オモン殿か」

「そうだ。アゴラテルの娘、オモンだ。要件を話せ」

「族長と話がしたい。シーガルテル殿はいないか」

「あの人はもう死んだ。今の族長もここにはいない。お前たちの相手は私、オモンがする」


 周囲を囲んでいた者たちが傍を離れた。

 恐らく、危険がないかどうかを確認していたのだ。

 オモンと名乗った女は、エクウスよりも少し背が低く、かなり華奢な体つきをしていた。

 黒い髪を長く伸ばし、後ろで束ねて三つ編みにしている。

 他のアーガ族は男ばかりだったが、キトラ達が見た事のある戦士たちよりも若く、体つきもそこまでガッチリしていない。

 きりりとした顔つきだったがまだ幼く、十代前半の若者のような印象だった。


「シーガルテル殿が亡くなった……?」


 テェアヘペロが表情を強張らせた。

 オモンは彼の目を見て、はっきりと頷いた。

 周りを見ると、不安げな表情でこちらを伺っている者たちがいた。

 女や子供、そして年寄りばかり。

 大人の戦士たちはここにはいないようだった。


「一体、何があったんだ?」

「話してもいいが、あなた方に敵意がない事を確認するのが先だ」

「分かった」


 テェアヘペロは、キトラ達に武器を全てアーガ族に渡すように言った。

 ギヨナ村でもアーガ族に会うものは全て武器を帯びていない状態になってから話をするのが習わしだという。

 キトラは短刀の鞘を下ろし、エクウスやバウアーも同様に武器を地面に置いた。

 それから、オモンがこちらに近づき、一人一人の体を確かめた。

 他に危険なものを持っていないかを確かめているようだった。

 彼女は最後にエクウスの傍に立った。


「テェアヘペロ殿、こちらからも聞きたいことがある」


 オモンはエクウスの顔をじっと見た。

 

「この女は何者だ」

「私はエクウス。ルーデンス族に育てられたアーガの子だ」


 エクウスは自ら名乗った。


「子供の頃に森の外で拾われた。だから、同族に会うのはこれが初めてだ」

「拾われたのはいつだ」

「二十年以上は前の事になる」

「正確に思い出せ。二十何年だ」

「……二十四年だ。私の計算が間違っていなければだが」

「パペラテル!」


 オモンは急に大きな声を出し、集団の中から誰かを呼んだ。

 腰の曲がった老人が一人、こちらへ近づいてきた。

 彼はどうやら、キトラ血の言葉の分かるアーガ族ではないらしい。

 パペラテルと呼ばれた老人の耳元で、オモンはアーガの言葉で何か告げた。


「ヤクテ……」


 老人はオモンの言葉に頷くと、ゆっくりとエクウスに近づいた。

 そして、手を出すように身振りで示した。

 エクウスが手を差し出し、手のひらをパペラテルに見せる。

 すると、パペラテルは「ナッ、ナッ」と言って頷いた。

 オモンは「アア」と声をあげた。


 一体何なのだろうか。

 エクウスが問うと、オモンは大きく息をついた。

 そして、こう言った。


「長老は……あなたが私の姉だと言っている」

「姉……だと?」

「間違いない。あなたは私の父親によって殺されたはずの……私の実の姉さんだ」


 オモンはそう言うと、エクウスの手を取った。

 そして、その大きな目からぽろぽろと涙を流した。


「いつか会えると思っていた。エクウス、どうか私たちを助けてくれ」


 

 アーガ族の集落は穴の底から壁面にかけて広がっていた。

 中は広く、数万人が暮らせるのではないかというほどの余裕があった。

 しかし、そこにいたのは多く見積もっても五百人ほど。

 その訳を訪ねると、オモンは「一族が分裂した」と語った。


「半年くらい前に、森の奥で爆発があった。ここもすごく揺れて、滝の水が暫くなくなった」


 爆発の様子を見に行ったのはアーガの男たちだった。

 オモンの祖父で当時の族長であったシーガルテルがその指示を出した。


「森が大きくえぐれて、ここの穴よりずっと大きな穴が開いていた。今の族長・アゴラテルはそれを外の人間の仕業だって言った」


 アゴラテルはすぐに外の人間に報復すべきだと言った。

 奴らを放っておけば森が破壊しつくされてしまう。

 それが彼の主張だった。

 しかし、シーガルテルは彼を諌めた。

 爆発の形状も規模も、森の外の者たちの仕業にしては大きすぎる。

 そして、侵略者が行うにしてはあまりにも無意味な所業。

 よく調べてから考えるべきだとシーガルテルは言った。


「でも、その時から戦士たちはおかしくなってた。アゴラテルの味方とシーガルテルの味方に別れて争うようになった。そして最後は……シーガルテルがアゴラテルに負けて死んだ」


 アーガの族長は強い者がなる。

 アゴラテルはシーガルテルに戦いを挑み、若さに任せてその賢き族長を倒してしまった。

 族長になったアゴラテルは戦士たちを率い、外の者たちの集落や村を襲うようになった。


「長の命令は絶対。しかも、アゴラテルは私の父。私たちも暫くは従ってた。でも、アゴラテルはだんだんおかしくなった」


 ある日、戦士の一人が何かを外から持ち帰った。

 それは、透明な樹脂に包まれたピスカ族のミイラだった。

 アゴラテルはそれを密かにあの爆発地点に運ばせていた。


「アーガの掟では、死体を辱めるのは罪。死者は自然に任せ、地に返さなければならない」


 オモンは語気を荒げた。


「墓に納められた死者を、例え敵の者であっても奪って持ってくるなんて狂ってる。私たちは怒った。そしたら、アゴラテルは戦士と言う事を聞く若い女たちを連れて出て行った」


 そして、ここに残ったのがオモン達なのである。

 アゴラテルは戦える戦士と、身の回りの世話をさせるための従順な女たちを連れて出ていってしまったのだ。


「アゴラテルは、父さんはおかしい。母さんも言ってたもの。姉さんが生まれた時も、目が金色の赤ん坊は災いのもとだって言って森の外に捨ててしまったって」

「それが私なのか」

「エクウス、母さんも無理やり父さんに連れて行かれてしまった。このままじゃ一族はどんどんおかしくなる。父さんがやろうとしてるバカげたことをやめさせたい。お願い、私たちに協力して!」

「私の……父と母か」


 エクウスは立ち上がった。

 森を案内してくれた子供たちがエクウスを見てまた寄ってきた。

 身振り手振りで何かを必死に伝えようとし、エクウスがほほ笑むと声を立てて笑う。

 その姿を見て、オモンは目を細めた。


「その子たち、兄さんの子。姉さんが家族だって分かるみたい」

「なるほどな」


 エクウスは子供たちの頭を撫でてやった。


「当初の目的とずれてしまうが、この子たちも家族と離れて暮らすのは寂しかろう。オモン、お前に力を貸そう」

「オレに達も、協力させてください」


 キトラは言った。

 アーガ族の暴挙の理由。

 それは、オモンの父、そしてエクウスの父であるアゴラテルのせいだったのだ。

 思いがけず、「アーガ族に何があったか」を確かめるという目的は果たされた。

 しかし、ここで「分かりました、じゃあ」とは帰れない。

 エクウスの身内が困っている。

 それにここにいるのは、かつてユピテルの仲間だった者たちだ。

 その事実を前に、やはり黙ってはいられなかった。


「もう亡くなってしまったけど、オレ達エクウスに会う前にも、アーガ族の先生にお世話になってたんです。先生の代わりに、オレ達が力になります」

「私たちはお前たちの仲間を襲ったんだぞ。それでも力になってくれるのか?」

「それは、私たちも同じ。仲間が傷ついて苦しんでいるのは同じことよ」


 プラジアーナはオモンの手を取った。

 そして、アーガ族と戦った事を話した。

 オモンはプラジアーナを知っていたらしい。

 ぽつりと、「南のピスカ族か」と呟いた。


「砂漠でお前を見たという者の話を聞いた。そのお前が……私たちのところへやって来たとは……」

「過去の話はここで保留にしましょう。今は、目の前にある問題を何とかしないと」

「……アーガ族に協力しても良いというのか」

「私たち、森で何が起きてるか知りたくて来たの。だから一緒に、どうしてお父さんたちがおかしくなってしまったのか、確かめに行きましょう」

「そうと決まれば、まずはこれまでの事をいろいろ聞かないとね」


 テェアヘペロがコホンと咳払いをした。

 隣にいるバウアーが真剣な顔でこくこくと頷く。

 二人も協力するのに賛成のようだった。


「すまない。この恩は必ず返そう」

 

 ついに、オモンはそう言った。

 彼女はテェアヘペロの指示で、一族の中で外の言葉が分かる者や一族の事に詳しい者―――主に年配の者たちを集めた。

 前族長のシーガルテルに従っていた長老たちはアゴラテルに従わず、この場所にみんな残っていた。

 彼らは外の人間であるキトラ達を見て初めはかなり警戒していた。


「お前たちがここにいるという事は、ギヨナの巫女が森への侵入を許したのだな」

「なにゆえお前たちはここへ来た。皇帝の指示か」

「オレ達は、何が起きているのか知りたかったんです」


 キトラは不審な目を向ける年寄りたちに何度もそう繰り返した。


「どうして森で穏やかに暮らしているあなたたちの戦士があんな残酷な仕打ちに出なければならないのか、どうしてユピテル先生は死ななければならなかったのか、きっと何かわけがあるに違いないと思って来たんです。あなたたちに危害を加えるつもりはありません」

「お前たちはアゴラテルを止められると言ったが、一体何ができる」


 気の強そうな老婆がじろりとプラジアーナを見た。

 見た目にはか弱い娘にしか見えないプラジアーナ。

 老婆はあからさまにため息をついて見せた。


「貧弱なピスカの娘など、あの子の手にかかれば一ひねりだよ。こんなヒョロヒョロの体で何ができる」

「あらおばあちゃん、私そんなに弱くないわよ」


 プラジアーナはフンと鼻を鳴らした。


「私の炎があれば、軍隊ひとつくらい簡単に潰せちゃうんだから。今まで何度も強いアーガの戦士たちと戦ってきたけど、一度も私に勝てた人はいなかったわ」

「炎だと! じゃあ、お前が戦士たちの言っていた赤の砂漠の『炎の怪物』か!」


 長老たちがざわついた。

 炎の怪物。

 その呼び名を聞いて、キトラは思わず噴き出した。

 今まで三度もアーガの群れを退けたプラジアーナ。

 やはり、相当怖がられる存在になっていたようだ。


「酷いわねー。女の子にそんなあだ名をつけるなんて」

「オレンジ色の翼を持ったとんでもない怪物がいると聞いていたが。まさか若い娘だとは」

「娘さんや、よく顔を見せておくれでないか?」


 片目の潰れた老人が立ち上がり、プラジアーナの傍へ寄った。

 そして、その目や腕にはめられたあの「J‐3000」の腕輪をしげしげと眺めた。


「これは、まさか『言い伝えの娘』ではないか……?」


 老人は呟いた。

 その一言に、周囲の者たちが一斉に顔色を変えた。

 みんなこの腕輪について何か知っている。

 そんな雰囲気だった。


「言い伝え? 何なの、おじいさん?」

「うむ。よその者たちには教えてはならぬことになっているのだが、これは何とも」

「イグラテル、もういいよ。分かった」


 戸惑う老人を見て、さっきの老婆がぶっきらぼうに言った。

 そして、プラジアーナの尻を手でパン、と叩いた。


「この子は明らかに『ピスキアーナ様』の血の者だ。その時が来ちまったって事さ」

「ピスキアーナ様?」

「一から全部教えてやるよ。ついてきな」


 老婆は立ち上がり、プラジアーナや他の者たち連れて滝の裏に向かった。

 滝の裏には洞窟があり、かなり奥まで続いている。

 これまでずっと族長の部屋として使ってきたというその場所は、キトラ達がハシダテ集落で見たあの洞窟によく似ていた。


「お婆ちゃん、どこまで行くの?」

「アタシの名はエオンだよ。そう呼ぶがいい」


 老婆はゆっくりと、しかし意外にしっかりとした足取りで洞窟の奥へと歩いて行った。

 洞窟の中は暗かった。

 だが、エオンにはもう目を使わなくても中の事が分かっているように見えた。


「アーガの一族の中には、アタシらみたいにアンタたちの言葉が分かる頭のいいのと、何にも分からないダメなのがいる。ダメなのは戦士になるか、子供をどんどん生んで一族を増やすのが仕事。頭のいいのには別の仕事がある」

「仕事って?」

「『世界のなりたち』を語り継ぐことさ」


 洞窟の奥には、きっとそれを記した壁画か何かがあるのだろう。

 キトラはそんな事を考えながらエオンについて行った。

 しかし、その先にあったのはとんでもないものだった。


「これ……何ですか?」

「『コンピュータ』と、アタシらはそう呼んでいる」

「コンピュータ?」

「大昔、この世界を作った人間の持ち物さ」


 キトラはその場に立ち尽くした。

 そこにあったのは、金属でつくられた巨大な立方体。

 明らかに高度な技術を以てつくられた人工物だった。


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