新月の死神、紫月の堕天使
今回は暦が戦ってる間に起きた、もう一つの覚醒と戦いになります。
-ヴゥゥゥゥゥン-
「『…待っててね、君はもう直ぐ生まれるから…』」
-ヴゥゥゥゥゥン-
少年と…少年に付き添っている…辛うじて人型をした怪物が言い、巨大な禍々しい魔法陣が形成されていく。
-ゴゴゴゴゴゴ-
-バキバキバキバキィ-
『『オォォォォォン!!!』』
常闇から数多の蔦植物に似た何かが現れる…。
『『ウォォォォォ…ン』』
「『…多元の扉は…間もなく開かれる…』」
蔦植物達は一斉に呻き声をあげて歌らしきものを形成し、蒼髪の少年と怪物は魔法陣に集中しながら呟く。
『『オォォォォォン!!』』
「『…十一界は既に開かれた…、さあ…』」
-クゥゥゥゥン-
『「…並行世界の僕…、…僕の命と魂を生贄に使わせてもらうよ、…君はそのために二つの死神と契約して消えかけた命を生き長らえたんだからね…」』
-シュゥゥゥン-
魔法陣から紺髪の少女が浮かび上がり、蒼髪の少年は二振りの闇の剣を持つ。
「『…既に仮契約はなっている、…本契約を結ぼう…』」
-スッ-
蒼髪の少年が持つ闇の剣の切っ先が紺髪の少女の心臓部に向けられる。
「…こ…恐…い……た…す……け…て……」
「『…安心して…、これは僕達が何度も見てきた夢…、…君の存在は消えるけど、君の想いは限りなく近い存在が受け継ぐから…』」
-ドシュゥゥゥ-
酷く魘され、必死に手を救いの手を求める紺髪の少女に対し、蒼髪の少年は一切の躊躇もなく闇の剣を少女の心臓部に突き刺す。
「…ぐぅぅ!!!がぁっ!!…ぃ…!…冷たい…心が…身体が…凍って…いく……っ……さん…」
-ガクン-
闇の剣に貫かれた紺髪の少女は異形に化しながら呟き…息絶える。
「『…次は僕の番だね』」
-ドシュゥゥゥ-
蒼髪の少年は自らの心臓部に闇の剣を突き刺し、身動ぎ一つせずに本契約を済ませる。
-ゴゴゴゴゴゴ-
-ヒュゴォォォォ-
-クゥゥゥゥン-
『『オォォォォォン!!』』
-ゴゴゴゴゴゴ-
魔法陣が禍々しい光を放ち、禍々しい光は少年と少女だったものと怪物を呑み込み、蔦植物達は一斉に魔法陣の中へと入っていく。
『ウォォォォォン!!』
蔦植物達は魔法陣の中に入り、その身を次々と灰に変え、力を禍々しい光の中に捧げていく…。
-シュゥゥゥン-
-ゴゴゴゴゴゴ-
-ズゥゥゥゥン-
-ヴゥゥゥゥゥン-
『「………」』
光が収まり、魔法陣の中央から白骨化したユミルと幾つかの血管が組み合わさったかの様な何かが現れる。
『…………』
『「…やっとあえたね、僕の…ユミル…」』
蒼髪の少年は数多に重なった声で呟く。
『「…デフィジィ…、イザナイノウタ…」』
-ヴゥゥゥゥゥン-
「………!」
『………!』
白骨血管のユミルから何かの波動が放たれ、空間がズレ、歪み始める。
-ゴゴゴゴゴゴ-
月が紫色に染まっていく…。
「因果の黄昏」のそれとは比べ物にならない程の「ズレ」が襲い…。
あまりにも強大な何かが…静かに舞い降りる…。
-ヴゥゥン-
-ピシュゥン-
「……………」
「……………」
「……………」
-トス-
天の方陣らしきものから三本の柱状のクリスタルが現れ、大地に突き刺さる。
-ジジッ-
-ヴゥゥン-
三本の柱状のクリスタルが光のトライアングルを形成する…
-ゴゴゴゴゴ-
-キュゥゥゥン-
-ズドォォォォォォン-
光のトライアングルが複数形成され、凄まじい術力と共に天に上っていく…。
-ジジジッ-
-ボォォォォ……-
クリスタルの柱を沿う様に、禍々しい光の渦が舞い降り…
-ヴゥゥン-
-ゴゴゴゴゴゴ-
-ヒュゴォォォォ-
-バチュゥゥゥゥン-
『…扉は…開かれた』
六枚の漆黒の翼を持つ結晶が言う…
『ふふ…死神巨人とあの巨人の兄弟には感謝しないとね…』
三枚の妖光の翼と四本の腕を持つ結晶が言う…
『我が同志、そしてあの巨人の兄弟の力により、創世から我々を閉じ込めていた…3と6と5の無限の輪廻が続く牢獄は崩壊し…、我々は解き放たれた…』
二本の獣骨の翼、三本の尾を持つ結晶が言う…
『紫月の堕天使という罪で封印されてから無限大の暦…、永かった封印も漸く解かれ、同志達も喜び勇んでいる…』
六枚の長大な漆黒の翼を伸ばし、解放された喜びを表現する紫月の堕天使。
『さあ、今より我々の時の代の産声をあげる第一歩をこの園に刻もう…』
-シャン-
-ビキキィッ-
紫月の堕天使達は、紫色の結晶の空間を広げ始める。
紫色の結晶は凄まじい勢いで空間を侵蝕していく…。
「『…八玲、結晶獄を切り離すんだ、このままじゃ帰る前に紫月の堕天使に取り込まれる』」
『「…最初からそのつもりだよ、…デフィジィ…」』
デフィジィは結晶獄の侵蝕力を計算し、八玲に結晶獄の切り離しを提案する。
『扉を開きし者よ、我らの糧となれ…』
紫月の堕天使は紫色の結晶の吹雪をヤツレイ・ユミルに向けて放つ。
『「…いきなり侵蝕して良いなんて言っていない」』
-ヴゥゥゥゥゥン-
八玲はヤツレイ・ユミルの掌を突き出して魔法陣を形成し、紫色の結晶吹雪を遮断する。
「『…八玲は御怒りだ…、…いきなりこんなものを使うなんてね』」
-バキバキバキバキィッ-
-グォォォォォォォン-
デフィジィは八玲から怒りに似たものを感じ取り、ヤツレイ・ユミルの肋骨を開放し、ヤツレイ・ユミルの胸奥の空洞から芒霊達の呻き声の様な音が響く。
『「…デフィジィ、ワカレノホウコウを使うよ…」』
「『…試し撃ちで紫月の堕天使達を空間ごと消滅させるなんて恐ろしい子だよ…全く…』」
八玲は微笑みながら言い、デフィジィは八玲に言いつつ…ヤツレイ・ユミルの胸部の先に展開した禍光渦を発射させる。
-キュォォォォォォン-
-バキィィン-
『『『グォォォォォォォン!!!!!』』』
ヤツレイ・ユミルの口が開き、数多の芒霊達の呻き声が重なった吠吼を放ちながら魔法陣が形成され、凄まじい魔力と術力が圧縮されていく…。
『「…ワカレノホウコウ…」』
『『『グォォォォォォォン!!!!!!』』』
-ズドォォォォォォン-
ヤツレイ・ユミルは天に向かって禍々しい光を放ち、ヤツレイ・ユミルの近くまで侵蝕していた結晶獄は消滅する。
-ズドドドドドドォォォォォォン-
天には巨大な禍々しい光の魔法陣が形成され、魔法陣から数多の凄まじいエネルギー波が雨の如く降り注ぎ、エネルギー波が降った空間には次元の狭間が出来、紫月の堕天使と結晶獄を次元ごと破壊していく…。
ヤツレイ・ユミルは真っ先に次元の裂け目に呑まれ、結晶獄と化した空間から姿を消す…。
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陰日本の新潟にて…
「………」
元の空間に戻ってきた蒼髪の少年術士…遠野八玲は遠くを眺める…。
既に時刻は二十一時を過ぎ、夜空には明るい満月が浮かんでいる。
「…(…早く帰らないと母様にお叱りを受けるなぁ…)」
八玲は携帯の時刻表示を見て溜め息混じりに思い、帰路につく。
「………」
「じゃあね、暦!家まで送ってくれて有り難う!」
「ああ、今日は楽しかった、…また学院で会おう!雫!」
帰路についた八玲の近くで女子高生達の声がするが、八玲は術力の温存の為に音をシャットアウトしていたので、特に気にする事もなく歩み続ける。
「ふう、すっかり遅くなってしまったな、急ぎ帰宅しないと…」
-スッ-
「お嬢…」
「…苅藻、何故此処に…?」
赤黒髪の少女の前に紫髪の少女が現れ、苅藻と呼ばれた少女は跪く。
「鵺様の命により、先回りしておりました。さ…御屋敷に帰りましょう」
「…姉上が?…有り難う…苅藻…」
「……」
暦は礼を言い、苅藻は僅かに喜びの表情を見せる。
「さ、早く屋敷に戻って飯にしますよ!お嬢」
「わ…わかったわかった、そう引っ張るな苅藻…」
「…いえ、若頭が病気になる前にお嬢の無事をお知らせする必要があります、お急ぎ下さい」
「酒本も来ているのか?」
「はい、また鵺様に無断で我等に付いて来ましたので…仕方無く…」
「…急ごう」
「はい」
暦と苅藻は共に屋敷へと走る。
「…やっと見つかりました、遠野君を保護します」
『了解、直ぐに戻る』
「もう、一人で遠くに行っちゃ駄目じゃないの」
「………」
「…お姉ちゃんが付いてるから泣き止んで」
夜の闇を一人寂しく歩いていた八玲は、半ベソをかいていた所を星籠同盟の関係者に保護され、無事に帰宅したという。
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