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超創機大戦  作者: 馗昭丹
陰世界騒動
77/77

極阿夜騒〜リクイヲム起動

一旦極阿側に舞台が移ります。


 極阿近海のZW夜戦が終了してから間もなく…


「オラオラオラァ!さっさと降参しちまいなぁ!」


 前々から新極阿シティから侵入し、極阿各地に潜伏工作していた賊徒達は、戦火を合図に一斉蜂起するが…


-チュンチュンチュン-


「ほいっ、ほいっ!…ほっほ、もうおしまいの様じゃな」


「ぐえっ!?がはぁっ!?」


 ビニール傘を模った光波シールドを持った爺様が軽いフットワークで賊徒の銃撃を回避し、斬撃をかわしてビニール傘の取手で賊徒の足首を引っ掛けて転倒させ、追撃のエルボードロップを決めて賊徒を気絶させる。


「伊達に杖は使ってないですよ、ほらっ」


-ドガガガゴォッ-


「ごほぉっ!?」


 爺様の近くでは、穏やかそうな顔をした婆様が鋼の杖を使って賊徒に凄まじい連撃を喰らわせ、トドメの一撃を受けた賊徒は気絶する。


「外の若いもんはなってませんな、婆さんや」


「そうですねぇ、武器の使い方が雑で動きに無駄が多くてねぇ、おっと、爺さん、頭にレーザースコープの光があたりますよ」


 爺様の頭にレーザースコープの光が照らされそうになるも、次の瞬間には、婆様が爺様を蹴り飛ばし、狙撃を回避していた。


「ほっほ、こうやって婆さんに蹴り飛ばされるのも二年ぶりかね」


-ドゴォン-

-ドゴォン-

-チュン-

-バァン-


「ぐっ!?野郎!」


「あらやだ、つい癖でねぇ」


-ドゴォン-

-ガァン-


「なぁ!?」


 爺様は器用に受け身を取りつつ拳銃を連射して賊徒達の武器を弾き飛ばしながら言い、婆様は蹴った足を即座に引っ込めて拳銃を放ち、銃弾が賊徒の銃を弾くと、賊徒は形勢不利と悟って逃亡する。


…とても常人には出来ない芸当である。


「………」


-ドドドドドド-

-チュンチュンチュン-


「ちっ!車椅子のジジイがなんであんな動き出来るんだよ、冗談じゃねえ!」


 あるところでは車椅子に乗った爺様が片輪疾走しながら機銃を放ち、賊徒達は反撃しつつも身を隠す。

 賊徒達は車椅子の車輪や爺様の武器・頭部を集中して狙っていたが、爺様は瓦礫の多い悪視界を利用して賊徒達の射撃を回避する。


「があっ!?」

「ぐぅ!?」


「鈴木さん!戦場が恋しいからって勝手に抜け出さないで下さい!」


 そこへ車椅子の爺様を介護していると思われるゴツい中年が防弾シールドを構えて賊徒達を殴り飛ばしながら爺様の元へと走っていく。


「儂ゃあのぉ、かつての戦では」

「はいはい、話は戻ってからしましょうね、僕が弾除けになりますから突破しますよ」


 鈴木の爺様は昔話をしようとするが、介護者が言葉を遮って防弾シールドを構え、凄まじい勢いで車椅子を走らせる。


-ドドドドドド-

-チュンチュンチュン-


「退けぇぇぇ!!!」


「なにぃ!?ぐわぁっ!?」


 機関銃の弾を弾き返しながら疾走する鈴木の爺様の突撃を回避しようとした賊徒だが、間に合わずに跳ね飛ばされた上に介護者に蹴り飛ばされる。


「くそっ!奴等に騙されたぜ、とんだ魔境だったぁ!」


 売店の爺様と婆様や、車椅子の爺様、爺様を介護していた中年によって十数人の賊仲間がやられた賊徒は、異様な光景と劣勢に戦慄する。


「それっ!とおっ!その程度かよ!」


-ガァン-

-ドドドドドド-


「なんつーガキだ、撃っても撃っても向かって来やがる!」


 少年少女達がゴツい木刀を構えて突撃してくるのを、機関銃で牽制していた賊徒だが、少年少女達は的確に散弾を回避して突っ込んでくる。

 それを見た賊徒達は戦慄しつつも、徐々に狙いを絞るが…


「隙だらけだぁ!!平瀬一閃流・飛燕払い!」


「ぐあああぁぁ!!!」


 散弾を薙ぎ払いながら突破してきた少年が凄まじい速さで払い抜け、賊徒は激痛の余り悶える。


「ぐっ、銃弾の雨の中を突っ切ってくるとは…!」


「はあ、はあ、なんだよ、ガキども…!バケモン揃いじゃねぇか!」


 加賀崎町では、特殊木刀を構えた少年少女達が銃弾の飛び交う中を突っ走って賊徒達に猛然と襲いかかり、木刀でハンドガンを叩き折られた賊徒は、その光景に恐怖しながら言う。


「バケモンじゃないやい!」

「お前らが弱いだけだっての!」

「統弥の兄ちゃんと御師匠様は銃弾よか怖いかんな!」


-グワッシャァァァ-

-ポクッ-

-ボキッ-


 賊徒の言に少年少女達は一斉に否定し、再び猛攻を仕掛け…鈍い音が鳴ったと同時に、賊徒達の意識は闇に落ちていった。


「お、おい、主力がやられたぞ!」

「くそ、話が違うぞ、誰だ、極阿に入りさえすれば楽だって言ったのは!?」


「………」


「あ、あ、あっしら、とんでもない所に来ちまったようでっせ…!」

「し、修羅の国か極阿(ここ)は…!」


 極阿各所で交戦していた賊徒達が市民達によって次々と撃破されていき、残存の賊徒達は動揺する。


「おうよ、だから誰も手ェださねぇんだよ」


 賊徒達の正面から統弥が現れ、賊徒達は瞬時にして気絶させられる。


「あー!統弥の兄ちゃんだ!」

「新型機にやられてんじゃねえよダッセーぞ!」

「あんまり言ってやるなよ!クレスの姉ちゃんだってやられてんだぞ!」


 少年少女達は統弥の姿を見るなり近づいて各々に先程の戦闘の事を言う。


「ちっ、しっかり撮ってんじゃねえよガキども」


 ヴィクス専用イズロツとの交戦で散々にやられている様子が映っている動画を見せられた統弥だが、怒る様子を見せず、寧ろ豪快かつ不敵な笑みを浮かべながら言う。


「統弥の兄ちゃん!もちろんリベンジするよな!?」


「今度会ったら倍にして返してやろうぜ!」


「おう、当たり前だ、今度会ったらぶっとばしてやるぜ!….痛ぅ!?」


 少年少女達は統弥を激励する様に言い、統弥は当然の様に応えるが、先程の戦闘による怪我が痛んだのか、統弥の表情が歪む。


「おいおい大丈夫かよ統弥の兄ちゃん!リベンジの前に怪我の治療じゃん!九条の姉ちゃん呼んでこよーぜ!」


「ぶっ!?」


 少年の言に統弥は噴き出す。


「わかった!待ってろよ統弥の兄ちゃん!すぐ連れてきてやるからな!」


「ばっ!?馬鹿野郎!余計な真似すんじゃねぇ!」


「照れんじゃねーよ!九条の姉ちゃんにゆっくり看病してもらえって!」


「おい!?…くそ、あいつら…!」


 少年少女達の言動に統弥は顔を赤くしながら怒鳴るが、少年少女達は構わずに柊を呼びに向かう。


「ほっほ、婆さんや、若いもんは良いですなぁ」


「若いって良いねぇ、爺さん、それじゃ…子供達が戻ってこれる様に…もう一働きしましょうかねえ」


「そうですな、わしら年寄りどもは、若いもんが無事に育つ様に働くとしましょうかのう」


 いつの間に集結していたのか、極阿の年寄り衆が揃って言い、次の瞬間には極阿の夜陰に紛れて少年少女達を護衛するべく疾走する。


「よう、そっちはどうだ?」


「こっちは片付いたぞ」


 闇夜が支配する極阿シティにて、黒服達が栓抜きらしきものを見せ合って合図を送る。


「まもなく輪廻お嬢が戻ってきなさる、ブツの用意は良いか?」


「ああ、柘榴のジジイから貰った宇宙パックに入れて保管してある」


 修羅達の咆哮と賊徒たちの悲鳴が響く極阿の夜を黒服達が駆けていく。


「今宵は中々楽しい、久々の殺気に儂の身体が喜んでおるわ」


「…お楽しみのところ申し訳ありませんが、狙撃の邪魔です課長」


「むぅ…見事な腕前だ」


 昼間は冴えない中年男達も夜は機銃と刀を手に強者を求めて徘徊する修羅と化し、女達も夜は狙撃銃や毒針、毒吹き矢を手に獲物を狩る必殺の仕事人と化す。


「オラァ!命の要らない奴はリクエストにこたえんぜぇ!」

「その前にウチのボウガンにかかればチョロいっしょ!」

「とりま撃つ!」

「うお、早撃ちにやられた!」


 中学生や高校生くらいの歳の者達も既に熟練兵といっても過言ではなく、敵の気配や殺気を察知して先制攻撃を加える事に長けている。


 ベヘモス戦争が極阿や裏日本に与えた影響は凄まじく、特にベヘモス軍の侵略戦で壊滅的な被害を受けた極阿の民は皆勇猛な兵士に変わっていた。


「戦なるものは多勢優勢が必ず勝つ訳でもなければ、寡勢劣勢が必ず負ける訳でもない、賊とは申せ油断は禁物、心してかかれ!我が働きを見ておるぞ!」


 極阿軍総帥・神威百一は帰還早々に奮戦する民の姿を見て血が騒ぎ、最前線に出向いて民に混じって戦いながら叱咤する。


「あれは…極阿の総帥じゃねぇか、わざわざ殺されにきたかよ!」

「神威総帥!危険です!逃げて下さい!」

「案ずるな!我が首はそう簡単には取られん!皆は我に構わず押せい!押し潰せい!」


「「うおおおおおお!!!」」


「うっ…!?」

「ぎゃっ!?竿の切れ端が腕に…!」


「…っ!!?この迫力は…!」

「なっ!?なんだコイツら!急に強くなりやがった!?」


 銃弾が飛び交う中で堂々と指揮を執る百一の姿を認識した賊徒達は、彼に攻撃を集中させるも、百一は全く動じず、銃弾を回避・防御しながら民を鼓舞するや、民達は気声をあげて一斉に石や瓦礫を投げた後に槍衾を組んで賊徒達に突撃し、百一に気を取られていた賊徒達は意表を突かれ圧倒される。


「このままやられるかぁ!神威百一の命を…!」

「くそっ!逃げるが勝ちだ!」


 圧倒された賊徒達は大将首を狙う者と逃げ出す者とに分かれたが、いずれも失敗して捕虜になる。


「総帥、各部から賊の掃討が終わったとの報告です」

「ふむ…ようやった、警戒を続行せよと伝えい」

「はっ!」


 いつの間にやってきたのか、百一の親衛隊が夜光弐型から降りて報告し、百一の言葉を聞くや再び夜光弐型に乗り込んで静かに飛び立っていく。


「百一!お前は何をやっとるか!」

「重彦か、察せ!」


 村楯重彦が百一に怒鳴るが、百一は堂々とした態度で答える。


「ちっ、説教は後だ、ここは俺に任せて会議に行け!」

「ふん、皆の衆、大儀であった!あとで褒賞を取らせる故、手当てが終わり次第休息を取って良し!」


 百一の答えに重彦は怒りを堪えて場を引き継ぎ、百一は奮闘した民達を見て労うと、親衛隊の夜光弐型の手に乗って護衛されながら極阿の総帥府へと向かって飛び立っていく。


「陣は簡素で良い、飯の準備はできてるな!?警戒中の紅花隊に腹が減ったら交代して戻れと伝えろ、民間人は食う奴は食う、寝る奴は寝るで次に備えよ、怪我人が居たら手当てを急げ、捕虜は手当てして留置所にぶち込んでおけ」


 重彦は手早く場を引き継いで疲弊している兵や民達に水と食事を振る舞い、兵と民を休息出来る様にしてやる。


 一方…修羅達が暴れ回り騒然とする極阿シティの中央部の軍事区画に鳥羽輪廻の搭乗した夜天宵(ヤテンショウ)が降下してくる。


「皆、お疲れ様です、総帥と村楯中将は明日にでも帰還される手筈になっています」


 輪廻は各隊を労いながら指示をしつつ、出迎えに訪れた極阿軍近衛師団に言う。


「輪廻、お疲れ様やね、こっちはほとんど片付いたけどなぁ、例の手札は出てきてないんよ」


 咲耶は夜天宵の専用回線を繋ぎ、報告と確認をまとめたデータと作戦行動とを照会しながら輪廻に知らせる。


「工作員の全捕縛、工作の未然防止、内通者の拘束、ライフラインの防護、流石の働きですね、咲耶さん」


「…前々から怪しい銭が流れてたからなぁ、工作員も内通者も分かりやすかったし、御近所さんの情報もあって狙い目も分かったから良かったわぁ」


 輪廻は咲耶から送られてきたデータを即座に確認すると、花丸印と輪廻印を送って賞賛し、咲耶も笑顔で言う。

少しすると、極阿軍の偵察潜水艦からデータが送られてくる。


「…敵さんはまだ手札を残してるみたいやね、まだ…戦は終わってへんなぁ」


 咲耶は極阿の偵察潜水艦から送られていたデータを輪廻に見せながら言う。


「予定通りですが、敵は極阿軍(わたしたち)の恐ろしさを知りながらも試している様ですね」


 輪廻は不敵に微笑みながら言い、秘蔵の缶コーヒーの蓋を開けて飲む。


「…コーヒー…もう、手は打っているみたいやね」


「…ふう、こうやって缶コーヒーを嗜むのも久しぶりです」


咲耶は輪廻が缶コーヒーを飲む姿を見て安堵したかの様に言い、輪廻は一息つけてからあるデータを咲耶に送る。


「…あとは…蛇が出るか鬼が出るか」


「…ふふ、向こうは自業自得ですね、せいぜい頑張って私達の盾になってもらいましょう」


 咲耶は一通りのデータを確認した後に呟き、輪廻は結果が見えているかのように言う。


「…(ヴィクス・トワール、かの巨神は貴方達の手に負えませんよ、火傷で済めばいいですね)」


 輪廻は冷笑を浮かべながら極阿の彼方を見て思う。


_________________


-ジッ-


「…長官、首尾はどうだ?」


「…まずまずです、既に極阿の者どもは53時間働き詰め…、毒ガスと聞いて必死になっているようですな」



 ヴィクスの通信に対し、長い顎髭を持つ強面の漢が応える。



「…地味でセコイ手だ」


「お褒めに預かり、光栄でございます」


ヴィクスは呆れたように言い、長官は満面の笑顔で言う。


「…あの骨董品はどうだ、まだ動かんのか」


「こちらはダメですな、NEONとZERVALとは似て異なる技術で出来ている上、機体の殆どがブラックボックスの塊でお手上げ状態です」


「ゼーヴァルやガシュ・レイヴァーとはまた異なる遺物というわけか」


「コクピット・システムも解明されてませんし、量産型思念波動能力者と量産型擬似NDでも反応しませんでした、次は人造人間の導入を具申します」


「…操り人形で強引に動かす…と?」


「ザックリ言うとそうなりますな、まあ…根拠は単純ですがね」


「…許可する、俺達は引き続き飛び回っていよう」


「万が一の場合はクルーに赤信号を撃たせます、直ちに実行しましょう、あの子の身体をリクイヲムに」


 長官がそういうや否や、大型ZWのコクピットの内部へ虚な目をした少女が丁重に搭乗させられ、コクピット・ハッチが閉じられる。


 スタッフ達がリクイヲム各部にあるコネクタらしきものに各種配線を接続し直した後、スタッフ達が一定の距離を取ると、リクイヲムを覆う様にして防護障壁が展開される。


「総員の退避を確認した、これよりPDS(パイロット・ドール・システム)を起動させる」


 長官は退避したスタッフ達を確認し終えると、自らはPDSに接続されている専用のコクピットシートに座り、両腕をリクイヲム内部のPDSにリンクしている輪の様なツールに通し、頭上、両脚にも同様のツールがセットされていくと、長官の動きに合わせてリクイヲム内部に搭乗している少女が身体を動かす。


「相互リンク確認、PDS問題なし、続いてリクイヲムの起動を試みる。起動後はPDSをシャットアウトし、様子を見る」


「了解しました」


 長官はスタッフに言いつつ、頭部増設生体メモリに登録している古代の文献とリクイヲムの設計図を基に調べ上げた手順を辿るべく、リクイヲムのコクピットシステムを弄る。


「…文献通りなら、私の遺伝子を基に構成したこの子が器、私の神経伝達物質が封印を解く合鍵、違えば魔神の怒りにて我が身は滅ぶが、星をも封印する封印の鎖、続いて極阿のレクーゼウや柘榴のレクーゼウⅦが魔神の抑止力となる…、なにより…柘榴が見ていないはずがない、さあ…長い眠りより目覚めたまえ…リクイヲム」


 長官はリクイヲムのコクピットシステムのロックを次々と解除していくと、コクピット内部が変形して掌の形に窪んだ生体認証システムが現れ、少女の掌の毛細血管から僅かな血液が抽出されて生体認証が完了した旨の情報を記した画面が映し出される。


-バチィッ-


「むう…!?システムが強力過ぎる…!」


続いてリクイヲムのTL-Dシステムが起動すると、長官と少女をリンクしていたPDSが強制的に遮断され、長官は各部PDSを解除して立ち上がりながら言い、直ちに対リクイヲム用に用意していた傀儡の鎖を張り巡らせるが、リクイヲムに全て弾き飛ばされる。


「…くっ、傀儡の鎖を用いても制御が出来んのか…!外の部隊に信号!リクイヲムの制御に失敗とな!」


『ォォォォォォォォォォ…』


 リクイヲムは呻き声に似た起動音を発し、地響きにも似た振動と共に頭頂高120mはあろう巨体がゆっくりと立ち上がっていく。

そして、リクイヲムの装甲表面に薄い光らしきものが発生し、それが瞬く間に全身に行き渡ると、超重量である筈のリクイヲムが次第に軽量化していき、トワール家の高級艦艇の負荷が軽くなっていく。

 システム起動でリクイヲムの各所に潜んでいたパーツが姿を現し、全身に搭載されている球体と円柱を保護していた装甲が展開し、埋没していた頭部が出現して頭部ツイン・アイが煌めく。


-ウゥゥゥゥゥゥン-


「…起動したか、さすが長官だ」


「…あれがリクイヲムか、凄い迫力だな…」


「凄いTL-D干渉波だ、一瞬で間接通信が不可能になったぞ」


 その巨体は近くを飛行しているイズロツ隊からも良く見えた様で、その威容にそれぞれが声を上げる。

 TL-D干渉波で間接通信が不可能になった為、四機とも軽く接触しての直接回線を繋いでやりとりをする。


 少しすると、トワール家の高級艦艇からクルーが飛び出て、赤くパターン発光する信号弾が発せられ、イズロツのコクピットハッチを開いて肉眼でリクイヲムの姿を見ていたヴィクスは僅かに歯軋りをする。


「…長官から赤の信号が出たぞ、イズロツ隊各機、予定通りリクイヲムを攻撃せよ」


「カメラもレーダーも無しでかよ…」


「このTL-D干渉波では勘が頼りだ、俺も出来るだけサポートする」


「くそ、夜に(めくら)でマニュアル戦闘かよ…!他の奴らならとっくの前に逃げてるぜ」


「すまない、だが…!」


「そうも言ってられない空気だってか…!」


「くるぞ…!」


 ヴィクスの無茶振りに量産型イズロツ隊は各々文句を言うが、リクイヲムの全身に搭載されている円柱が輝き、膨大な量のTL-D粒子が収束していく。


 次の瞬間には48本の光の線が全方位に放たれ、光の線は曲線を描いてイズロツ隊に向かう。

 イズロツ隊は散開して回避行動に移り、カメラ・アイを手動で切り替え、TL-D粒子の影響を受けない水鏡カメラを展開して視野を確保しつつ、光の追撃を回避し続ける。


「ちぃ!ホーミング・レーザーかよ!」

「ウィンドウ開放、古代の戦闘機乗りじゃねえってのに…!」

「くっ、五感の錯覚を利用した攻撃か…!長くは持たんぞ…!」


 量産型イズロツ隊はTL-D干渉波でカメラとセンサーを封じられた上に夜の暗闇で少々反応が鈍っていたが、それでもなんとかリクイヲムの全方位共振粒子砲を回避していく。


「この状況では出し惜しみは出来んか…!いけ!セブン・スレイヴ!」


 ヴィクスは量産型イズロツ隊を庇いながら指示を送り、イズロツの背部ユニットを展開してセブン・スレイヴを射出し、リクイヲムの全方位共振粒子砲を迎撃、スレイヴの円柱ユニットに搭載されてある円錐型の思念波障壁と反TL-D粒子(ATL-D粒子)砲がリクイヲムの全方位共振粒子砲を減衰・偏光または相殺してしまう。


 攻撃を尽く回避されたのが影響したのか、リクイヲムの排熱ユニットと背部ユニット、胸部装甲が展開、排熱ユニットが円形に閃熱を放出し、背部ユニットから冷凍光線が上空に向けて放たれ、胸部装甲内部の球体が凄まじいエネルギーをチャージすると、空間が歪曲していく。


「上空を冷却、大地に放熱、胸部には超重力反応…!?各機距離を取れ!巻き込まれるぞ!」


 リクイヲムの異変を感じ取ったヴィクスは、セブン・スレイヴを通じてイズロツ隊各機に伝令を飛ばし、ヴィクスの伝言を聞いたイズロツ隊各機は更に距離を取る。


 イズロツ隊各機がリクイヲム周辺から退避した少し後には、超重力が渦を巻いて牙を剥き、リクイヲムの周囲は巨大な台風の様に荒れ狂う。


 イズロツ隊各機は退避しつつも、リクイヲムにはVSLKやレーザー砲で攻撃していたが、リクイヲムのTL-D粒子がレーザーを分解し、VSLKの弾はノイズがかった障壁で消滅、傷一つつけられない。


 唯一の例外がヴィクス専用イズロツに搭載されているセブン・スレイヴだけであり、円柱ユニットがリクイヲムの障壁をものともせずに突破して各所を攻撃していたが、火力が足りず、リクイヲムを止めるには至らなかった。


 セブン・スレイヴによる全方位攻撃に反応したのか、リクイヲムは超重力砲をチャージしたまま全方位TL-D共振粒子砲を連射する。


「ちぃ、偉大なるかな、古代の方々は…!」


 リクイヲムの凄まじい連射に流石のヴィクスも攻撃の手を緩めざるを得ず、リクイヲムを攻撃していたセブン・スレイヴの円柱ユニットを三基から一基に減らし、二基の円柱ユニットを臨機に迎撃させつつ、四基の円柱ユニットで量産型イズロツ隊を援護防御しながら舌打ちする。


 量産型イズロツ隊はリクイヲムのTL-D共振粒子砲の連射と誘導光を隊の皆で連携しながら迎撃・回避するのが手一杯であり、反撃する余裕がない様子である。


 それでも、臨機応変に人型形態、高速巡航形態を使い分け、ヴィクスの援護があるとはいえ、未だに被弾していない辺りは並の腕ではない。


 しかし、リクイヲムの行動でヴィクスの余裕が無くなれば一気に形成が傾く事は容易に想像がつく。


 それだけに、ヴィクス達はなんとか隙を見出し、全力でリクイヲムを止めにかかろうとしていたが、リクイヲムの障壁が広域に風や波、鳥、船などといった空間内に存在する物質の虚像と実像を織り混ぜて投射しつつ、自身の周囲には大小遠近の残像を幾重にも生み出しており、肉眼頼り故の錯覚現象にも悩まされていた。


 …リクイヲムとヴィクス達の戦いはリクイヲムが優勢になったが…


_____________________


 ヴィクス達がリクイヲムに手こずっている時…


「……愚か者め…、アリダエル博士、貴殿の未完成創造物は未だ乗り手が無いと言うて荒ぶり、また暴れて民に迷惑をかけんとしておる、何故短慮に奔り滅ぼされたのか、浪漫溢れる創造物を遺したおかげで研究・利用したがるものが増える一方ぞ、拙者は時間を削られて大層迷惑しておる」


 柘榴艦内部にある創造空間にて、柘榴博士は極阿近海の戦闘を視聴しながら一人呟いて何かを創造し、それを映像に向けて投射した。

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