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超創機大戦  作者: 馗昭丹
陰世界騒動
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表日本へ〜世龍艦隊と紅剣

赤い量産型イズロツが撤退してから少し後、紅月の紅乙女が白揚羽に吊り下げられながらコウノトリのZW格納庫に入り、紅陽の紅乙女が紅月の紅乙女に肩を貸す様に屈む。


「お姉、大丈夫?」

「…大丈夫よ、不完全燃焼だけど」


昂りが治らない紅月を案じ、紅陽が気遣う様にして尋ねるが、紅月は鋭い目つきのまま答える。


「おっと、紅月も紅陽もそのままじっとしていて、このくらいなら私の紅乙女の修理装置で楽勝だよ」


瑠璃亜の紅乙女が紅月の紅乙女の左脚部を手に取り、リペアボックスシステムが展開して紅月の紅乙女の左爪先部分の修理を始める。


「おお、こんなこともできるんだ」


「いつも思うけど、瑠璃亜の紅乙女の修理装置って凄いよね、どんな損傷でも修理しちゃうんだから」


「…私の紅乙女は竜騎兵3号機みたく戦闘よりも電子戦や支援特化だしね、このくらい楽勝」


紅月の紅乙女の左爪先部分が数分もしない内に修理が完了し、揚羽と紅陽が感心した様に言い、瑠璃亜は親指を立てて得意げに言う。


「おけ、もう立てるよ」


「紅陽、立たせてね」

「お姉、いくよ、よいしょ…と」


-シュゥゥン-

-ズゥン-


紅月の紅乙女のチェックを終えた瑠璃亜が紅月と紅陽に言い、紅陽の紅乙女がゆっくりと紅月の紅乙女を立たせる。

紅月の紅乙女は何の問題もなくスムーズに立ち、屈伸と爪先立ちをして調子を確かめると、紅月に微笑みが戻る。


「ありがとう、瑠璃亜、これでまた戦えるわ」


「んん、紅月はマジで機体が動かなくなるまで戦うから、こまめに修理しとかないと心臓に悪い」


紅月の言に瑠璃亜は「紅の戰姫」の異名が広まったきっかけになった旧長野県での激戦を思い出しながら言う。


「………」

「!、衛連のZW!」


紅月は途端に武器を外に向けるや、紅陽も臨戦態勢になるが、瑠璃亜は気にせずリペアボックスシステムをしまう。


「…紅月、紅陽、こいつらは味方だよ、この先に空賊のパワードスーツが6、飛行型のZWが4機待ち伏せてるけど、こりゃ戦わずに済みそうだね、戦う事になっても秒で掌握やっちゃうけど」


リペアボックスシステムの収納を終えた瑠璃亜は近くの艦艇や機体の音声をまとめて聞きつつ、動きを監視しながら空賊達の機体や艦艇のデータを記したモニターを見ながら言うと、コウノトリ周囲に後期型ガロツⅢが11機展開し、隊長機と思しき赤い量産型イズロツがコウノトリに接近して光信号を出す。


「先程の非礼、御容赦願いたい、お詫びとして、これより貴艦の護衛行動を取る、武器を下げられよ」


光信号からメッセージを読み取った紅月は、紅乙女のバズーカをしまう。


「…紅の戰姫・飯富紅月に紅の狼少女・飯富紅陽、S級ハッカー・高坂瑠璃亜に飛騨の熊・三木良徳、災厄の黒い風・松平縁に死地に舞う白揚羽・雲切揚羽、島根の王子・柳楽瞑緒に王子の剣と槍・神庭織兎と神庭美結、青き鳳雛・鳳凰院寧音ときたか、…どうりで陽花が手こずるわけだ」


赤い量産型イズロツのパイロット…ファルシアがコウノトリ内外に搭載されているZWとパイロットを見て若干驚いた様に呟き、AAA評価の張陽花と互角かそれ以上の技量を持つ猛者達と本気でやり合わなかった事に安堵する。


「ほう、君もなかなかやるみたいだね、私と一戦交えるかい?」


「…魅力的な誘いだが、遠慮しておくよ」


突然、赤い量産型イズロツに瑠璃亜の音声が入るが、ファルシアは全く動じずに答える。


「ありゃ、残念」


「…引き下がると見せてジャブを入れないでおくれよ」


瑠璃亜は残念そうに呟くが、水面下で面攻勢を仕掛けており、ファルシアは瑠璃亜の面攻勢を尽くブロックしながら呟く。


「私も暇じゃないんだ、この辺でやめてもらえると助かる」


「ふぅん…まあ、いいや、今日は挨拶ということでこの辺で…じゃね」


ファルシアは負担の大きさから、瑠璃亜に手打ちを提案し、瑠璃亜は渋々手打ちに応じて去っていく。


「…(…EWAC機能搭載型のレドーム頭の量産型イズロツはルージュ・セイバーズの四番手で魔術師の異名を持つハインリヒ・東郷・ファルシア、ハイブリッド・ミンチドリル搭載型の量産型イズロツが三番手で殲滅の女王ことティアリア・ドルイエか、絶対にやりあいたくない相手だ)」


揚羽はルージュセイバーズの赤い量産型イズロツ二機のデータを見て若干表情を険しくしつつ、縁のクラネオンⅢに回線を繋ぐ。


「…(この二人から発せられるこの感じ…何?)」


ティアリアはクラネオンⅢに乗る縁と白揚羽に乗る揚羽から親和性の高いオーラを感じとり、二人に意識を向ける。


「…(ああ、気に障ったらごめんなさい、私でもわからないんです)」


ティアリアの意識を即座に感じ取り、更にティアリアと感応して言語共有した縁は、冷や汗を拭いながら言い訳じみた思念を飛ばしてしまう。

縁の感応に反応したクラネオンⅢがティアリアの量産型イズロツの方を向く。


「…(…突然感応して言い訳しないでくださる?私に無断で感応交信なんて十年早いわ)」


「…(…えぇぇ、そっちから飛ばしてきてそれ言う?)」


「…(…波長が近いと突然繋がる、事故みたいなもの)」


三人はさして驚く感じもせず、自然に交信しあう。


「…(…私はルージュ・セイバーズ三番手のティアリア・ドルイエよ、貴女が災厄の黒い風こと松平縁、貴女は死地に舞う白揚羽こと雲切揚羽ね、噂はかねがね)」


「…(全然嬉しくない二つ名の方が有名になってる……、いや…クラネオンⅢに乗ってからあちこちで騒ぎ起こしちゃってるけど、殆ど事故や巻き添えになっただけですからね!?)」


「…(私も偶然が重なってああなっただけ、ちょっと…お仕置きしただけなのが…どうしてこうなった…)」


「…(………、…何これ、私達…風評被害者の会?)」


縁と揚羽と情報共有してしまったティアリアは、目を点にして思案する。


「…(…ああ、経緯に親近感が、ティアリアさんも同類だった)」


「…(…親近感がアップした)」


「…(…迂闊だったわ、情報共有してしまうなんて…)」


時すでに遅く、縁と揚羽にもティアリアの過去が知れ渡ってしまい、ティアリアはやってしまったとばかりにため息まじりに思案する。


「…ティアリア、何をやってるんだい?」


「…あら、覗き見の天才ともあろう貴女が分からないの?」


ティアリアの様子を不審に思ったファルシアが回線を開いて尋ねるが、ティアリアは尊大な口ぶりで答える。


「…人聞きの悪い事を言うね、私だって弁えているよ」


「…どの口が言ってるんだか、ご機嫌よう」


ファルシアは表情一つ変えずに反論するが、ティアリアは若干呆れたような口調で言い、回線を切断する。


「やれやれ、信用が無いな、私は…」


ティアリアに一方的に回線を切られたファルシアは、微笑みながら直ぐに別のモニターに切り替えて呟く。


__________


「艦長、レグニオという艦からメッセージが届きました」

「読んでくれ」


「はい、先程の非礼、誠に申し訳なく存ずる、お詫びとして先に待ち伏せしている空賊共を散らし、護衛を付けて航空の安全を約束する、空港に到着し次第、損害に応じた各々の賠償に応じる、衛連の銅の剣を率いる者…張世龍…以上です」


「張世龍だと…?…先日の羽田空港で被災した者達に巨額の義援金を振り込み、配給と激励ライブを主導した者ではないか…、返信!…その様な気遣いは無用である、今回は義に免じ不問とする故、此度の様な事が起きない様に教育を徹底されたし、とな」


コウノトリの艦長は通信士に返信を命じる。


「…世龍殿に礼を言いたかったが、この様な事になるとは…」


艦長は溜息混じりに呟きながら椅子に座る。


________________


「標的は予定通りの進路をとりましたぜ、このままいけば有利な陣形で攻撃できやす!」


「…少し前に偵察部隊を出しておいた、標的だけなら予定通り事を進めるが…」


「…敵の戦力多数!3…6…11機のガロツⅢと見慣れない新型機が既に展開中!更に後続に艦影あり!こちらを捕捉している…!?」


「……御頭、マジでアレを襲うんですかい?」


「俺たちも腕に自信がないわけじゃねぇですが、こいつら相手じゃ分が悪いですぜ!」


「………」


コウノトリを襲う段取りを進めていた空賊達は、コウノトリに搭載されている機体の数と、護衛に付いている後期型ガロツⅢの数を見て悩む様に言う。


「…ボス、近くには衛連の万能戦艦・レグニオと重巡洋艦・エウジェ級が3隻いますぜ、それも張世龍率いる精鋭部隊・ブロンズ・セイバーズと衛連の精鋭にしてアイドルグループのルージュ・セイバーズが…」


「…ちぃ、衛連の白鷹艦隊と肩を並べる精鋭中の精鋭達か…!襲撃中止!展開中の野郎どもに撤退命令を出せ!しばらくは大人しくしておけと伝えろ!」


「ヘイ!」


偵察部隊からの報告で意を決した空賊の頭は、襲撃を諦めてさっさと撤退してしまう。


_____________________


衛連の万能戦艦レグニオにて…


「展開中の空賊…撤退していきます、コウノトリの航空を妨げる心配は無くなりました」


「殲滅せずに済んだか、表日本政府から入国・着陸許可を得ている、本艦はこのまま表日本まで随行、展開中のイズロツとガロツⅢは引き続きコウノトリを護衛せよ」


「コウノトリから返信!気遣い無用、義に免じ不問にする故、此度の様な行いが起きない様に教育を徹底されたし…との事です」


「返信、貴官の寛大な処置に感謝するとな、…まさか不問にしてくれるとはな…、護衛は続行、コウノトリと関空に停泊している艦艇や旅客機の補給費用はこちらで持つ、先方に悟られるなよ」


張世龍は一先ずの脅威を取り除いた事に少し安堵しつつ言う。


「さて…張陽花少尉、命令違反に独断での戦闘行為、乗機のみならずお供の乗機まで小破させた事に対し、何か言う事はあるか?」


「………、ありません」


世龍は陽花に対して比較的穏やかな口調で問い、陽花は険しい表情をしたまま震えながら答える。


「…貴様はしばらく戦場に出る事を禁ずる、しばらくは自室で安静にしているが良い」


「…了解…」


「…下がって良い」


世龍は陽花に出撃禁止を申し渡しつつ、陽花の表情から何かを読み取った様子で、密かに何かを始める。


陽花の去り際に叱咤激励が飛び交い、陽花は周囲に頭を下げた後、自室へと去っていく。


「張中佐、貴殿の娘がこう言う失態を犯したというのになぜ貴官は責任を取って辞任せんのだ?んん?」


「そうじゃそうじゃ!辞任しろ!」


陽花とは入れ替わりに非常に偉そうな士官達が入室して世龍に対して勝ち誇った様な態度で言う。


「…貴様、政府軍のZWをネタにして陽花に出撃を急かしたらしいな」


直後に世龍は偉そうな士官を睨みながら地響きの様な低い声で言う。

その形相はまるで阿修羅の様であり、流石の偉そうな士官達もたじろぐ。


「な、何を言っておるのかわからんなぁ、貴官の娘の甘やかしぶりには皆が辟易としておるのだ、このままでは他の将兵達の示しがつかぬぞ!貴官が責任を取って辞任する事で万事丸く収まるのだ」


しかし、偉そうな士官ももっともらしい屁理屈を捏ねて反論する。


「…だとしたら、貴様らも辞任するのが筋だろう、何なら儂と共にレグニオの懲罰室に籠るか?」


世龍は士官達の親子揃っての数々の苦情と命令違反等を記録した書類を突きつけながら言う。

その迫力に他の士官達は顔を青褪めさせていく。


「は、話をすり替えられては困るなぁ、今は貴官と貴官の娘の責任問題をどう解決するか否かを…」


-カチリ-


「ドルイエ少佐、これ以上駄々をこねる気ならば、頭を吹き飛ばしますよ?」


偉そうな士官ことドルイエ少佐がまたもや言い訳をしようとした時、紅の軍服を着た赤髪の女性がドルイエ少佐の後頭部に拳銃を突きつけながら言う。


「なにおう………」


ドルイエ少佐は両手を上げて冷や汗を滝の様に流しながら睨み返そうとするが、他の士官達は世龍の迫力に青褪めて動けないでいるのを見るや、自身も表情が青ざめていく。


「…よさぬか、ジュリエ」


「………」


世龍は凄味のある声でジュリエに言うや、ジュリエは圧倒されつつも冷静になって銃を収める。


「少佐、言いたいことはそれだけか?」


「…はあ…はあ、か、覚悟しておけ!」


解放されたドルイエ少佐は捨て台詞を言ってブリッジから去っていくと、他の士官達もそそくさと去っていく。


「…」


世龍は何事もなかったかの様に姿勢を正し、ジュリエは世龍を見つめる。


「………」


「…少佐、儂は甘いか?」


その場に漂った沈黙を破る様にして世龍が問う。


「………、甘いですね」


「…そうか」


ジュリエは僅かに思案するそぶりを見せてから答え、世龍は僅かに自嘲する様な感じで答える


「…ですが、私はそんな貴方を好ましく思いますよ?」


「…ふん、取り繕うな」


そんな世龍を見てかジュリエは微笑みながら言い、世龍は素っ気なく言う。


「…(…あの方を失った心の傷、思ったより深い、私ではこの方の心の隙間は埋められそうにないか…)」


ジュリエは世龍を見て決意を新たに思案する。


_________________



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