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超創機大戦  作者: 馗昭丹
陰世界騒動
72/77

陽穿島付近の戦い〜神装妖械・驍公

今回は雑ながらハルツィス側の戦闘とゾディアギーニと戦った神装妖械の話?になります。

裏日本の四国と九州の間に浮かぶ陽穿島(ようがつしま)付近にて、大型のコンテナを搭載したイズロツが低空飛行中、陽穿島の様子を見にきていた政府軍の偵察艦隊が機影を捉え、神代(くましろ)級重巡洋艦から飛び立っていた偵察型リグイースⅢが機種を特定する。


「あ、あれは…イズロツ、あのエンブレム…間違いありません、衛連のハルツィス・A・永戸中佐です!」


「…銀の獅子と名高い白鷹の艦長が、我が軍の勢力圏内で単独行動とはな、…艦載ZW隊はいつでも出られるか?」


「全機出撃準備良し、いつでも出られます」


「…艦載ZW隊に出撃命令、大友提督に応援要請を出せ、追い払うぞ」


「了解、艦載ZW隊、出撃して下さい」


神代級から四機のリグイースⅢが出撃し、僚艦の準神代級二隻から六機のリグイースⅡ改が出撃して編隊を組む。


「…別に落としてしまっても構わんのだろう?…手柄はいただくぞ!」


準神代級の艦長がイズロツとその周辺を索敵させながら目をギラつかせる。


「敵はエースクラスだ、各隊一斉射の後、目標に対して波状攻撃を仕掛ける、後はプランCに沿って行く」


「「了解」」


「行くぞ!神代の双獣隊!」


少し後に準神代級から出撃したリグイースⅡ改が一斉に共振粒子砲を放ち、各隊が攻撃隊と護衛隊に分かれて行動する。


「…救援物資を届け、コーティス達を回収したと思ったら、今度は政府軍の偵察艦隊による歓迎か」


「………」


「少し荒くなる、捕まっていなさいエイル」


「ん…」


イズロツの中でパイロットスーツも着ずに平服のまま操縦しているハルツィスがぼやく。

平服のハルツィスに抱っこされている少女が何が起こるのか心配そうにハルツィスを見るが、ハルツィスの言を聞くや、言う通りにハルツィスの胴体にしがみ付く。

その直後に共振粒子砲の斉射がイズロツの近くを掠め、ハルツィスはやむなく応戦の為にイズロツの背部に搭載していたコンテナをパージして戦闘形態に変形させる。


「おわぁ!?なんだ!?」

「ぐぬぅ!?」

「な、永戸中佐、何が起きたんで!?」


「…政府軍の偵察艦隊が張っていた網に引っかかったようだ、スライ、ラッセン、王孫、すぐに片付けて戻る、それまで耐えていろ」


突然パージされた衝撃に不安を感じたスライ達に対し、ハルツィスはそれだけを伝えてイズロツを加速させる。


「た、単機で大丈夫かよ…!」

「馬鹿言うな、中佐がすぐ片付けるって言ってんだ、大丈夫だ」

「俺が心配してんのは中佐とイズロツに乗ってるエイルの事だよ!中佐は平服で、しかも膝にエイルを乗せてんだぞ!そんなんで戦えんのかって事だ!」

「大丈夫だよ!ごちゃごちゃうるせえ!」

「うるせえのはアンタだよ!」

「うるさいのは貴様らだ!耳元で怒鳴りあうな!」

「「黙れ!」」

「貴様らが黙れ!」


コンテナ内でスライ達が怒鳴りあう間、パージされたコンテナは、イズロツの追加武装兼サブ・フライト・システムでもあるミョウドウユニットがしっかりと固定しつつ、海面スレスレを飛行しながら進行方向へと退避する。


「…神代型が3隻とリグイースタイプが10機か、全滅させるのは容易いが…」


敵戦力の分析を終えたハルツィスは、胴体にしがみついているエイルに改めてシートベルトを締めてやりつつ呟く。


-ヒュゴォォォッ-


「オラァ!」

「遅い」


-ヴゥン-

-ガァン-


ハルツィスは神代型の対高速ZWミサイルとリグイースⅡ改の共振粒子砲をすり抜けるようにして回避し、レーザー・ブレードで斬りつけてきたリグイースⅢをシールドでいなす。


「挟撃するぞ!合わせろ!」

「もう合わせてるぜ!」


「見えているぞ」


-シュゥゥゥン-


「くそっ!右手部が、まぐれ当たりが!」

「気概は買うがな…」


-シュゥゥゥン-


「ちっ!左手部も、ふざけやがって!」


もう一機のリグイースⅢがハイブリッド・バスター・ライフルを放つ前にリグイースⅢの右手部マニピュレーターだけをレーザード・ライフルで射抜く。

右手部マニピュレーターを射抜かれたリグイースⅢは、ハイブリッド・バスター・ライフルを左手部マニピュレーターに持ち換えようとするが、そこも射抜かれてしまう。


「すまねえ!次頼む!」

「気にすんな、この!」


「…緩い」


-ヴゥン-

-バシュゥゥッ-


「ぬあっ!?リグイースの脱出装置を強制作動させたのか…!回収を頼む!」

「うおっ!?危ねえ!今行くぞ!」


先程シールドでいなしたリグイースⅢがもう一度迫るが、今度はリグイースⅢのコクピット近くにある装甲の隙間を、ある角度を付けた最小出力のレーザー・ブレードで刺し貫き、リグイースⅢの脱出装置を強制発動させてパイロットを排除する。


「手加減のつもりか!ふざけんじゃねぇ!!」

「機体も返すぞ、それを抱えて帰れ」


-ガァン-

-ギショォォン-


「ぐっ!?」


パイロットを脱出させて動かなくなったリグイースⅢは、イズロツにシールドとして利用された後、味方機の脱出ポッドを回収したリグイースⅢへと蹴り飛ばされ、飛んできた機体を反射的に抱えたリグイースⅢのパイロットは、それを抱えて徐々に降下しつつ帰還し始める。


「援護射撃の後に挟む!タイミングを誤るなよ!撃てぇ!」

「よし、背後を取ったぞ!」


-ヒュゴォォォ-


「ふん、動きを隠しきれていないぞ」


-シュシュゥゥン-

-ズゥゥン-


「うわあ!?メインカメラと腕部がぁ!」

「馬鹿な!?あの一瞬で捉えたというのか!?」


直後に神代級と準神代級から大型共振粒子副砲の三連斉射が迫るが、ハルツィスは巧みな操縦でこれらを難なく回避し、共振粒子砲に紛れて背後に回り込んだリグイースⅢには振り向かずにレーザード・ライフルを放って頭部とハイブリッド・バスター・ライフルを持った腕部を瞬時にかつ的確に射抜き、側面から迫っていたリグイースⅢのパイロットが驚愕。


「敵を前に狼狽えるか、死ぬぞ」


-ヴゥン-

-バシュゥゥッ-


「なっ!?動きが見えなかった…!」


さらにハルツィスはその動揺を見逃さず、側面から迫っていたリグイースⅢの頭部と右腕部をレーザー・ブレードで切断する。


「リーダーが瞬殺された…!?ち…レーザーが主体なら!これはどうだ!」


-ボォォン-


「…素人が、行動に対し、味方との連携が取れていないぞ」


-シュゥゥゥン-

-ギュゥゥゥゥン-


「レーザー撹乱粒子…!狙撃に失敗した、直ちに位置を変える」

「あの馬鹿!無駄弾を撃たせるな!」


もう一機のリグイースⅢがレーザー撹乱ポッドを展開し、イズロツのすぐ近くに放って周辺のレーザー系の武装を封じるが、リグイースⅡ改の援護射撃も無効化してしまい、見かねたハルツィスは呆れながら呟く。


「狙撃の邪魔してすまねえ!だがこれで奴は暫くレーザーは使えない筈だ!蜂の巣に…」


「…たしかにレーザー撹乱ポッドの粒子は大気圏内では粘度が高くなり拡散し難い、それがどういうことかまでは分かっていない様だな、それに母艦がガラ空きだ」


「んなぁ!?そっちにいくのかよ!?」


「敵ZW、急速接近!」

「迎撃急げ!」


「ふん、一応保険をかけたが、そんな弾幕ではイズロツには掠りもせん…!」


「ミサイル、レーザー砲、共振粒子砲を擦り抜けるように回避して迫ってきてます、こちらの迎撃が追いつきません!」

「落ち着け!予測して迎撃せい!」

「うぅ、目標の動きが速すぎて照準が追い付かない…!」


得意げに言い放つリグイースⅢのパイロットに対し、ハルツィスはこれを逆手に取って神代級との距離を急激に縮め、神代級と準神代級は対空レーザー砲や対高速ZWミサイルでイズロツを迎撃するが、イズロツは凄まじい速度で弾幕をすり抜けるようにして回避しながら突入し、あっと言う間に神代級のブリッジ前にまで肉迫する。


「護衛は未熟、弾幕は薄い、砲撃手の腕、艦のクルー達の判断もなっていない、演習ならまだしも、実戦なら即死ものだぞ」


「このやろ!」


-カシィン-

-バシュゥゥッ-


「うお!?機体から離れていく!?た、助けてくれぇ!」


-バシュゥゥッ-


「なんだ!?何が起こったぁ!?」


イズロツは神代級と準神代級の武装を次々と破壊していきながら言い、これに釣られるようにして慌てて引き返してきたリグイースⅢとリグイースⅡ改は、イズロツを引き剥がそうと接近戦を仕掛けてくるが、イズロツのプラズマ・ソードで悉く急所を刺されて脱出装置を強制的に作動させられる。


-ギュゥゥゥゥン-


「狙いは良いが、それでは楠木親子の足元にも及ばんぞ」

「え…?こちらのレーザーを打ち消した…?そんな…!」


リグイースⅡ改のハイブリッド・ライフルによるレーザー狙撃が銃口付近で打ち消され、リグイースⅡ改のパイロットは驚愕する。

そして、次の瞬間にはリグイースⅡ改の頭部及び両腕部が射抜かれ、リグイースⅡ改が沈黙する。


「…エイルの手前、そして偵察艦隊と見て手加減したとはいえ、三分も保たないとはな…」


政府軍偵察艦隊を無力化したハルツィスは、胴体にしがみ付くエイルの頭を撫でながら言い、即座に神代級の甲板から飛び立ち、戦闘前にパージしたミョウドウユニットとコンテナ群を回収して戦線から離脱する。


「…ブリッジを破壊しなかった…?」

「敵ZW、急速離脱していきます」


「…本艦の航行は可能か?」

「武装は全滅しましたが船体及びエンジン、推進部分に損傷なし、航行は可能です」


「死傷者は?」

「本艦及び僚艦に死者は無し、数人が打撲や捻挫等、何れも軽傷です」


「…出撃したZWと漂っている脱出ポッドを回収し、艦の負傷者を手当てしつつ、港へ戻るぞ、このままでは海賊どもの餌食になりかねん」

「…了解」


「…(くっ、手加減されてこのざまか…!あれが…銀の獅子…ハルツィス・A・永戸…、恐るべし…!)」


神代級の艦長は、ハルツィスのイズロツに一瞬で艦を無力化された事に屈辱を覚えると共に、ハルツィスの腕とイズロツの性能に戦慄する。


「…しっかりと見たか、エイル」

「…ん、ハルツィス、技量で圧倒、そして不殺、でも…相手…過酷…」


ハルツィスの言にエイルは、片言ながらも慣れない言葉で答える。


「過酷…か、そうかもしれんな…、互いに生きていれば…償うこともできよう」


エイルの言にハルツィスは僅かに憂いを含んだ表情になるが、すぐに渋い表情に戻しながら言う。


「…ガナス、桔梗、一つ頼まれてくれるか、先程交戦した相手だが…」

「…ハルツィス、敵にも優しい、でも…ハルツィス、悲しい」


エイルの言から察したハルツィスは、かつての戦友に繋いで何かを依頼し、依頼をし終えると、イズロツをミョウドウユニットに接続して高速移動を始める。


「んがぁっ!?ミョウドウユニットの高速移動かよっ!?」

「くそっ!何が悲しくて野郎三人でおしくらまんじゅうをせにゃなんねぇんだよ!」

「くっ!やめろ、それ以上近づくな!」


イズロツの高速移動の反動を受けたコンテナの中では、スライ達がショック吸収ジェルに挟まれる形で窮屈な思いをしており、三人でポジションの取り合いをしていたが、ハルツィスは素知らぬ顔でイズロツを移動させていたという。



「応援要請を受けてわざわざ来てやったが、なんだこのザマは!」


「…返す言葉も無い」


戦闘終了から数分後…今頃になって応援に現れた大友艦隊の大友提督が神代級の惨状を見て怒りを露わにしながら怒鳴り、大友艦隊旗艦の豊肥級重巡洋艦の豊後が神代級に接近する。

やがて豊後が神代級と接舷し、豊後から大友提督と大柄の男が数人の将校を引き連れて神代級のブリッジに渡る。


「たかが一機にここまでやられおって…!この恥晒しどもが…!修理にどれだけの予算が必要かわかっているのか…!」


「…単機と見て敵を侮った責は私にあります、クルー達は私の指示に従い、全力で戦ったまでのこと。処罰は私だけにしていただけませんか?」


大友提督の背後に控えていた大柄の男が神代級の戦闘状況を見て激怒しながら言い、神代級の艦長は遺憾そうに言う。


「もうよい!貴官は本日で艦長の任を解き、死刑囚にする!クルー達はもう一度訓練生からやり直しだ!スケジュールはより過酷なものを用意してある!死ぬ覚悟をしておけ!」


大柄の男は吐き捨てるように言うや、複数の回線を繋いで神代級偵察艦隊の処罰の手続きを始める。


「全く、退役将校殿の怒りもごもっともだ!こんな無能が艦長では、いかに神代級といえど宝の持ち腐れでしかないわ!歯ぁ食い縛れ!」


-バキャァッ-


「ぶっ!」


大友提督は憤怒の眼差しで神代級艦長を見て恫喝する様に怒鳴り、ついでゴツい拳骨を神代級艦長にみまい、神代級艦長は数メートル先まで飛ばされる。

床に転がった神代級艦長を見た大友提督は、物凄く不機嫌そうにしながら神代級から去って行く。

大友提督の気迫の凄まじさに神代級のクルー達と準神代級の艦長達は身じろぎひとつ出来ず、誰も反論出来ないまま去られていく。

お供の将校達は皆、気の毒そうな目で神代級の艦長やクルー達を見た後に大友提督と退役将校の後について去っていくが、最後尾の将校二人は姿勢を正し、神代級艦長に敬礼をしてから去って行く。


「…すまんな、皆」


大友提督のゴツい拳骨を受けてもなお、気絶しないくらいに鍛えられている神代級艦長は、大友提督の拳に握られていたスティック状の何かを手に取りながら呟くと、神代級のクルー達は漸く呪縛が解けたように動き出し、神代級艦長の手当てをする。


「…(ダメな上司は淘汰されてしかるべし、しかし、これでは出世どころではなくなった、ジャウキル閣下の鞍替えの誘いに乗るとしよう)」


「…(この方が無能なら、全てにおいて劣る俺は何なのだ…!俺は絶対に見捨てんぞ!死刑になぞさせん!)」


準神代級艦長の一人はジャウキルへの鞍替えを決意し、もう一人は大友提督と退役将校の神代級艦長への当たり様を見て怒りを抱き、互いに行動を開始する。


__________________



エンゼル級が降下したのとほぼ同じ頃、瀬戸内海から旧愛媛県に侵入した門徒衆は、四国全土の掌握のために複数ある要塞跡地を拠点に利用しようと目論み、数多の信者と工作員を動員して本山の建築をしつつ、土地を始めとする数多の権利を独占。

上陸から僅か一時間程で要塞跡地に門徒衆の拠点印を付けて上空から物資を運ばせ、本山の周辺を如水壁(じょすいへき)と呼ばれる現地組立型要塞壁で囲い込み、本山建築の安全性を確保。

しかし、現地に止まっていたレジスタンス達が門徒衆に反発した為、本山(仮)の周辺では小競り合いが起きていた。


「ここは俺達の土地だ!」

「あやしい奴らは出て行け!」

「俺達も手を貸すぜ!彼奴らは危険だ!」

「あの変な壁をぶっ壊せ!!」


レジスタンスだけでなく、この地に根付いていた賊徒や傭兵達も、自分達を一方的に追い払った門徒衆に反発しており、利害が一致した彼らは団結して猛攻を加える。

しかし、彼らのZWの武装では本山の周囲を固める様に聳え立つ壁に一切の攻撃が届かない。

壁に搭載されている94㎜バースト・リニア・ガンと12〜56cm可変口径レール・キャノン、全方位拡散共振粒子砲、卍型口径ホーミング・レーザー砲・卍焼き、多連装ホーミング・ミサイル・ランチャー、多連装高精度レーザー・ガトリング砲などによる激しい迎撃が生み出す分厚い弾幕が全ての攻撃を無効化していたのである…。


「…レジスタンス達の攻撃は激しさを増していますな」


「…こちらからの手出しは無用、この如水壁(じょすいへき)は政府軍のレキール級戦艦七隻の艦砲射撃の直撃を受け続けてもビクともしない代物だ、ただひたすらに防備を固めてレジスタンス達を騒がせておけば良い」


「…はっ、ですが念のために予備のバリケード卍を配置しておきます」


「…本山が完成するまで大人しくしているだけで良い、本山さえ完成してしまえば…我等に反発するレジスタンス達も一瞬にして我等に忠実な僕となる、次の為にも余計な殺生は控えよ」


「………」


サングラスに逆モヒカン頭の僧侶らしき人物が専守防衛の意図を語るや、スキンヘッドの強面僧侶が錫杖を翳して何かを描き、ヌリカベを思わせる分厚いシールドと分厚い装甲を持ったバリケード卍という防備型ZWを配置していく。


スキンヘッドの強面僧侶が配置したとおりに、バリケード卍が本山(仮)に停泊中の陸上艇から飛び立ち、如水壁の外に出て本山(仮)を守るように展開する。


しかし…


-ゴゴゴゴゴゴォォ-


突如として空から爆炎と共に何か巨大な物体が落下し、その衝撃で四国のほぼ全土が震える。


「何事か、地下の人工地震ではない様だが…」


「…付近に何やら得体の知れぬ物が落下したと思われます、千里眼モニターにもこんなモザイクがかかった様なものしか写りませぬな…」


「…なんだこれは、…まあいい、敵対する様なら奴に攻撃を集中し、動かぬなら捨て置け、調査は本山の建築が終わってからにせよ」


千里眼モニターに映し出されたものは山の肌を削りながら落下していくモザイクがかった何かであり、スキンヘッドの強面僧侶は、その得体の知れない物体に僅かながら驚愕するが、サングラスの逆モヒカン頭の僧侶らしき人物は冷静に言い、待機中の部下達が得体の知れない物体が落ちた方角に向かって配置につく。


レジスタンス達はその得体の知れないものを警戒したが、一部の賊徒と傭兵達は、その得体の知れないものを見て一計案じたのか、その影に隠れる様に機体を動かし、如水壁の迎撃を防ぐ盾にしながら攻撃を仕掛ける。

当然ながら、如水壁の迎撃がそちらにも向かい、流れ弾が次々とその得体の知れないものに当たる。


「クソッタレが、汚ねえもん見せんじゃねえ!」

「ホーミング・レーザーの照準どうしたぁ!?」

「駄目です、あの変な奴が何らかの障壁やジャミングを放っている様で照準出来ません!」

「野郎!なかなか良い踊り見せつけてくれるじゃねぇか…!」

「ミサイルはぁ!?」

「この方角で使ったら同志達の宿泊地に当たってしまいます!」

「次は四股を踏んで来るなら来やがれをしてやがんぞ!俺を力士の末裔だと知ってふざけてんのか!」

「いやいや、そりゃ知らんじゃろ、ありゃ単なる挑発じゃき!」

「ぐぐっ!クソ!今度はフル○ンで汚ねえ踊りしやがって!蜂の巣にしてやらあ!」

「くそぉ!あのモザイクがかった奴の変なバリアのせいで攻撃が届かねえ!」

「ええい、何とも邪魔な奴だ、主砲口径を56cmに変更し、あれごと撃ち抜け!」

「無茶言わんで下さいよ、そんなことしたらわしらも使ってる港や町まで吹き飛びますぜ」

「クソ、邪魔な所に落ちおってからに…!」


「…落ち着かんか!!…安い挑発は無視して迎撃に集中せい」


「は、はい!」


賊徒と傭兵達は、得体の知れないものの後方が門徒衆の艦艇が停泊している港であり、更に射線上に門徒衆が占領した町がある事も知っており、得体の知れないものの影に隠れて攻撃してきたり、その上に乗って機体から出、下品な尻振りダンスをしたり、機体の手の上で上手な阿波踊りを見せつけたり、機体の肩部で半裸になって四股を踏んで挑発したりする賊徒達に業を煮やしたのか、如水壁の砲撃手が激昂するが、逆モヒカン頭の僧侶らしき人物が一喝して落ち着かせる。


『んにゅ…?』


そんな中、モザイクがかった変な奴の中にある六畳一間の部屋らしき場所で布団に包まって眠っていた少女は、寝ぼけ眼で外の様子を写しているであろう龍を模した枠組みの鏡と半透明球状の中にあるレーダーらしきものを見て、今置かれている状況を整理し始める。


『…んと、見たこともない人型機動兵器群と壁が戦ってる…?…ということは…陽界からの脱出に成功したのかな…?』


少女は一間の天井に映る戦場図と飛び交う弾丸とレーザーを跳ね返し、毛筆で描かれた「被弾しても問題なし」の文字を記している巻物を広げたちび黒子達と青い炎を灯している半透明の人の姿を見ながら呟き、乗っている機体の状態を調べる。


『…あれ…?…驍公が小破して…休眠モード中になってる…?』


少女は驍公の操縦系統であるテレビのリモコンに似た装置を天井に向けてスイッチを押しながら呟く。


『…どっちに味方しようか…、壁の中は澄んだ黒い炎、純粋な赤い炎…、対する人型機動兵器の奴らは…濁った青い炎、純粋な赤い炎…驍公を盾にしてる奴らは緑の炎…、質で言えば壁側なんだろうけど…、壁の中からドス黒い瘴気が溢れ出そうとしてるから…潰しといた方が良さそう』


少女がそう呟くや否や、驍公の全身を覆っていたモザイクらしきものが鮮明になっていき、100mの巨体に頭部に二本の巨大な羊角、九本の毛尾の中心から一本の巨大な裸尾が生えた神装妖械・驍公が姿を現し、雄叫びをあげる。


「羊角の生えた大狼…!?こんなゲージの上がり方は見たことがない…!」


「神格・魔格ともに計測不能!少なくとも究極神級だと思われます!」


「…神装妖械か、まさかここで本物を目の当たりにするとは思わなんだな…」


眼前に現れた神装妖械に門徒衆は動揺し、如水壁の迎撃システムのほぼ全てを驍公に向けるが、モザイクがかった障壁が攻撃の悉くを無効化し、驍公の巨体が如水壁に近づいていく。


『え…と、陽界の地図だと…ここは四割島国(シカツノシマグニ)になってるけど、裏世界の円日(マドカヒ)の四国に該当する地なのかな?類似点が多いし…』


卓上に浮かび上がった五つの世界の地図が現在地に該当する地を特定し、少女は獣耳を前後左右にピョコピョコさせながら呟き、報告の巻物を忙しなく運ぶちび黒子達を摘んで卓上に配置していく。


『さぁ、行っておいで、わたしの僕達よ』


少女によって卓上に配置されたちび黒子達が拳骨の様な姿に変形して驍公の周囲に展開する。


「な、なんじゃありゃあ?」

「拳骨か?」


驍公の周囲に現れた大きな拳の様なものに、賊徒達は身を隠しつつ呟く。


『驍公・怒りのメガトンパンチ!…なんつって』


-ギショォォン-

-ウゥゥゥゥゥゥン-

-ドゴォォォォォォォォン-


少女が冗談交じりに言った直後、巨大な拳が驍公の右拳にフィットし、次の瞬間には光と共に勢い良く射出され、高速で如水壁に向かっていく。


-ドゴォォォォォォォン-

-ズゴォォォォォォォン-


次の瞬間には、巨大な拳が如水壁を容易く打ち抜き、反対側の如水壁をも貫通して驍公の腕に戻った後にちび黒子達の姿に戻って驍公に吸収される。

巨大な風穴が空いた如水壁は、構造崩壊を起こして崩れ去り、中の本山にも損害が出る。


「…究極神の加護を受けた如水壁がこうも容易く破られるか、どうやら我等はここに拠を構える事叶わぬらしい、総員退避せい」


驍公の圧倒的な力を見て、この地の防衛は不可能と判断した逆モヒカン頭の僧侶らしき人物は、直ちに非戦闘員達を退避させる様に指示し、残る戦力は非戦闘員達を逃がすために殿軍を務める。


『我が拳骨で小突いただけで壁どころか信仰者の加護も消えた…、この神は信仰者をこうも簡単に切り捨てるのか…』


機能しなくなった如水壁を裏拳で粉砕しつつ、驍公は次々と消えていく加護の力を見ながらぼやく。


『あ、おはよ』

『ふん、なにがおはよだ睦美(ムツミ)よ、寝不足の儂が眠気との戦いに敗れて因果の黄昏の近くで仮眠を取っていたというのに、勝手に儂の身体を動かし、睡眠時間を削るとは何事か』


目覚めた驍公が睦美に向かって不機嫌そうに言う。


『ん、緊急事態だったから』

『緊急事態…か、で…今更だがここはどこだ?何故儂らは下界に似た地に降り立っておるのだ?』


睦美の気の抜けた返答に対し、驍公は残る如水壁を引き抜いて倒しながら言う。


『ん、私にも分からない、陽界を飛び出て次元渦に飲み込まれたとこまでは覚えてるけど…』

『ふむ…』

『多分だけど、ここは裏世界の円日(マドカヒ)にして、四割島国(シカツノシマグニ)みたいよ』

『なんと…、ここが嘗ての四割島国だというのか…少し見ない間に随分と荒れ果ててしまった様子じゃのう…』


睦美が卓上の地図を驍公に送り、驍公はやや寂しそうな眼をしながら言う。


「いいぞ!もっとやれ!」

「そのまま引き倒しちまえ!」


壁や門徒衆の抵抗をものともしない驍公の暴れぶりに、先程まで影に隠れていた賊徒達が揃って応援する。


「ひ、ひいぃ!化け物だぁ!」

「た、助けてくれぇ!」

「こら、逃げるな!非戦闘員達を逃がすまで踏ん張れというのに!…くそっ、この私を以ってしても門徒達の逃亡すら防げんとは…!」


驍公の桁違いのパワーと頑健さにすっかり戦意を挫かれ、おまけに加護の力も失った門徒衆は、まるで蜘蛛の子を散らすかのように退散していき、戦局は一気にレジスタンス側に傾く。


「野郎ども突っ込めぇ!!」

「「おおぉぉぉ!!!」」


逃げ腰になった門徒衆を見るや、反対側で踏ん張っていたレジスタンスと賊徒達も如水壁の欠けた部分から内部に突入し、殿軍の門徒衆ZWとぶつかる。

まともに動ける門徒衆は僅かであり、挟撃を受けた事が災いして各個撃破され、その後は掃討戦の如く一方的に撃破されていく。


門徒衆の非戦闘員達は、道中のレジスタンスや賊徒達の襲撃に遭いながらも命からがら逃げ果せたが、逆モヒカン頭の僧侶らしき人物は、僅かな門徒達と共に非戦闘員達が逃げ切るまでその場に踏みとどまって奮戦し、賊徒達の一部を返り討ちにしたが、運悪く港に停泊していた大友艦隊の警戒部隊と遭遇して捕らえられてしまう。


門徒衆の重鎮が一の逆モヒカン頭の僧侶らしき人物が政府軍に捕らえられた事で、四国各地で本山の造営をしていた他の門徒衆が動揺し、間近くに停泊している政府軍艦隊に対して疑心暗鬼に駆られ、非戦闘員達は密かに四国から撤退。

他の門徒衆達も止むを得ず造営を中止して四国からの撤退を決意し、ほぼ全ての門徒衆が本州へと撤退したという。

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