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超創機大戦  作者: 馗昭丹
陰世界騒動
71/77

工作防止〜テイロン隊補給

四国の各海域から6、7隻の大型潜水艦が海面に浮上し、政府軍の大艦隊の横を平然と横切っていく…。

浮上した潜水艦は、政府軍に攻撃も警戒もされず、そのまま四国の各港に入り、入港した潜水艦のZWハッチが開き、ミアクターを小隊長に、小隊員に四機の甲型卍が次々と上陸していく。


「レーダーに不審艦なし、見回りの各部隊も異常なし、引き続き警戒任務を遂行します」


どう見ても政府軍のものでない不審な潜水艦が多数、政府軍の重巡洋艦の近くに停泊しているのだが、政府軍の将兵達はまるで最初から何もないかのように真面目に報告している。

不審な潜水艦から降りてきたメタボ気味のオッサンと屈強なオッサン達が政府軍の給糧艦に無断で入り、しばらく経ってから大量の食糧と酒を担いで給糧艦から出てきた上に、潜水艦の乗組員達と港で宴会を開き、ドンチャン騒ぎをしてからゴミを放置して内地に向かっていったのにもかかわらず、それらが全く認識できていないのか、政府軍の将兵達はレジスタンスのスパイを瞬く間に取り押さえ、港内に侵入しようとした他の不審者達を直ぐに引っ捕らえたり、現地民の破壊工作を全て阻止してその協力者達を瞬く間に逮捕するなど、中々に厳重な警戒をしている。

潜水艦の乗組員達が酒に酔って調子に乗ったのか、政府軍の将兵の数人が顔に落書きをされており、落書きをされた数人の将兵達は、上官に給糧艦の食糧の激減と落書きとゴミの散乱等を詰問されて言葉に詰まり、怠慢を叱責されて厳罰を受ける羽目になってしまったという…。


…明らかに異変が起きているというのに、政府軍の将兵達は誰一人としてその異変にだけ気付いておらず、それを見ていた現地民やレジスタンス達は政府軍に対し、ますます反感を募らせていく…。


「こちら遊佐隊、旧愛媛県の侵入に成功した」


「こちら秋山隊、旧高知県の侵入に成功、こうも容易く侵入出来るとは…、高知の虎と夜叉が如何に手強かったかを実感する」


「虎と夜叉を追い払ってくれた政府軍には感謝してもしきれんよ」


「全くだ、しかし驚いたのは宗主殿の命令一つで政府軍を手足の様に動かす事が出来た事よな」


「ああ、これも宗主殿の計画と同志達の日々の励みがあっての事だ、我らも負けておれん」


「おうとも、だが先ずは裏日本を我等の総本山にせねばならん、次に表日本、何れはそれを両翼に全世界に進出し、宗主殿の理想を実現させたい所だが、今はどう頑張っても理想には届かぬ、地道な活動を続ける事が重要だ」


門徒衆の遊佐、秋山らが通信の制限すらせずに談笑しながらそれぞれの目的地に向かっていき、他の門徒衆のZW隊も政府軍の厳重警戒網をまるで無人の荒野の様に移動していく。

内地には政府軍の無人型対人ZW・山嵐や有人警備ZW・アスラⅡなどが多数配備されていたのだが、門徒衆のZW隊は悠然とバリケードを撤去して堂々と内地に入っていったのだが、飛行型のZW隊と政府軍の戦闘ヘリ、対人戦闘ドローンも門徒衆には気付かず、寧ろ撤去されたバリケードが味方の怠慢のせいだと騒ぐ有様であった。


門徒衆は誰にも邪魔されずに目的地に到着し、そこで少し休息をとっていたのだが…。

何らかの確信が知らない間に慢心を生み、後々になってそれが惨劇を招く事になるのはよくある話である…。


「…(これは…、大阪、京都、名古屋、小田原で戦った奴らの感じに似ているな)」


陣内と早乙女の甲型紅花が去り、杏奈のイムリースが少し離れた後、光牙は周辺の索敵をしつつ帯電霧の向こう側に存在する何かが不審な動きをしているのを見ていたが、それらが発する思念波には覚えがあった。


「………」


光牙は思念波のイメージをクラネオンⅢのVNWSに入力すると、VNWSがその思念波のイメージに合う機体を絞り込み、いくつかの候補を出した後に特定する。

クラネオンⅢのVNWSが特定した機体は門徒衆の指揮官機であるミアクターと甲型卍であり、懸念事項のなくなった事を確信した光牙は行動に移す。


「…早速活動中の様だが、俺はそれを見逃す程節穴では無いぞ、門徒衆…!」


-ズガァァン-

-ズガァァン-

-バキィィィン-


「ぶあ!?」


-ドゴォォォン-


クラネオンⅢのハイブリッド・ライフルのリニア弾が無警戒だった甲型卍のコクピットに直撃し、甲型卍が爆発する。


「何事だ!?」


「あ、秋山隊長!政府軍から攻撃を受けました!こ、此方を認識しています!」


「馬鹿な…!何故認識されている!?迎撃しろ!」


「ち、一機なら口封じだ!覚悟しろ!」


ミアクターの周囲を固めている甲型卍が一斉射撃を加えると同時に、一機が高電圧アイゼン・ストライクを射出する。


「…ふん、覚悟するのは其方の方だがな」


光牙は門徒衆のZWの動きを読みながらクラネオンⅢを操縦し、超電磁蹴加速装置を使って稲妻の様に多角跳躍して攻撃を回避すると同時に門徒衆の後方に回り込む。

直後に甲型卍から放たれた高電圧アイゼン・ストライクが、先の四国征伐戦で破壊されたZWの残骸にヒットし、バチッという音を出してZWの残骸に高電圧を流し、ZWの残骸に残っていた燃料タンクに引火して大爆発する。


-チュドゴォォォォォン-


「爆発…?あれは…門徒衆のZW…!」


光牙が居るであろう方角で爆発が起きたので、杏奈はイムリースを操縦して瓦礫の山の陰に隠れて狙撃用単眼カメラと大型ハイブリッド・ライフルを展開。

次いで悪視界狙撃用カメラで甲型卍の姿を確認した杏奈は、仲間の仇である門徒衆の存在に怒りを覚え、甲型卍の頭部に瞬時に照準を合わせる。


「そこ!」


-ズギュゥゥン-

-シュン-


「!」


-ジュゥ-


イムリースの大型ハイブリッド・ライフルから放たれたレーザーが瞬時にして甲型卍の頭部を溶かし貫き、更に後方で上に射撃する為に55.6㎜アサルト・ライフルを構えていた甲型卍の頭部に向かっていくが、その甲型卍のパイロットが咄嗟に回避行動をとり、レーザーが甲型卍の側頭部と右肩部装甲を掠めて溶断する。


「…流石は滝川、よく気付いたな」


-ザシュゥ-

-バシュゥゥッ-

-ズゥゥン-


それに呼応するかの様に、上から光牙のクラネオンⅢが両刃型プラズマ・シュナイダーを展開して急速降下し、側頭部が溶けた甲型卍の右腕部を切断して屈み、次いで急速反転しながら甲型卍の両膝部を切断して転倒させる。


「ちぃ!」


-ボォン-

-ズギュゥゥン-

-バキィィィン-

-ドゴォォォン-


転倒した甲型卍は、脚部をパージしてホバー走行形態になるが、姿勢が整わないうちにイムリースの放ったレーザーが甲型卍の胸部に直撃し、爆砕する。


「頭部をやられてもな!」

「遅い…!」


-バシュゥゥッ-


「くそっ!」

「ふん!」


-ズシュゥ-

-ヒュゥゥン-


頭部を失った甲型卍は高電圧アイゼン・ストライクを射出しようとするが、クラネオンⅢのプラズマ・シュナイダーが既に甲型卍の右腕部を切り落としており、門徒衆は続いて左肩部を突き出してタックルを仕掛けるが、クラネオンⅢに容易く回避された上にすれ違いざまにプラズマ・シュナイダーでコクピットブロックを突き刺されて動かなくなる。


「貴様ぁ!」

「……!」


仲間がやられた事に激昂したのか、他の甲型卍がクラネオンⅢに55.6㎜アサルト・ライフルを放ち、もう一機の甲型卍がクラネオンⅢの側面から高電圧アイゼン・ストライクを放ち、更に指揮官機であるミアクターが大型重突槍を構えて上から迫る。


「コイツは手練れか、だが…!」


-カァン-

-ズガァァン-


「むぅ!?」


クラネオンⅢはハイブリッド・ライフルの底部分を使って高電圧アイゼン・ストライクの頭部分を打ち上げ、次いでハイブリッド・ライフルのリニア弾を放って上から迫って来たミアクターを牽制。

飛んできた高電圧アイゼン・ストライクが放つ高電圧波とリニア弾に一瞬だけ気を取られた秋山は、回避と大型重突槍でリニア弾を打ち払った反動で僅かにタイミングをずらされて攻撃に失敗する。


-ズゥゥン-


「私の前に着地するなんて正気?」

「何…!」


-ズギュゥゥン-

-バキィィィン-

-ドゴォォォン-


杏奈はイムリースの前方に着地したミアクターを二回狙撃するが、ミアクターはイムリースの大型ハイブリッド・ライフルのレーザーを大型重突槍と耐レーザー・シールドで受け流して防ぐ。


「ぐぅぅ!一撃で槍とシールドがぁ…!なんという威力だ…!」


「…エネルギー不足…バスターはもう使えないか、イムリースのハイブリッド・バスター・ライフルのレーザーは掠めただけで致命傷になるのに、門徒衆のZWも一筋縄じゃいかないみたいね」


しかし、大型重突槍はイムリースのレーザーの拡散波を受けて溶けてしまい、耐レーザー・シールドも大型ハイブリッド・バスター・ライフルの威力に耐え切れずに処理装甲が全て剥がれた上に表面装甲も殆ど溶けてしまう。

秋山はイムリースの大型ハイブリッド・バスター・ライフルの桁違いの威力に恐怖を抱き、杏奈はモニターに映るエネルギーメーターの警告を見てバスターモードを解除しつつ、次の狙撃機会を窺う。


「貰った!」

「む!?」


-バシュゥゥッ-


「ふ、良い反応をしている…!」

「ぐ…!速いな…!」


続けて迫って来たクラネオンⅢのNEエクスオーブレイドの一閃が防御能力を失ったシールドを両断するが、秋山はシールドを放棄してミアクターを跳躍させており、一閃の回避に成功する。それを見た光牙は不敵に微笑みながら呟き、秋山は瞬時の内に両断されたシールドの残骸と既に追撃に移っているクラネオンⅢの姿に戦慄しながら呟く。


「喰らいやがれ!」

「やはりな」

「う!?離れろ!」


距離を取ろうとするミアクターを追う光牙だったが、クラネオンⅢの前方と側面から甲型卍が現れ、それぞれ55.6㎜アサルト・ライフルを放って攻撃するが、光牙は間髪入れずにストライク・リッパーを側面の甲型卍に向けて投げた直後に超電磁蹴加速装置を使って前方の甲型卍の背後に回り込む。ストライク・リッパーが55.6㎜アサルト・ライフルの散弾を弾き返しながら迫ってくるのを見た甲型卍のパイロットは直ぐに回避行動に移るが、杏奈のイムリースがその甲型卍を次のターゲットに決めてしつこく追尾していた。


「回り込まれたのか!?」

「逃さん…!」


-ヒュゥゥン

-ガキィィィン-


「甘いわ!」

「甘いな」


-ズガァァン-

-バキィィィン-

-ズゴォォォン-


前方に居た甲型卍はクラネオンⅢのプラズマ・シュナイダーを日本刀型プラズマ・シュナイダーで捌いて回避するが、既にハイブリッド・ライフルの銃口が甲型卍の胴体部分に向けられており、胴体に接射を受けた甲型卍は上半身が吹き飛ぶ。


上半身を失った衝撃で甲型卍の左腕部が千切れ飛び、千切れた左腕部に握られていた55.6㎜アサルト・ライフルが虚空に向けて散弾をばら撒いていたが、少し後にはクラネオンⅢがその千切れた腕を掴んで76㎜リニア・ライフルを構えていたミアクターに向け、55.6㎜アサルト・ライフルの散弾をばら撒いて牽制するが、次の瞬間にはミアクターの放ったレーザーが55.6㎜アサルト・ライフルを貫き、消滅していた。

光牙はクラネオンⅢを操縦してミアクターが放ったレーザーとリニア弾を回避し、戻ってきたストライク・リッパーをキャッチした後にミアクターとの距離を縮めようとするが、もう一機の甲型卍が高電圧アイゼン・ストライクを放ってクラネオンⅢを牽制する。


「これでも喰らえ!」

「コッチを忘れてない?」


-シュゥン-


「ぐ、邪魔を!」


甲型卍は高電圧アイゼン・ストライクを戻した後に日本刀型プラズマ・シュナイダーでクラネオンⅢを刺突しようとしたところをイムリースの射撃に阻まれる。


「そこで止まるか!」


-バシュゥゥッ-

-ヴゥン-


「おのれ!簡単には!」

「そこ!」


-バキィィィン-


「ぐわあぁぁ!!」


-ドゴォォォン-


一瞬だけ動きを止めたところをクラネオンⅢに右半身を切り落とされ、トドメの斬撃を回避したものの、次の瞬間にはイムリースに脇腹を撃ち抜かれて爆砕する。


「くそ、これでは宗主殿の計画が…!出直しだ!」


-ボォォォン-


「くっ、ジャミング弾か…!」


秋山は退却の為に後方にスモーク弾をばら撒き、クラネオンⅢにはジャミング弾兼閃光弾を放ち、クラネオンⅢとイムリースを一瞬だけ撹乱した隙をついて離脱を試みる。


『終わりだよ』

『脱出せよ』

「!?」


-ズギュゥゥン-

-ボォン-

-ドゴォォォン-


しかし、次の瞬間には上からのレーザーがミアクターに迫り、ミアクターは胸部コクピットブロックを緊急射出した直後にレーザーに貫かれて爆砕する。


「…ぐうっ!…宗主殿のお陰で助かったか…!」


秋山は爆発の衝撃に煽られながらもミアクター・コアの姿勢を整えながら呟き、帯電霧の濃い箇所を選んで上と光牙達の追撃をかわしながら突っ切っていく。


『…逃げられちゃったか、…レーザーがZWを貫く瞬間、ZWに意思みたいなものが覆ったのが見えたけど…、あれは…』


ミアクターを撃墜した機体のパイロットは、先程の現象を思い出しながら思い、周囲に敵が居ない事を確認しながらゆっくりと機体を降下させる。


「…新手か、敵意を感じないが…」


帯電霧が晴れていき、光牙達の前に鋼翼を広げた黒銀のZWがゆっくりと降臨してくる。


あまりにも堂々とした降臨に、光牙と杏奈は臨戦態勢をと距離を維持したまま様子を伺う。


『…僕は第八十九独立遊撃部隊、特突隊S8のヤツレイ・ウェ・クオン、えと…僕には声帯が無いので、ND(ネオン・ドライバー)が使う個体神経伝達通信で失礼します』


「…っ!?言葉が身体に入ってきた…?」


「…旧政府軍の暗号通信…?」


黒銀のZWのパイロットの言が光牙の身体に直接伝わり、通信や思念波干渉とは全く違う言葉の伝達に光牙は少々驚き、光牙と黒銀のZWパイロットのやりとりが分からない杏奈は、イムリースのモニターに現れた旧政府軍の暗号通信を解析しつつ、ハイブリッド・バスター・ライフルの照準を黒銀のZWに合わせる。


『…驚かせてしまってすみません、けど…こうでもしないと伝わらないから…』


「ぐっ、貴様の言が体の芯に響く…、貴様はどこから来た者だ?」


黒銀のZWのパイロットの言と初めて経験するNDが使う遠隔神経伝達通信に僅かながら不快感を示した光牙は、狙撃しようとしている杏奈を制しながら問う。


『…うーんと、僕は月から来たんだけど、凶人艦隊って知ってるかな?少しの間だけお世話になっていて…、柘榴っていうお爺さんがここに降りれば面倒見の良いNDに出会えるから、暫くそこでお世話になりなさいって…、因みにこの機体の名はラケスティヲですけど、旧統合軍が開発したプロトタイプのラケスティヲをベースに聖戦時に一機だけ完成していたラケスティヲの戦闘データと欠陥データを参考に今の技術を使って強化・改良したものなので…ラケスティヲ改…になるのかな…?…でも改良型は戦争博物館に保存されているし、これはラケスティヲ改二型…?それともラケスティヲZwei?…わかんないや…』


ヤツレイは光牙の質問に答える序でに乗機のラケスティヲの事を話すが、聖戦終結直前の混乱期に開発されたラケスティヲの系譜が曖昧な為に名称が定まらずに混乱する。


『…えと、話が逸れてすみません、話すより僕の記憶を其方に流した方が早そうなので、概要だけ纏めて其方に流します』


『……!』


ヤツレイの言と同時に、とある事実に関するイメージが光牙の脳裏にまで伝わり、光牙は驚く。


『…貴様、プロト・レクーゼウ・チルドレンの最終形の量産型…クオンシリーズのレプリカか』


『…うん、厳密に言うと月で保存されてた僕のデータを永戸博士の弟子達が拾って再現し、それを人工授精させて生まれた子のデータを基にして、強化・調整して作り出したクローン人間みたい…、魂が定着する前の事はデータでしか分からないからなんとも言えないけど…』


光牙の言にヤツレイは頷きながら交信する。


「…ネーチャンボクトチャシバカンカイ…?…ビールデモノマンカイワレ…?何…?暗号の中に更に暗号?…コレラハヨウヤクスルトワレニテキイナシ…?何これ…?私…暗号でナンパされてる訳…?」


光牙とヤツレイが交信している間、杏奈はラケスティヲから送られてきた暗号解析後の本文に悪戦苦闘しながらも読み解き、呆れていた。


『…声帯が無いのはその影響か』


『…その通り…なのかな?…柘榴博士は何か知っていたみたいだけど…』


『………』


ヤツレイの気の抜けた様な回答に光牙は大いに脱力し、少し間を開ける。


「…はぁ…」


杏奈もヤツレイから送られてきた暗号解析に疲れたのか、眉間を押さえながら目を瞑った後、携帯ドリンクとサプリメントを飲んでからイムリースの大型ハイブリッド・ライフルを元の位置に戻して臨戦態勢を解く。


『…えと、伝わった…のかな?』

『…いや、疲れたのだろう』


イムリースから敵意が抜けていくのを感じ取ったヤツレイは、恐る恐る光牙に尋ね、遠隔神経伝達通信に慣れてきた光牙は半分呆れながら答える。


「…副会長、大体察しはつくけど、そいつは何言ってる訳?」

「…敵意はない、いじめないで下さいと言っている」


杏奈は半ば呆れた様な口調で光牙に通訳を頼み、光牙は簡潔に答える。


「…そう、なら…援護した分の補給…してもらえるかしら?門徒衆とやりあったせいで余計なエネルギーを使っちゃったからさ…」


「…いいだろう、ヤツレイも付いて来るといい、どうせ柘榴とやらが根回しをしているのだろう」


『あ、ハイ!』


光牙の言を聞いた杏奈は、ここぞとばかりに光牙に補給を要求し、光牙は承諾した後にヤツレイにも付いてくる様に言う。


「…意外とあっさり受け入れるのね」


「…既に手配しておいてよく言う、所属先でうまくいかなかったのか?」


杏奈の言に対し光牙は慣れた様子で言う。


「…ちょっと…ね」


「…余計な詮索はせんが、大人しくしていろ、神楽坂艦長の頭痛の種が増えては艦の存続に関わるからな」


杏奈は少々怒気をにじませた様な感じで答え、光牙は敢えて詮索せずに注意だけをしておく。


『…あ、柘榴博士からだ、…何々…今後はテイロンと行動を共にし、補給その他もテイロンの世話になる様に…だって』


『…ぐ、やはりそうか、…しかし、NDが使う遠隔神経伝達通信とかいったか…それをいきなり俺の身体に繋ぐな、心臓に悪い』


ヤツレイはラケスティヲに届いたメッセージを読み、光牙に遠隔神経伝達通信を送る。

光牙は承諾しつつ、ヤツレイに注意する。


『あ、すいません…』

『………』


光牙から少し注意されたヤツレイは、素直に謝り、光牙もそれ以上言うのをやめる。


「…直接回線を繋いでも何も聞こえないけど…、そっちの話はついたのかしら?」


クラネオンⅢとラケスティヲに直接回線を繋いでいた杏奈だったが、表面上では両者が何も話しておらず、何もやり取りをしていなかったので、思念波による交信だと思った杏奈は、光牙に尋ねる。


「今さっきつけたところだ、テイロンの位置は…知ってるな?」


「…ええ、妹さんが位置を送ってくれたわよ、陣内と早乙女が既に向かっているから急ぐわよ?」


杏奈は澄ました顔をして光牙に言うや、イムリースの直接回線を解除し、結依菜から定期的に送られてくるテイロンの位置を頼りに移動していく。


「…ふん(…滝川め、やはり俺より先に壱岐隊長や結依菜に話を付けていたか、四国征伐におけるクラネオンⅢの戦闘データ解析で結依菜と雫石が何も言わない事から大体の予想はついていたが…)」


光牙は杏奈の行動と結依菜達の態度を思い出しながらクラネオンⅢを操縦するが…。


-ギュゥゥゥン-


「…左膝の反応が更に鈍くなったか、ラシュハに貰った奴が流石に効いてきたようだな」


クラネオンⅢの左膝の損傷部から僅かながら煙が噴き出し、時々電流が走っては下の部分が動作不良になったり、左脚部が持ち上がらずに地面に引きずったりしており、かなり損傷の具合が悪かった。


しばらくしてテイロンに帰還した光牙は、勝久に修理を頼み、自らもクラネオンⅢの修理に携わる。

ついでに杏奈、陣内、早乙女、ヤツレイの機体の修理と補給も手伝い、結依菜と雫石に陣内と早乙女とヤツレイを紹介。

修理が一段落済むと、光牙は溜まっていた給料をはたいて整備士の皆に夜食を奢り、日頃の感謝の意を伝えたという。

_______________________________



翌々日…



「上空に全長30km級の艦艇を確認…政府軍の巨大工作艦・エンゼル級です」


「やっとですか…」


エンゼル級の姿を確認したテイロンのオペレーターが降下予想地点の図を表示しながら伝え、壱岐は溜息混じりに言う。


「…しかし、いつ見てもイヤーな感じになりますなぁ、エンゼル級の降下は…」


「…エンゼル級は本来擬似地球型惑星の制圧艦隊の移動修理・補給拠点として開発された虚仮威しの艦だからな…、仕方があるまい」


壱岐は魔王の降臨を連想させる様な感じさえさせるエンゼル級の降下に不快感と呆れを露わにしながら言い、神楽坂は額を押さえ、新しく編入されたばかりの仁科暁、レイス、滝川杏奈、陣内、早乙女、ヤツレイ・ウェ・クオンらのデータと新しい任務内容に新たな頭痛の種が増えた事を確信しながら言う。


「エンゼル級着水のカウントダウンが始まりました、レキール級の配置良し」


「海面形状制御システム展開、津波を発生させるなよ」


旧高知県の南の海にゆっくりと着水したエンゼル級に対し、レキール級は碇代わりにも使う海面形状制御システムを作動させて海面を穏やかに維持しつつエンゼル級の起こした波を分散・抑制して周辺への被害を未然に防ぐ。


「エンゼル級のアメンボ足展開、船体安定度…規定値、全クレーン、ドッキングアーム、修理コンテナの展開…完了、全システム良好、艦艇修理施設展開完了」


着水した後にアメンボの足の様なユニットを展開して船体を安定させたエンゼル級は、その船体を変形・展開していき、やがて巨大な軍港へと姿を変えていく。


因みにエンゼル級は宇宙では輪の様な形状になり、地上では渦巻き状の拠点になり、艦隊の整備・補給が可能になる工作艦である。

あらゆる物に対応した可変型クレーン、ZWや小型船舶から超大型戦艦まで対応したドッキングアーム、内部コンテナユニットには修理用の大小様々なオートマトンが数多搭載されており、艦艇のサイズを問わずに迅速かつ非常に精度の高い修理が可能である。

勿論、人間の手による整備環境も整っており、オートマトンが対応できない、またはオートマトンが稼働できない状態にある時はやはり整備士達が活躍する。艦内都市が幾つかあり、その内の半分以上は生産・備蓄・補助関連、4分の1はエンゼル級のクルー達の住居及び消費施設になっており、残りは外から来た艦乗員達の為の施設が揃った都市である。


「エンゼル級の変形終了信号確認、入港許可がおりました」


軍港に変形したエンゼル級に入港したテイロンは、政府軍の戦艦・レキール級3隻、重巡洋艦・フィランキ級15隻、淡谷艦隊旗艦・重巡洋艦の和歌山級、随伴艦の軽巡洋艦・大垣、橋本、駆逐艦の桃山、児島、春日山、その他の鳳級など共に修復される事になる。


エンゼル級のドッキングアームが入港した艦艇を次々と固定し、エンゼル級のオートマトン用コンテナユニットが開き、内部から大小様々な修理用オートマトンが次々と起動。備蓄都市から伸びてきたリニアレールが、オートマトン用コンテナにあるレールに接続され、そこから修理に必要な材料が次々と届けられていき、オートマトンはそれらを効率良く搭載しては担当する箇所に移動しては一斉に修理し、修理の終えたオートマトンは材料を搭載して次の箇所に向かう。


各艦艇に搭載されているZWには、エンゼル級の凄腕整備士達が派遣され、迅速に作業を開始するが、テイロン隊にまで人手が行き届かず、いつも通りのメンバーによる手作業で整備をする事になる。


「…流石はエンゼル級だ、材料と道具に困らねえ」


勝久は少々興奮気味に言い、早速クレーンとアームを使ってクラネオンⅢを移動させ、NEエクスオーブレイドを鞘から抜いて移動させる。


「…ここに居る内に剣豪の技と鍛刀技術の芽は身体に植え付けた。…浅野との約束通り、NEエクスオーブレイドを鍛えてやるとするか!クラネオンⅢもバッチリ強化してやるぜ!」


勝久は己の掌の傷痕を見、身体中の震えを感じながら意気揚々とNEエクスオーブレイドの作業にかかろうとするが…。


「ゔおぉい勝久!エンゼル級からZEAX-04plus5ネオンプラス5型とZEAX-15量産型クラネオンⅢが運搬されてんぞ!!ぐわっ!?機体もパーツも食糧も水も次から次へと来やがる!コッチはオートマトンじゃねぇんだぞゴラァ!動けるもんは手伝えぇ!!」


次から次へと運ばれてくる荷物に押されている三村が叫び、その叫び声に反応した若い衆が集まり、慌てて荷物を運搬していく。


「…ZEAX-04plus5…ネオンプラス5型、ZEAX-15量産型クラネオンⅢ…」


光牙はテイロンに運ばれるネオンプラス5型と量産型クラネオンⅢを見て何かを感じ取り、運搬されているネオンプラス5型と量産型クラネオンⅢの脚部装甲の隙間から見えるVNFSに触れる。


「…!?…」


VNFSに触れた途端、光牙の表情が変わる。


「…兄者の残留思念…これを回してくれたのは兄者か…」


光牙はやや表情を柔らかくしながら呟き、ネオンプラス5型と量産型クラネオンⅢから離れる。


「…赤い量産型クラネオンⅢとダークグレーの量産型クラネオンⅢ…、姉上と義兄上専用機…、レドーム頭に十字架を抱えた翼の生えたシスターのエンブレム…藍色のネオンプラス5型…結依菜専用機まであるのか…」


光牙は次々と運ばれてくるZWを見ながら呟き、勝己の気の回し方に少々呆れる。


「…黒いサフィニオン…」


光牙は黒いサフィニオンを見て何か予感めいたものを感じながら呟き、彼方此方を忙しく動き回るクルー達を他所目にテイロンへ向かっていく。


「………」


光牙が走り去った後、さっきまで光牙が居た場所に現れた眼鏡の少女は、光牙専用サフィニオンのリストを見ながら、運搬途中のサフィニオンを見て溜息をつく。


「よお、溜息なんざついてどうした?」


そこへ仁科暁が現れ、眼鏡の少女は少し驚くが、少し後に露骨に嫌な顔をする。


「…へっ、一見さんはお断りしますって顔してんな、いきなり声かけて悪かった」


「………」


暁は少女の顔を見て冗談半分で言った後、謝ってから運搬されてきている新型ZWのところへ向かっていく。

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