合流〜聖光の魔戦殻
智達が熊芒霊や鮭芒霊達と戦っている間、休息を終えた暦達は、大量に現れた狼型妖械達と睨み合いを続けていた。
『………』
「…屍を喰らう狼、こいつらも放置しておけない」
暦は群がる狼型妖械達を感じ取り、間近まで迫ってきていた狼型妖械を一刀両断にする。
包囲を縮めながら迫ってきていた狼型妖械達は、休息中に雫が描いていた方陣に引っかかり、動きを止めた所を苅藻達の集中砲火を受けて粉砕される。
中群の狼型妖械達は前方で動きを止めた狼型妖械達に動きを阻害され、迂回しようとするも後方の狼型妖械達に押されて迂回出来ず、雫の描いた方陣の罠に次々と押し込まれていく。
「…流石は雫様、敵が面白いように罠に嵌ってくれます」
大の字になったり、逆さまになったりしながら動きを止める狼型妖械達を見て、苅藻は微笑みながら雫に言う。
「ここまで上手くいくなんて思ってなかったけどね…、でもこのままじゃ…!」
雫は苅藻の言に苦笑しながら言い、徐々に突破しつつある狼型妖械達を見て少し焦った様に言うが、迫りくる何かを感知してシズク・ユミルを後退させる。
雫が後退すると同時に方陣を突破した狼型妖械達が前足を地面につけるが、次の瞬間には上から降ってきた光が狼型妖械達を貫き、爆砕していた。
「…西五条理愛」
「暇だから援護してあげるわ、感謝しなさい天郷暦」
暦は西五条理愛の機体に気づいて言い、理愛は尊大な口調で言う。
「ありがとう、理愛」
-ドドォン-
「ふん、余裕ね」
-ズン-
-ドドドドドゴォォン-
暦は礼を言いつつ突破してきた狼型妖械を蜂の巣にし、それを見た理愛は側面から突っ込んできた狼型妖械の口に対芒霊重突撃機銃を突っ込んで連射し、狼型妖械の下半身を吹き飛ばし、後続の狼型妖械をも蜂の巣にする。
「…っ!」
だが、理愛の射撃をすり抜ける様にして回避してきた狼型妖械がおり、その内の数体が物凄い勢いで突進し、理愛に襲いかかる。
「理愛!」
一瞬だけ反応が遅れた理愛を庇うべく、コヨミ・ユミルが魔導フィールドを展開して割って入ろうとするが、次の瞬間には狼型妖械達が全て凍結していた。
「少々熱くなり過ぎて隙がありますわよ、お二人とも」
隙を突かれた二人を見かねた羽鳥は、氷の戦輪を射出して暦と理愛の周囲に居た狼型妖械達を凍らせ、アイシクル・レイピアの連撃を放ち、凍った狼型妖械を粉々に粉砕していく。
「…すまない羽鳥、少し熱くなっていた」
「…ありがと、羽鳥」
「れ、礼は結構ですわよ」
暦と理愛は素直に礼を述べた為、軽く虚を突かれた羽鳥は顔を赤くして言う。
「そこは行き止まりよ、方陣!」
-ヴゥゥン-
その間にも味方の渋滞で攻め口を見つけられず、周囲をうろついている狼型妖械達が雫の描いた方陣の罠に次々とかかり、群れごと動きを止める。
上空からでは漫画のコマ割りの様な囲いの中に、キャラクターの下書きの様な薄い方陣が描かれており、罠にかかった狼型妖械達が下書きの方陣を消してペン入れをしたかの様な濃い線になっていく。
そして、方陣術で足止めを食らって大渋滞を起こしている箇所が濃い色具合になっていき、それが次第に暦、魅鳥、雫、羽鳥、理愛が互いに手を繋ぐ構図になっていくのだが…、描いた雫自身も含め、誰一人として気づく者はいなかったという。
「ここでカッコよく仕留めるネー!!」
「流石の御英断!いよっ!天下一ぃ!」
「そーそー」
構図が完成しつつあった少し後にアルレジックスが到着し、脚部に魔導フィールドを展開して雫の方陣術で動きを止めていた狼型妖械の群れを丸ごと踏み潰す。
「………」
『…突然の御無礼、誠に申し訳ありません』
アルレジックスの突然の乱入で雫の方陣術の一部が機能しなくなり、方陣術を描き続けていた雫の手が止まる。
本能的に気不味さを感じ取ったアルレジックスは雫に謝るが、雫は暫くフリーズしたまま動かなかった。
「…やっと来たのね、先に始めちゃってるわよ?」
「り、理愛嬢の無茶についていくのも大変アルヨ…」
「いやはや流石は理愛様、我が創世連合屈指のエースであられますなぁ、凡人の我々ではついていくだけで精一杯ですよ本当に…」
「そーそー…」
理愛の言にアルレジックスのコクピット内に乗っている、理愛の手下達が息切れ気味に言う。
フリーズしたままの雫の事を慮ったのか、アルレジックスは雫に陳謝しつつ「貴女達の苦戦を見過ごせなかった理愛様が物凄い勢いで突出したので、理愛様の背中を守るつもりが守られつつ、応援に駆けつけました」というメールを暦達に送って挨拶をする。
「西五条さん、本当に優しい人なのですね」
「…ああ、強がってるが根は良い子だよ」
「…理愛様は義侠心に富むお方ですね、お嬢と魅鳥様の友人に相応しいかと」
アルレジックスのメールを見た魅鳥がそっと呟き、暦は微笑みながら呟く。
それを聴いていたのか、苅藻は密かにコヨミ・ユミルの回線に割り込んで呟く。
「…普段なら友好の場を用意するところですが、その前にこの膨大な数の敵を片付けることに専念しましょう、雫様にばかり負担を掛けさせる訳にはいきませんから」
苅藻はやり取りをする二人を見ながら言い、雫の罠を突破してきた狼型妖械達を切り裂き、二本角の機影を睨む。
「…それもそうだな、雫の頑張りでこちらも大分回復した、そろそろ…反撃するとしようか」
苅藻の言に暦はコヨミ・ユミルのコンデム・リヴォルヴァーを構えながら言い、コヨミ・ユミルの翼状光と翅状光を展開して飛翔する。
コヨミ・ユミルに続いて理愛、羽鳥、そしてアルレジックスが続き、その後をシズク・ユミルが苅藻、命達に護衛されながら続く。
________________________
-ズゥゥゥゥン-
「HAHA!ログアウトした黒威と影威を追いかけてCゲートを抜けてみりゃあ、静寂の空間がとんでもねぇ事になってるじゃねぇか」
巨大な棒状の鞭を持った二本角の機体…ゼゲールハバスに搭乗している人物…聖皇明神破鎚丸が辺りを見回しながら言う。
『オォォォォン』
-ブゥン-
-ドゴォォォン-
-ドドドドドドドゴォォォン-
『………』
-ゴリリ-
「…ほう、陰世界に巣食う芒霊と陽世界に巣食う妖械が世界の壁越えて手ぇ組むなんざ珍しい、どうやらここの捕食者が目覚めたってのも強ち嘘じゃねぇみてえだな」
彼の目にはトモ・ユミルとユウ・ユミル、アカネ・ユミルを相手に、鮭芒霊達を駆使して鬼神の様に暴れる熊芒霊とそれをサポートする動きをしている妖械達の姿が映り、彼は首を鳴らしながら言う。
『………』
ゼゲールハバスの周囲に狼型の妖械達が群れをなして包囲し、不気味な鳴き声を発して連絡を取り合っている。
その向こう側には同じく狼型妖械に包囲されたゾディアギーニ、反対側には人型妖械と狼型妖械達に包囲されながら戦う暦達のユミルの姿がある。
「HE、いいねぇ、数が多いほどぶっ飛ばし甲斐があるってもんだZE」
彼はどんどん集まってくる狼型妖械をみて言い、ゼゲールハバスが持つ巨大な棒状の鞭を目にも留まらぬ速さで振り回し、近づいた狼型妖械達を次々と消滅させる。
ゼゲールハバスの鞭に打たれた狼型妖械達は何かが弾ける音を発して消滅しており、それがゼゲールハバスと鞭の威力を物語っている。狼型妖械は衝撃波を受けて一瞬だけ怯みはしたものの、直ぐに態勢を整えてゼゲールハバスに向かっていく。
「普通にやるつもりだったが、こんな群れを見ちまったら腕が疼いて仕方ねぇNA!」
破鎚丸は大地を埋め尽くす程の大群で迫ってくる狼型妖械を見て身体中が武者震いを起こしながら言い、ゼゲールハバスが鞭を天に振り上げて跳躍する。
ゼゲールハバスの跳躍の衝撃波で間近まで迫っていた狼型妖械達が吹き飛ばされるが、狼型妖械達はゼゲールハバスの姿を追って各々跳躍するが届かない。
狼型妖械達がノミのように飛び跳ねてる内に降下を始めたゼゲールハバスが加速をつけ、凄まじい勢いで急降下してくる。
「もう一発いくZEE!CHESTOOOOOO!!!!!」
-ズガァァァァァァン-
-チュドドドドドドドドドドゴォォォン-
破鎚丸の気声と共に急降下してきたゼゲールハバスの鞭が振り下ろされ、鞭が大地に触れた瞬間に大地が陥没して大爆発が起きる。
大地の陥没は遠くに居た熊芒霊やゾディアギーニを包囲していた狼型妖械達をも巻き込み、それらを纏めて吹き飛ばす。
『グオォォォォォン』
-ズゥゥン-
「喰らえ!」
-ズゥゥン-
-バキィィィン-
『グオォォォォォン!』
熊芒霊は飛んでくる狼型妖械や岩、溶解液付きの泥石の飛礫を受けて転倒し、そこへトモ・ユミルが最大出力までチャージしていた魔導ライフルを放ち、魔導ライフルの弾が熊芒霊の右眼に直撃、熊芒霊が潰れた右眼を押さえながら叫ぶ。
その直後にトモ・ユミルはウイングをシールド状に展開して飛散物を防ぎながら離脱する。
「んんど根性ぉぉぉ!!!」
-ドゴォォォォォン-
トモ・ユミルが離脱したのと同時に、熊芒霊に叩き飛ばされてビルの瓦礫に埋まっていた勢気が復活し、右眼を押さえて叫ぶ熊芒霊に向かってまっしぐらに突っ込んでいく。
「さっきはよくもやりやがったなキィィック!!!」
-バキィィィィィン-
-ズゴォォォン-
『グォォォォォォン!!!』
勢気の陽炎零式のキックが熊芒霊の眉間に炸裂し、熊芒霊が1回転して転倒する。
「オラァァァ!!!まだまだつなぁぁぁぐ!!!」
勢気の咆哮と共に陽炎零式の両手が激しく燃え盛る炎を纏う。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァ!!!」
-ドドドドドドドドドドドドゴォォォォン-
-ガシィッ-
陽炎零式が目にも留まらぬ速さで燃え盛る拳を繰り出し、熊芒霊を猛打した後に陽炎零式の燃え盛る手が熊芒霊の頭部を掴む。
「学年最下位舐めんなヘッドバッドぉぉぉ!!!」
-ドゴォォォォォン-
-ベキョォォッ-
-ズゥゥゥゥゥン-
『ギャァァァァァァァァ!!!!!』
-バキバキバキキッ-
-チュドゴォォォォォォン-
熊芒霊の頭部に勢気の渾身の頭突きが炸裂すると、熊芒霊が尻餅を付くかの様にして大地に座り込み、やがてその衝撃波が熊芒霊の頭部から地面、更に地下にまで響き渡ると、熊芒霊の面影が砕け、熊芒霊は尻餅を付いた態勢のまま崩壊・爆砕し、大地を大きく陥没させる。
「ッシャァァァ!!いっちょあがりだぜぇぇぇ!!!」
「ええい、なんだアレは!?出鱈目が過ぎるぞ!」
熊芒霊が崩壊したのを確認した勢気は感涙を流しながら叫び、勢気の猛攻を見ていた智は思わず言いつつ、勇と茜音と連携して周辺の鮭芒霊を排除する。
熊芒霊の周囲を固めていた鮭芒霊達は広範囲に及ぶ衝撃波を受けて面影が砕けたのか、泥の中で崩壊し、大幅に数が減っていた。
________________________
-ズゥゥン-
「はっは!すぐに湧いてくるから退屈しねえな!何度でもぶっ飛ばしてやるZE!」
ぶっ飛ばしてもぶっ飛ばしてもすぐに群がってくる狼型妖械に、破鎚丸は生き生きとした口調で言い、次々に襲いかかってくる狼型妖械達を豪快に薙ぎ払い、吹き飛ばす。
-ヒュゥゥン-
「…顕現限界…!?…操者寿命維持システム、これ以上は俺の寿命がヤバイってか…!」
ゾディアギーニの光の槍が消滅し、操者はモニターに映る0:00:00:00の文字と操者寿命維持システムによるシステムロックの文字に焦る。
操者寿命維持システムを発動したゾディアギーニのツイン・アイが瞼の様な装甲に覆われ、頭部に収納される。展開していたであろう各部の装甲も次々と収納されていき、ゾディアギーニが一回り小さな姿になる。
それを好機と見たのか、狼型妖械達が旋回しながら包囲を縮めてくる。
「魔力は騎士に及ばず…か」
『………』
ゾディアギーニの操者は、ブラックアウトしたコクピットの中で呟き、システムの切り替えによるゾディアギーニのコクピットの変化に合わせる様な動きをする。
ゾディアギーニのコクピットシートが操者の身体にフィットすると、ブラックアウトしていたコクピット内が再び明るくなり、ゾディアギーニが通常戦闘モードで再起動する。
「!?、妖械に飲み込まれたのか…」
ゾディアギーニの操者はモニターに映る宇宙空間を見て驚くが、直ぐに狼型妖械の体の中だと判断してゾディアギーニを操縦、背部20cm聖粒子砲の砲口をブラックホールらしきものに向ける。
「砕け散れ!」
-ビシュゥゥゥゥン-
凡そ零距離に近い距離で放たれた背部20cm聖粒子砲の光はブラックホールらしきものによって一時的に吸収されたものの、直ぐにブラックホールらしきものが消滅し、狼型妖械の下半身を聖粒子化・消滅させながら外に伸びていく。下半身を失った狼型妖械は瞬く間に聖粒子化して分解されていき、最後は方向転換したゾディアギーニによって踏み潰されて消滅する。
「聖粒子砲で纏めて殲滅する、トリガー展開、魔力が無いからって侮るな!」
ゾディアギーニの操者が何らかの装置を操作すると、ゾディアギーニによって背部20cm聖粒子砲の砲身が少し伸び、取っ手の部分が展開。ゾディアギーニがそれを握って左右に広げると、聖粒子砲が分離して砲身が左右に展開する。
「聖粒子砲発射!」
-ビシュゥゥゥゥン-
-
左右に広げた聖粒子砲から光が発射され、光は狼型妖械を消滅させながら一直線に伸びていき、狼型妖械の群れを分断する。
「くらえ、セイント・ローリングバスター!」
-ヴゥゥゥゥン-
-チュドドドドドドドドドドゴォォォン-
ゾディアギーニが回転し、それに伴って聖粒子砲の光も大きく回転して狼型妖械達を切り裂き消滅させる。
回避に成功した狼型妖械も居たが、それも次々と迫る聖粒子砲の光を回避しきれず、ある狼型妖械は両手足を消滅させられ、ある狼型妖械は上半身か下半身のどちらかを消滅させられた後にトドメをさされる。
ゾディアギーニを中心とする聖粒子の光の一文字が回転を終えると、分厚く包囲していた狼型妖械達の姿はほとんど無くなっていた。
ゾディアギーニの周辺には聖粒子化して分解されていく建造物と狼型妖械達の残骸のみが残る…。




