蝿芒霊の脅威
暦達が魅鳥と合流して戦っている頃、別の場所では…。
-カシィン-
-ヴゥゥン-
-バシュゥゥ-
「…木曽川の連中を撒いたと思えば、今度は芒霊か!」
-ドォォォォォン-
「残念、撒けていなかったりする、けどこれは予想外…!」
「瑠璃亜は一度認識したら絶対に逃さない、…深追いが過ぎた様だけど…」
「紅月姉、ここどこ!?瑠璃亜、まさか次元の扉を開けちゃった?」
迫り来る小蝿芒霊達を迎撃しながら石動智はぼやき、木曽川から智達を猛追してきた高坂瑠璃亜、飯富紅月、紅陽姉妹が因果の黄昏の空間と迫り来る小蝿芒霊達を見て戸惑う。
「…!?魔戦殻…!貴様らは…」
「今はアンタより…こっちを倒すのが先…!」
智、勇、茜の魔導索敵を欺き、包囲する形で現れた3機の魔戦殻に智は驚くが、3機はトモ・ユミルを攻撃すると見せかけて光球の連射で小蝿芒霊達を撃墜。智は3機に敵意がない事を悟ると、直ぐに小蝿芒霊達を撃破して3機を援護する。
「…この怨嗟の旋律…セイズ呪歌と断定、ゴースト狩りだよ、おっちゃん」
「「その呼び方はやめて、瑠璃亜」」
瑠璃亜は記憶から芒霊の情報を引き出し、紅月と紅陽の機体に芒霊の情報と戦術プランを流しながら言い、紅月と紅陽は瑠璃亜の機体から流されてきた芒霊の情報と戦術プランを速読しつつ、同時に瑠璃亜に言う。
-ヴゥゥン-
-バシュゥゥ-
「余所見をするな、ここでやられたら骨は拾ってやれんぞ」
智はやり取りをしている三人を見かねて言い、群れを成して突撃してきた小蝿芒霊達をフェザーセイバーの二刀流で切りまくる。
「援護に感謝します、一時停戦としましょう」
「ふん、敵を倒しただけだ、貴様らを援護したつもりはない」
「その言動は停戦に応じたと解釈させていただきますね」
「…ふん」
智の言でやり取りを中断した瑠璃亜、紅月、紅陽は、クールな態度を崩さない智とトモ・ユミルの奮闘を見て、感心した様に言う。
「あの人達…協力してくれるんだ…」
「良かった、紅陽さん…」
勇はトモ・ユミルと連携している3機の動きを見て安堵した様に言い、茜も安堵した様に呟く。
「兄さん!」
-コォォン-
小蝿芒霊達の数の多さに少し押され気味になってきた智と紅月、紅陽、瑠璃亜の援護に向かうべく、ユウ・ユミルの火の翼と羽根型剣のバリアブル・セイバーを展開し、飛翔する。
『オォォォォン』
「!?」
その隙を突く様にユウ・ユミルの下側面から鋭い角を展開した一角獣芒霊が凄まじい勢いで突進してくる。
勇は少し気づくのが遅れるが…。
「石動のちびっ子、危ないぞ!」
「勇君、余所見しない!」
-バシュゥゥ-
-バコォォォッ-
『オォォォ…ン』
紅陽の魔戦殻・紅乙女が光の刃を放って一角獣芒霊の角の根元を切断し、ユウ・ユミルのすぐ後ろについてきていたアカネ・ユミルが、振り上げていた大型のステッキを振り下ろして一角獣芒霊の頭部を叩き潰す。
陸戦型で極めて短時間のジャンプ飛行しかできない一角獣芒霊は、頭部を失った事でバランスを崩し、回転しながら墜落していく。
-ドゴォォォン-
『オォォォォン!』
-ドドドドドドドド-
-ドゴォォォン-
-ズガァァン-
頭部を失った一角獣芒霊は、墜落のショックで首から面影が露出し、更に思考制御を失ったのか、手当たり次第に突撃を繰り返して街並みを破壊しつつ、空中の小蝿芒霊達を弾きとばし、地面の蟻芒霊達を踏み潰しながら暴走する。
『ギャァァァァァァ!!!』
しかし、暴走する内に首から露出していた面影が損傷し、やがて激突したビルの衝撃で面影が砕け、一角獣芒霊は崩壊する。
「勇、成田、俺から離れるな、行けスワロウ!」
-ヒュン-
-ドドドドドドドドォォォン-
智は勇と茜に言いながらユウ・ユミルとアカネ・ユミルに群がる小蝿芒霊達を魔導ライフルで撃墜しつつ、トモ・ユミルの背部に搭載されている小型ビット兵器・ソードスワロウを射出・展開して小蝿芒霊達を迎撃させ、纏めて粉砕する。
「…っ、今だ!ホークカリバー!飛び立って!」
-バサァ-
-ゴォォォ-
-バシュゥゥ-
-ドドドドドドドドォォォン-
智に続く様にして勇もユウ・ユミルの左肩部から火の鳥の様なビット兵器であるホークカリバーを射出し、ホークカリバーは飛び立った後にユウ・ユミルの周囲を飛び回り、群がる小蝿芒霊達を纏めて焼き裂く。
-ドゴォォォン-
-バコォッッ-
-ガァァン-
「てい!えい!せや!…ったく、バッティングセンターじゃないんだから…!」
個々の質より量と連携で押してくる小蝿芒霊達に対し、茜はアカネ・ユミルの大型のステッキで小蝿芒霊達を打ち砕きまくりながらぼやく。
勇と智が小蝿芒霊達を纏めて撃破していく間にも、次元の隙間から小蝿芒霊達がどんどん溢れ出し、徐々に空間が小蝿芒霊達で埋められていく。
「…次から次へと湧いて出てきますね、瑠璃亜、何か見えないの?」
「…見えてるけど有効打を与える手札が揃わない、もう少しかかる」
小蝿芒霊達の数に呆れつつ、紅月は瑠璃亜に尋ね、瑠璃亜はものすごい速さで何かのデータを次々と処理しながら答える。
-ガァァン-
-バコォッッ-
「…とは言っても、このまま量で来られちゃ…、私も紅月姉もちびっ子達もあまり長くは保たないよ」
紅陽は迫り来る小蝿芒霊達を次々と破砕しながら言い、瑠璃亜を急かす。
「…次元の隙間の特定完了、このままだと数で押し切られるか、戦術核爆発並の爆発が起きて全滅する、まずは蓋をしよう」
次から次へと湧いて出てくる小蝿芒霊の出るじ次元の隙間の特定を終えた瑠璃亜は、トモ・ユミル、ユウ・ユミル、アカネ・ユミルの魔導通信に割り込んで紅乙女の攻撃射線のデータを送りながら言う。
「…奴らの親玉はこの先か?」
圧倒的な数で攻められて不利と悟った智は、何かを知っていそうな瑠璃亜に尋ねる。
-ググググググ-
「…近くで隠れんぼをしている、叩く準備が整うまでは攻撃できない」
-ヒュン-
-ドドドドドドドゴォォォン-
瑠璃亜はそう言いつつ、数多のデータを処理しながら紅乙女の杖を弓に変形させて光の弦と矢を形成、小蝿芒霊達が湧き出る次元の隙間に向かって光の矢を放つ。
光の矢は射線上に群がっている小蝿芒霊達を纏めて消滅させながら直進、見事に小蝿芒霊達が湧き出る次元の隙間に命中して光に包まれる。
光は渦巻きながら次元の隙間を閉じていき、小蝿芒霊達の出現が止まる。
次元の隙間を閉じられて芒霊のリンクが切れたのか、小蝿芒霊達が弱体化して動きも鈍くなり、連携を取らずに単調な攻撃しかしてこなくなる。
「一気に蹴散らすぞ、勇」
「うん、兄さん」
ユウ・ユミルのホークカリバーとトモ・ユミルのソードスワロウが光の軌道を描きながら彼方此方を飛び回って小蝿芒霊達を次々と破壊し、瑠璃亜、紅月、紅陽、茜も連携して小蝿芒霊達を迎撃。
時間経過と共に動きを鈍らせていく小蝿芒霊達は、智達によって瞬く間に数を減らしていく。
次元の隙間が閉じてから少しすると、次元の隙間があった場所から小蝿芒霊を形成し過ぎて面影と神経のみが残った蝿芒霊だったものが現れる。既に見えていた瑠璃亜は、蝿芒霊の面影が現れると同時に光の矢を放ち、蝿芒霊の面影を消滅させる。
蝿芒霊が崩壊したことで小蝿芒霊達も崩壊するが、まだまだ動く小蝿芒霊達も居る。
「…あと二体の蝿芒霊が居る、でも…もう隠れんぼはお終い、紅月、紅陽、準備は良い?」
「言われた通り、対芒霊円陣の形成は完了しましたよ」
「条件クリア、いつでもいける」
「上出来、如何に隠れても、私の眼からは逃れられない…」
瑠璃亜は紫色の瞳で蝿芒霊の姿を捉えながら言うと、紅月と紅陽が連携戦闘をしながら描いていた円陣の中央にある小さな穴に小さな光の鍵を差し込み、一気に捻る…。
-シュゥゥゥン-
その円陣が因果の黄昏全体に広がり、芒霊を隠蔽する為の次元が暴かれていく。
次元の狭間に隠れていた全ての芒霊達の姿が暴かれ、姿を露わにした蝿芒霊達は智達の猛攻を受ける。
しかし、身を温存していた蝿芒霊は伸縮・分裂自在の口筒を持ち、それを鞭の様に扱ったり、ネットの様に展開しながらトモ・ユミルのソードスワロウとユウ・ユミルのホークカリバーの猛攻を防ぎ、残存の小蝿芒霊達を突っ込ませる。
-ドクン-
「…面影の叫び、其処に弱点を晒されてはな!」
智は蝿芒霊が小蝿芒霊を作り出す時に発する面影の僅かな鼓動を捉え、蝿芒霊の面影を発見する。
-シュン-
-ドドドドドドドォォォン-
ソードスワロウで小蝿芒霊達の特攻を迎撃しつつ、撃破した小蝿芒霊達の粉塵で身を隠し、エレメンタル・ミラージュによる分身を作り出して放つと同時にトモ・ユミルは粉塵に紛れて迂回。残像を捉えた蝿芒霊はそちらに攻撃を集中させる。
「もらった!」
-ドォォォォォン-
その隙に粉塵に紛れて迂回していたトモ・ユミルはやがて蝿芒霊の死角に入り、面影に向かって一気に加速する。
トモ・ユミルの分身が消滅し、蝿芒霊は数多の眼らしきものを展開して索敵し、本物のトモ・ユミルが迫っている事に気づくが既に遅かった。
-バシュゥゥ-
『ギャァァァァァァ!!!』
-バキバキバキキッ-
-ボォォォォォン-
一気に間合い詰めたトモ・ユミルは、すれ違いざまにフェザーセイバーで蝿芒霊の面影を両断し、面影を両断された蝿芒霊は、形態を維持できずに崩壊・破裂する。
その蝿芒霊によって作り出された小蝿芒霊達は、蝿芒霊が崩壊した直後に崩壊し、大地に泥水と砂が降り注ぐ。
もう一体の蝿芒霊は瑠璃亜と紅陽が囮をしている隙に紅月の魔戦殻・紅乙女が蝿芒霊の死角に潜んで面影に近づき、光の剣で蝿芒霊の面影を叩き斬り、面影を失った蝿芒霊は崩壊する。
「芒霊反応が消えたか…」
智は大地に還っていく芒霊だった泥や砂と魔導レーダーの反応を見ながら呟く。
夥しい数の小蝿芒霊達を撃破した後に、その残骸が塵になって降り積もり、雪原の様になっていた大地は、蝿芒霊達を撃破したことで徐々に元に戻っていく。積もった塵が大量の泥水と化して全てを洗い流し、それらは障害物をすり抜けて大地に還っていく。
蝿芒霊達が全滅したことで大気中に漂い、視界を悪くしていた小蝿芒霊達の粉塵も消滅していき、急激に視界が開けてくる。
「この周辺に芒霊反応無し、思ったより因果の黄昏の範囲が広い…、次は比較的手薄な彼方を救いに行こう」
瑠璃亜は広域索敵をしながら言い、敵と味方の識別を割り出して智達にデータを流す。
「そうと決まれば…いきましょうか」
「次は彼方に行くぞ、ちびっ子」
「「は、はい!」」
「………」
紅月は構えを正しながら先行し、紅陽は勇と茜を促しながら加速する。
智は少しだけ考え込んでいたが、すぐに頭を切り替えて瑠璃亜達に追従する。
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蝿芒霊が撃破される少し前…
遠くから無限に溢れ出てくる小蝿芒霊達は暦達にも襲いかかっており、その圧倒的な量に暦達は苦戦を余儀なくされる。
小蝿芒霊達が迫る少し前に暦は雫の救援要請に応じて雫と合流し、空陸の連携でシズク・ユミルを脅かしていた毛虫芒霊と隼芒霊と戦う。空の隼芒霊はコヨミ・ユミルが引き受け、陸の毛虫芒霊はシズク・ユミルが引き受ける形でそれぞれ撃破する。
暦と雫は共闘し、迫ってきた小蝿芒霊の大群を相手に善戦して戦線を支えていたが…。
芒霊側の増援として鴉芒霊と蟷螂芒霊、毛虫芒霊が現れた事で劣勢に追い込まれていく。
-ブゥゥン-
-ドドドドドドドォォォン-
「…くっ!」
「……っ…」
蟷螂芒霊の大鎌が連続で宙を舞い、空を埋め尽くしている小蝿芒霊達が砕けて更に視界が悪くなる。小蝿芒霊達の粉塵に包まれたコヨミ・ユミルとシズク・ユミルは、魔導フィールドを全方位展開して防御していたが、小蝿芒霊達の粉塵が魔導フィールドに付着してユミルの術力を吸収しているため、暦と雫はみるみるうちに消耗していく…。
「あっ…、うぅ…!」
「魅鳥…!」
小蝿芒霊の粉塵がコヨミ・ユミルの聖域を侵食して弱らせており、聖域の中に居る魅鳥が苦しみだし、小雨丸と背中の刺青が再び共鳴し始める。
「ユミル、魅鳥をコクピット内に保護、このまま聖域を維持するのは…!」
暦は苦しむ魅鳥を見て聖域の維持が困難であると判断し、魅鳥をユミルのコクピット内に誘導し、暦の後ろにあるスペースに毛布で包まった魅鳥がすっぽりと収まる。
コヨミ・ユミルは魅鳥が座りやすい様にコクピット内の形を変え、魅鳥を保護する。
「…!?雫!」
「!?」
-ブゥゥン-
-ガァァァァン-
「くっ!?」
暦が魅鳥を保護した直後、粉塵の闇から現れた蟷螂芒霊が大鎌を振り回しながらシズク・ユミルに切り掛かるが、僅かの差でコヨミ・ユミルが割り込んでシズク・ユミルを庇い、コヨミ・ユミルが僅かに吹き飛ばされる。
「ぐ……雫、無事か!」
「…くぅ、ありがとう暦…」
暦は左腕に走る激痛を堪え、コヨミ・ユミルのバランスを整えながら雫に言い、雫は防御の方陣を描きながら暦に礼を言う。
小蝿芒霊達の粉塵が視界を遮り、月を隠してユミルの月光炉を封殺しており、コヨミ・ユミルの傷が自己修復されず、暦は左腕の激痛を抱えながら蟷螂芒霊の攻撃を牽制して雫を援護する。
蟷螂芒霊は姿はあっても実体を持たず、攻撃が通じないのもあって暦達は窮地に立たされていた。
「お嬢が危ないのに…!」
「…くそっ、無限に湧き出る敵と姿が見えない敵かよ…!」
「………」
苅藻と命のHU-Xは無数に湧いて出てくる小蝿芒霊達と月影の母衣で姿を消した鴉芒霊、大地を転がる毛虫芒霊によって阻まれ、暦の援護に向かうこともできずにいた。
-ブゥゥン-
-ドドドドドドドドドドドドォォン-
「!!!」
「雫!」
蟷螂芒霊は小蝿芒霊達など御構い無しに両腕の大鎌を高速で繰り出して大暴れし、シズク・ユミルが展開した防御の方陣術を打ち破る。
『オォォォォン!』
蟷螂芒霊は方陣術を打ち破った後も暴れ続け、小蝿芒霊達を砕いて更に視界を悪くしていく…。
しかし、見方によっては蟷螂芒霊の大暴れは単に前が見えないから暴れているだけとも、思考制御が外れて暴走しているだけとも見える。
現にコヨミ・ユミルとシズク・ユミルには蟷螂芒霊の攻撃が当たっておらず、周囲の建造物を無造作に破壊しただけだった。
「…(…助かった…?)」
雫はシズク・ユミルの状態を確認しつつ、メイスを杖代わりにしてシズク・ユミルを立ち上がらせる。
「……(あの芒霊、私達の姿が見えていないのか?それとも…)」
蟷螂芒霊の大暴れを見ていた暦は、蟷螂芒霊の行動に疑問を抱き、試しに黒煙に紛れてコヨミ・ユミルで蟷螂芒霊の近くを横切ってみる。
「………(…おかしい、あちらに居た時は正確な動きをして攻撃してきた筈だが…)」
蟷螂芒霊の近くを横切るも、蟷螂芒霊の反応は鈍く、暦は疑問を深める。
「…(…小型芒霊達が…崩壊している…?)」
暦は魔導レーダーを確認すると、芒霊の反応が凄い勢いで減っており、空を覆い尽くしていた筈の小蝿芒霊達が次々と崩壊しているのが暦の眼に映る。
「…雫、反撃に出るぞ!」
空を埋め尽くしていた小蝿芒霊が崩壊し尽くし、急激に視界が開けてくるのと雲間から満月の光が差し込んでくるのを感じた暦は、雫に反撃の合図を送る。
「うん、でももう…あの芒霊は倒したも同然…!」
雫は暦に応えるや否や、先ほどまで猛威を振るっていた蟷螂芒霊の面影を方陣内に拘束しており、メイスで面影を叩き壊す。
『ギャァァァァァァ!!!』
-ブクブクブククク-
-ボォォォォォン-
シズク・ユミルによって面影を潰された蟷螂芒霊が崩壊する。
「…罠を張っていたか、流石だな」
「………、…偶然だったけどね…」
暦は地面に描かれていた方陣を見て雫に言い、雫は苦笑気味に答える。
暦は雫の様子を見て何かを察し、それ以上言うのを控える。
「…苅藻と命を援護しにいくぞ!」
「手伝うわ、暦」
暦と雫はすぐに頭を切り替え、苅藻と命がいる場所に向かってユミルを飛翔させる。
既に苅藻達も反撃に出ており、苅藻達の行方を阻んでいた毛虫芒霊を見事な連携戦闘で追い詰めていた。
-ヴゥゥン-
-シュン-
「外れる…?」
「外させねえ!」
-ギュゥゥン-
-チュン-
-カァン-
-ドゴォォォン-
-ズゥゥン-
苅藻のHU-Xが放った対芒霊弾は毛虫芒霊から逸れるが、接近戦を仕掛けるべく近づいていた命のHU-Xのシールドが対芒霊弾を跳ね返し、その弾が毛虫芒霊の側面にある毛穴に入り込み、爆発して毛虫芒霊が転倒する。
「やれ!妹よ!」
「再生する前に!」
-ズバァァァッ-
転倒した隙を逃さじと反対側から迫っていた命のHU-Xが毛虫芒霊に肉薄し、バリアブル・セイバーで毛虫芒霊の傷口を更に切り裂く。
「これでトドメぇ!」
広がった傷口から面影が露わになり、命はそれに向かってもう一本のバリアブル・セイバーを振り下ろす。
-バシュゥゥ-
『ギャァァァァァァ!!!』
-バキバキバキ-
-ボォォォォォン-
HU-Xのバリアブル・セイバーが毛虫芒霊の面影を切り裂き、毛虫芒霊が断末魔をあげて崩壊・破裂する。
「…感謝するわ、命」
「このくらいはな」
「イエイ」
破裂の瞬間に割り込み、命のHU-Xの盾になっていた苅藻は命達に微笑みながら言い、同じく妹を守る盾になっていた兄の命と妹の命は親指を立てて苅藻に応える。
「…お嬢、それに雫様、魅鳥様も御無事で何よりです」
「苅藻達も無事で何よりだ」
苅藻は自分を保護しているコヨミ・ユミルとシズク・ユミルの存在に気付き、丁寧に言う。
暦は苅藻達を見て僅かに顔を綻ばせていたが、苅藻は敢えて気づかないふりをする。
「…それよりお嬢、雫様、今の内にユミルの修復を、敵はまだ残っています」
苅藻は損傷の激しいコヨミ・ユミルとシズク・ユミルを見て言い、HU-Xの修理装置を展開する。
「…すまない、…頼む」
「…すみません、苅藻さん…」
苅藻の言で一時的に忘れていた激痛が再び襲いかかり、暦と雫は痛みを堪えながら苅藻に言う。
「…月の光が強い、お嬢と雫様は回復に集中して下さい、できる限りのサポートをします」
「…わかった」
「…はい」
苅藻はHU-Xの修理装置を器用に操りながら言い、暦と雫は眼を閉じて回復に集中する。
小蝿芒霊達が消滅した事で怪しい雲みたいなものに遮られていた満月の光がユミル達を照らし、月の光を浴びて活性化した月光炉がユミルの循環を良くし、コヨミ・ユミルとシズク・ユミルの傷が徐々に修復されていく。
蟷螂芒霊との激闘でひび割れたコヨミ・ユミルの翼が結晶体に覆われたと思えば割れてひび割れがなくなり、損傷の激しい左腕部も徐々に再生していく。
月光炉の活性化でユミルが自己修復を行うと同時に、ユミルの損傷箇所から伝わってくる激痛を抱えていた暦と雫の痛みも和らいでいく…。
暫くすると、コヨミ・ユミルとシズク・ユミルの損傷は9割近く回復し、小蝿芒霊達によって吸収・消耗していたエネルギーも回復する。苅藻達のHU-Xもお互い修理装置を使って修復しあっており、擬似月光炉が活性化していることもあって、なんとか小破程度にまで持っていくことに成功していた。




