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超創機大戦  作者: 馗昭丹
陰世界騒動
63/77

澤口復学〜迎撃前の四人

今回は人により、気分が悪くなるやもしれませぬ。御注意下さい。

朝…。


陰日本創世連合新潟支部から少し離れた所にて…。


「ふむ、うん、今日も決まってるぜ!」


小太りの極太眉毛が特徴的な大橋惇がコンビニのガラス窓の前に立ち、扇子を広げて様々なポーズをとったり、わざとらしく手で前髪を払ったり、折り畳み串で前髪を梳いたり、喜怒哀楽の表情を確かめたりしながら呟く。


「………」


「ひぇ!?しんずれしましたぁ!」


しつこくポーズを取っている惇に不快感を感じたのか、店内で週刊誌の立ち読みをしていた眉無しスキンヘッドの兄ちゃんが額に青筋を浮かび上がらせながら惇を睨みつけ、それに驚いた惇は慌てて去っていく。

惇は登校中の生徒達を避け、道中の水溜りと水溜りの水を飲んでいる犬を身体を回転させながら器用に避け、曲がったガードレールを飛び越え、抜け道にある電信柱に腕を掛けて直角に曲がりながら疾走していく。


「通るぜ!すまん!」


「…あぁ?」


疾走の途中、ある男とその男を避ける生徒達の間を潜り抜け、その男が惇を捕捉し追走し始める。


惇は追われている事にも気づかず、抜け道を駆使して疾走を続け、益々その男の不興を買う事になる…。


「はぁ、はぁ、ふぅ、驚いたな…」


疾走して息切れを起こした惇は、学園の門前で立ち止まり、息を整えながら呟く。

その場で深呼吸をして落ち着きを取り戻すと、ある異変に気付き始める。


「………」

「………?」


いつもなら惇に冷ややかな視線が集中しているのだが、今日はいつもと様子が違っていた。登校する生徒達の顔色が悪く、立ち止まる惇には目もくれずに足早に学園の門をくぐっていったり、悩みながら行ったり来たりして引き返したり…。いつもなら見張りの教員が二、三人居るはずが、今日は居ない。


様子がおかしいと感じた惇は、即座に周りを見回そうとするが…


-ドゴッ-


「ぐあっ!?」


-ズザァァァ-


急に後ろから誰かに蹴り飛ばされた惇は、派手に転げる。


「ふぅ…」


-ガッ-


「ヅ…!!」


-ゴッ-

-ズン-


「ぶっ!」


-ゴリゴリゴリ-


惇を蹴り飛ばした男は、起き上がろうとした惇のこめかみを蹴り、更に倒れた惇の顔に吸い終えたタバコを捨ててもう一度踏みつけ、靴裏を擦り付けて火を消す。


「1年ぶりか…」


男は足下で灰皿代わりにしている惇に構わず、校舎を見ながら呟く。


「………」


男は見回せばそそくさと去っていく生徒達と教員達を見て顔を顰め、学園の玄関口へと入っていく。


「だ、大丈夫か!?」

「保健室に運ぶぞ!」


惇が蹂躙されるのを建物の影から黙って見ていた教員達は、男が去ると同時に飛び出し、惇を手当てしながら保健室に運んでいく。


「げっ!?あれって…!」

「さ…澤口高志(さわぐち・たかし)じゃねえか…!」

「退学になったんじゃなかったのかよ…」


澤口が校舎に入るなり校舎内は騒然とする。

澤口は190cm近い高身長で、黒いシャツの上に着たブレザーとカッターシャツはボタンを留めておらず、袖は肘の上までめくり上げている。そのめくり上げられた袖と腕の間からは焔に蛇と鬼の刺青が見えがくれしている。

彼を知らない者でも、彼の危険そうな雰囲気は十分に伝わっている様子であり、澤口の姿を見た生徒達は顔面蒼白になりながら道を開けていく。


「…澤口…高志…、…やべえな」


その中にいた三鷹嘉昌は、澤口の姿を見るなり呟き、教室へと急ぐ。


-グッ-


「…おう、さっき走って行った奴誰よ?」


嘉昌が去っていくのを見逃さなかった澤口は、偶然目があった生徒の首を掴み、締めながら問う。


「…い、いえ…」

「…誰よ?」


生徒の首筋が徐々に締めつけられていき、澤口の表情も凄味が増していく。


「い…S18の…三鷹嘉昌という奴です」


「おう」


澤口に凄まれた生徒は観念した様に答え、澤口に解放される。


「…シめとくか」


嘉昌の去り方が気に障ったのか、澤口は呟きながら何かを探す。


「…げっ!?」


そこへ何も知らずに登校してきた桑島景斗が現れ、景斗は澤口の姿を見て仰け反り、慌てて引き返そうとする。


「待てよ」


-グッ-


「!!?」


澤口は逃げようとした景斗の肩を掴み、澤口の凄まじい握力に景斗は動けなくなる。


「俺は今日帰ってきたばかりでよぉ、教室が分かんねぇんだ、ちょっくらS18まで案内してくれよ?」


「!?」


澤口は指を僅かにずらしただけで景斗を強制的に振り向かせ、笑顔で凄む。

澤口は笑顔だが、その笑顔は「断ったら死ぬぞ?」という笑顔である。その笑顔に景斗は恐怖を覚え、声にならない声を出しながら頷く。


「………」


景斗に案内させながら澤口は道行く生徒達にガンを飛ばし、道を譲らせる。


中には突っ掛かる生徒達も居たが、澤口を攻撃する前に拳の一撃で倒される。

澤口の怪力で殴られた生徒達は横か縦に回転しながら吹っ飛び、またある生徒達は床に叩きつけられて気絶する。罵詈雑言を浴びせて逃げ回ろうとする生徒達も居たが、彼らは逆に挑発され、向かってきたところを叩き潰される。更に澤口は戦意喪失した相手を気絶するまで蹴りと罵声を浴びせ、気絶すると踏みにじり、再び景斗に案内させる。


「おう、続けろ」


「…(こ、こいつ…マジでヤベエ奴だ…)」


澤口は景斗に案内の続きを催促し、澤口に倒され、ボロ雑巾の様にされた生徒達と廊下に散らばった血と歯らしきものを見て景斗は改めて恐怖する。


_______________________


「こ、ここがS18になります…」


景斗は教室前に到着するや、澤口にいう。


「三鷹嘉昌って奴を連れてこいよ」

「………」


澤口は笑顔で言い、景斗はその笑顔に震え上がる。


「よ、嘉昌…」

「…ち、来やがったか…!」


景斗は教室に入って申し訳なさそうに嘉昌を呼び、景斗の様子から大体を察した嘉昌は冷や汗を流しながら呟く。


「…どうする?」

「…馬鹿、行くしかねぇだろ、その方が周りの被害は抑えられる」


景斗は大量の冷や汗をかきながら嘉昌に問い、景斗の気遣いを察した嘉昌は、覚悟を決めた様に言い、教室から出て行く。


-ガッ-

-ゴリ-


「おめえ、さっき逃げたろ?」


澤口は瞬時にして嘉昌の爪先を踏みつけて逃げられない様にし、嘉昌の髪を掴みながら壁に押し付け、笑顔で凄む。

澤口の凄まじい握力が嘉昌の髪をぶちぶちと引きちぎっていくのが聞こえ、景斗と嘉昌は怒りと恐怖の狭間で揺れ動く。


-ゴリリ-


「…逃げたろ?」

「ぐ…の…!」


澤口は嘉昌の顔に煙草の煙を吹き付け、徐々に嘉昌の頭を壁にめり込ませていく。

何とか睨み返してはいたが、澤口の笑顔とは対照的なむき出しの殺気に嘉昌は顔が青ざめる。


-メリメリメリ-


「…この手は何だよ、なぁ…?」


澤口の怪力で嘉昌の前髪は全て引きちぎられて血が流れ、凄まじい脚力に爪先が、凄まじい握力に頭蓋骨が悲鳴をあげる。景斗は嘉昌を助けようとするが身体が硬直して動かず、嘉昌は本能的に澤口の腕を掴み、踏まれていない方の脚で必死に踏ん張る。


「………」


「ちゃんと床で寝ろよ」


-グワッシャァァァ-


やがて嘉昌は立ったまま気絶し、澤口は立ったまま気絶している嘉昌を教室の中に蹴り飛ばす。


「御苦労さんっと」


-ドゴォ-


「…ぁ!」


景斗も用済みとされるや、嘉昌と同じく教室の中に蹴り飛ばされ、壁に激突してそのまま気絶する。


「今日も俺様無事到着!」


そこへ何も知らずにやってきた勢気は、廊下の傘立て柵に座って一服している澤口には目もくれずに教室に入っていく。


「んおぉ!?大丈夫か景斗!?嘉昌!?」


勢気は気絶している景斗と嘉昌を抱えながら暑苦しく叫ぶ。


「………」


勢気の暑苦しい声に反応した澤口は、ゆっくりと立ち上がり、教室内に入っていく。

澤口は景斗と嘉昌を抱えている勢気を見下げ、僅かに口端を吊り上げながら勢気の背後へ近づく…。


-シュッ-


「おわっ!?誰だアンタ!?」

「………」


勢気は背後からの鋭い蹴りを回避した後に澤口に気づき、澤口はさして気にせず勢気に爪先踏みと鋭いパンチを同時に放つ。


「おっと危ね!?人に名前聞く前に名乗るのを忘れてた!?」


勢気は澤口の爪先踏みとパンチを回避しながら言う。


「…(…フェイントには瞬きもしなかった…?…何者だコイツ?)」


勢気の言動に澤口は笑顔のまま思案しつつ、勢気に攻撃を続ける。

しかし、勢気は澤口が繰り出す爪先踏み、パンチ、蹴りを回避しながら大きく息を吸い込み、態勢を整える。


「おっし!チャァァァジ完了ぉ!!よっく聞きやがれ!俺様は勢いと気合いの大馬鹿野郎!!栗・坂・勢・気だぁぁぁぁ!!!!夜露死苦!!!!」


「………」


勢気は非常に気合いのこもった大声で名乗り、澤口は言葉を失う。


「ハッ、直ちに桑島君と三鷹君の手当てを!」

「て、手伝え!保健室に運ぶぞ!」


勢気の名乗りで我に返ったのか、教室内の生徒達の硬直が解け、気絶した景斗と嘉昌の手当てと保健室への運搬をしていく。


「俺様そういう奴!!次はアンタの番だぜ!!へへっ!!」


勢気は呆気にとられている澤口に構わず、澤口を指差しなが言う。


「…(…なんだ、ただの馬鹿か、構う事はなかったな)」


しかし、澤口はそれに構う事なく、興醒めした様子で教室から出て行く。


「お、おぉい!?あいつ名乗らずに出て行きやがった!?俺様空回り!?」


勢気は何事もなかったかのように去っていく澤口を見て無駄に暑苦しく叫ぶ。


「あ、ありがとう…栗坂君…」

「助かったよ…栗坂君」

「…栗坂、お前凄ぇな」


「ん!?んんっ!?お、俺様何かしたか!?人違い!?」


澤口が去り、恐怖から解放されたクラスメイト達が各々勢気に感謝するが、勢気には何の心当たりも無く、無駄に暑苦しく動揺する。


「…んん!?もう直ぐHRなのに来てる奴少なくね?惇も来てねえし」


勢気は教室の中に居る生徒が十人にも満たない事に気づいて言う。


「…大橋なら澤口にやられて保健室に運ばれてたぞ、敷島さん達は怪我で暫く休み、あとは澤口を見て不登校ってとこかな…」


「マジか!?…んで澤口って誰だ?」


クラスメイトの一人が勢気に情報を提供し、勢気は聞きなれない名前に首を傾げる。


「さっき出て行った人だよ、復学したんだって」


「あいつ澤口っていうのか、ケンカ超強そうな奴だったな!」


勢気は正直に言う。


「ま、まぁ…ケンカは強いんだけどさ…、彼は危ないから関わらない方が良いよ」


「危ない?…俺様がスッポンだとしたら澤口は?」


「えと、恐竜かな」


「そんなに凄ぇ奴なのか!?」


「あ、ああ(あれ?振ったんじゃなかったのか…?)」


勢気のペースにクラスメイトの一人は若干ペースを崩されながら言う。


勢気とクラスメイト達が各々やり取りをしている内に磯上三春が教室に入り、斑鳩朱花が多忙で来られない事、欠席者の名前と理由を告げてホワイトボードに自習と書き、自習用のプリントを配る。


クラスメイト達がほんの十数分で自習用のプリントを終え、各々が予習に励む中…勢気だけが自習用のプリントに悪戦苦闘を続け、一時限目を費やしても終わらず、見事に玉砕してしまったという…。


「…(…やる気が物凄くあるのはわかるけど、空回りの仕方も物凄いわね…栗坂君)」


一時限目が終わり、頭から煙を噴き出しながら机に突っ伏している勢気を見て、三春は苦笑しつつ補習の予約帳に勢気の名前を書き込む。


勢気が頭から煙を噴き出しながらぐったりしている頃、胃痛で保健室に駆け込んでいた史彦にも自習用のプリントが渡されており、こちらも勢気と同じく一時間後には頭から煙を噴き出してダウンする。


史彦がダウンした後に澤口にやられて気絶していた惇、景斗、嘉昌らが順に目覚め、勢気や史彦と同じく自習用のプリントを渡されるが、結果は勢気や史彦と同じであった…。


_______________________


「…澤口高志、嫌な奴が戻ってきたね…、…!?」


職員室で大道寺御曹司が独り言の様に呟きながら机に突っ伏すが、背後にやってきた教頭が大道寺の肩に手を置き、教頭の手に驚いた彼はすぐに起き上がる。


「…(…まさか特赦を出して彼を復学させるとはね…、向こうの奴らは他の生徒がどうなろうと構わないと見える、…臭っ!?)」


大道寺は思案しつつ欠伸をし、そのまま狸寝入りをしてしまおうとするが、隣の教員の屁の臭いで起き上がる。


「…(復学していきなり乱闘…、いくら逸材と言っても、問題ばかり起こされるとコッチも我慢が利かなくなるんだが…!)」


大道寺は机の棚につけてあるミニ扇風機を隣の教員に向けながら思案し、近づいてくる人物に気がついて振り向く。


「…ふん、何も考えてない奴は気楽で良いな…ゲフッ!」


やけにゴツい教員が鼻をつまんでいる大道寺に言い、直後に向けられたミニ扇風機に乗ってきた臭いに気づいて仰け反る。


「…いえいえ、考えてますよ、今日の昼飯は何とか、晩飯は何とかね」


大道寺はやけにゴツい教員に対して冗談交じりの口調で言う。


「おまっ…ウエッ…!」


やけにゴツい教員は大道寺の言に何か言いかけるが、ミニ扇風機が運ぶ強烈な臭いに負け、鼻をつまみ涙目になりながら何処かへと去っていく。


「…(これで、一時凌ぎにはなるかな?…あとは手が揃うまでに何とかしないと…)」


やけにゴツい教員が去っていくのを見て、大道寺は安心したように机に突っ伏すが、今度は蚊が耳元を過ぎったので、また起き上がる。


…結局、大道寺の寝たり起きたりは昼休みまで繰り返され、大道寺の睡眠欲が満たされることはなかったという。

_______________________


昼休み…。


「…どうした」


「センサーに反応!こ…これは…!」


創世連合新潟支部に設置されているセンサーに反応し、学園内に非常警戒音が鳴り響く。


「反応に該当あり、ゴ、ゴーレムです!数は4!佐渡島の防衛網を突破!」


若い教員が信じられないという表情をしながら伝える。


「…新潟で…ゴーレムが出ただと…?」


大道寺は意外そうな口調で言う。


『敵出現、敵はゴーレムタイプと思われます、直ちに対応して下さい』


非常警戒音と共にアナウンスが流れ、学園内の生徒達は各々対応を開始する。

非常警戒音とアナウンスに速攻で反応した馬鹿共が屋上に集まる…。


-ギショォォォン-


「オッシャァァァァァ!!!栗坂勢気ぃ!陽炎零式ぃ!ぶちかますぜぇぇぇ!!!」


「小林史彦!蟒蛇弐式!暴れてやるぜ!」


「大橋惇ぃ!蟒蛇弐式!燃えるぜぇぇ!」


昼休み中に屋上でキャッチボールをしていた勢気、史彦、惇は、非常警戒音がなるや興奮し、WRFを即時装着して飛翔する。


「…(…なんだろう…、なんだか胸騒ぎがする…、…嫌な感じが…)」


創世連合新潟支部にある支部直属の病院に入院中の琴織泉と新恋を見舞い、その帰りに勢気達の様子を見に来ていた敷島芙蓉は、出撃した勢気達を見て胸騒ぎを覚え、小破状態の紅炎灰燼を装着して勢気の陽炎零式を追いかける。

先日の繁勝との戦闘でダメージを受けているにも関わらず、芙蓉は難なくWRFを即時装着してみせ、雑な動き方をする勢気達とは対照的な無駄の少ない動きで勢気達に難なく追いつく。


「あいつら装着早っ!」

「敷島さんも出たんだな…、こりゃ、俺たちの出番はなさそうだな」


遅れて屋上に上がってきた景斗と嘉昌は、既に遠くまで飛んでいった勢気達を見て言い、さっさと引き返していく。

因みに澤口に前髪を引き抜かれた嘉昌は、惇と景斗によってボウズ頭にされており、涼しすぎる頭に落ち着かない様子で頭をさすりながら移動する。


「…さっそく来たみたいだぞ、高志」


屋上のタンクの影に座り、読書をしている生徒が言う。


「…1年ぶりに戻ってきたんだ、久々に遊ばせてもらうよ」


屋上のタンクの上で昼寝をしていた澤口は、独り言の様に呟いた後に飛び立っていった勢気達を見て起き上がり、ストローで吸い尽くしていたジュースの紙パックを吐き捨て、自らも専用のWRF・羅刹を装着し、ゆっくりと勢気達のあとを追う。


「…何も変わってないな、貴様は」


澤口が飛び立った後、タンクの影からオールバックに薄い顎髭、サングラスをかけ、首にはヘッドホンをかけ、肩から背中には澤口と似た刺青をした厳つい生徒・西村大志(にしむら・たいし)が現れ、空を見上げながら呟く。


「WRF反応…、栗坂君と小林君と大橋君と…あっ、敷島さんと…澤口君もゴーレムの迎撃に出ました!」


「澤口が出た…?…まあいい、栗坂達にゴーレムを近づけるなと伝えてくれ」


「了解」


磯上三春の報告に大道寺は疑問を浮かべるが、すぐに頭を切り替えて言い、三春は勢気達に回線を繋ぐ。


「各機聞こえますか?磯上三春です」


勢気達の機体に回線を繋いだ三春が確認の為に言う。


「こちら栗坂勢気ぃ!!ウオオォォッス!!」

「こちら大橋惇ぃ!!バッチ聞こえてまっす!!」

「こちら小林史彦、勢気と惇のせいで聞こえづらいけど聞こえてます」

「こちら敷島芙蓉、聞こえてます、どうぞ」


三春の言が聞こえるや、勢気と惇は大声で応え、史彦は耳を押さえながら応え、芙蓉は真面目に応える。


澤口の羅刹にも回線が繋がっている筈だが、彼からの応答が無く、彼の態度に三春は胸騒ぎを覚え、羅刹に繋いだ回線を切って勢気達に専用の回線を繋ぐ。


「ゴーレム達の狙いは恐らく新潟支部、支部に敵が近づく前に撃破して下さい。とはいえ、ゴーレムは非常に頑丈でパワーも桁が外れています、よって各機はゴーレムの移動を妨害しつつ…連携してゴーレムを集中攻撃し、各個撃破していってください」


三春は丁寧に図面を見せながら勢気達に言う。


「敷島さん、貴女と紅炎灰燼は先日のカッ君…いえ、佐竹繁勝と戦った時のダメージが残っている筈です、今回は直接の戦闘を控えて栗坂君達の指揮を執って下さい、いいですね?」


三春は芙蓉の紅炎灰燼に専用回線を繋ぎ、芙蓉の怪我の具合を案じながら言う。


「それと…今回は栗坂君と小林君、大橋君は敷島さんの指揮に従って戦って下さい、怪我人の敷島さんに負担をかける度に…補習授業と宿題が増えていくからそのつもりでね?」


続いて三春は勢気、史彦、惇の機体に専用回線を繋ぎ、表向きは冗談っぽく言うが…、その口調は有無を言わせぬ迫力が篭っている。


回線の向こう側にいるとはいえ、三春の声音から伝わる迫力に勢気、史彦、惇はおもわず頷いてしまう。

そして勢気達の反応を見た三春は微笑んだあとに回線を切り替えて芙蓉を見る。


「…三春先生、こう見えても私は元関東軍先駆衆の精鋭ですよ?佐竹教官の猛訓練漬けの日々を耐え抜き、関東軍先駆衆の戦を経験しています。関東軍先駆衆は先鋒として一番危険な敵に突っ込み、それを打ち破らなければいけません。敗色濃厚ともなれば味方の為に退路を切り開き、追撃されれば殿軍を務めて敵を食い止める。何度も窮地に立たされては切り抜けて…の繰り返し。それなりに修羅場は潜っていますから無理はしません」


芙蓉は真面目な態度で三春に言い、芙蓉の言に三春の方が圧倒されそうになるが、三春はすぐに頭を切り替えて芙蓉の紅炎灰燼に澤口の羅刹のデータを送る。


「…この機体は曰く付きの…」


「そう、表向きは関西先駆衆が独自に開発した澤口高志専用のWRF、型式番号は不明、機体名称は羅刹(ラセツ)、敵はゴーレムだけじゃない事を頭に入れておいてね」


芙蓉は三春から送られてきた羅刹のデータを解析しながら言い、三春は芙蓉に念を押して伝える。


「…わかりました、三春先生のおかげで私の感じた胸騒ぎが少し分かった気がします」


三春の言に芙蓉は妙に納得した様な口調で答えつつ、勢気達に暗号を送って陣形を組ませ、臨戦態勢を整える。


「…お願いね、そうならない様に大道寺御曹司(あのボンクラ)は手を打ってるみたいだけど…」


「…はは…」


三春は芙蓉に言いつつ、職員室で多面モニターを起動させ、彼方此方に映し出された人物達を相手に様々な要求をしている大道寺の姿を芙蓉に見せ、大道寺の一人百面相をみた芙蓉は苦笑いをする。


「おっし!俺様が考えた必殺技ぁ!試してやるぜぇ!」

「各部異常なし、…俺の胃も異常なし、大丈夫…やれる!」

「敷島すぁん!この大橋惇になんなりと御命令をぉ!!」


芙蓉が苦笑いしている傍らで、勢気達が無駄に熱く騒いでいる。

特に惇は少々お下品な一発芸を連発しながら延々と芙蓉にアピールしている。


「敷島ぁ!今日は俺様頑張る!!頑張って敷島を護るぜぇぇ!!!だから安心しろぉ!!!」


そんな惇のアピールを遮る様にして、勢気が芙蓉に向かって暑苦しく叫ぶ。

三春の言葉を彼なりに解釈した結果、「芙蓉の負担を減らす=いつも以上に頑張って暴れて芙蓉を護る」になったらしい。


「っ…せ…勢気…」


勢気の暑苦しい叫びに、芙蓉は思わず勢気を見つめる。


勢気は非常に暑苦しい眼差しで芙蓉の目を見るや、勢気の真っ直ぐ過ぎる眼差しを受けた芙蓉は、赤面しながら勢気から目を逸らす…。

勢気から眼を逸らした芙蓉は、己の胸が異様に高鳴るのと体温が急激に上昇するのを感じ、落ち着こうとして勢気の言葉の意味を考えようとするも、考えれば考える程に都合良く解釈してしまう。

悪循環に陥った芙蓉は、暫く勢気から目が離せなくなった上に、勢気の顔を見ることができなかったという。


蚊帳の外では…


…そんな二人を見て渋い表情をする史彦と、必死に芙蓉を振り向かそうとして激しく踊る惇の姿があり、やがて惇は史彦にど突かれて落ち着きを取り戻す。


_______________________





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