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超創機大戦  作者: 馗昭丹
陰世界騒動
62/77

朝日昇る〜暦と凛花

陰日本新潟県内…


早朝の朝日が昇り始め、徐々に陰日本全体が明るくなっていく…。


-ガラッ-


「へへっ」


栗坂家の窓が開き、そこから勢気が飛び出して屋根の上へ駆け上がる。


そして…


「朝だぞクノヤロォォォォォ!!!!!」

「「アオォォォォン!!」」

「「ワンワン!ワオォォン!!」」


この辺では毎朝の恒例になっている、勢気の雄叫びが静寂を裂き、勢気の雄叫びに反応した犬達が遠吠えの合唱を贈る。


「くぅぅぅ!今日も俺様絶好調ぉぉぉぉぉ!!!!!」


-ガラッ-


「アンタ!そんなとこで馬鹿やってないでさっさと朝飯食っちまいな!」


「うしっ!朝飯だ!」


勢気の雄叫びが終わった後に勢気の母である凛が現れ、勢気はさっさと家の中へと入っていく。


_______________________


天郷暦達が寝泊まりする部屋…


「…(…6:30:00…、寸分の狂いもない、流石というべきだろうか)」


勢気の朝の雄叫びが始まる直前に目が覚めた暦は、時刻を見ながら思案する。


「…お目覚めですね、お嬢」


「ああ」


暦の部屋の障子の外から苅藻が言い、暦は穏やかな感じで返事する。


「…失礼します、…此処に来てから目覚めが良くなりましたか?」


着替えと白湯桶を持った苅藻が暦の部屋に入り、暦の表情を観察しながら尋ねる。


「…以前の様な重量感や疲労感は感じなくなった、…顔に出ているのか?」


「…はい、健やかさがよく出ています」


暦の言に対し、苅藻は即答する。


「…いかんな、気が緩んでいるのか…?」


苅藻の言を聞いた暦は、凛とした表情のまま言う。


「…ふふ、お嬢の表情隠しはかなりのものですが、私と命には通じませんよ?」


「…ふ、そう言われると少し自信を無くすな」


苅藻は微笑みながら言い、暦は呟きながら布団から出る。


「…今日は身体をお拭き致します、お嬢」

「…ありがとう、苅藻」


苅藻は暦の寝間着を脱がし、サラシを解いて汗を拭き取り、白湯桶のタオルを絞って再び全身を拭き取り、暦の胸にサラシを巻いていく。


「…お嬢の胸、順調に育っていますね、…少し羨ましく思います」


「…また大きくなったのか…」


苅藻は暦の胸のサラシを巻きながら、少し羨ましそうに呟き、それを聞いた暦は、少し悩んだ様な感じで呟く。


「ひゃっ!?」

「どうした妹よ!」


「こっち見んな!」

「また破れたのかよ!?」


苅藻が暦のサラシを巻いていると、部屋の外から黒田兄妹の声が聞こえる。

その後に足音が暦の部屋に近づいてくるのが二人の耳に聞こえ、二人はドアの方に振り向く。


-シャァ-


「苅藻ぁ、ブラ入んなくなっちゃったからサラシ巻いてよぉ〜」


命(妹)が半泣きになりながら言い、フックの壊れたブラで胸を隠しながら暦の部屋に入ってくる。


「「…………」」


命の姿を見た暦と苅藻が一瞬だけ固まる。


「…貴女は育ち過ぎです」

「…だな」


「体質だもん…」


「…それ以上は言わないで下さい、御役目に支障を来しますので」


命の胸を見た苅藻と暦は、少し羨ましそうに言い、命は少し申し訳無さそうに言うが、途中で苅藻に言を遮られる。

苅藻の言で本能的に危険を察した命は、これ以上を言うのをやめる。


「…巻き終わりましたよ、お嬢」

「ありがとう」


やりとりをしながらも苅藻は暦の胸のサラシを巻き終え、暦に制服を渡して命の背後に回る。


「………、…91から93……」


サラシにある桜吹雪の模様の様な印が前に止めた印に届かなかったので、そのズレた間隔を見た苅藻はかなりの小声で呟く。


「お嬢くらいのサイズが羨ましい…」


「…それは私も同感です、…貴女が言うと嫌味に聞こえますが…」


「はは…、苅藻…怒ってる?」


「…いえ、単に羨ましいだけです」


命はサラシで巻かれた暦の胸を見ながら言い、苅藻は命の胸のサラシを巻きながら僅かにいじけが混じった口調で言う。


「…(…むぅ……苅藻、やっぱりちょっとだけ怒ってる、口調が違うし、ちょっとだけ巻き方が荒くなったし…)」


「…(…サラシが足りないなんて…)」


サラシが尽き、苅藻は少々きつめにサラシの先端を止める。


「…(…なになに、バス停で乱闘?47人が重傷?…どうせチンピラどもが創世連合にコナかけて自滅したんだろ)」


食卓で酒本は新聞を見ながら茶をすする。


「………」


酒本の対面には女装を終えた命(兄)が鏡で己の姿に抜かりがないかをチェックしつつ、酒本が飲み干した器に茶を注いだりして暦達を待っている。

命(兄)は女装がすっかり板についたのか、立ち振る舞いは自然になりつつあり、暦達に混じっても違和感がなくなってきていた。


「…お前、そっちに目覚めたか?」


命の様子を見て、酒本は命をからかう。


「違います、御役目を全うする為に日々精進を重ねているだけです」


命は酒本の言に反応して言う。


「…本来なら俺の役目なんだがな、学院長に即不採用の印をつけられちまって情けねぇ…」


「そりゃ履歴書を改ざんしたらそうなって当然ですよ、…そもそも若頭が教師なんて無理がありますし、女装しても妖怪にしか見えませんからね、学院での事は俺に任せておいて下さい」


酒本のぼやきに対し、命は酒本の女装を想像しながら言い、茶を啜る。


「…お待たせ致しました、朝食にしましょう」


暦の部屋から苅藻が出るや、おかずの封印を解き、炊きたての白飯を茶碗に盛り、それぞれを食卓に運ぶ。苅藻に続いて着替えの終わった暦と命(妹)が白湯桶と洗濯物を持って現れ、二人は洗濯場に向かった後に食卓に着く。


__________________________



「隙あり!」

「ああ!?俺様のパンの端っこ嚙りやがったな!?」


「ムグムグ、うっせ!!昨日の玉子焼きのお返しだバーロー!!」

「アッタマきたぞクノヤロ!俺様はそのベーコン…」


「いい加減にしな!!これでドタマかち割るよ!!」


「「ひっ!?」」

「か、母ちゃん、フライパンはマジで怖ぇからしまってくれ!」


「アンタが止めないからこうなるんだよ!!もっとビシッとしな!!」

「わ、わかったからフライパンを構えたまま怒鳴らないでくれ…!」


「き、今日の母ちゃんは怒らせねえ方が良いみたいだ…!」

「お、おう…!」

__________________________


近所の栗坂家の喧しいやりとりが天郷家の部屋にも響き渡る。


「…栗坂様は今日も元気ですね」

「…ああ」


苅藻は暦の器に茶を注ぎながら呟き、暦は器に浮かぶ茶柱を見ながら同意する。


「「………」」


その隣では黒田兄妹が暦と苅藻に同意しつつ、二人同時に味噌汁をすすったり、白飯をおかわりしたり、同じおかずを食べている。


「………、…ガキの頃を思い出しちまうぜ…」


栗坂家のやりとりを聞いていた酒本は思い出が蘇ったのか、梅干しの種を噛み砕きながら呟く。


「御馳走様」

「御馳走様です」


そんな酒本の呟きに構わず、暦たちは各々朝食を平らげていく…。


苅藻は食事が終わると同時に皆の空いた食器を纏め、最後に残ったたくあんを巡って睨み合っている黒田兄妹を見るや、「食べないなら私がいただきます」と言ってさりげなく最後のたくあんを食し、二人の対立を中断させる。

たくあんを取られて落ち込む黒田兄妹を尻目に苅藻は食器を洗い出し、暦は鞄と結んで纏めてあるゴミ袋を持って玄関に移動する。

暦が動いたのを見て、黒田兄妹はたくあんを取られた事でいっぱいになっていた頭を切り替え、兄の方はゴミ袋を持って暦の後に続く。

妹の方は脱水の終わった洗濯物を取り出し、ベランダの竿に蛸足とハンガーを引っ掛け、迅速に洗濯物を干していく。


「…では若頭、あとはお願い致します」


「おう…」


皆の分の食器洗いを済ませた苅藻は、酒本に留守番を任せ、暦達と共に家を出る。


「……ふっ…」


酒本は蘇った思い出に浸っていたが、少しした後に鼻で笑い、掃除に取り掛かる。


_______________________


天郷家付近…


「………」


「…お嬢、どうかしましたか?」


暦達が出てから少し経つと、ある地点で暦が立ち止まる。

それを見た苅藻が臨戦態勢を整えながら尋ねる。


「…私に何か用か?」

「「………」」


暦はその場に立ち止まったまま言い、苅藻と命が襲撃に備える。


「………」

「………」


暦はその場に立ち止まったまま微動だにせず、何かが出てくるのを待つ。


そこへ…


「エリヴォン、バレておるぞ、諦めて出てきたらどうだ?」


暦達の前から背丈の倍はありそうな、布に覆われた長い棒状の物を背負った、長い茶髪の少女が現れる。


「…できればサシで話し合いたかったのだが」


茶髪の少女の声に反応してか、建物の塀の陰から金髪の女性が出てくる。


「…失礼ですが、どこの身内の方ですか?」

「………」


少女とエリヴォンの姿を見て何かが引っかかった苅藻は、暦の前に出て二人に尋ねる。

暦は少女とエリヴォンの姿を見てある出来事を思い出す。


「それは言わずともわかっておろう、蒼月の翅天使を駆る天郷暦、従者の斯堂苅藻、黒田命」

「…創世連合本部の者といえば分かりますか?」

「………」


少女は暦と苅藻と黒田兄妹を順に見ながら言い、エリヴォンは暦を見て言う。エリヴォンの言に苅藻は飛刀を握るが、暦は苅藻の手に触れて苅藻に手出し無用の意思を伝える。

少女は暦の意思を察して一歩近づき、エリヴォンは暦の左右を固めている苅藻や黒田兄妹を無視して暦に近づく。


「…お待ち下さい」


当然、苅藻と黒田兄妹は暦とエリヴォンの間に割って入り、エリヴォンと苅藻が接触する。


「…おっと、小さいからわからなかった」

「…大き過ぎるが故に死角が多いのですね」


エリヴォンはジト目で見ている苅藻に言い、暦に手出しを禁じられている苅藻は、エリヴォンの体格に若干の嫉妬を感じながら言う。


「…今気付きましたが、貴女は寝不足の様ですね、早めにお引き取り下さい」

「…ああ、できるならそうさせて欲しい」


エリヴォンの鼓動から状態を見破った苅藻は言い、エリヴォンは諦めと眠たさが混じった口調で言う。


「…用件は何だ?」


暦は少女とエリヴォンを交互に見てから言う。それを見た少女はエリヴォンに先に言う様に促し、自らは一歩引き下がる。


「ある計画を阻止する為、我等に協力して欲しい、報酬は弾みます」


エリヴォンは暦に言う。


「…その計画とはうわばみに関する事か?」


暦はある計画を察して言う。


「…かの計画だけを見ればハズレ、ですが…うわばみに関する計画の一部には違いないと思います」


エリヴォンは僅かに思案した後に答える。


「…断ると言ったら?」


「協力出来ないと仰るなら、せめて中立に徹して下さい」


暦の言にエリヴォンは条件を緩和させる。


「それはそちらの出方次第、陰法度次第(かげのはっとのしだい)に触れないならこちらも介入はしない」


「…なるほど、こちらの申し出に応じる意思は無いと。これから先も協力する意思はなく、事と次第によっては敵に回るということですね、残念です」


暦は即座に切り返し、暦の答えを聞いたエリヴォンは僅かに敵意が滲み出した口調で言う。


「…そう認識してもらって構わない、…が、手を出してきた時は高い代償を払わせてやる」


暦は敵意を滲み出させたエリヴォンに対して凄味のある口調で言う。


「その言葉をそのまま返します、そうなれば…産まれてきた事を後悔する事になるでしょうね」


エリヴォンは冷笑を浮かべながら言う。


「…決まったな、次は私の番だ」

「…公方様…」


一応の決まりが見えたとして、少女がエリヴォンの手に触れ、敵意を剥き出しにしつつあるエリヴォンを落ち着かせながら言う。


「天郷暦、君は敵を作りやすい様だな」


「…それは互いにだろう、一条凛花」


凛花の言に対し、暦は凛花を見ながら言う。


「「………」」


二人は無言で見つめ合い、二人の間には介入し難い重い沈黙が漂う。

凛花は無邪気に好戦的な視線、暦は冷淡に見えて激しい何かを含めた視線をぶつける。


「………」

「………」


二人が見つめ合っている横ではエリヴォンが一瞬だけ寝落ちしそうになり、苅藻はエリヴォンに同情の眼を向ける。


「…今は何を話しても無駄の様だな、日を改める」


暦の視線から会話不能と判断した凛花が言う。


「…これから先も無駄だ、傀儡の公方」


凛花の言に対し、暦は全てを悟ったかの様な口調で言う。


「…よい」

「………」


暦の言に対してエリヴォンは手を出しかけるが、凛花に止められる。


「…お引き取り願います、私どもも何かと忙しい身ですから」


「…そうさせてもらおう、行くぞエリヴォン」

「…はっ、公方様」


苅藻が凛花と暦の間に割って入り、凛花とエリヴォンに言うや、凛花は一瞬だけ遠くを睨んだ後、エリヴォンに言って共に去っていく。


_______________________


某アジトの屋上にて…


「…ふん、小物風情が我等に協力するつもりはないか、なら障害に成り得る者は排除するに限る」


ビルの屋上で狙撃銃を構えた男が呟き、引き金に力を込め始める。


-カチン-


「………、ん…?」


-カチン-


引き金を引いたが、弾が発射されず男はもう一回引き金を引く。

しかし、弾が発射されない。


疑問に思った男は狙撃銃から離れると…。


「!?」

「やっと気づいたのね、とんだ間抜けだわ」


WRFを装着した西五条理愛が狙撃銃の弾とパーツを見せながら言う。


『先回りします』

「何!?」


逃げようとした男に今度はアルレジックスが先回りして退路を塞ぐ。


「死か屈服か、好きな方を選びなさい」


理愛は冷たい口調で男に言い、男は躊躇なくビルの屋上から飛び降りる。


「アンタ達、出番よ」


「出番ネー!」

「流石は専務、迅速な対応に私は惚れ惚れしてしまうのですよまったく」

「そーそー」


一階で待機していた理愛の手下三人衆が現れ、飛び降り自殺防止用のクッションを迅速に展開し、落ちてきた男を受け止めてそのまま拘束する。


「く…!」


クッションで包まれてダルマの様にされた男が降下してきた理愛を睨む。


「…この街は星籠同盟、創世連合の二つが眼を光らせている場所よ?そんなとこにわざわざ乗り込むなんて馬鹿ね」


理愛は呆れた様な口調で男に言う。


「何…!」


『失礼、狙撃に集中している時に自爆スイッチと自決毒は排除させていただきました、序でに口の中に舌噛み防止のスライムを…』


-ガボォ-


「……!!!」


アルレジックスはゼリー状の物体を男の口に打ち込み、男は顎が外れかけながら何かを抗議する様にして暴れる。


「アルレジックス、そいつを一条さん宅の庭に捨ててらっしゃい」


『了解しました』


理愛はアルレジックスに命じ、アルレジックスは男を担いで空の彼方に飛んでいく。


「アンタ達、よくやったわね。片付けが終わったら仕事に戻りなさい」


「は、ははー」


理愛は手下三人衆に言い、自らは再び屋上に戻っていく。

手下三人衆は迅速に片付けを済ませ、ビルの中に退避する。


「…(一条凛花、実力はあるけど傀儡みたいね)」


理愛は先日の凛花と芳弘の対決を思い出しながら思案し、屋上付近で減速してゆっくりと着地。

理愛はそこでWRFを部分展開だけにとどめて街全体を見下ろす。


今日も新潟は表向き平穏な様子である…。


_______________________


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