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超創機大戦  作者: 馗昭丹
陰世界騒動
61/77

房彦の暗躍〜由乃の帰還

-スッ-


「…殿下、関西の影が新潟に数多侵入、対象に害為す動きを見せ、即滅。重臣殿の影が残りを掃討し、対象の安全を確保。そろそろ対象が到着する頃」


「ふむ、大儀である」


-カチッ-


専用の執務室で務めに励む房彦に何者かが器具を使って伝え、房彦は呟きながら机の端にある小さな穴に閉じた扇子を差し込む。


-ギュゥゥゥン-


何かの認証を終えたのか、扇子を差し込まれた机が変形し、書類や筆記を保護しながら床下へと収納されていく。


「畠山殿が参られました」


「通すがよい」


房彦の専用端末に反応があり、房彦は許可を出す。

許可が下りた直後に房彦を中心にして部屋が変形していき、やがて茶室に似た部屋になる。


-ヴゥゥゥゥン-


「………」

「…(ぐ、うう…)」

「…(何時になっても、慣れませんな、この感覚は)…」


窓の風景も宇宙空間から新潟支部近辺のものに変わっていき、房彦の影達は別空間から元の空間に戻ったかの様な感覚に襲われる。


「…お、お邪魔…致しまする…」


空間が戻った直後に障子が開けられ、小柄で少々気の弱そうな人物が部屋の中の様子を見ながら恐る恐る部屋に入る。


「は、畠山…に御座います、殿下」


「粗茶で御座います…、出向大儀」


部屋に入ってきた畠山氏に対し、房彦は冷えた茶を渡しながら言う。

畠山氏は渡された茶を数回に分けて飲み、一息をついてから房彦の方を見る。


「い、今の我が身があるのは殿下のお力添えがあっての事…、此度はそ、その御礼をしに…」


「我等があるのも貴殿らの支えがあっての事、礼には及ばぬ」


それでも緊張で上手く言葉が繋がらないのか、畠山氏は顔を引きつらせながら言い、房彦は畠山氏の緊張をほぐす為に態度を軟化させ、口調を和らげる。


「き、恐悦至極に御座います、これからも精一杯支えていく所存、何卒宜しくお願い致します…」


「ふむ、期待しておるぞ」


房彦の態度に感じ入ったのか、畠山氏は深く頭を下げながら言う。


「………」


下げた頭の裏で畠山氏は少々安堵したかの様な表情を浮かべる。


「今、関東八家が一、佐竹氏の御一行が来ておる、畠山殿さえ良ければ我が仲介しても良いが?」


「…佐竹氏…、そ、その方はもしや…佐竹繁殿で御座いますか?」


房彦は思い浮かんだ様に畠山氏に提案し、房彦の提案を聞いた畠山氏は恐る恐る尋ねる。


「佐竹繁の他、関東軍先駆衆を束ねる佐竹繁勝殿、同じく関東軍先駆衆最強と名高い嘉賀芳弘殿だ。此処に名門武家の三代が揃う事など滅多に無い、合うか合わないかは畠山殿次第だが…?」


「………」


房彦の言を聞いた畠山氏はみるみる内に顔色が悪くなり、冷や汗をかき始める。


「…戯言だ、無理に合わせる事はない」


「…す、すみませぬ、殿下の御友人とはいえ、繁殿は如何も苦手でして…」


畠山氏の様子を見た房彦は何かを察した様に言い、畠山氏は青ざめた表情をしたまま謝る。


「…構わぬ、我も少々軽率に過ぎた様だ。…ところで畠山殿、何時こちらを立たれますかな?国元は不穏と聞くが…?」


「直ぐにでも立ちまする、あまり猶予がありませぬ故…」


「…そうか、ならば急がれるが良い、傀儡同然の子に追放されてはかなわんだろう」


「はっ、し、失礼致しまする…」


畠山氏は房彦に頭を下げつつ、出口に向かって移動し、器用に部屋から出て行く。


「…向こうは如何なってる?」


「…痺れを切らした重臣達が畠山殿の御子息を担ぎ上げた模様、クーデターを実行するのも時間の問題かと」


房彦は何処かに向かって呟き、何処かから影が現れて房彦に報告する。


「…思った通り、留守を狙って手を伸ばしてきたか、そこまでして戦争がしたいかね。対処に送った者達の動きはどうか」


「…予定通り、奴らと行動をともにしています」


房彦は独り言の様に呟き、影達は入れ替わりながら報告する。


「さて…畠山殿が帰宅する前に掃除を済ませておかないとね。…現場は任せる」


「御意に」


房彦はそれだけを言うと、影達は護衛を残して一斉に飛び立つ。

再び一人になった房彦は、部屋を元の擬似宇宙空間に戻し、机を展開して執務の続きを再開する。


_______________________


傭兵達による新潟支部襲撃の騒ぎが収まってきた頃…。


「…(…データ照合、偽装はしてあるが、奴等が使っていたのは関東支部が開発した最新型WRF・蟒蛇参式に違いない、…関東支部の一部は本格的に本部からの独立を図っている様だな)」


傭兵達の機体を蹴散らした繁勝が敵機の残骸を回収しながら思案する。


「…(…つい私用を急いだが、どうやらしてやられたのは俺の方か…)」


迫り来る気配を察知した繁勝は、隠行の術を使い、即座に移動する。


-ヒュン-

-ギショォォン-


「…(…紋無しステルス機…、何処ぞの特殊部隊か)」


「…何処に逃げても無駄だ、この全方位索敵波動からはな!」


-ブゥゥゥン-

-チュゥゥン-


黒い蟒蛇弐式を装着した者達が降り立ち、機体に搭載されている全方位索敵波動を放つ。

全方位索敵波動が範囲内に存在するあらゆる物体を暴いていく。


-シュゥゥゥン-


「ひ、ひぇぇ…」

「くそっ、ここまでかよ…!」


全方位索敵波動を浴びた機体のステルスが無効化され、隠れていた傭兵達が損傷の激しい機体を捨てて逃走を開始する。


「一瞬で済ませてやる、感謝しろ」


-チュン-

-バシュゥゥ-


黒い蟒蛇弐式が瞬く間に間合いを詰め、膝部に展開した五本のビーム・ニードルで傭兵達を貫き、傭兵達が蒸発する。


-ブゥゥゥン-

-チュゥゥン-


「………」

「………」


黒い蟒蛇弐式は再び全方位索敵波動を放ち、残敵を確認する。


「…ちっ、コッチもハズレか」


-ヒュゥゥン-


期待していた反応が無かったのか、黒い蟒蛇弐式を装着した者は舌打ちをしてビーム・ニードルを解く。

他の黒い蟒蛇弐式もそれぞれ構えを解き、傭兵達が乗り捨てた機体を回収し始める。


「…此方伍班、担当地域の賊の掃討は完了したが、鬼には逃げられた、ゴミの回収が済み次第帰投する」


「賊の機体の回収完了、これより帰投する」


瞬時に回収と諸々の確認が済んだのか、黒い蟒蛇弐式を装着した者達はそれぞれ飛び立っていく。


「…(…蔦紋、直違紋…関西側の手の者か…?)」


黒い蟒蛇弐式を装着した者達が去る前に繁勝は目の焦点をずらして黒い蟒蛇弐式の肩と腰を見据え、黒い蟒蛇弐式に充てがわれている紋を看破しながら思案する。


-ジッ-


「…佐竹繁勝、此度の件…貴様の言を聞かせてみよ」


黒い蟒蛇弐式が去ったと同時に繁勝の端末に専用回線が繋がり、竹に二羽飛雀の家紋マークが映し出され、竹に二羽飛雀の家紋が繁勝に尋ねる。


「…はっ、どうやら内通者が謀を用い、賊を手引きしたものと」


繁勝はさして動じた風もなく切り返す。


「この動画は何だ?」


「賊が用意したものでしょう、場所が違いすぎます」


繁勝の端末に繁勝が新潟支部の攻撃を指揮している様な動画を始めとする数多の似た動画が流されるが、繁勝は即座に答える。


「…貴様は何処で何をしていた?」


竹に二羽飛雀の家紋は少々威圧的な口調で繁勝に言う。


「…新潟支部にて演習中に状況発生、大道寺殿の要請に応じ、現場にて防衛に参加、一条殿下とそのお連れ様、及び佐竹繁殿を護衛、賊を掃討。記録は既にそちらへ送っておきました」


「わかった、先程風魔と大道寺の狸からも裏は取れた、古河の狐には儂から話をつけておく、…貴様は由乃と繁と芳弘を連れてゆっくりと帰ってこい、帰ってくるまでには掃除を済ませておく」


繁勝は簡潔に答え、竹に二羽飛雀の家紋はそれに納得した様に口調を変えて言い、端末を切る。


「………」


竹に二羽飛雀の家紋と通話を終えた繁勝は動きを止め、真っ直ぐに迫ってきた気配に備える。


「…外祖父様との話は済んだか?」


繁勝の前に鶴橋を持った少女が現れ、繁勝に尋ねる。


「…由乃」


繁勝は少女・宇都宮由乃(うつのみや・ゆの)を見て言い、由乃は微笑む。


「遠路を往復して我は疲れた、繁勝、繁が居る宿に案内せよ」


「………、仰せのままに」


由乃の言に繁勝は少し思案し、記憶から現在地と繁の指定した宿の位置を割り出して答える。


「…今夜は繁爺の説教を聞かねばならん、よって繁勝、我の供をせよ」


由乃は繁勝の背に乗り、繁勝の耳元で言う。


「…わかった、今宵は寝かせるつもりはない」


「…ほう、我に何をするつもりだ…?」


由乃の言に対し、繁勝は小声で言い、由乃は若干期待とも不安ともつかないものが篭った様な口調で言う。


「…俺からも幾つか説教をさせていただきます、どうかお覚悟を決めて下さいます様」


「…やはりか、なら今宵は眠れそうもないな…、夜戦に備えて仮眠をとる故、暫く背中を借りるぞ」


繁勝の凄味のある言に由乃は諦めた様な口調で答え、繁勝の背中で仮眠を取り始める。


「…あと、何処かの影が我を監視しておる、敵ではないと思うが、処遇は任せるぞ」


「………」


由乃は寝息を立てるかの様に言い、繁勝は無言で由乃を背負ったまま歩いていく。


「………」


視界の開けた場所で立ち止まり、繁勝は隠行の術を解除して迫り来る影を待ち受ける。

繁勝達の姿が認識できる様になるや、影達が繁勝に向かって集まってくる。


「…佐竹…繁勝様とお見受けします」


集まった影達は大半が周りに潜み、代表らしき者が繁勝の前で言う。


「…如何にも、貴様らは何処の者だ?此処の影ではなさそうだが」


繁勝は影達の姿を見て言う。


「我らは裏世界の者、近州佐和山の影で御座います、主からのお手紙を持って参りました」


「近州佐和山…重成か…」


影達は手紙を差し出しながら言い、繁勝は手紙を受け取る。

繁勝の手に渡った手紙が忽ちの内に電子化し、繁勝専用機・黒狼皇を介して繁勝の記憶の中に保存されていく。


「………、…奴に伝えろ、逸るなとな」


瞬時に内容を確認した繁勝は、独り言の様に言う。


「ええ、ちゃんと伝えときますよ」


「!」


突然、繁勝の前に髭面の美丈夫が現れ、繁勝は身構える。


「おっと、驚かすつもりはなかったんですがね、俺は島猛(しま・たけし)、近州佐和山の守護機乗りの隊長をやってます、以後よろしくお願いしますよ」


猛は繁勝に言い、繁勝と握手をしようとするが何かを察した繁勝に握手を流される。

…猛の指先には、特殊鋼で出来た棘が仕込まれていた。


「…貴様、喧嘩なら買うぞ…?」


「遠慮しときますよ、関東最強軍団の長とやりあったら血肉も残らない」


繁勝は凄味のある口調で猛に言うが、猛は全く動じる様子もなく冗談交じりの口調で言う。


「「………」」


周りに潜む影達は繁勝の凄味に圧され、身動きすらとれずに固まっていたが…。


「それじゃ、俺たちはこれで失礼するとします、…帰るぞ!」


「「……!」」


猛は一喝し、影達は硬直から解放されて一斉に飛び立つ。


「…繁勝さん、今度は主達も連れてきますんで、それまで死なないで下さいよ?」


「…さっさと帰れ」


影達が去った後、猛は先程とは違う真面目な態度で言い、繁勝は猛を睨みながら言う。


「そうさせてもらいます、それじゃ」


「………」


繁勝の殺気を感じ取った猛は、瞬く間に隠行の術を展開して早駆けする。

繁勝も隠行の術を使い、宿に向けて歩き出す。

由乃は繁勝の背中で幸せそうに眠っており、繁勝は彼女を起こさない様に振動を抑えながら歩く。


…暫く歩んだ後…


「うおおおおお!!!!」


-ドゴォッ-

-バシィィ-

-ドボォォ-


繁が片手で暴漢の頭を掴みながら豪快に振り回し、周りの暴漢達を薙ぎ倒しては暴漢を投げ飛ばし、弾き飛ばす。

繁が腕を振り回す度に暴漢達の身体が吹っ飛び、受け止めようとした暴漢は逆に投げ飛ばされる。

数の差を物ともせずに鬼の如く次々と蹂躙していく繁の姿に、暴漢達は恐れをなす。


-ドガァッ-

-バァァァン-

-グワッシャァァァ-

-ドゴォッ-

-ボキッ-


「んだよ、もう終わりかぁ!?」


芳弘は片手でバス停を振り回し、コンクリート部分に当たった暴漢は身体が2回転し、標識部分に当たった暴漢は吹っ飛び、芳弘に恐れをなして逃げる暴漢達には吹っ飛ばされた暴漢達がぶつけられる。


「誰が寝て良いって言ったぁぁ!?」


-グググ-


芳弘はバス停を振り上げる。


「……、叔父貴、芳弘、何をやっている…!」


宿の近くまで到達した繁勝は、ボコボコにされて気絶した者達と、雄叫びと共に暴漢達を薙ぎ倒して武勇を誇っている繁の姿と、返り血のついたバス停を振り上げた芳弘の姿を見て、繁勝はおもわず呟く。


「遅かったのう、繁勝」

「歓迎会は終わっちまったぜ?繁勝」


繁勝の言に反応した繁は、やけに生き生きした口調で言い、芳弘は振り上げたバス停を下ろして言う。


「ひ、ひぇ…!鬼の繁勝までくるなんて…!」

「こ、こんなのに勝てっこねえ、俺は逃げるぜ!」

「こ、こいつら本当に人間かよぉ…!」


動ける暴漢達は、腰を抜かしたまま逃げ出し、まるでアザラシの様な動きで去っていく。


「………」

「…!?由乃様ではないか、これはいかん、直ぐにお布団を敷かねば」


繁勝は眉間に手を添えながら何かを堪え、繁勝の背中で眠っている由乃の姿に気付いた繁が慌てて宿の中に入っていく。


「…芳弘、宇都宮代表を迎えに行かずに何をしている…!」


「すまねえ、繁のジジイがチンピラどもと喧嘩始めやがってよぉ、俺様にも喧嘩ふっかけてきやがったから捻ってやったらついよぉ…」


繁勝の凄まじい怒気を前にした芳弘は、素直に謝り、繁勝の前に立って歯を食い縛る。


「…代表の前だ、それと相手に免じ罰は軽くする、今宵は俺の説教を聞いてもらうぞ」


「はっ、早速後始末をします!」


繁勝は彼方此方に倒れている者達の姿を見て言い、芳弘は繁勝に敬礼をした後に先程倒した者達の片付けを開始する。

芳弘は一人一人を簀巻きにしていき、片肩に六人ずつ担いで纏めて運んでいく。


繁勝は芳弘がある程度片付けを済ませると、由乃と共に宿に入っていく。


芳弘が片付けを終わらせて宿に戻ると、由乃を部屋に置いて休憩所で一服していた繁勝は、芳弘に風呂に入る様に促し、芳弘は体に着いた汚れを洗い流すべく風呂に入る。


「…茶を買ってある」

「すまねえ、いただくぜ」


芳弘が風呂からでると、繁勝は販売店で購入した芳弘の好きな茶を差し出し、芳弘は茶を飲んで一息をつける。

やがて繁勝と芳弘は互いの情報交換と休憩を終えて部屋に戻ると、一足先に繁が由乃に説教を始めていた。


「…今宵の説教は長くなりそうだ、叔父貴のスイッチが入ってしまっては誰も止められん…」


気合の入った繁の説教に繁勝は遠目で助けを求める由乃を尻目にぼやく。


気合の入った繁の説教はその日の早朝まで続き、正座をしたまま聞かされていた由乃と芳弘はすっかりぐったりとしてしまっていたという。


繁のスイッチが切れるまで由乃と芳弘に付き添っていた繁勝は、繁と由乃と芳弘を布団に入れて寝かせ、自身も由乃を警護しつつ眠りにつく。


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