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超創機大戦  作者: 馗昭丹
陰世界騒動
60/77

支部会談〜刺客掃討

陰日本新潟上空…


繁勝と朱花が睨み合いをしている頃…。

上空では芳弘と凛花の激闘が続いており、未だに互角の勝負が展開していた。

戦闘の激しさが残影になって現れ、残影同士も激しく戦っている。


「せやぁ!」

「おらぁ!」


-チュン-

-バキィィィン-


凛花の槍を芳弘がトンファーで受け止め、両者は互い競り合う。

協定勢力内の敷地であるので、両者とも地上の建造物の損害を考慮して大技は使わず、得物による近接格闘戦のみで戦っている。

それでも凛花の武帝皇の槍と芳弘の覇皇のトンファーが激しくぶつかり合う度に衝撃波が走り、地上の建造物を保護する為に張り巡らされている障壁システムが作動する。


凛花と芳弘が互角の戦いを演じている時、地上には数台の黒塗りの高級車が創世連合新潟支部に向かって走っていた。

障壁システムが作動したのが気になったのか、車の窓から空の様子をうかがっている人物がいた。


「殿下、凛花お嬢様と武帝皇が…」

「…構わぬ、好きにやらせよ」


空でぶつかり合う凛花の武帝皇と芳弘の覇皇を見て、一条房彦(いちじょう・ふさよし)は表情一つ変えずに言う。

彼を乗せた黒塗りの高級車は料金所を抜けて高速道路から降り、創世連合関係者の専用地下道に入って暫く走っていくや、創世連合新潟支部のある地下都市に出る。

地下都市の一般道を走り、少しして創世連合新潟支部の前に到着すると、大道寺代表と佐竹繁、磯上清孝の三人が房彦の乗る黒塗りの高級車に近づく。


「殿下、大道寺代表が出迎えに参られました」

「…ふむ」


房彦が車から降りようとすると、彼専属の日傘差しが現れ、更に彼が通る専用の道が敷かれ、大道寺代表と佐竹繁、磯上清孝の三人が房彦を出迎える。


「殿下、暫くに御座います」

「………」

「…大道寺代表、そして佐竹繁に磯上清孝、出迎え大儀である」


大道寺代表が房彦に挨拶をすると、房彦は大儀と書かれた扇子を広げながら大道寺代表達に言う。房彦の扇子と言がツボにはまったのか、清孝は眉間に皺を寄せながら笑いを堪え、それを見かねた繁に小突かれる。

房彦の側近達と護衛達が房彦達に邪魔が入らぬ様に壁を作り、次いで重臣らしき者達が車から降りて大道寺代表達を睨む。

重臣らしき者達も丁寧に迎えられていたが、代表達が房彦にゴマをすっている様に見えるのか、不機嫌そうにしていた。


「殿下とそのお供の方々も長旅でお疲れで御座いましょう、早速、宿の方に案内致します」

「ふむ」

「………」


大道寺代表はそう言いながら丁重に房彦を案内していき、その後ろを繁と磯上が無言で固めながらついていく。

重臣らしき者達は無言の重圧を繁達に放つが、繁達は意に介さず房彦を案内していく。


「…殿下、ここが部屋になります」

「…ふむ、大道寺代表と佐竹繁、磯上清孝以外の者は下がれ、これより先は大事の間である」

「ほほう、大事の間とあれば私達も同席せねばなりますまい、のう皆の衆?」


房彦は刺客の確認の為に中に入ろうとした黒服と側近達を下がらせるが、重臣の一人が当然の様な口ぶりで言いながら強引に中へ入ろうとする。

しかし、他の重臣達は房彦の冷たい威圧感と繁、清孝の穏やかな表情から出る殺気に固まって身動きが取れなくなっていた。

その様子を見た重臣はたじろぎ、房彦の眼力に気圧されて下がっていく。


「…我は下がれと言っておる」

「…く、し、失礼いたした」


房彦の言に気圧された重臣は、激しい怒りを堪えながら房彦の前から去って女将に案内され、他の重臣達も割れ当てられた部屋へと案内されていく。


「…あの程度の威嚇で済んで良かったな」

「まったくだ」


大道寺代表と繁が言う。清孝は彼方此方を確認しつつ若女将に耳打ちされる。


「…常連以外の者はもう他にはおるまい、何時もの様にして良いか?口がおかしくなりそうだ」

「…やりやすい様にしてくれ、俺もお前らにまで殿下呼ばわりされて身体中が痒くなってきてたまらん」


若女将から耳打ちされた清孝は周囲の気配が無いことを確認しながら言い、房彦は途端に態度を砕きながら言う。


「建前上、貴様は陛下の片腕にして国政を司る大臣だからな、儂らとてこうせねば周囲が納得せんだろう」

「それは聞き飽きた、それより…繁、俺をここに呼んだ理由は何だ?」


大道寺代表がなだめる様な口ぶりで言い、房彦は少し呆れながら呟く。


「…ふん、何もかもを分かっていて敢えて聞くのか?」

「繁、俺は神じゃないぞ?」


繁は思い当たる節を遡りながら房彦に言い、房彦は少し呆れながら繁に言う。


「儂の考えなど手に取るように分かるとほざいておった奴が何をぬかしておる」

「そりゃ個人の話だよ、俺も人の子なれば全てが分かる訳じゃない」

「西五条の女狐を悔しがらせた奴の言とは思えんな、今如水と称して誇っておった頃が懐かしいわい」

「そりゃどうも、自称・坂東太郎繁殿」

「ぐっ…!」

「…繁も房彦もそれ以上はやめよ、話が進まん」


繁は房彦の過去の言動を掘り返し、房彦は少し呆れながら答える。繁と房彦がお互いの過去を掘り返し始めて一向に会話が進まなくなる前に、大道寺代表が間に入って話を元に戻す。


「…で、俺をここに呼んだのは?」

「…儂が呼んだのは他でもない、貴様に越関交渉の間に入ってもらいたくてな、早急に交渉を纏めねば取り返しのつかん事になる」


房彦は改めて繁に尋ね、繁は真顔で房彦に言う。


「それなんだが…越関の調停講和ならもう済んでいる、越州の方々も八家の方々も兵を引き上げさせるとよ。明日には畠山殿が、八家代表の宇都宮殿も俺が依頼した北海道の遺跡の発掘調査が終わったので、関東に戻るついでに此方に寄られるそうだ」


房彦は少し面倒くさそうな感じに言う。


「なんだと!?そんな話は聞いておらんぞ!それでは儂が新潟に出向いた意味がないではないか!?宇都宮殿の連日の御欠席も貴様が原因だったのか!?」

「こっちが一歩早かっただけのことさ、連絡が遅れたのは謝るが、火事は小火の内に消しておくに限るってね。それと、宇都宮殿は俺の依頼を二つ返事で快諾してくれたし、その日の内に鶴橋一本を持って出立してくれたぞ」

「ぐぐっ、こ、この日和見関白がぁ…!いかん…血圧が…!」

「まあまあ、何時もの房彦の癖だ、儂が点てた鎮静の茶を飲んで落ち着け」


房彦の態度に繁は怒りを必死に抑えながら言い、清孝は繁に茶を差し出しながら言う。


「そう怒るな繁、高血圧でぶっ倒れるぞ」

「ふう、ふう…わかっておるわ、わかっておるが…八家会議が宇都宮殿の連日の御欠席で骨折り損に終わり、今回の肩透かしを喰らった事を考えるとな…!ぐぬぬ…!」


房彦は冷却と書かれた扇子で繁を扇ぎながら言い、繁は興奮した己を鎮めながら言う。


「そうそう、宇都宮殿は繁なら安心して後方を任せられるから自由に出来ると言っていたぞ、厚い信頼を寄せられているではないか」

「馬鹿な!関東八家の長ともあろうお方が務めを放り出し、身一つでふらふらされては他に示しがつかんではないか!?大体からして宇都宮殿は自由が過ぎるのだ…!爺が何度諫言しても改めなさらぬ!此方に来たらたっぷりと諫言し奉らねばならん!!」

「…(やれやれ、傅役を務めてきた間柄でも、こう煩いと宇都宮殿も嘸かし疲れなさるだろうに…、まあ…宇都宮殿が俺を頼ってくれるおかげで俺の方はうまくいっているんだが…)」


一人荒れ狂う繁の言に房彦は苦笑気味に思案する。


「それより房彦、発掘の成果はあったのか?」

「ああ、宇都宮殿の協力でなんとかね」


大道寺代表は房彦に問い、房彦は荒れる繁を他所に答える。


「今回、北海道で発掘したのは阿弖流爲(アテルイ)型の廉価量産型が九体。発掘した宇都宮殿にはその内の六体を譲り、秋田経由の独自ルートを通って宇都宮聖遺物解析所と佐竹WRF開発工房、新発田オーパーツ研究所に二体ずつ運ばれる予定だ。今回のは動力源が無事に残ってるからそれなりに期待できるだろう」

「むう…房彦、繁が煩いから少し耳を貸せ」


房彦は発掘データを見せながら言い、大道寺代表が房彦に近づく。


「…で、貴様が確保した阿弖流爲型を兵站に苦しむ畠山の交渉材料に使って激励。宇都宮殿には関白殿下の大義名分を与え、八家の部下達が勝手に始めた越州との小競り合いを予め送り込んでいた草達と使者達を使って鎮め、八家を封殺か、ここまでされて黙っておる連中ではないぞ」

「心配はいらない、先手は打ってある」

「………」


代表の耳打ちに房彦は小声で代表に心配無用の旨を伝える。清孝は二人のやりとりを見て見ぬ振りをし、荒れている繁を他所に発掘データに目を通す。

房彦の言に何かを感じ取った大道寺代表は、無言で頷いた後に房彦から離れて発掘データに目を通す。


「…ふむ、新発田に阿弖流爲型が二体届くとなれば、芳弘が破壊した分は一週間もあれば補ような」

「阿弖流爲型の残りを使えばあの艦の開発も少しは進むか?」


大道寺代表は発掘データに目を通しながら言い、清孝は代表に耳打ちする。


「いや、あの艦の開発をするには何もかもが足りん、そもそもあれ程の艦をどうやって運用するかの目処も立っておらん」

「…そうじゃったな、今はあの艦より新型WRF開発が優先になるか」


大道寺代表は開発中の艦を思い浮かべながら言い、清孝は溜息混じりに呟く。


「…発掘の方だが、実はもう一つ良い方か悪い方かわからない成果がある、俺の草達が極秘に阿弖流爲の発掘跡地にあった小さな扉を開けて中を調べたところ…カオス・ゲートが見つかった」

「「何!?」」


房彦の言に荒れていた繁と清孝が驚く。


「…房彦、そのカオス・ゲートはどれ程のサイズなのだ?」

「推定20m前後、裏世界の機動兵器…ZWが自由に出入り出来る程のサイズだ。草達が破壊を試みたらしいが、次元境界線が曖昧な上に二の足踏みの結界らしきものが張られていて近づく事さえ出来なかったとさ。今後の事を考えて宇都宮殿の力を借りて扉を封印しておいたが、他所者が早速嗅ぎつけてきた。早い目に対処をしておかないと少々面倒な事になりそうだ」


大道寺代表の言に房彦は悩みの入った口調で言う。


「貴様の草達は優秀だ、他所者がどうこう出来る相手ではあるまい」

「…その程度の相手なら良かったんだが、残念ながら相手が相手でね、俺の草達じゃとても太刀打ち出来ない」


房彦は扇子を開いたり閉じたりしながら言う。


「…相手は?」

黒威(クロオドシ)影威(カゲオドシ)といえばわかるかな?」


代表の問いに対し、房彦はスフィンクスが描かれた扇子を広げて言う。


「…なるほど、例の正体不明の奴らか、確かに貴様の草達では相手にならんな…」

「こちらから手を出さない限り攻撃してくる事はないが、カオス・ゲートを起動させられたら厄介だ、カオス・ゲートの向こう側は未知の世界、何が起きるかは想像出来ない。草達に命じて奴らとカオス・ゲートを見張らせてはいるが、何らかの対処はしておかないとね」


房彦は扇子を閉じながら言う。


「んで…対処の一環として、先ずは大道寺代表のお力をお借りしたい、新潟支部には濃いメンバーが居るだろう?」


房彦は閉じた扇子を大道寺代表に向けながら言う。


「…まさかとは思うが、支部の生徒達を修学旅行に連れて行けというのではあるまいな?いくらなんでもそれはできんぞ」

「はは、そんな無茶は言わないさ、今回は俺の選抜した者達だけで行って帰ってきて欲しい」


代表の言に房彦は微笑みながら言う。


「…戦力が整うまでの期間、奴らの目を逸らすのが表向きの狙いか?ならばメンバーを聞こうか、もう決まっておるのだろう?」

「斑鳩九十九と磯上三春は確定かな、あとは生きの良い生徒を八名程、もっともな理由をつけて…ね」

「…分かった、そこらへんは儂に任せてもらおう」


房彦の言に大道寺代表はもっともな理由のある八人を瞬時に思い浮かべながら言う。

房彦も大道寺代表の表情を見て大凡の見当が付いたのか、微笑みながら名君と書かれた扇子を広げる。


「話が早くて助かる、勿論、WRFの設備空間は構築済みで何時でも出撃出来るようにしてあるし、旅費もこちらが持つからそっちの面は気にしなくて良い」

「…全て織り込み済みという訳か、お前の作戦が終わったらすぐにでも編成して送り出すとしよう」


房彦は大道寺代表に説明する様にして言い、大道寺代表は茶を飲み干して呟く。


「ふふ、生徒達も連れて行くとなると娘は膨れるかもしれんな」

「だが朱花を補佐できるのは三春しかおらん、生徒達を抑えるのは朱花しかおらん、朱花には生徒達の補習を兼ねた修行という名目で伝えておく」


清孝は冗談交じりの口調で言い、代表は微笑みながら言う。


「さて、外の問題はここまでにしてと、そろそろ騒がしくなる頃かな」

「宇都宮殿を誑かしておいて…この男は…」


房彦は当然の様な口ぶりで言い、繁はため息混じりに言う。


「何が起きるのだ?」

「…俺が停戦を成立させた事で戦争をしたくてたまらない奴らが怪しい動きを見せている。現地集合した刺客達がそろそろ動き出す頃だろう」


房彦は創世連合新潟支部が中心の立体地図を作動させ、敵味方の凸印と動きを表していく。


「囲まれておるではないか…!いや、よく見れば囲まれておるのは奴らの方か」


立体地図を見て囲まれているとみた繁が言うが、落ち着いて見ると刺客達の凸印は彼方此方を向いてバラバラなのに対し、味方の凸印は整然と並んで防備を固めている。


「房彦にかかれば刺客どもの動きなど筒抜けか、儂らと話してる間に必勝の陣を構築しておったとは食えん奴だ」


大道寺代表は見事な布陣を見て感心したように言う。


「京で奴らの都合に合わせるより、こちらから出向いて予定を早めた方が都合が良い。戦闘は俺の分野じゃないし、ここなら京で高い金を出して用心棒を雇うより、強力な上に無料でこき使える猛者が居る。繁もこの機会を逃す手は無いだろう?」


房彦は広げた扇子で笑みを隠しながら言う。


「…儂にとっても好機という訳か、良かろう、刺客どもなど儂と我が甥・繁勝、芳弘の手にかかれば赤子の手を捻る様なものだ、…芳弘が凛花とやりあっていたのは予想外だったがな」

「こちらに来る途中、その現場を目撃したよ、段取りがよくて助かる」

「…ふむ、ここで芳弘に暴れられては堪らんからな、紫苑経由で凛花に渡しをつけてこちらに誘導しておいた、今後の手間が省けて何よりだ」

「…ふん、儂としては余計な御世話だ。まあいい、儂らは一条殿下の命を狙う狼藉者を蹴散らしてくる、代表、房彦、後始末は任せるぞ?」


繁は背広を脱いで外に出て行き、上空で戦っている芳弘とバトルフィールド内で戦っている繁勝に連絡をとりながら繁専用の大型WRF・豪壁(ゴウヘキ)を装着する。

それに応じるようにしてWRFを装着した繁の部下達が展開する。


「…繁の奴、最初から暴れるつもりでおったな」

「繁もお見通しだったか、このくらいじゃないととても宇都宮殿の代理は務まらんがな」


繁が飛び立った後、大道寺代表と房彦は呟く。


「さて…儂も事後処理に動かねばならん、先に失礼するぞ、房彦」

「ああ、さて…そろそろ凛花と芳弘君のお見合いも終わりだね、俺も久々に働くとしよう」


大道寺代表が去り、房彦は呟く。


「…凛花と芳弘のお見合い…?繁はこの事を知っているのか?」

「繁には確定するまで知らせないつもりだが、芳弘君の母親には許可をいただいている、…適当にやっておいてと言われたがね」

「…随分と適当な許可だな、冗談と思われておるのではないか?」

「…かも知れないね、まあ、気の早い話ではあるが」


清孝が房彦の言に反応し、房彦は少々ため息交じりに言う。


「さて、俺はそろそろ重臣達の所に行かないといけない、清孝も避難した方がいいぞ」

「やれやれ、忙しない事だな、次はゆっくり話したいものだ」


房彦は立ち上がりながら言い、清孝も立ち上がる。

房彦は瞬く間に身だしなみを整えて部屋を出、清孝も部屋を出て行く。


_______________________


-ガキィィィン-

-ググググググググ-


「流石は公方様だ、関東の先駆衆を相手に互角とはな」

「エリヴォン、見惚れてる暇は無い、公方様を止めにいくぞ」

「了解だ紫苑、…少しくらいはゆっくりしたかったのだが…」


エリヴォンは少し疲れ気味に言い、専用のWRFを装着して飛翔する。エリヴォンに続いて紫苑達も専用のWRFを装着し、凛花に向けて飛翔する。

しかし、それより先に何者かが突然現れ、凛花の背後から矛先が迫るも、凛花は咄嗟に反応して回避してみせる。しかし、今度は封印の輪が現れて凛花の武帝皇を拘束し、身動きの取れなくなった凛花の武帝皇に向けて覇皇の拳が迫る。


「!」

「勝負の邪魔すんじゃねえ!」


-ドゴォォォン-


「…ぐぉ…」


芳弘の放った拳の一撃がディフレクト・スフィアを貫通して刺客の機体を貫き、衝撃波で刺客の機体を粉砕。凛花の武帝皇を拘束していた封印の輪が衝撃波で砕け、凛花の封印が解除される。覇皇の攻撃が掠っただけで機体にダメージを受けた他の刺客の機体は、損傷で姿を隠しきれず、芳弘によって次々と破壊されていく。


「芳弘、聞こえるか?儂だ」

「何だクソジジイ、この雑魚どもは何だ」

「一条殿下と凛花を狙う刺客どもだ、こやつらは彼方此方に潜んでおる、儂もそちらに向かう故、しらみ潰しに探して潰していくぞ」

「今度は一条殿下に良い顔しようってか?どこまでお人好しなんだよアンタは」

「だんだん父親に似てきおったな、まあ良い、邪魔された鬱憤が溜まっておるなら刺客どもで晴らせ、そやつらは夜討ち朝駆けで彼方此方の国境を荒らし回り、越関を争わせる為に動いておった故な」

「ほう、こいつらか…!俺様の睡眠時間を削り取ってコケにしてくれた奴らはよぉ、だったら俺様とクソジジイと繁勝だけでこいつらをぶっ潰さなきゃだなぁ」


芳弘のこめかみに数多の青筋が走り、全身から凄まじい殺気が漂い出す。


「芳弘…」

「凛花、悪いが勝負はお預けだ、俺様はこれから奴らを残らずぶっ潰す用事が出来ちまったからよ、お前は親父んトコに向かってやれよ」


芳弘の様子の変化を見た凛花は声をかけるが、芳弘は凛花を見ずに言う。


「芳弘、こやつらは私の父を狙う者であろう?ならば私も手伝うぞ!」

「なりません、公方様」

「エリヴォン…!」


凛花は芳弘と共闘しようとするが、エリヴォンに武帝皇を拘束される。


「刺客は芳弘様に任せ、私達は殿下と合流しましょう」

「離せ、私も戦うのだ!離せ!」

「芳弘様は誇り高きお方、私達が介入すれば邪魔になる事は目に見えています」

「ここは皆の為にも我慢なさって下さい、殿下を守らねばなりません」

「むぅ…!ならば嘉賀芳弘、互いに無事であればまた会いたい!その時は言葉も交わしたいぞ!」


凛花は芳弘に向かって言い、芳弘は拳を広げながら応える。それを見たエリヴォンと紫苑達は凛花を連れて房彦のいる支部に向かっていく。


「…(また会いたい…か、嬉しい事言ってくれるじゃねぇか)」


芳弘は修羅の表情のまま凛花の言に僅かに心を動かされる。


-ズドゴォォォォォン-

-ドゴゴゴォォォン-


「佐竹繁見参!命のいらん奴からかかってこんか!」


豪壁を装着した繁が到着し、突撃で刺客達の機体を3機纏めて破壊する。


「来たかクソジジイ!暴れ過ぎてぶっ倒れんなよ!」

「ははは!久々の戦場で儂の血が滾っておるわ!いくぞ芳弘!儂らの力を見せつけてやるぞ!」

「チッ、テンション上げすぎじゃねえか、血圧も上がっちまうぞ」


繁の生き生きした口調に芳弘は若干引き気味に言い、刺客達の機体を撃破していく。


「儂は関東創世連合八家代表・宇都宮由乃が片腕にして元先駆衆筆頭・坂東太郎繁である!そしてここにおわすは関東軍先駆衆筆頭の嘉賀芳弘じゃ!儂らに喧嘩を売って生きて帰れると思うなぁ!」

「ふん、それがどうした」


繁は名乗りをあげるが、刺客達を護る傭兵達は一向に怯まない。


「あぁ?知らんな!」

「貴殿らは負け犬の遠吠えに構わず行け、我等は足止めの依頼を果たす」

「了解だ、あの呆けたジジイと哀れなクソガキと適当に遊んでやるか」


傭兵達は全く意に介さず繁達の足止めにかかる。


「…クソジジイ、こいつら殺して良いか?外科通院のフルコースで済ませてやろうと思ったがよ」

「…芳弘、儂も同じ事を考えておった、挑発だとしてもこのまま見過ごす訳にはいかんな、…異能を使っても良いぞ、儂が許す」


傭兵達の余裕に芳弘と繁は手加減する気が失せた様子で言う。


「言われねぇでも使うけどな、こいつら知らねえみたいだしよぉ」


-ズゥゥゥゥゥゥン-


「「!!?」」


繁が言うより早く芳弘は異能を使いながら言い、レンジ外に居るはずの傭兵達の機体がひしゃげ、何かに抉られる。


「…俺様をコケにしやがったんだ、少しは長持ちしてくれよ?」


芳弘は剥き出しの殺気を出しながら言い、傭兵達は戦慄する。

芳弘の殺気に身の危険を感じたのか、一部の傭兵達は退却を開始する。


「誰が逃げて良いって言ったぁ!?」

「!!!」


-ドドドドドドドドォォォン-


芳弘は逃げる刺客達を残らず捉え、覇皇の拳から放たれた衝撃波が機体を残らず貫き、爆砕していく。その間に繁の豪壁は逃げる傭兵達の機体を引き寄せ、粉砕していく。


_______________________


「「………」」


繁勝が構築したバトルフィールド内で両者が睨み合ってから少し経つが、両者とも仕掛けようとしなかった。

その間に三春が招集した六人の猛者が到着して黒狼皇に狙いをつけ、三春はバトルフィールドの外に脱出してきた勢気達と合流して創世連合新潟支部内にある医務室へと連れて行く。


「「………」」

「ふ、二人とも!直ちに矛を収めてくれ!緊急事態だ!!」


朱花と繁勝の一触即発の空気を裂く様にして、大道寺御曹司のWRFが乱入する。


「何事か…?」

「大道寺御曹司、怪我したくなければ…」


「それどころじゃない!パパから急報があって一条殿下が刺客に狙われている!君達にも援護してもらいたいんだ!」


「…叔父貴と芳弘が遊ばれているか…、やむを得んな、朱花、勝負は預けるぞ」

「………」


大道寺御曹司の言に繁勝は戦況を確認するや、朱花との勝負を断念し、黒狼皇を変形させて上昇する。


「朱花も僕と一緒にパパを助けに行こう、将来の為にも」

「…何者の企てかは分からんが、御曹司…気安く触れるな!!」

「ぶふぅっ!?」


どさくさに紛れて朱花の肩に手を回していた大道寺御曹司は、朱花の裏拳を受けて吹っ飛ぶ。


「…バトルフィールド解除、陽動にかかってやる程暇ではない、本隊に突入してさっさと片付ける」


繁勝は構築したバトルフィールドを解除しながら言い、黒狼皇を加速させる。


「…私は大道寺代表の援護に向かう、念のためお前達は校内の守備に回ってほしい」

「「了解」」


繁勝の黒狼皇が飛び去った後、朱花は六人の猛者達に校内の守備を任せ、自らは大道寺代表の居る新潟支部に向かって飛翔する。


「…(繁勝…貴様は何を考えている?)」


朱花は繁勝の動向に若干の違和感を感じ、繁勝の後を追う。

新潟支部周辺では既に影の戦が始まっており、房彦のいる宿では客に成りすました者同士が静かにやり合っていたが、先手を打った房彦側が優勢のまま進んでいた。

房彦と重臣達は護衛達や女将達に護られながら待機し、戦線に参加した凛花達と繁勝と朱花が刺客達の本隊を急襲しこれを壊滅させると、機を見て房彦側の者達が処理に動く。

僅か数分で房彦達を狙った刺客達は全滅し、傭兵達も繁と芳弘によって徹底的に掃討されていった。


僅かの間だけ騒がしくなっていた新潟支部周辺は、数分後にはまた元どおりになっていたという。


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