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超創機大戦  作者: 馗昭丹
序章
6/77

陰日本~蒼月の産声

今回は陰日本編です。


少しばかりファンタジー要素が混じっています。


___________________



…身体に振動が伝わる…



………。



…身体が浮いている…



………。



…目を開けると…



…私は空を飛んでいた…



…目前にはやけに明るい新月が見える…。



『………』



…やけに明るい新月が少しずつ遠くなっていく…



…耳には空を切る音が聞こえる…



…背中には空気に圧される感覚…



…私の赤く黒い髪が、前に向かって棚引く…



…それが徐々に激しくなっていく…



…視線を足の方に動かすと、私の通う学園の制服…



…愛用の黒のストッキング…



…皮甲の靴…



首にかけた御守りが髪と同じ様に棚引くのが目に映る…。



…私は落ちている…



…凄い高さから…



…不気味に光る新月がどんどん小さくなっていく…



『………』



…物凄い速度で落ちているにも関わらず、私は何の危機感も持たずに落ちる…



…目に映る月が一定の位置まで小さくなった頃…



…自然と私は身を翻し、ゆっくりと全身を広げて風に乗る…



…下に向いた目には…



…海に面した都市が見える…



…どこかの川…



…川にかかる橋…



…その先に視線を動かしていくと…



…どこかの街並みが見える…



『…………』



…地上は新月の不気味な光で照らされている…



…何故か不気味に感じる景色…



『……………』



…夜空と地上から吠吼に似た歌が聞こえる…



『………………』



私は…何を見ているのだろう…



『………………』



…手に…熱い何かが渡される…



『……………』



…私はそれを胸に突き刺し、一気に刺していく…



『……………』



…突如として産声が響く…



…何処かから生まれたての赤ちゃんの産声が聞こえたと思えば、途端に止む…




…白い霧の様なものの中に包まれていき…



…その先にある蒼い光が見えた途端…



…私は…………



___________________



陰日本のとある場所…



天郷家にて…




「………」




赤くも黒い髪の少女が寝床から身を起こし、辺りを見回す。



畳に襖と障子…



十二畳一間の和室…



寝間着を着た自分の姿…



障子越しに見える、廊下で控える黒い人影…



「………」



少女は納得をして立ち上がり、寝間着を脱いで…制服に着替える…。



-スッ-



着替え終えた少女は、敷き布団と掛け布団の間にあるチャカとドスを取り出し、それぞれの場所に忍ばせる。



-シャァッ-


「おはよう御座います」


「おはよう御座います、お嬢!」


少女の挨拶に強面の者達が一斉に挨拶する。


「…お嬢、姐さんがお呼びです」


「…姉上が?まさか…」


「…はい、もはや確定かと…」


「…そうですか、行きましょう」


少女は廊下を歩き、その後ろに制服姿の侍女達が付き従う。


___________________


「姐さん、お嬢を連れて来ました」


開いた障子の近くに座り、男が赤い黒髪の女性に報告する。



「…通しなさい」


「…ふふ…遂に来たのね…」



赤い黒髪の女性は言い、続いて穏やかそうな老婆が言う。



-スッ-



「…お呼びですか?姉上」


「座りなさい」


「はい」


少女は一礼してから部屋に入り、侍女の用意した座布団の上に座る。


「………」


-コト-


侍女は用意されていたお茶を新しいお茶に取り替える。



「…暦」


「はい」



姉が呼び、赤黒髪の少女…天郷暦(テンゴウ・コヨミ)は返事する。



「…あなたに決まったわ」


「…そうですか…」



姉の言に暦は冷静に答える。



「暦ちゃん、星籠同盟の清水理事長と創世会の大道寺会長の太鼓判も戴いてるのよ、…身体能力、魔力、適性何れも最高級の結果を出したんだから…」



老婆は口調こそ穏やかであったが、目は凍てつくようなものを放っている。



「…はい」



暦は老婆…西五条の言にゆっくりと首を縦に振る。



「…(暦…)」


-シュゥゥン-


「…魔導書に登録されたわ、おめでとう…晴れて契約成立ね」


「………」



姉は妹を見て複雑な表情を見せ、西五条は笑顔で暦に言う。



「それじゃ…暦ちゃんを連れて行くわよ?良いわね…?」


西五条は穏やかに言っているが、有無を言わさぬ威圧感を出す…。


「………」


西五条は既に姉と家の者達の方を見ておらず、暦を見て話をとんとん拍子で進めながら天郷家から去る。



「………」


-リーン-


西五条が去るや、赤黒髪の姉は小さな鐘を鳴らす…。


「…お呼びですか」


「…如何なさいますか、七代目」


「…幼なじみの貴方達に暦の護衛を命じます、…例の学園に向かいなさい、もう…手筈は整った筈だから…」



「お任せ下さい」


「承りました」


-サッ-


暦の姉は丁寧な口調で言い、少年と侍女の一人は瞬時に屋敷から去る。



「…妹まで…好き勝手にされてたまるものか…!」


暦の姉は険しい表情で呟く。


___________________



陰日本大阪上空…



創世連合の輸送機内にて…



-ゴォォォ-



「………」



諸々の手続きを済まし、再検査と再試験もクリアした暦は、西五条から与えられた特等席に座り…大人しく窓の景色を見ていた…。



-ヴゥン-


「…お疲れ様ね、気分はどう?」



西五条が暦の近くにテレポートして言う。



「…少し高揚しています」


「………、…そうは見えないけどねぇ…」



暦は景色を見ながら言い、西五条は苦笑しながら言う。


「…手続きなどで疲れてるでしょうから、少しでも仮眠を取った方が良いわよ、…じゃ、また様子を見に来るわね」


西五条はポーカーフェイスを崩さない暦を見て何かを悟り、再びテレポートして自分の席に戻る。



「………」



暦は窓の景色を見る…。


___________________


「鮫島、急いで!あの娘…目覚めが近い!」


「分かってるって、芹沢!…裏切り者の輸送機ごとぶっ潰す!」


鮫島と芹沢の人工ユミルがSFMをフル稼働させて急速接近する。


-バチュゥゥン-


「何ぃ!?」


「因果の黄昏!?…こんな時に…!」


突如として発生した因果の黄昏に、二人の人工ユミルは飲み込まれていく。


___________________


「陰日本新潟県上空に差し掛かりました、もう直ぐで学園に到着します」


オペレーターが皆に伝える。



「………」


「…薬が効いた様ね、大人しく眠ってるわ…」



西五条は暦の寝顔を見て呟き、暦に何かを貼り付けようとするが…。



次の瞬間…



-ゴゴゴゴゴゴ-


-バリバリバリバリ-


「………」


輸送機内に強い衝撃が走り、暦以外の輸送機内の人々が硬直する…。


「………」


暦だけが衝撃波で輸送機の装甲をすり抜けて輸送機の外に放り出される…。



『ウォォォォォン!!!』


「………」



声に反応して暦の意識が徐々に覚醒していく…。



-フワリ-


「………」


暦が目を開くと、不気味に光る新月が見える…。


-ヒュゴォゥ-


-ゴォォォ-


-バサバサバサッ-


「………」



暦は落下を始め、暦の長い赤黒髪が激しく棚引く…。


暦は視線を足に向けると…、黒のストッキング、学園の制服、皮甲の靴、そして…先程胸元からはみ出して棚引く御守りが目に映る…。


「………」


暦はそのまま落ちていき、月が少しずつ小さくなっていくのを見つめる。



…そして、月が一定の小ささになるや、風がながれて自然と身を翻し、徐々に全身を広げて風に乗る。



「…(…私…?)」


『…そうよ、暦…』



暦の目前にもう一人の暦が現れる。



『…暦は西五条の持つ魔導書にて仮契約を交わし、もう一人の私を生み出したの…』


「…(…仮契約…?)」


『…そう、仮契約は私に命を捧げた状態、即ち半身を生み出した状態なの…』


「…(…半身…)」


『…此から暦に本契約を結んでもらうわ、本契約の儀式にこれを…』


-ヴゥン-


半身の暦は暦に眩く光る剣を手渡す。


「…(これは…)」


『暦の覚悟を捧げて欲しいの、守りたいものや夢を純粋に…強く想い浮かべて、これを暦の心臓部に突き刺すの、でも…少しでも邪な心や私を疑う心があった場合は…暦も私も聖炎に身を灼かれて滅ぶ事になるわ』


半身の暦は試す様にして暦に言う。


「…(…覚悟なら既に決まっている、何もかもを…私の半身に捧げる)」


-グッ-


暦は光の剣の切っ先を自らの心臓部に当て…


「………」


-ドスゥ-


暦は一気に光の剣を心臓部に突き刺す。



-パァァァ-


「…ぐっ!…ぅぅ!!…あ…熱い…!」


暦は激痛と焼き尽くされる様な熱さに耐えつつ徐々に…深く突き刺していく。


暦の心臓を貫いた光の剣は眩く輝き…


「…来る…私が…来る…!…何もかもを…捧げるから…!…もう…出てきて…良いのよ…コヨミ…ユミル……!」


光はどんどん強く…眩く輝き…眩い光が暦と暦を包み込み、更に強く輝く…。


『一つになる…、私達が一つになっていく…これで…本契約の儀式は……ありがとう…暦…』


-パァァァ-


暦と暦からも眩い光が放たれ、光は全てを飲み込んでいく…。



白い濃い霧らしきものが暦を包み、濃霧の先に蒼い月の光が差し込み…暦は蒼い月の光に包まれる…。



-ギショォォン-


-バサァッ-


蒼白い魔法陣の光と共に現れたコヨミ・ユミルは、蒼く輝く翼を広げて揚力を得る。



「…私は…」


気がついた暦は、コヨミ・ユミルの中で起き上がる。


『芒霊が迫ってる、戦うわよ暦!』


「!?…姉上…!」


コヨミ・ユミルの中に姉の姿が現れ、暦は少し驚く。


『グォォォォォ!!!』


-ビシッ-


「………!?」



『…まともに聞くな暦、芒霊の雄叫びには聞くものの精神を汚染する効果がある』


身体の内側に入り込んで来るかような恐怖が暦を襲うが、姉は暦を落ち着かせる。


-ビシュゥゥゥン-


-ヴゥゥゥン-


「…姉上、奴を倒します」


『…もう特徴を掴んだのね…』


暦はコヨミ・ユミルを飛翔させて芒霊の攻撃を回避し、姉は暦を誉める。


「…夢で何度もやってきましたから、それに…ユミルも私に教えてくれてる…」


暦はユミルのモニターに映されるフサルク文字を読み、一つ一つ実践して応用していく。


『なら…芒霊の弱点は面影、あの像みたいな部分を壊せば大抵の芒霊は倒せる』


「…わかりました、あれにヤキを入れます」


-シュゥゥン-


-カチリ-


姉の説明に暦は納得し、暦は太腿に意識を集中させ…コヨミ・ユミルは太腿部分から実体化した二丁の収束魔導銃コンデム・リヴォルヴァーを取り出す。


-ドドォォン-


-ベキョッ-


-グシャ-


『グォォォォォ!!!』


目にも止まらぬ早撃ちで芒霊の目の様な器官を潰し、芒霊の動きが鈍るが、同時に芒霊は奇声を発して姿を眩ましていく。


「…消えた…?」


暦は急に消えた芒霊に警戒する。


-ヒュゴォゥ-


-ガッキョォォン-


「!!」


『暦!』


見えない何かに攻撃されたコヨミ・ユミルは墜落するが、直前で揚力を得て再び飛翔する。



『暦、精神を集中させて』


「………、あれね…」


暦は心を澄ませながら言い、芒霊を捉える


「チャカが駄目ならドスで…!」


暦はコンデム・リヴォルヴァーをしまい、腰部からドスに似たをミスリル・ブレイドを取り出し、蒼白く鋭い光と共に鞘から抜き、それを構えて急降下する。


-ヒュゴォォ-


芒霊は見えない触手でコヨミ・ユミルを迎撃するが、俊敏な動きを見せるコヨミ・ユミルを捉えられず…


-ドシュゥゥゥッ-


-チャク-


-カチリ-


-ズゥゥン-


ドスが芒霊の面影を突き刺し、コヨミ・ユミルは身を翻しながらコンデム・リヴォルヴァーを展開し…


「天郷を舐めるな…!」



-ズドドドドォォン-


-ビキッ-


四連射が面影に撃ち込まれ、面影が砕ける。


『ギャァァァァ!!!!!』


-バキバキバキバキィッ-


-ボォォン-


-ブシャァァァ-


耳障りな断末魔と共に芒霊は膨張し、崩壊しながら破裂して泥水と化す。


「…とった…」


通常空間へと戻り始める中…、暦は空間が変化していくのを見ながら呟き、目を閉じる。



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