残党遭遇戦〜夜明けの閃光
四国の各地で激戦が展開している頃…。
「月霞正常、ステルス航行…問題なし」
「進路そのまま、政府軍に悟られたら面倒だ、迂回して行こうか」
「了解、月霞、進路そのまま」
極阿のステルス艦・月霞が深夜の風景に溶け込み、音も無く夜空を飛んでいく…。
-ジッ-
「神威様、桂川隊は天霧の護衛に成功、別働隊は岡山・兵庫方面の退路の確保に成功したとのことです」
「了解した、勝負が決まり次第、俺達が殿軍を務めることになるだろうね」
親衛隊の報告に綾一は微笑みながら言う。
「それまでには準備を整えておきます、御武運を」
親衛隊は極阿式の敬礼をしながら言う。
「ああ、桂川さんにはくれぐれも無理しないで欲しいと伝えて欲しいな、おそらく光牙達の艦も来るだろうからね」
「了解、…桂川大尉も浅野…いや、紅蓮と影鬼と雷光とは戦いたくは無いでしょうからね…」
綾一の言に親衛隊は遠慮がちに言い、夜刀集弐型を操縦して夜の闇の中に消えていく。
「ふふ、桂川さんは上手くやってくれてる様だね」
-ガシュゥゥン-
-ズゥン-
綾一は夜刀集弐型のコクピット内で呟き、夜刀集弐型を月霞のZW射出口付近にまで動かしていく。
「神威綾一、夜刀集弐型、ステルスモードで出るよ」
-ウゥゥゥゥゥゥン-
-ドォォォォン-
月霞のZW発進口から綾一の夜刀集弐型が発進し、深夜の空を飛んでいく。
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綾一が飛び立った時と同じ頃…
-ヒュゥン-
-シュゥ-
-ドォォォォォォン-
深夜の空に、微かな月明かりに照らされた鎧武者のシルエットが浮かぶ…。
そのシルエットが雲を抜けると…、月明かりがそのシルエットを照らし、その全貌が明らかになる…。
極阿製ZW・夜刀集の独自改良型の夜刀集改式である。
因みに夜刀集はベヘモス戦争後期における極阿軍の主力ZWであるが、政府軍の裏工作によって少数が横流しにされており、それらが凡ゆる流通ルートに流れた結果、賊や傭兵達に買い取られて商売道具に利用されていた。
今では凄腕の傭兵やベヘモス残党が独自にカスタマイズしており、夜刀集弐型にも劣らない性能を持つ機体も多いという。
-ポコン-
「黒い螺旋龍のエンブレム…、極阿の親衛隊が乗る夜刀集の後継機か…なら!」
-ガシッ-
-ビシュゥゥン-
-ドォォォォン-
夜刀集改式のパイロットはそういうや、強化型ヤトガタナⅡの照準を夜刀集弐型に合わせ、大出力レーザー砲を放つ。
-ドォォォォン-
「!?…ヤトガタナの大出力レーザー砲…ベヘモスの残党か…!」
「御首頂戴!」
-ズガァン-
-グググググググ-
綾一は夜刀集弐型の速度を上げ、大出力レーザー砲を回避、直後に夜刀集改式が強化型ヤトガタナⅡで夜刀集弐型に斬りかかるが、ヤトガタナⅢで受け止められる。
-パシィィン-
「へぇ、手練だね…君」
綾一は刃を交えた瞬間に夜刀集改式のパイロットの技量を感じ取り、即座に刃を受け流して間合いを取る。
「ふふ…この声…!」
思念波障壁を持つ夜光系ZW同士は、一度刃を交えると自動的に専用の回線が開かれる為、パイロットの呟きが直接伝わってしまう欠点がある。
綾一の呟きは相手の夜刀集改式のパイロットに伝わり、夜刀集改式のパイロットは興奮した様に呟く。
「…何…!?」
綾一は夜刀集改式のパイロットの声に思わず反応し、綾一の隙を突く様にして、夜刀集改式がヤトガタナⅡを構えて突進する。
-コォォン-
-ガキィィィン-
-カァァン-
「ふはははは!待っていた甲斐があった!会いたかったぞ、神威綾一ぉ!」
夜刀集改式のパイロットは叫びつつ、凄まじい猛攻を仕掛ける。
「芦屋…廬山…!…俺の方は会いたくもなかったけどね…!」
廬山の言に綾一の笑みが消え、廬山機の猛攻を巧みに受け流しながら反撃する。
「此処で会ったが百年目…!今度こそ決着を付けてくれる!」
-ヴゥゥン-
-バチュゥゥ-
-グググググググ-
「…その台詞、そのまま返してあげるよ」
意気込む廬山の夜刀集改式の強化型ヤトガタナⅡが、綾一の夜刀集弐型のヤトガタナⅢと激しく競り合う。
-カァァン-
-ビシュゥン-
-ゴォォォ-
「ふん、その余裕…何時まで続くかな?」
間合いを取りつつ、強化型ヤトガタナⅡのレーザーを放ち、廬山は不敵に言う。
「ふふ、そういう君の機体も、何時まで保つかな?」
廬山の牽制と攻撃を回避しつつ反撃を加える綾一も不敵に微笑んでやり返す。
-ガキィィィン-
-チュィィィン-
-ゴォォォ-
-ヴゥゥン-
「相変わらずの減らず口…、だが…その減らず口も今日までだ!」
-ビシュゥゥン-
-ゴォォォ-
-バチュゥゥ-
-グググググググ-
「減らず口はお互い様だよ、こっちはいい加減に君との因縁を断ち切りたいね」
廬山は不敵に言い放ち、猛攻撃を加えるが綾一は的確に攻撃を防ぎ、要所で鋭い反撃を加えていく。
廬山も綾一の攻撃を悉く回避し、夜刀集改式の膝部ニードル・ダートを射出したり、爪先の片刃型プラズマ・シュナイダーを展開して蹴りと共に斬撃を加えるが、綾一に悉く回避される。
「流石は極阿の貴公子、だがな!」
「…俺は君に付き合っている時間すら惜しい、これで決めさせてもらうよ」
-キュゥゥン-
-ヴゥゥン-
綾一は珍しく真顔になり、夜刀集弐型のヤトガタナⅢをレーザーブレードモードに切り替え、突撃する。
「ふん、やれるものならやってみろ!」
-ヴゥゥン-
-ゴォォォ-
廬山も夜刀集改式の強化型ヤトガタナⅡをツインレーザーブレードモードに切り替えて突撃…。
「極阿の嵐…!」
「一刀ォォ両っ断!!!」
-バチュゥゥ-
-キィィィィィン-
-グググググググ-
夜刀集弐型と夜刀集改式のヤトガタナ・レーザーブレードが激突し、互いに威力を相殺しつつ競り合う。
「………」
「これしきの太刀…、我が得物で叩き斬ってくれる!ヤトガタナ!ハイパーブレードモード!!」
ヤトガタナの鍔競り合いでアツくなった廬山は、強化型ヤトガタナⅡのリミッターを外そうとするが…。
「…ふふ、そこか!」
-チュン-
-ボォン-
-ビキィ-
-バシュゥ-
「ぬぐぅっ!?」
精神統一で圧縮された綾一の思念波障壁が夜刀集改式の強化型ヤトガタナⅡを圧迫し、故障させる。
ひび割れた強化型ヤトガタナⅡは、ヤトガタナⅢのレーザーブレードの負荷に耐えきれず、夜刀集改式の腕部ごと両断されてしまう。
-ヒョン-
「今楽にしてやる」
「ぬうぅ!?」
-ゴォォォ-
「…!」
-ビシュゥゥン-
-ドドドドドド-
夜刀集弐型の二本目のヤトガタナⅢが夜刀集改式のコクピットに迫った刹那、レーザーとリニア弾が綾一の夜刀集弐型を掠め、綾一は即座に夜刀集改式と距離を取る。
「く…増援か」
-ゴォォォ-
「芦屋、無事か!?」
「…この感じ…綾一お兄ちゃんなの…?」
二機のネオンプラス4型CTが駆け付け、損傷した廬山の夜刀集改式を庇う様に展開する。
-カシィン-
「極阿の残党め、覚悟しろ!」
-ドォォォォン-
援護に来たネオンプラス4型CTがシールドと両刃型プラズマ・シュナイダーを構えて突進する。
-ヴゥゥゥゥン-
-ヴゥゥゥゥン-
「…生憎君達と遊んでいる暇は無くてね、失礼させてもらうよ」
-ドォォォォン-
綾一は突進してきたネオンプラス4型CTの斬撃を容易く回避するや、夜刀集弐型のステルスを展開して離脱する。
「待て!くっ、何処に消えた…!?」
ネオンプラス4型CTのパイロットは消えた夜刀集弐型を探すが、各種レーダーや肉眼でも確認出来ない。
「…探しても無駄だ、気配も遠退いたわ…」
「…綾一お兄ちゃん…」
見かねた廬山は制止し、もう一人のネオンプラス4型CTのパイロットは寂しそうに呟く。
…援護に来た二人はその後、損傷した夜刀集改式を回収し、浮上してきた潜水艦に帰投。
海中に潜水していき、本州に向かっていく…。
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大阪湾付近…
「ん〜、あっちもこっちも…旗色がよろしくないみたいだねぇ」
政府軍司令のジャウキルは、味方艦隊と敵艦隊の布陣と交戦状況を見つつ、穏やかな口調で呟く。
-ヒュン-
-ドボォォォォン-
-バキィィィィン-
-ドゴォォォン-
「おっととと…やれやれ…、敵艦隊もよく持ちこたえるなぁ」
夜中の激しい艦隊戦は益々激しさを増していたが、ジャウキルはそれに動じずのんびりと艦隊戦を眺めていた。
「そろそろ…、神楽坂君の言っていた猶予が切れる頃だなぁ、どれ…手持ちから一枚ずつ…札を切っていこうかねぇ…」
ジャウキルは頬杖をつきながら時計を見て呟き、14枚程の手持ちのカードを扇状に広げ、ある一枚を床に切る。
床に置かれたカードには雷に砕かれる軍勢が描かれており、ジャウキルはそれを見て微笑む。
「さぁて…、今回も手柄の分配に苦労しそうだなぁ」
ジャウキルはそう呟き、ゆっくりと立ち上がる。
彼が立ち上がるのと同じくして…黒いパワードスーツらしきものを着た兵達が音も無く彼の前に集合する。
「良く耐えた…これ以上腹を空かせる必要はない、目の前にある餌共を喰らい尽くしたまえ」
「「ハッ!」」
ジャウキルがそう言うや、集合していた兵達は瞬く間に消えていく。
「…私はラフェンクルで出る、準備をしたまえ」
ジャウキルは凄みのある口調で言い、仮面を被った士官達は敬礼をした後に去っていく。
同時に控えていた下士官達は、ジャウキルに専用のパイロットスーツを着せていく。
-ゴゴゴゴゴゴゴゴ-
-ドバァァァァァン-
-ズゥゥゥン-
士官達が去って少し経つと、全長100mはあるであろう巨大ZW・ラフェンクルが派手な水柱と水飛沫をあげながら現れ、敵艦隊が放ったビームを歪曲させながらレキール級の甲板に降り立つ。ジャウキルの前に降り立ったラフェンクルは、パイロット登録をしてあるジャウキルの前に手を差し伸べ、コクピットへと誘う。
「ジャウキル中将、自ら出られるとは正気ですか!?」
ラフェンクルとジャウキルの姿を見て驚いた政府軍の士官が叫ぶ。
「はっは、私も暇なせいか、どうも血の滾りが抑えきれなくなってなぁ、これで少しばかり暴れてくるよ」
ジャウキルは穏やかな口調で言い、ラフェンクルに乗り込む。
「いけません、それは!」
「…君達は下がっていたまえ、味方の機体の発進に巻き込まれて死にたくはあるまい?」
ジャウキルは政府軍の士官達に言いつつ、ラフェンクルの発進を進めていく。
「ジャウキル中将!御再考下さい!」
「…ムラウ、専用の発進カタパルトに対ZW防壁を緊急展開したまえ、ラフェンクル、出るぞ」
-ウゥゥゥゥゥゥン-
-ドォォォォン-
制止する政府軍の士官達に構わず、ジャウキルはラフェンクルを発進させる。
ラフェンクルの凄まじい推力が爆風を起こすが、政府軍の士官達は緊急展開された対ZW防壁に保護される。
-ウゥゥゥゥゥゥン-
「…私にしては十分に我慢した、とはいえ…直ぐに抑えが利かん様になる所が…私の小人たる所以だなぁ」
ラフェンクルのコクピットの中で、ジャウキルは武者震いする己の身体を見て呟く。
-ギュゥゥゥン-
-ガァン-
-ズドォォォォォン-
ラフェンクルは特殊な装甲素材で出来た外殻機構を採用しており、艦隊の艦砲射撃ですらその外殻を破る事は出来ないとされている。ビームは外殻で歪曲または螺旋状に分散・吸収され、レーザーはその外殻を避けていくことからエネルギー歪曲外殻とも呼ばれる。そして、もう一つ…装甲自体が持つ非実体装甲でハイパー・ファランクス・ウォールと呼ばれるものがある。これは実体弾の軌道を大幅に逸らして機体への直撃を避けさせるもので、特にコクピットや動力源を中心に強力なハイパー・ファランクス・ウォールが展開されているという。
深夜の艦隊戦の最中、ジャウキルのラフェンクルが敵艦の主砲やビームを弾きながら敵艦隊に突っ込んでいく。
-ピシュゥン-
-カシィン-
-ウゥゥゥゥゥゥン-
ラフェンクルの身体がヲ型に変形・展開し、腹部7連装主砲、尾部主砲からなる連装巨大共振粒子砲がチャージを開始する。
「…民衆の為の正義の戦が、何時からこうなったのかねぇ…」
ラフェンクルのコクピットの中でジャウキルはトリガーを握りながら呟く。
-ウゥゥゥゥゥゥン-
-ビビッ-
ラフェンクルの連装巨大共振粒子砲のチャージが完了し、ラフェンクルのモニターにfireの文字が表示される。
「…ま、考えても仕方がない、今は目の前の敵を叩くかねぇ」
-ズドォォォォォン-
-シュゥゥゥゥゥン-
ジャウキルの言と共にラフェンクルの連装巨大共振粒子砲が放たれ、深夜の闇を切り裂く光の線が四国反政府連盟の艦隊を呑み込んでいく。
-ビシュゥゥゥン-
-シュゴォォォォッ-
-ドドドドドドゴォォォン-
ラフェンクルの連装巨大共振粒子砲を受けた四国反政府連盟の艦隊が光の波に呑まれ、巨大共振粒子砲の光は瀬戸内海を抉る様にして伸びていく。
瀬戸内海に浮かぶ島々や重要文化財や歴史遺産などに指定されている場所には、ジャウキルの影達が予め仕組んでおいたものが作動し、ラフェンクルの共振粒子砲を防いで保護。
共振粒子砲の光は、それ以外の瀬戸内海に布陣していた海賊達の艦艇や制空権を確保していた四国反政府連盟のZW・飛燕の編隊をも呑み込み、四国の海と空は爆発の連鎖に包まれていく…。




