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超創機大戦  作者: 馗昭丹
表裏陰世界
43/77

嘉昌と泉〜羽鳥と理愛

陰日本全体に広がっていた暗雲は大雨を降らせ、陰日本に降り注ぐ雨は段々と激しくなっていく。


陰日本創世連合新潟支部のある学園と聖マルグリット学院に通う生徒達は各々の時間を過ごしていた。


____________________


陰日本創世連合新潟支部のある学園…


-ガラッ-


「カツサンドの予約一番乗りはぁ!!この三鷹嘉昌様が貰ったぁぁぁ!!!!」


小休憩のチャイムが鳴るや、教室のドアが開き、嘉昌が物凄いスピードで廊下を疾走する。


「嘉昌の奴速ぇぇ!?マジ凄ぇよアイツ!!」

「駄目だ!追いつけねえぇぇ!!」

「ぜぇ、はぁ、さ…流石は校内最速の漢…!」


遅れて勢気、景斗、惇が嘉昌の後を追いかけるが、嘉昌のスピードに追い付けずに叫ぶ。

嘉昌はどんどん先へ先へと駆けていき、勢気、景斗、惇は嘉昌に置いていかれる。

他の教室からも予約戦に加わる者が出始め、勢気達は途中参加の生徒達と競争しながら予約場へと向かって行く。


「…(行列は無ぇ、今日も俺様一番乗り!)」


嘉昌は一番乗りを確信しながらも速度を上げて予約場へと突っ走る。


しかし…


「カツサンドの予約お願いします」

「あいよ」

「!?」


予約場には既に先客が居り、嘉昌のスピードが落ちる。


「なっ…!俺が二番手…!?」


「おやおや、珍しいことだねえ、嘉昌君が二番手だなんて」


嘉昌は我が目を疑いながら言い、食堂のおばちゃんが珍しそうに嘉昌に言う。


「…とりま、カツサンド」


「あいよ、ふふ…嘉昌君に好敵手の出現だねえ」


予約場の一番先には泉の姿があり、嘉昌は初めての敗北に驚きながらもカツサンドの予約を済まし、食堂のおばちゃんは嘉昌を見て言う。


「………」


泉は嘉昌の様子を見て気の毒そうな表情をしつつも、その場から直ぐに立ち去ろうとする。


「…まて」


「…?」


立ち去ろうとする泉に嘉昌は声をかけ、泉は立ち止まる。

関東軍先駆時代の癖なのか、泉は臨戦態勢を整えたまま振り向くが…


「次は…次は先に来てやるからなぁ…!覚えておけよ、琴織!」


「…(…はい…?)」


嘉昌は泉を指差しながら言い、泉は嘉昌の暑苦しさに少々引く。


「…そういう事でだ!次は食堂のカツサンドを誰が一番早くいただくかを勝負したい!勝負は昼休みだ!じゃな!」


-ダダッ-


「…(…私、何かした…?)」


「あ、おい嘉昌ぃ!」

「予約とるの速すぎだろ、嘉昌!」


嘉昌は予約券を握り締めながら疾走し、嘉昌の暑苦しさに呆然としていた泉は無言で嘉昌の後ろ姿を眺め、行列の後方に並んでいた勢気と景斗は、走り去っていく嘉昌を見て呼びかけるが、嘉昌は無言で疾走していく。


「………」

「………」


途中で脱落したのか、廊下で惇が無数の足跡をつけられたまま倒れていたが、嘉昌は構わず疾走していく。


「…(俺が…三鷹嘉昌が…速さで負けた…!?次は負けねえ…!)」


嘉昌は初めての敗北に動揺を隠せず、教室を通り過ぎて疾走を続ける。


-ガラッ-


「ふう…」


嘉昌が教室を通過した少し後、カツサンドの予約券を持った泉が教室に入る。


「おまたせ、芙蓉の言ってたカツサンドの予約券、取ってきたよ」


「流石泉、速いね」


泉は芙蓉に言い、芙蓉は笑顔で親指を立てて言う。


「ふふ、…所で恋は?」


「恋ならあっちで熱烈な歓迎を受けてるとこ」


泉は恋の姿を探しながら言い、芙蓉は人だかりの出来ている席を指しながら言う。


「新さん凄〜い、魔導解析も早くて分かり易い!」

「術式プログラムもこんな高度なの初めて見たよ、私術式プログラム組めなくてさ」

「今度…基礎の部分から教えてくれない?先生に聞いたらみっちり練習させられそうだから…」

「…敷島さんから聞いた、新さんの処理能力について知りたい、交換条件…私の術式プログラム…」

「新さん!御教授おなしゃっす!!」


「…う…あ…にゅ…」


生徒達は恋の高度異能処理能力に感嘆の声をあげ、目を輝かせながら恋に詰め寄って頼み込む。

中には床に頭を叩きつけんばかりの勢いで土下座する者達も居り、恋は大いに戸惑う。


「「………」」

「り…了解…した、今度…皆に…教える」


恋は関東軍先駆衆の自分の扱いと此方の自分の扱いの違いに戸惑い、時々芙蓉や泉の方を見ながらも何とか答える。


「…恋、戸惑ってるけど大丈夫そうね」

「…うん、此処はあっちと違って良い子が多いし、恋に似た子も居るし…」


泉は徐々に溶け込みつつある恋を見ながら言い、芙蓉は恋に興味津々な女子生徒…吉岡睡を見ながら呟く。


-スッ-


「…何ですか?」


「あの、琴織さん、カツサンドの予約で一番手を取ったって本当ですかね…」


気配を感じて振り向いた泉に対し、数人の男子生徒が恐る恐る泉に声をかける。


「…本当ですけど、それが何か?」


泉はカツサンドの予約券を見せながら言う。


「こ…これは正しく01の印!!」


「あ、あ…新たな伝説が生まれたぁぁぁぁ!!!!!」


「…!?」


泉の持つカツサンドの予約券を男子生徒に見せるや、男子生徒は予約券の日付けと予約番号を見て一人は驚愕し、一人はハイテンションに叫ぶ。


泉は叫び出した男子生徒に少々驚くが、流石に慣れてきたのか、表向きは平然としている。


「三鷹嘉昌の時代は去った!これからは貴女が新たな伝説を刻む!」


「その証として貴女にはライトニング・プリンセスの称号を贈りたい!」


「さあ!この冠を受け取りたまえ!」


「「我らがプリンセス!」」


-ガタガタガタガタ-


男子生徒達は大袈裟な振りをしながら暑苦しい口調で泉を讃えるが…


-ズゥゥン-


「何をやっている、さっさと席につけ音無、河野、平岡」


「「!?は…はい!」」


いつの間にやってきたのか、嘉昌の首根っこを掴んで引きずっている朱花の厳格な言が音無達を貫き、彼等は青くなりながら席に戻っていく。


-スッ-


「お前も戻れ、三鷹」


「すびばぜぇん、斑鳩先生…」


嘉昌は朱花に解放され、頭を撫でられた後に背中を軽く叩かれて自分の席に戻っていく。


教室を通過した後も暫く疾走を続けていた嘉昌は、教室に向かう途中の朱花に遭遇。ラリアットによる迎撃を受け、そのまま拘束。引きずられる様にして教室に連行されていたのである。


「先生ぇ!次は三春先生っしょ?何かあったんすか!?」


「ああ、この雨で大道寺御曹司が警報を発令してな、今日の授業は昼までと相成った、それで一部の授業が変更になったのだ」


-シャッ-


勢気の質問に朱花は窓のカーテンを全開にして言う。


-ザワッ-


「ああ、確かにこの雨はやばいかも…」


「外の様子が分からねえくらい降ってる…」


「傘も合羽も無いし、びしょ濡れ確定…?」


窓の外の様子を見て、生徒達は動揺する。


「教頭の予報によればこの雨は夜迄続くらしい、よって雨合羽を人数分用意しておいた、今から配るから大事に使えよ、三春」


朱花は生徒達を鎮め、廊下で待機している三春先生を呼ぶ。


「はい!ただいま!」


三春先生は待っていたかのように重そうなバッグを担いで現れる。


「男子はこれだ、栗坂、配ってやれ」


「押っ忍!!」


「女子はこれだ、敷島、配ってやれ」


「はい!」


朱花は勢気に大きなバッグを渡し、芙蓉にはやや小さなバックを渡す。

勢気と芙蓉は各々にバッグの中身…雨合羽を渡していく。


「受け取ったら各自机か鞄の中に入れて保管しておけ、さて…これから私と三春で二時限分の授業を行う、途中で脱落した者には放課後、補習授業に出てもらう事になるぞ、気を引き締めて臨め」


「「押っ忍!!」」

「「はい!」」


朱花は皆の眼を見ながら言い、皆が気合を入れて応える。


こうして、勢気達は朱花のスパルタ教育と三春の丁寧な教育を受け、更に知識・教養を身につけていく…筈である。


____________________


勢気達が朱花の授業を終え、昼の馬鹿騒ぎをしている頃…


警報が発令され、授業が午前中のみとなり、放課後となった聖マルグリット学院では…


-ザァァァァァ-

-バシャッ-


「…(…雨は段々と激しさを増している、今夜の相手は…天と地から出ずるもの…)」


学院の玄関口で暦は天と地を交互に見た後に思案顔になる。


-バサッ-


「…御嬢、傘を」


「ああ、すまない」


暦は天を眺めながら思案していたが、苅藻に傘を差し出されて我に返る。


「…苅藻、今夜は恐らく…」


「…御嬢、後方支援は私と命にお任せ下さい」


「…頼むぞ」


暦と苅藻はそれだけを話し、苅藻は一礼して黒田兄妹と共に先に帰っていく。


「…(…雨がやや弱くなった、刻が跳ぶ…そろそろ…来る)」


暦は天の動きと僅かな刻のズレを感じた後、ゆっくりと振り向く。


「お、お待たせしました、暦さん」

「暦、御待たせ」


暦の前に魅鳥と雫が現れ、二人は傘を差して暦に近づく。


-ズルッ-


「ふえ!?」


魅鳥は何かを踏んで滑るが…


-ガシッ-

-グッ-


「…気をつけなさいね、魅鳥ちゃん」

「…気持ちはわかるよ、魅鳥…」


「…す…すみません、秋葉先輩…暦さん…」


隣にいた雫と寄って来た暦が魅鳥を支えながら言い、転ばずに済んだ魅鳥は申し訳なさそうに言う。

魅鳥は直ぐに態勢を立て直し、深呼吸して暦と雫の目を交互に見る。


「…あの、暦さん、秋葉先輩、今夜…」


魅鳥は意を決した様に切り出し、暦と雫は互いの顔を見て頷き…微笑む。


「ああ、今夜の誕生パーティーには私と苅藻達も行くよ」


「…私も、いく」


「…ふえ?…あ、ありがとうございます!」


暦と雫は微笑みながら言い、先に快諾された魅鳥は一瞬だけ戸惑ったが、にぱぁとした笑顔で暦と雫に礼を言う。

喜びを抑えきれない感じではあったが、丁寧に手を揃えて御辞儀をする辺り、魅鳥の育ちの良さが出ているが、何処かが抜けている感じは拭いきれない。


「「………」」


「……はっ!?」


…雫は魅鳥の鞄を持ってやり、暦はさりげなく魅鳥の傘を持ち、魅鳥が濡れない様にしているのに気付いたのか、魅鳥の顔が見る見る内に赤くなっていく。


「…す、すみません、私…」

「…ふふ、相変わらずだな、魅鳥」

「…(…魅鳥ちゃん、可愛いとこあるなぁ)」


魅鳥は赤くなりながら謝り、暦は魅鳥に傘を手渡しながら言い、雫は魅鳥に鞄を返しながら思う。


「…嬉しそうね、魅鳥…」


羽鳥は遠くから魅鳥と暦を見ていたが、魅鳥の明るい様子を見て微笑む。


「羽鳥、そこで何やってんのよ」

「!?」


突然呼び止められ、羽鳥は驚いて声の方向に振り返る。


「…西五条理愛(にしごしょう・りあ)、何故貴女が此処にいますの?」


見知った顔と紋章を認識した羽鳥は直ぐに態度を改め、理愛に尋ねる。


「心外ね、そんなの…天郷暦の監視に決まってるじゃない、アンタこそ此処で何やってんのよ」


理愛は怪訝な眼で羽鳥と見る。


「…心外ですわね、私も天郷暦の監視役を申し渡されていますのよ」


羽鳥は先程とは違う高貴な立ち振る舞いで理愛を威圧する。


「アタシはね、創世連合最高幹部の西五条家当主から直々に言われてんの、アンタなんかが務まる訳ないでしょ」


理愛は羽鳥を見下した様に言うが、羽鳥は怖気無い。


「私は創世連合盟主から直々に命を賜りましたの、貴女が務まるとは到底思えませんわね」


「…ちっ、まあ良いわ、どっちが監視役に相応しいか…何れ分からせてあげるから」


羽鳥もやり返し、理愛は舌打ちして何処かに去っていく。


「…西五条理愛、厄介なのが来ましたわね…」


羽鳥は理愛が去った方角を睨みながら呟く。

雨はまた強くなり、視界がまた悪くなる…。

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