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超創機大戦  作者: 馗昭丹
序章
4/77

もう一つのクラネオンⅢ~突破

___________________


「へ…へへへ、こりゃあ良いもん見ちまったぜ…」


高倍率双眼鏡を覗き、フォト動画を保存する情報屋が呟く。


「おい、この情報を周辺にばらまいてこい、高い金でな…」


「「へい!」」


情報屋が部下達に言い、自身も二輪車に乗って移動する。



別の場所にて…


-スッ-


「………」


裏日本の小型ZW・裏愚椎冴(リグシーゴ)の肩部に乗り、特殊ゴーグルを装着した長い紺髪の少女が、クラネオンⅢと散っていった情報屋達を見る。


「………」


-カン-


-ドサッ-


-ピシュン-


-ガゴォン-


-ヴゥゥン-


紺髪の少女は裏愚椎冴のコクピットに飛び乗り、裏愚椎冴が起動する。


-ズン-


-ゴォォォッ-


裏愚椎冴はジャンプ飛行をしながら移動していく…。


____________________


「…ハア…ハア…くっ…」


クラネオンⅢのコクピット内で少女は息を整えながらモニターを見る。


「…解除コード…」


-ポッポッポッ-


-ヴゥゥン-


-ピシュン-


-グゥゥン-


少女はVNWSから流れてくる解除コードを読み取り、クラネオンⅢのパネルディスプレイに解除コードを打ち込み、コクピットブロックを開放する。


-ウィィィィン-


-ストッ-


少女はコクピットブロックに付いているワイヤーユニットに掴まり、ゆっくりと降下していく。



「………」



着地した少女は、振り返り…眼前に聳え立つクラネオンⅢを見る。


「こんな…こんなものがあるから…、皆が…」


-ダッ-


少女は怒りと悲しみが混じった口調で呟き、走り去っていく。



『クラネオンⅢ、オートに切り替え、フルステルスモードに移行、擬装鏡面を展開します』


-シュゥゥン-


少女が旧政府軍の施設跡から出ていくや、クラネオンⅢはオートでフルステルスモードに移行し、瞬く間に風景に溶け込んでいく…。


___________________


「政府軍の施設跡にお宝が眠ってるだぁ?」


「ああ、ありゃ紛れもないお宝だぜ…、情報が知りたきゃ…へへ」



情報屋は親指と人差し指で輪をつくり、仲間達の様子を見ながら微笑む。


「…なるほどな、上手くやりやがって…」


-ピッ-


賊徒はカードチップを情報屋の端末にスライドさせ、資金を振り込む。


「毎度、おっと…一つオマケだ、パイロットは年頃の可愛い女の子だぜ、すんなり殺っちまうも捕らえて姦っちまうも勝手だ、なんなら回してから捌いたってちょっとした金んなるぜぇ…?へっへ…」


「…ちっ、お前らの商魂の逞しさにはコッチが参らあ」


情報屋は不気味な笑いを浮かべながら言い、賊徒は情報屋の商魂の逞しさにやや呆れ気味に言う。


「詳細は其処に書いてある、それを見て行動してくれよ」



情報屋は足早に去っていく。


「…女か、最近抱いてねえからな…、同業者に初物を奪われちまう前に…お宝と一緒にいただくとするか…」


賊徒は下品な微笑みを浮かべて呟く。


___________________


-ギショォン-


「治安警察だ!この村に住む者はテロリスト容疑で全員逮捕する!刃向かう者は容赦するな!」


「お宝は何処だ!!大人しく出さねえと村焼き払うぞ!」


東海地方…遠江のとある村にて、治安警察と賊徒が同時に襲撃を仕掛ける。


治安警察は追撃していた少女の身元を割り出しての強硬手段に転じ、金を渋って偽情報を掴まされた賊徒達は虱潰しに村を襲撃しにきた訳である…。



「賊め、わざわざ捕まりにきたか!?」


「治安警察がなんじゃコラァ!!」


治安警察と賊徒のZWが激突し、無遠慮に戦闘行為が行われる。


-ドドドドドド-


-ヒュゴォォ-


-チュドォォォン-


-ガラガラガラガラ-


賊徒のZWがマシンガンを放ち、治安警察のZWを撃破するが、治安警察のZWも応戦。


賊徒のZWを蜂の巣にして撃破する。


治安警察は賊徒を数で圧倒していくが、情報を嗅ぎ付けた賊徒達のZWが続々と参戦し、今度は治安警察が不利になっていく。


村にはリニア弾やミサイル、実体弾の散弾が飛び交い、村の建物は瞬く間に破壊され、荒らされていく…。



村人達は突然の事に逃げ惑い、治安警察に捕まったり、賊徒に殺害されたりと…所々で凄惨な光景が映る…。



「お宝は何処だ!?」


「パーツ寄越せ!」


「ひゃはは!金だ!」


-ドドドドドド-


-チュドォォォン-


-ドゴォォォン-


「…(…あ…あ…、村が…!?)」


少女が村に駆け付けた時は既に遅く、村は半ば焦土と化し、治安警察は一時撤退。


…賊徒達は宝探しとパーツ集めに躍起になって同業者同士で争っていた…。


-ウィン-


-ウィィン-


-ヴゥゥン-


賊徒のZWのカメラアイが左右に動き、少女を見つけるや不気味に光る。


「へへ…喰い頃だなぁ、…クヒヒヒ…」



-ジュルル-


賊徒はZWのモニターに映った少女を見て涎を拭いながら言う。


「ひ…!?…逃げないと…」


少女は危険を察知し、来た道を引き返す。


-ギショォン-


「逃がさねえぜぇ…」


-バチィッ-


-ゴォォォ-


賊徒のZWは超電磁蹴加速装置を使用し、少女が逃げる方向に先回りする。


-ズゥン-


「…!!」


「逃がさ…」


-ドゴォォォン-


「ぐおっ!?」


「きゃっ!」


賊徒のZWが少女を掴もうとした瞬間、賊徒のZWの側面に120mm戦車砲が直撃し、少女は爆風で吹き飛ばされる。


-ギュゥン-


-ズゥン-


「んの野郎…!俺の商売道具に傷つけやがったな!!」



-ギショォン-


-ドドドドドド-


賊徒のZWは態勢を立て直し、側面のZWにマシンガンを放って応戦する。


「…ったぁ…、………」


少女は打ち付けた箇所を押さえながらも痛みを堪え、政府軍の施設跡に向かって走り出す。


-キィィン-


-グゥゥン-


少女の走った後、別の賊徒のZWのカメラアイが不気味に光る。


そのZWの近くでは…賊徒三人が何やら騒いでいる…。


「おう、あいつらの使い心地は悪くないぜ、お前もスッキリしとけよ」


「おし、溜まってたら仕事になんねえからな…、俺もスッキリしてから御仕事すっか」



賊徒は交代して見張り、情報にあったお宝が来るまで待ち構えていた…。



-コッ-


「…ハア…ハア…」


賊徒同士の抗争の隙をついて政府軍の施設跡に到着した少女は、導かれる様にしてクラネオンⅢが鎮座している場所へと向かう。


『パイロットを確認、コクピットに誘導後、擬装鏡面を解除します』


-グゥゥン-


「…!?」


-チュンチュン-


賊徒の存在を感知したVNWSがパイロットの保護を優先し、少女をコクピットへと導く。


-ピシュン-


-ウゥゥゥン-


「………」


-ドサッ-


-ピシュン-


-ガゴォン-


『パイロットの搭乗を確認、脊椎シート、VNFS接続、ZEAX-14・クラネオンⅢ…戦闘モードに移行します』


VNFSとVNWSが少女の搭乗を確認し、クラネオンⅢを再び戦闘モードに移行させる。


「くそっ!お宝を逃しちまったぜ!」


「こうなったら破片の一つでも!」


-シャァン-


-ガォォォォン-


賊徒のZWは日本刀型プラズマ・シュナイダーを抜刀し、クラネオンⅢに突っ込む。


「先ずは腕一本!」


「俺は武器だぁ!」


「コッチはパーツだ!」


一機が突っ込むや、他の賊徒達もクラネオンⅢに攻勢をかける。


「うあああああ!!!」


-シャン-

-シャン-


-バシュゥ-

-ズバァァン-


「うおお!?」


少女は怒りと共にクラネオンⅢを操縦し、両刃型プラズマ・シュナイダーの二刀流で賊徒のZWを切り裂く。


-ズシィィン-


「くそったれが!くっ…!?」


-ギショォン-


「へっへ…悪く思うなよ!」


「く…!!」


-ガッキョォォン-

-ヒュゥゥゥン-


両腕部と片脚を失い、倒れたZWのコクピット部分に日本刀型プラズマ・シュナイダーの鞘を突き刺され、賊徒のZWは痙攣を起こした後に機能停止する。


-チュンチュンチュンチュン-


「くそっ!なんて装甲してやがんだ!」


-ピシュン-

-カシィン-

-シャン-


「マシンガンは効かねえが、ポン刀は効くだろ!」


「この同時攻撃は交わせまい!」



-ゴォォォ-


賊徒達のZWが三方に展開し、旋回しながら日本刀型プラズマ・シュナイダーを構え、クラネオンⅢに斬りかかる。


「踵の超電磁蹴加速装置…?上に緊急回避…?」


-ギショォン-

-バチュゥゥン-

-ゴォォォ-


クラネオンⅢは踵部分にある超電磁蹴加速装置を発動させ、上に緊急回避する。


-ズゥゥン-


「…俺を踏み台にしやがった!?」


-ゴォォォ-


クラネオンⅢは賊徒のZWを踏み台にして日本刀型プラズマ・シュナイダーを回避し、ジャンプ飛行する。


直後に…


-バシュシュゥゥ-


「「ぷげぁ!?」」


賊徒のZW同士が日本刀型プラズマ・シュナイダーを突き刺しあい、二機が沈黙する。



-ズゥン-


-ドドドドドド-


「来た来たぁ!お宝さんがよぉ!」


「ヒャッハァ!金だ金だ!」


「新手…!?」


新手の賊徒達が現れ、着地したクラネオンⅢにマシンガンを放つ。


更に…


-ピピピピピピ-


クラネオンⅢの広域索敵が数多のZW反応を捉える。


「こ…こんなに居るの…!?」


少女はあまりにも多い反応に驚く。


-ズゥン-


-ズゥン-


政府軍の施設跡を二重にも三重にも包囲した賊徒達のZWが徐々に包囲網を狭めていく。


-ヴゥゥン-


「え…?この地点を強行突破…?」



少女はVNWSのプランを見て呟く。


-ドドドドドド-


-ドドドドドドゴォォン-


「……!!」


賊徒達のZWが放つマシンガンがクラネオンⅢの装甲を掠め、施設が吹き飛ぶ…。


-チュンチュン-


-ドゴォォォン-


「うぅ!」


-チュドォォォン-


「あぐぅ…!」


マシンガンの回避に気を取られている内に後方から、そして側面からも120mmバズーカの直撃を受け、少女は震動に翻弄される。


-ズゥン-


-コォォン-


-バシュゥ-


態勢を整えるや、背部の大型レーザー・ソードを展開して日本刀型プラズマ・シュナイダーを構えた賊徒のZWを両断し、周囲にいた賊徒のZWがそれにトドメを差し、ZWを寸断してでもパーツを奪い合う。



賊徒達のZWが一度クラネオンⅢと交戦し、損傷しようものなら瞬く間に同業者やZW狩り達の餌食になり、それでまた損傷しようものなら別の同業者やZW狩り達の餌食になる…。


「………っ」


奪い合い、殺し合い、男性の搭乗者は容赦なく殺され、女性の搭乗者は散々犯された挙げ句に殺されていくのが少女の目に映る…。


「…ひぇ…逃げないと…こ…殺される…!」


少女は震えながら呟き、VNWSのプランに従う決意を固める…。


-バシュゥ-


-バチュゥゥン-


-ゴォォォ-


クラネオンⅢは超電磁蹴加速装置を発動させて賊徒達の弾幕を櫂い潜り、ZWを両断しつつ、目標地点に向かう。


…倒したZWには賊徒達がハイエナの如く群がる為、それが少女にとっては幸いしたのかもしれない。


殆ど追撃を受ける事なく突破に成功し、少女とクラネオンⅢは夜の大地へと消えていったという…。


___________________


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