交渉と楠木家の一時
今回は裏日本編になります。
裏日本室戸沖迎撃戦から数日後…。
裏日本近畿地方…新大阪都にあるヴァッセル公爵家にて…
-ヒュゥゥゥゥン-
-ズゥン-
ZW専用の離着陸場に一機のZW…ガン・ゼーヴァルが舞い降りる。
-ピシュゥン-
-ウィィィン-
「ふう…」
-ストッ-
ガン・ゼーヴァルのコクピットハッチが開き、コクピットから二人の女性が降下用のワイヤーに掴まりながら降りる。
「お帰りなさいませ、彌真奈奥様」
少女メイド達が彌真奈を出迎え、彌真奈の荷物を受け取る。
「出迎えご苦労様、これはお土産だよ柚にゃん」
-カサッ-
「わぁ~ありがとう御座います!」
彌真奈は柚葉に好物の饅頭を渡し、柚葉は目を輝かせて喜ぶ。
「奥様、私達のアレは…?」
「アレはガン・ゼーヴァルの中だよ、後で渡すからお楽しみにね」
「畏まりました、整備に回ります」
彌真奈はメイド達に耳打ちし、メイド達は彌真奈のZWの整備にかかる。
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数時間後…
「にゅふふ〜、愛しのクナちゃんと彌沙那にゃんはどこかにゃ〜?」
到着早々、彌真奈は怪しい微笑みを浮かべながら言う。
「彌真奈、危ないOLにしか見えないからやめなさい」
-ギュゥ-
「痛たた!」
彌真奈の行動を見かねた紗綾は、彌真奈の耳を引っ張って強引に立ち直らせる。
「くぅ〜久々に会った嫁に向かってキツいね紗綾〜」
「相変わらずね、貴女は…」
彌真奈は耳を押さえながら言い、紗綾は溜め息混じりに言う。
「今日は民間傭兵アガートラームと交渉するのでしょう?早く子供達に会いたい気持ちは分かるけど、少しは落ち着きなさい」
紗綾は少々呆れつつ彌真奈に言う。
「ん〜久々に紗綾の説教を聞けてアタシは満足だよ〜」
彌真奈は御満悦といった表情をしながら言い、背伸びをして柔軟を始める。
「ふう…子供を産んでから変わったと思ってたけど、地は変わってなくて安心したわ」
紗綾は微笑みながら言う。
「んにゃ、婿の前だと嫁は地が出るものなんだよね〜」
彌真奈は笑顔で柔軟体操をしながら紗綾に言う。
「…やっぱり貴女と話してると安心するわね…」
紗綾は彌真奈に脱力しつつも懐かしい居心地に安堵感を抱く。
「…さてさて、相手は傭兵だから気ぃ入れていかないとね〜」
彌真奈はそう言って柔軟体操を終わらせ、身嗜みを整えていく。
「これでバッチリ、何処からどう見ても完璧だろう?」
彌真奈は乱れたスーツを直し、ポニーテールだった髪をちゃんと結ってアップに、メイクやアクセサリーも直して見違えるくらいに立派になる。
「…見違えたわ、あの彌真奈がスーツをちゃんと着こなすなんてね」
紗綾は彌真奈の変わり様に驚きつつ呟く。
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「民間傭兵組織アガートラームのトップに会えて光栄です、私はユーリス人材派遣機構の裏日本総裁を務める楠木彌真奈と申します」
「…総裁自らがお越しになるとは…、此方こそ傭兵女史と名高い貴殿に会えて光栄です」
アガートラームのトップと彌真奈は互いに挨拶する。
「早速ですが単刀直入に述べさせていただきます、我が社に無断で名を語る事、商業圏を荒らす事をお止めになっていただきたく存じます」
彌真奈は口調こそ丁寧だったが、有無を言わせぬ迫力を纏いながら言う。
「…先日、バルマハン殿から同様の通告を受けた、我等とてまだ滅ぶ訳にはいかんからな」
アガートラームのトップは毅然とした態度で言う。
「バルマハン殿の通告を受けたのであれば…、我が社と手を組みませんか?此処で一度に敵を作るよりは賢明と思いますが」
彌真奈は丁寧な口調で言う。
「…確かに此処で貴殿やバルマハン殿を敵に回すのは得策ではないが、相応の見返りを提示してくれねば手を組む理由にはならん」
アガートラームのトップは彌真奈を見て言う。
「ならば…この利権を譲りましょう」
彌真奈は一枚のチップをアガートラームのトップに手渡す。
-ビッ-
-シュン-
「…よかろう、これより我等は貴社と手を組み、共存しよう」
「賢明な判断です」
アガートラームのトップはチップの中身を確認するや、彌真奈に回答し、彌真奈は微笑みながら言う。
「今日は有意義な話が出来ました、これにて失礼させていただきます」
「それは此方もだ、この様に良い条件なら何時でも応じよう」
彌真奈とアガートラームのトップは互いに礼をして別れる。
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「思い切ったわね、傭兵は傭兵を知ると言った所かしら?」
紗綾は彌真奈に言う。
「んにゃ、此処にもボスの手が伸びてたからさ、それですんなり行っただけだよ〜」
彌真奈は溜め息混じりに言う。
「あの調子じゃ既にボスは懐柔してたっぽいね〜、アタシが行く必要なんか無かったんじゃないかな〜?」
彌真奈はアップにした髪を解き、口を尖らせながらぼやく。
「…貴女が行く事で策は成った訳ね、ボスもよくやるわ…」
紗綾はバルマハンの意図を察し、微笑む。
「ん〜これ以上ボスの事を考えると腹が減るからさ〜、今から愛しのクナちゃんと彌沙那にゃんに会いに行ってくる」
彌真奈は髪型をポニーテールに戻しながら言い、走り出す。
-グッ-
「にゃ!?」
「私も一緒に行くわ、みーちゃんを一人で行かせるとロクな事にならないから」
「うぅ〜流石はアタシの婿だぁ、古傷を抉るなんてさ〜」
紗綾は彌真奈の腕を掴んで言い、彌真奈は少し拗ねた様に呟きながらも紗綾の手を取り、共に走り出す。
「クソ!まんまと逃げられた」
「探せ探せ!そう遠くには行ってない筈だ!」
二人を追う者達が、二人が逃げた方角へと走っていく。
某ビルの小さなベランダにて…
「…みーちゃんの考えてる事はお見通しよ」
「ん〜やっぱりバレたか」
咄嗟に身を隠した二人は、追っ手が走り去っていくのを見ながら言う。
彌真奈は自分が囮になることで紗綾を逃がそうとしたのだが、紗綾は過去に過ちを犯した事を悔いており、彌真奈から離れなかった。
「どう切り抜けようかな?」
「此処からなら朽ち果てた教会の地下から抜けられるわ」
「そだね、んじゃ…いこっか」
抜け道という抜け道を知り尽くしている二人は、巧みに身を隠しながら疾駆し、追っ手を撒く。
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「ふぃ~、やっと終わったぁ~」
補習授業から解放されたクナトは、溜め息混じりに言いながら歩く。
先日の政府軍との戦い、翼騎士芒霊との戦い、衛連迎撃戦などで潜伏先の単位が危うくなったクナトは、溜まりに溜まったツケを払う為に輪廻達と別行動を取り、実家に近い地方に訪れていた。
「…クナト兄、お疲れ」
彌沙那がクナトに缶ジュースを渡して労う。
「すまんな…ありがとう…彌沙那ぁ…」
クナトは妹の気遣いを受けて感涙を浮かべながら礼を言う。
「クナト兄、大袈裟…」
彌沙那は少し照れた様に呟く。
「…っと、素朴な疑問なんだが…彌沙那がなんで此処に居るんだ…?」
クナトは新潟に向かっている筈の彌沙那を見て言う。
「…母さんに呼ばれたから」
彌沙那は微笑みながら呟く。
「…ということは…」
彌沙那の言に嫌な予感が過ぎったクナトの身体から冷や汗が流れる。
「おりゃっ!」
「うわっ!?」
「……!」
クナトの背後から彌真奈が二人に抱きつき、クナトと彌沙那は驚く。
「にゅふふ〜元気してたかい?我が愛しのクナちゃんと彌沙那にゃん♪」
彌真奈はクナトと彌沙那の頭を撫で、交互に頬擦りをしながら言う。
「……!!」
「母さん…」
クナトは彌真奈の胸で窒息しそうになり、彌沙那は嬉しそうに彌真奈を見る。
「プハッ!母上は俺を窒息させる気ですか!?」
「ん〜?クナちゃんはまだまだ甘え足りないのかにゃ〜?」
-ギュゥゥ-
「……!!!」
抗議するクナトを見て、彌真奈は力一杯クナトを抱き締め、再び彌真奈の胸に埋められたクナトは、息苦しさにもがく。
「…(母さんの腕…暖かくて…気持ちいい…)」
彌沙那は彌真奈の腕の中に安らぎを覚え、安堵の表情を浮かべる。
「さあて、今日はクナちゃんの家に泊まってクナちゃんと彌沙那にゃんを可愛がるぞぉ~!」
「プハッ!?」
「………」
彌真奈は二人をお持ち帰りするかの如く担いで走り出す。
その後、クナトと彌沙那は彌真奈に徹底的に可愛がられたという…。




