裏に表と陰
裏日本極阿付近にある食堂…
-ギギギィ-
「いらっしゃい」
耳障りな音を立てながらドアを開けると、店主が皆を出迎える。
「あれま、今日は大勢で来たのね、綾ちゃん」
「色々あってね、今日は光牙達も居るよ」
店主は綾一達を見て少し驚き、綾一は光牙達を差して言う。
「あら、光ちゃんに結依菜ちゃんに雫石ちゃんも来たのね」
「久しぶりです」
「「お久しぶりです」」
店主は光牙達を見て言い、光牙達は挨拶をする。
「ささ、奥に入って、奥に弓ちゃんも居るから」
「姉上が…?」
店主は奥の広間を差して言い、光牙達は意外そうな表情をする。
「…(…成る程、そういうことか)」
綾一は納得したように呟く。
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「はっは!コッチさね!光牙、結依菜、雫石!」
奥の広間で一人酒を飲んでいた弓菜が光牙達を呼ぶ。
「…姉上」
「お姉ちゃん」
光牙は溜め息混じりに呟き、結依菜と雫石は弓菜に近づく。
「うんうん、久し振りの愛妹・愛弟成分補給さね!」
「………」
「わわ!?ね…姉さん!?」
弓菜は結依菜と雫石を抱き締めながら言い、結依菜は無言で微笑み、雫石は恥ずかしそうに言う。
「…俺達は適当に座って頼もうか」
「…だな」
弓菜達を見て、綾一は皆に席につく様に促すが…。
「おばちゃん!俺様牛丼特盛!」
「俺様はカツ丼特盛り!」
「アタシは豚丼にサラダかな」
勢気達は既に席を確保しており、各々注文をしていく。
「…栗坂、大橋、敷島…、注文するのは構わんが、金は持っているのか?」
斑鳩先生は勢気達を見て溜め息混じりに言う。
「ハハッ!金ならアタシが出すよ!じゃんじゃん頼みな!」
弓菜が大声で言う。
「申し出は有り難いのだが、それでは私の立場がない、コイツらの分は私が出す」
「ハハッ!細かい事は気にしないさね!」
斑鳩先生は遠慮するが、弓菜は引き下がらず、席を立って斑鳩先生に近づいていく。
「……アンタ…」
「…何だ?」
弓菜は斑鳩先生の目を見て言い、斑鳩先生は弓菜を見返す。
「………」
「………」
「…また始まったか」
無言で見つめ合う二人の間に緊張が走り、光牙は溜め息混じりに呟き、勢気達と瞑緒達は二人を見て動かなくなる。
「…なかなかいける口みたいさね」
弓菜は微笑みながら言い、斑鳩先生に瓶麦酒を差し出す。
「…ふ、そこそこにな」
弓菜の意図を読み取った斑鳩先生も微笑みながら言い、差し出された瓶麦酒を受け取る。
「せっかく出会えたんだ、乾杯といこうじゃないか」
弓菜は麦酒の蓋を開けて言う。
「良いだろう、では…」
「「乾杯!」」
弓菜と斑鳩先生は互いの瓶麦酒を当てて言い、一気に飲み干す。
「「ぷはぁ!」」
弓菜と斑鳩先生は同時に言う。
「…(瞑夜姉さんが居たら参加してそうだよな…)」
「…(御姉様もいらっしゃれば更に…)」
「…(姉上が居たら加わっていただろうな)」
似た姉をもつ瞑緒、寧音、暦は弓菜と斑鳩先生を見ながら思案する。
「…似た姉を持つと苦をするだろう…」
瞑緒達の様子を見た光牙は、さり気なく呟き、薬缶に入った茶を容器に注ぎ、順番に渡していく。
「…有り難う御座います」
「…苦労しますわね…」
「………」
瞑緒は礼を言い、寧音は同感したように呟き、暦は無言で軽く頷く。
「はい、丼ものね」
「キタコレ!丼島」
「いたぁっす!」
注文していた牛丼とカツ丼が届き、勢気と惇はガツ食いを始める。
「勢気ってば…食べ方も豪快だね」
ガツ食いする勢気を見て、芙蓉は微笑みながら言う。
「史彦、お前笊蕎麦だけか?」
「…俺、胃がヘタレだからな」
景斗の言に史彦は腹を撫でながら言う。
「胃薬あるぜ?」
織兎は史彦に胃薬を渡す。
「ほい、水」
「ああ、有り難う御座います」
織兎に胃薬を、美結に水を貰い、史彦は礼を言う。
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-キラーン-
『見つけたよ、栗坂勢気!』
大気圏を突破したミュンリがテレパスを勢気に送りながら降下する。
-キィィン-
『おわっ!?この感じはQBもどき!?飯食ってる時に来るんじゃねえぇ!!!』
頭に響いた声を聞くなり、勢気は頭を抱えてオープンテレパスで叫ぶ。
-キィィン-
『ふふ、頭の中が空洞だと僕のテレパスも良く響く様だね!』
『だぁぁぁ!!QBもどきの声が頭ん中に響く!!』
-ガタガタ-
ミュンリは勢気が頭を抱えてテレパスで叫ぶのを面白半分で見ており、更に高い音質で語りかける。
『栗坂勢気、何度ぶっ飛ばされても、僕は君と契約するまで諦めないからね、覚悟すると良いよ!』
-キィィィン-
『く…くそ…!QBもどきの分際で!!』
ミュンリはわざと響き易い音質のテレパスで語りかけ、勢気はその音響に頭を抱えて唸る。
-シュン-
『えと…勢気、テレパスのシャットアウト方法はこう…、気合いでやってみそ?』
『…シカトをイメージ?…こうか?』
-シュン-
『あ』
勢気の一人百面相に笑いを堪えきれなくなった芙蓉は、勢気にテレパスのシャットアウト方法を教え、勢気はミュンリのテレパスをシャットアウトする。
-ガシッ-
「人の飯の邪魔する奴ぁぁ!!!俺様にぶっ飛ばされて宇宙船にぶっ込みやがれぇぇぇ!!!!」
「!?」
勢気はミュンリのテレパスをシャットアウトするや、何処からか特殊強化バットを取り出し、ハイパーホームランの構えを取る。
ミュンリは慌てて回避行動をとるが…。
-カッキィィィィィィン-
「ぐふっ!?」
「打ったぁぁぁぁぁ!!!!大きい!大きい!ホォォォムラン!!!!!」
ミュンリの回避行動も虚しく…勢気のハイパーホームランが炸裂し、ミュンリは彼方へと飛んでいく。
-キラーン-
「うわ~凄い飛距離、流石は勢気だね」
芙蓉はミュンリが星になったのを確認するや、呟く。
「敷島、俺様は正真正銘の馬鹿だからな!!そこんとこ夜露死苦!!!!」
勢気は先程の礼も込めて、爽やかな笑顔のつもりになって言うが…。
「うわっ!暑苦しいスマイル!」
実際は倍以上に暑苦しくなっていた勢気の言に、芙蓉は若干引きながら言う。
「応!!よっしゃぁぁぁ!!!今日も俺様絶好調ぉぉぉ!!!!!」
芙蓉の言動に勢気は気合いを込めて叫ぶ。
「喧しい!」
-スパァン-
「おわっ!?」
斑鳩先生は何時もの如くスリッパで勢気をど突き、勢気のターンを強制終了させる。
「かぁぁ…、斑鳩先生は母ちゃんと同じど突き方すんのな…」
勢気は頭をさすりながら言い、斑鳩先生を見る。
「………」
斑鳩先生はスリッパを持ったまま射る様な目で勢気を見る。
「何つうか…よ、母ちゃんも斑鳩先生も熱いもんが籠ってるっつうかよ、身体の芯までクるっつうか、例え方がわかんねえ痛さなんだよな」
「………」
勢気は頭と心を交互に差しながら言い、斑鳩先生は無言で聞く。
「………」
史彦と惇は勢気の言に軽く頷き、無言で食事を進める。
芙蓉は勢気と斑鳩先生を交互に見て両者を見守る。
「ど突かれた時にビビってクるアレ?…史彦のは薄味系だし、惇のはこってり系だし、兄貴のは粘っこいしよ」
「「おい」」
「…どういう例えだ、それは」
勢気の言に史彦と惇は同時に言い、斑鳩先生は脱力する。
「母ちゃんのと斑鳩先生のと敷島のは似てる熱さなんだけどよ、敷島のは何か違うんだよな」
「え…」
「………」
勢気は頭をさすりながら言い続け、芙蓉は勢気を見る。
「何つうか…敷島のは…」
「………」
勢気の言に芙蓉は何かを期待するかのように勢気を見るが…。
-ポン-
「んお…?」
斑鳩先生に頭を撫でられ、勢気は意外そうな表情をする。
「…喋り過ぎだ、さっさと食べろ」
「お…押忍」
「…はい」
斑鳩先生は勢気達を見ながら言い、勢気達は再び食事を進める。
「ハハッ!朱花、戻ってこないと残りの麦酒…全部アタシが飲み干しちまうよ!」
奥の席で弓菜が瓶麦酒を翳しながら叫ぶ。
「ん…ああ、済まない弓菜、すぐ戻る」
弓菜に呼ばれ、斑鳩先生は再び奥の席に向かっていく。
「さあ、飲むさね!」
「飲むか」
-グビグビ-
「「ぷはぁ!」」
-コン-
「び…麦酒の一気飲み…、あ…あんなに飲めるものなの…?」
奥の席では弓菜と斑鳩先生が飲み会を再開し、綾乃は弓菜と斑鳩先生の飲む勢いに圧倒される。
「…此方を気にすると飯が食べられなくなるぞ、辻村」
「…ですね」
光牙は綾乃に言いつつ食事を進め、綾乃は光牙の言で我にかえり、食事を再開する。
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「弓ちゃん、これ以上はやめときな、また酒に呑まれちまうよ?」
店主は弓菜に言い、伝票を弓菜に見せる。
「…っと、もう百本も空けちまったさね、そろそろおあいそ、支払いはこれでするよ」
弓菜は左腕にある輪から半透明の筒を取り出しながら言う。
「あいよ」
「ほい」
-ピッ-
店主は端末機を取り出し、弓菜は端末機に筒をスライドさせて支払いを済ませる。
「ありがとうね、またおいで」
「また世話になるよ」
店主は弓菜達に言い、弓菜は空けた瓶と食器を片付けながら言う。
「今度は巽君と輪廻ちゃんも連れてらっしゃい」
「はは、考えとくよ」
店主は微笑みながら言い、弓菜は豪快に言いながら食器を片付けていく。
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食後暫くして…
帰路についていた光牙達は…
-カチャッ-
「待て」
-ドン-
「アイタ!?」
光牙は刀の鞘を広げて立ち止まり、織兎は光牙にぶつかる。
「…囲まれたな」
「…その様だね」
光牙は凄まじい殺気の渦を感じ取り、同様に感じ取っていた綾一も呟く。
-ゾロゾロゾロ-
-チャク-
「…ひっくるめて7、80人てとこか?」
-カシッ-
「ケッ、御苦労なこった」
クナトは可変銃を構えて言い、統弥は唾を吐いて木刀を構える。
「80人か、なら俺達1人につき20人潰せば良い勘定になるな、綾一」
「ふふ、腹ごなしの運動には丁度良いかもね、光牙」
-ヒュヒュン-
光牙と綾一は生き生きとした表情で言い、綾一は慣れた手付きで鋼棒を構える。
「あの二人…なんか…とんでもない事をサラッと言ってるんだけど…?」
「…これが…此処に住んでる奴らの日常茶飯事ってやつか…?」
光牙と綾一の言に瞑緒は冷や汗を流しながら呟き、織兎は場馴れして生き生きしている光牙達を見て呟く。
「ガキだからって遠慮はいらねえ、やっちまえやぁぁ!!!」
「「オオオォォ!!!!」」
暴漢達は一斉に襲いかかる。
「い…いきなり…!?」
「瞑緒!お前は下がってろ!」
「!?」
「兄貴、瞑緒さんは任せて!」
暴漢達の気声に瞑緒は身構えるが、前に出た織兎は瞑緒を後方に押し、美結は瞑緒を羽交い締めにして強引に下がらせる。
-タターン-
-バチィッ-
「がぁっ!?」
「射抜かれたい奴は前に出な!軽く逝かせてやるぜ!」
クナトは可変銃で暴漢達を次々と気絶させながら言い…。
-ドゴォッ-
「がぇっ!?」
-バキィッ-
「いべっ!!」
「整形されてぇ奴はリクに応えんぞラァァ!!」
-バキョッ-
「ぐぎゃあぁぁ!!折れたぁぁぁ!!」
統弥は二本の木刀で暴漢達を叩きのめしていく。
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十数分後…
-ドゴォ-
-ドサァッ-
「…終わったか」
「…まあ、戦前の軽い準備運動にはなったかな」
-カランカラン-
綾一は血の付いた鋼棒を投げ捨てて言い、積み重ねられた人の山を見る。
「…トップは統弥か、相変わらずやるな」
「ケッ、抜くまでもねえ奴らばかりで拍子抜けしたぜ」
光牙は一際多く積み重ねられた人の山を見て言い、統弥は心底つまらなさそうに言う。
27人もの暴漢達を一人で沈めた統弥は、途中で木刀から素手に変え、近付く暴漢達を拳で次々とアスファルトの床へ沈めていたという。
「俺は21人、綾一は15人、クナトは9人、天郷達はそれぞれ2人ずつか…結構逃がしたな」
「残りは逃げたか、今頃はミィナとクレスに倒されてる頃だね」
光牙の言に綾一は首を鳴らしながら言い、倒れている暴漢達から所持品を没収していく。
「お嬢、お怪我は?」
「大丈夫だ、問題ない」
「裏の連中はこんなに強い奴らと戦ってるのかよ…」
苅藻は暦の身嗜みを整えながら言い、命も暦の身嗜みを整える手伝いをしながら言う。
「チッ、結構貰っちまった…!」
織兎は舌打ちしながら言い、唾を吐き捨てる。
「…へえ、表と陰の客人達もなかなかやるね」
綾一は暦達を見て微笑みながら呟く。




