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超創機大戦  作者: 馗昭丹
序章
18/77

テイロンにて

___________________


テイロンの艦長室にて…



「では、君達は見たと言うのだな?あの機体を…」


「はい、あれは夜刀集弐型で間違いありませんでした」


神楽坂の問いに巽が応える。


「…極阿残党の動きが予想以上に活発化している様だな…、やはり背後には百一将軍の力添えがあるか…」


神楽坂はベヘモス戦争時の事を思い出して唸る。


「……(あのオッサン、今度は何を企んでるんだい?)」


弓菜もベヘモス戦争時の事を思い出して思案する。


「…事と次第によっては、また彼らと戦わねばならんな…」


神楽坂は腕を組んで言う。


「外には衛連、内側には極阿残党にレジスタンス、…更にその背後には百一将軍と村楯中将の後方支援…、まさしく内憂外患ですな…」


壱岐は呆れながら呟く。


-バン-


「輪廻には桂川さんも居れば三馬鹿達も居る、放っておけば後々!」


弓菜は机を叩いて神楽坂に迫る。


「………」


神楽坂は思案したまま動じない。


「艦長、アタシに…!」


弓菜は更に迫るが…


-グッ-


「落ち着け、弓菜」


「…そう焦るな」


見かねた巽と壱岐が弓菜の肩を引いて抑える。


「…ベヘモス戦争で互いに煮え湯を飲まされた相手…、気持ちは分かるが先にやるべきは降下した衛連先鋒の駆逐と要地の奪還だ、それが済むまでは戦力を割く事は出来ん」


神楽坂は遺憾の表情をしつつ、焦る弓菜に釘を刺す


「………」


「弓菜、抑えろ」


「………、わかりました、失礼します」


-コォォン-


弓菜は少し震えていたが、巽の言で直ぐに平常心を取り戻し、巽と共に退室する。


「…弓菜、相当焦ってますね…、またやらかすかも知れません」


壱岐は神楽坂に忠告する。


「その為の巽君だ…、上手くやってくれれば良いのだが…」


神楽坂は溜め息混じりに言う。


「…そうですな、では私も失礼します」


「ふむ…」



-コォォン-


壱岐も溜め息混じりに言って退室する。


艦長室に一人残った神楽坂はしばらく思案した後、山積みになった始末書と陳情書を見て再び嘆息していたという。


___________________


一方…テイロンの格納庫では…


-ジィィィ-

-ウゥゥン-

-ガガガガガ-


「浅野、NEエクスオーブレイドの刀身と鞘に超電磁コーティングを施してみたんだがどうだ?」


鳳勝久がNEエクスオーブレイドの刀身チェックを済ませ、レールガンを応用した専用の鞘をクラネオンⅢの腰部に取り付ける。


-ヴゥゥン-

-チャク-


「…以前より機体の負荷が大分減りましたが、まだ抜刀に時間がかかりすぎる…」



クラネオンⅢを操縦する光牙は、抜刀時の僅かなブレと機体の負荷を修正しつつ、勝久に鞘の調整を言う。


「う~ん、瞬発的にかつ曲線を描ける様にするには…刀身と鞘の角度を変えるしかねえな、それなりにデカい施設とNEXO素材がありゃあ速攻で出来るんだが…」


勝久は頭を掻いて唸る。


「なら、暫くはこれで何とかなりますよ」


光牙はクラネオンⅢのOSをカスタマイズしながら言う。


「…悪いな、機会がありゃあ、ちゃんとした鞘を作ってやるからよ」


勝久はNEエクスオーブレイドのデータを書き込みながら言う。


「了解した、…結依菜、一息付けるぞ」



光牙は淡々と言うと、黙々とクラネオンⅢの整備をしている結依菜に休憩を促す。


-カチャカチャ-

-カラン-

-ガゴン-

-シュゥゥ-


「…うん、兄さん…」


-シュタ-


クラネオンⅢの装甲を閉じた結依菜は、手摺り部分を伝って地面に着地する。


「お疲れ様、兄さん、姉さん」


-パシッ-

-スッ-


雑用を終えた雫石がおしるこの缶ジュースを光牙に投げ渡し、苺ミルクの缶ジュースを結依菜に手渡す。


「有り難うな」


「気が利くわね、雫石」



「鳳さんもどうぞ」


-スッ-


雫石が缶珈琲を勝久に差し出す。


「ん?…ああ、すまねえな」



作業に没頭していた勝久は、接近していた雫石に驚きつつ缶珈琲を受け取る。


「皆さんもどうぞ」


「雫石君、気が利くねぇ~」


「良い子だね、雫石君は」


雫石は他の皆にも缶ジュースを手渡して行き、一色文紀と佐久間穂を始めとする女性達が徐々に集まり、雫石に群がり始めていた…。



野郎の整備士達は雫石の笑顔に毒気を抜かれたが、群がる女性整備士達に蔑まれた為、固い微笑みを浮かべながら缶ジュースを自棄飲みしていたという…。


-カラン-


「しかしやるよねぇ新人君」


文紀が光牙に言う。


「ピーキーなクラネオン?を即座に動かした所か即実戦での大活躍だもんね」



文紀に続いて穂も光牙に言う。


「いえ、偶然が一致しただけですよ、それに先程の戦いでは倭中尉の奮闘と一色先輩と佐久間先輩の支援に救われましたから」


光牙は何時もの如く謙遜する。


「何も謙遜する事ないと思うよ、浅野准尉」


「ステルス被りの敵の奇襲を真っ先に見破ったのは君だもんね」


文紀と穂が言う。


「どれもこれも皆様方の働きがあればこそです」


光牙は謙虚な態度で言う。


「…兄さん、営業スマイルが崩れてる」


そんな光牙を見て結依菜は溜め息混じりに呟く。


「結依菜ちゃん、作業着姿も可愛いねぇ」


小太りの整備士達が結依菜を冷やかす。


「後はお兄さん達に任せてお嬢ちゃんは下がりな」



続いてゴツい整備士が声をかける。


「…クラネオンⅢの整備は済みました」


「お?」


結依菜は丁寧に答えるが、整備士達は構わず作業を始めようとする。


「コラコラ、クラネオンⅢの整備は済んでるんだ、他に回れ」


「あぁ?お嬢ちゃんの腕前は信用出来て俺の腕前は信用出来ねえってか?」


勝久が断りを入れるが、ゴツい整備士は引き下がらない。


「待て、三田村…結依菜の整備は完璧だ、俺が保証する」


「…利三」


何時の間にか現れた壱岐が意地を張る三田村を引き止め、騒ぎを未然に収める。


-ガシャ-

-ガゴン-


「野郎共!撤収すんぞ!」


-ガシャ-


「へい、片付けやすぜ」



「はいはい、結依菜ちゃんまたね」


三田村の一声と同時に整備士達は迅速に片付け始める。


「結依菜ちゃん、荷物もつよ」


「この後、一緒に飯食べに行かない?」


一部の整備士は結依菜に声をかけて盛んにアピールしていたが…


「お前らにはコッチの作業をやってもらう、来い!」


-グイグイ-


「痛たた、親父さん勘弁!」


「耳!耳が!耳が千切れる!」


見かねた三田村の豪腕に引きずられていく。



「………」


格納庫が賑わっていた中、ただ一人だけが蚊帳の外にいた…。


存在感皆無とされている黒川・S・霊司である。


-カチャカチャ-


「………」



-ビビッ-


彼は回復した事すら気付かれず、一人寂しく自機のチェックをしていたという…。


___________________


一時間後…


-ビビッ-

-カチカチ-


「艦長、イニシャルZからのメッセージです」


「…今度は何だ、読め」


「………」


「…我、学園都市で…クラネオンⅢと浅野准尉と面会を願う…、これは双方にとって有益な依頼である…以上です」


通信士がメッセージを解読するや、モニターに賊の機体の位置や目的も同時に映し出され、神楽坂は唸る。


「ぬう…イニシャルZめ……ええい、浅野准尉に伝えろ、賊を駆逐しつつ目的地に向かえとな、イニシャルZは既に手を回してる筈だ!」


「了解!」



神楽坂は出撃命令を下す。


____________________


「高機動戦仕様のライトニングで出ます」


「了解、クラネオンⅢ、装着はフライトⅢで、装備はライトニングとリニアキックローター(超電磁蹴加速装置)でフォルム固定」


クラネオンⅢの換装作業がスムーズに進み、瞬く間にVNFS換装が完了してライトニングクラネオンⅢになる。


「進路クリア、クラネオンⅢ…発進どうぞ!」


-ピビピビ-

-ウゥゥゥゥゥン-


「…コウガ・アサノ、ライトニングクラネオンⅢ…出るぞ!」


-ドォォォォン-


テイロンのZW発進口からライトニングクラネオンⅢが出撃する…。


飛翔するライトニングクラネオンⅢの腰部には、勝久が製作していたNEエクスオーブレイド専用の鞘が付いている…。


「………」


光牙は特殊処理が施されている鞘が気に入ったのか、全身が武者震いを起こしている。


光牙の武者震いがVNFSを介してライトニングクラネオンⅢの内部フレーム全体に伝達し、ライトニングクラネオンⅢも小刻みに震えている。


「…ふん」


-ガシャッ-

-ヴゥゥン-


光牙は自分の状態を鼻で笑いつつ、ライトニングクラネオンⅢのライトニング・ブレイド・アンテナを展開し、バイザーアーマーを解除して蒼紫色のカメラアイを発光させる。


-ピコ-


「…目標確認、現場に急行する」


-ウゥゥゥゥゥン-


ライトニングクラネオンⅢが目標を捉え、目標に向かって加速する。



-ビッ-


「…!?鳳級から敵影1!黒い奴だ!」


「クソッ、もう気付かれたか!?各機散開!逃げるぞ!」


「「了解!」」


ライトニングクラネオンⅢの出撃を察知した賊徒達は散開して退却する。



-ヒュゥゥゥン-


「此方に気付いたか…、だがもう遅い…!」


光牙のライトニングクラネオンⅢは、凄まじい速度で賊徒達の機体を猛追する。


「クソッ…速すぎる…!」


-ガシッ-

-ヴゥゥン-


「逃がさん」


逃げる賊徒の機体を捉え、NEエクスオーブレイドの鞘を構えて更に加速する。


「緊…」


「させん!」


-バシュゥゥ-

-ヒュゥゥゥン-


賊徒は緊急回避を試みるが、それよりも早くライトニングクラネオンⅢが肉迫し、すれ違い様に放たれた閃光の如き抜刀術が賊徒の機体を両断する。


-ボォォン-

-チュドォォォン-


両断された機体が空中で分解・誘爆し、爆散する。


-ピコ-


「な…!?うわぁぁ!?」


「ふん!」


-バシュゥゥ-

-ドゴォォン-


爆発で気を逸らした賊徒の隙を衝く様にライトニングクラネオンⅢが肉迫し、NEエクスオーブレイドの一閃が賊徒の機体を両断する。


-チュドォォォン-


-ヒュゥゥゥン-


「後一機、仕留める…!」


「クッソォォ!振り切れねぇぇ!!」


ライトニングクラネオンⅢの猛追に錯乱した賊徒は、無茶苦茶な動きをし出す。


光牙は賊徒の機体を確実に捉えて猛追し、スピードを生かして先回りする。


-ピコ-


「うわっ!?クソッ!!こうなったら…」


-ゴォォォ-


「ぶつけてやらぁぁぁ!!!」


ライトニングクラネオンⅢの先回りに動揺し、更に錯乱した賊徒は自棄気味にライトニングクラネオンⅢへ突っ込む。


-ゴォォォ-


「ウォォォォ!!!!」


機銃を放ちつつライトニングクラネオンⅢに特攻をかける賊徒の機体だったが…


「ふん…!」


-バシュゥゥ-


ライトニングクラネオンⅢに散弾を悉く回避され、すれ違い様に両断されてしまう。


-カチン-

-チュドォォォン-


ライトニングクラネオンⅢがNEエクスオーブレイドを鞘に収めると同時に、両断された機体が爆砕する。



-ピコ-


「…賊の全滅を確認、次の依頼を遂行する」


光牙は次の依頼の為にライトニングクラネオンⅢを地上へ降下させる。



____________________


学園都市付近…


「…将星統合学園…、再び此処に来る羽目になるとはな…」


依頼主のメッセージと添付画像を見て、光牙は表情を曇らせながら呟く。


-ビビッ-


「兄者…、余計な気を回し過ぎではないのか…?」




光牙はメッセージを解読しつつ、激務でやつれた勝己の姿を見て心配になる。


-カチ-


「…互いに無事であればまた家族全員で団欒したいものだ…か…、俺達もそう出来る事を切に願う…」


-ズゥン-

-シュゥゥ-


勝己のメッセージの後に記されていた追伸を解読し、光牙はメッセージを打ち込んで返信する。


___________________


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