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超創機大戦  作者: 馗昭丹
序章
15/77

月満ちる刻(後半)


気絶している魅鳥を魔導フィールドで包み込み、それを庇うようにして飛翔したコヨミ・ユミルは、魔導レーダーで芒霊の反応を捉える。


「鯉芒霊が二匹、あとは…」



-バサバサァ-


『ウォォォォォン!!!』


「鳥型の芒霊…!」


-ズドォォン-


-ヒュン-


暦は隼芒霊の突撃を回避し、コンデム・リヴォルヴァーで迎撃するが交わされる。


-ズドォォン-


-シュン-


「…そう簡単にはいかなさそうね」


コンデム・リヴォルヴァーの弾を容易く回避する隼芒霊に、暦は気を引き締めて呟く。



『ウォォォォォン』



鯉芒霊達は他の反応を見つけたらしく、上空のコヨミ・ユミルを無視して川を遡っていく。


-ズドォォン-


-シュン-


『ウォォォォォン』


-ブシャァァァ-


「……!」


-ヒュゴォォ-


隼芒霊は泥水らしきものを吐き出すと共にコヨミ・ユミルに突撃を仕掛け、とっさに反応した暦は寸前の所で回避する。


-ビシャシャァ-


コヨミ・ユミルの装甲に隼芒霊が吐き出した泥水らしきものが降りかかる。


-ジュゥゥゥ-


-チュドォォォォン-


-ドゴォォォン-


「ぐっ!!あぁぁ…!!」


コヨミ・ユミルの装甲に付着した泥は瞬時にして固まり、瞬く間に反応を起こして爆発する。


爆発でコヨミ・ユミルの右肩部分とウィングが破損し、暦の右肩と背中にも激痛が走るが、左手に保護している魅鳥を無意識の内に爆発の影になるように庇っている。


『ウォォォォォン』


-ゴォォォォ-


ダメージを受けて墜落するコヨミ・ユミルに隼芒霊が迫る。



「…舐めるなぁ!」


-ズドォォン-

-ズドォォン-

-ズドォォン-


-シュン-

-バキィィン-

-ズゴォォン-


「グォォォォォォン!!!」


先程の痛みで闘争心に火が付いた暦は、迫ってきた隼芒霊にコンデム・リヴォルヴァーを放ち、翼と嘴を打ち砕く。


-ヒュゴォォ-


翼にダメージを受けた隼芒霊は、軌道をずらされ、コヨミ・ユミルから離れる。


-ビシッ-


「く…!…右腕が…痺れる…!」


しかし、多重爆発を受けた右肩部分のダメージが大きいのか、コヨミ・ユミルの右腕部分の動きが鈍くなる。



『…暦、満月の光をユミルに…』


「…!?…姉上…」


暦の御守りから鵺の声が響き、暦は周囲を見回すが…。



「………」



鵺の姿は無く、代わりに暦の御守りが薄く光っており、暦は御守りから鵺の声を感じ取る。



-ヒュヒュン-


-チャク-


-ギショォン-


-ドォォォン-


コヨミ・ユミルはコンデム・リヴォルヴァーを太腿部分に戻し、メインウィングの代わりにサブウィングを展開して再び飛翔する。



『…月の光はユミルの活力の一つ、月光を浴び…回復に集中すれば、治癒力が高まり…傷も癒される…』


「…姉上…」


鵺は暦に言い、暦は鵺の言に従って回復に集中する。


-ウゥゥゥゥン-


コヨミ・ユミルは満月の光を浴び、ユミルが活性化していく…。


月の光を浴びれば浴びる程、暦とコヨミ・ユミルの全身から力が漲ってくる。


-シュゥゥゥン-


ユミルが活性化し、暦が回復に集中した事でコヨミ・ユミルの翼と右肩部分が徐々に修復されていく。


-キュゥゥゥゥン-


「………」



月の光を浴びたコヨミ・ユミルの左手の内側に展開している魔導フィールドが次第に強固なものになっていく…。


-シュゥゥゥン-


それはやがて強力な聖域と化し、聖域の内側で気絶している魅鳥の表情から恐怖と苦しみが消えていき、代わりに安らぎの表情が表面化し、血色も良くなっていく…。


コヨミ・ユミルの発するガルドル呪歌が芒霊達のセイズ呪歌を打ち消し、セイズ呪歌の影響を受けた魅鳥の精神を徐々に回復させていた…。




-バサバサァ-


『ウォォォォォン!!』


回復モード中のコヨミ・ユミルに、翼をほぼ再生し終えた隼芒霊が迫る。



-ブシャァァァ-


「ユミル!」


-ドォォォォォン-


隼芒霊が泥水らしきものを吐き出した直後、暦の言と共にコヨミ・ユミルが天高く飛翔する。


-シャン-


「……!」


-シュン-


-グシュゥゥ-


『ウォォォォォン!!』


コヨミ・ユミルは、獲物を見失って動きを鈍らせた隼芒霊にミスリル・ブレイドを投げ、ミスリル・ブレイドは隼芒霊の背中部分に突き刺さる。


「ハァァァ!」


-ゴォォォォ-


暦は迷わず隼芒霊に向かって急降下する。


「貫け!!」


-ズゥゥゥゥゥン-


-ドシュゥゥゥ-


「砕け散れ!」


-ドゴォォォン-


-ビキッ-



コヨミ・ユミルは突き刺さったミスリル・ブレイドの尻部分を強く踏み込み、ミスリル・ブレイドの刃は隼芒霊の胸部にある面影を貫き通し、コヨミ・ユミルのヤクザ蹴りの衝撃で面影が砕ける。



『ギャァァァァァァ!!!!』


-ビシビシビシビシシィッ-


-チュドォォォォン-


-ブシャァァァァァ-



隼芒霊は内部から爆発して崩壊し、飛散した泥水が大地に降り注ぐ。


「……」


暦は隼芒霊の泥水に備えて魔導フィールドを展開していたが…。



その泥水は特に爆発などを起こす事なく、大地へと還っていく…。



-ピシィィィィン-



「…目覚めたのね、夢に出てきた白銀の巨人が…」


暦は鯉芒霊達が向かったであろう先から聞こえてくる音に反応し、夢と雫の絵に現れていた場面を思い出しながら呟く。



-バサァッ-


「…あの子を見に行こう、ユミル」


-ドォォォォォン-


暦は決意を新たにしてコヨミ・ユミルに言い、コヨミ・ユミルは声の聞こえる方角を向いて飛翔する。


___________________


一方…


川を遡っていった鯉芒霊達は…



『ウォォォォォン!!』


「このぉぉ!!」


-ドォォォォォォォン-


-ズガァァァァン-


-ズゥゥゥゥゥン-


白銀の騎士の如き鎧を身に纏い、背中部分には灼熱の炎の如く、小さくも細く伸びた翼を持ったユミルが、鯉芒霊を吹き飛ばし、一匹は橋に激突。


もう一匹は川の対岸にある河川敷に激突する。


「戦うって、どうすれば良いの!?」


『オォォォォン!』


-ズゥゥゥン-


「…大切なもののために…ユミルの手足は…僕の手足であって……あれ…?」


『グオォォォォン!!』


-ブゥゥン-


-ズドォォォォン-


勇が話している間にも鯉芒霊が身体を整え、天高く持ち上げた尾鰭を凄まじい勢いで地面に叩き付け、その反動で飛翔する。


「跳躍を防ぐって…どうすれば…」


『グオォォォォン!!』


牙を展開した鯉芒霊が鰭を折り畳んで急降下の姿勢をとり、ユウ・ユミル目掛けて突撃する。



「ビット兵器…?…分かったよ、兄さん…」


何者かのアドバイスを受けた勇は、右肩に意識を集中させる。


-ギショォン-


-ボオッ-


「…行って!ホークカリバー!奴の…」


-バサバサァ-


ユウ・ユミルの左肩アーマーが少し開き、その中から燃え盛る剣の様な鳥が現れて飛び立つ。


『ウォォォォォン!!』


-ヒュゴォォ-


「このぉぉ!」


-バシュゥゥン-

-ズバァァッ-


鯉芒霊の突撃を寸前で交わし、擦れ違い様に左胸鰭をフェザーセイバーで両断し、同時に飛来したホークカリバーが鯉芒霊の右胸鰭を焼き切る。


-ズゥゥゥゥゥン-


『グオォォォォォォン!!!!』


-ドゴォォォォォン-


-ゴォォォォ-


墜落した鯉芒霊は怒り狂った様に叫び、尾鰭を大地に叩きつけ、ユウ・ユミルに向かって跳ね飛ぶ。


「え?…ちょっと待ってよ!?」


勇は咄嗟の事に慌ててフェザーセイバーを鯉芒霊に向ける…。



-バシュゥゥ-


-ビキッ-


『ギャァァァァァァ!!!!!』


-ビシビシビシビシシィッ-


-ブシャァァァァァ-


ユウ・ユミルはフェザーセイバーで鯉芒霊の下顎部分にある面影を打ち砕き、鯉芒霊は崩壊して泥水が飛散する。


-ビシャシャァ-


『グオォォォォォォン!!!』


-バキバキバキィッ-


-ビチィッ-



飛散した泥水はもう一体の鯉芒霊に吸収されていき、もう一体の鯉芒霊は胸鰭が巨大化して翼の様なものになり、控えめだった牙が巨大化して剥き出しになり、背鰭が更に巨大化してパワーアップを果たす。


『ウォォォォォン!!!!』


-ズゥゥゥゥン-


-ズゴォォォォン-


「うぐ!!……ゲホッ!ゲホッ!」


ユウ・ユミルはパワーアップした鯉芒霊の強烈な突撃を受け、後方のビルに激突する。


-グググググググ-


「あが…!…ぃ…!」


鯉芒霊の牙がユウ・ユミルの脇腹に食い込んでいき、勇は脇腹に食い込んでいく牙の感触と内臓を抉られる様な激痛に苦しむ。


「この…!は…離れろぉ…!」


-バシュゥゥン-


-ヒュゴォォ-


-ズゥゥゥゥン-


-ドゴォォォォォン-



ユウ・ユミルに食らいついていた鯉芒霊は、側面から現れた黒いユミルにフェザーセイバーで胴体を切り裂かれ、更にホークカリバーの突撃を受けて風穴を開けられ、ユウ・ユミルに背鰭を両断されて離れる。



『ウォォォォォン!!!』


-ジュク-


-ベキベキベキィッ-


「さ…再生した…!?」


しかし、鯉芒霊は暦によって倒された隼芒霊の遺骸と何者かによって倒された芒霊達の遺骸を吸収し、瞬く間に傷を治してしまう。


芒霊の遺骸を取り込んだ鯉芒霊が更なるパワーアップを果たし、竜の様な形をした「水竜芒霊」に変化する。


『グオォォォォォォン!!』


-ゴォォォォ-


-ズゥゥゥゥゥン-


-ザパァァァァァン-


「うわああああ!!?」


水竜芒霊は泥水の竜巻を巻き起こし、ユウ・ユミルと黒いユミルを吹き飛ばす。


『グオォォォォォォン!!!!!』


-ザパァァァァァン-


-ザブゥゥゥゥゥン-


水竜芒霊は泥水の海と化した市街地を自在に泳ぎ回り、ユウ・ユミルと黒いユミルの先回りをする。



-ザパァァァァァン-


『グオォォォォォォン!!!!!』


『狼狽えるな!飛べ!』


「…!?」


『…!?』


-ドォォォォォン-


-ザブゥゥゥゥゥン-


一際大きな水柱があがった瞬間、水竜芒霊は天高く跳ね飛んでトドメを差そうとするが、ユウ・ユミルと黒いユミルは飛翔して水竜芒霊の攻撃を回避する。



-ヒュゥゥゥン-


-ズドォォン-

-ズドォォン-


同時にコヨミ・ユミルが現れ、水竜芒霊にコンデム・リヴォルヴァーを撃つ。


-ボコォッ-

-ブシャァァァ-


『グオォォォォォォン!!!』


コンデム・リヴォルヴァーの弾が水竜芒霊の装甲を容易く貫通し、貫通した箇所から大量の泥水が流れ出し、水竜芒霊はやせ衰える。


水竜芒霊は瞬く間に傷を再生するが、一回り小さな姿になった上に下顎部分の面影が露出し、市街地を包んでいた泥水の海も消滅してしまう。


『…成る程、そう言うことか』


『………』


-バシュゥゥン-


-ドバァァァッ-


『グオォォォォォォン!!!』


暦は冷静に言い、今度は黒いユミルが衰退した水竜芒霊をフェザーセイバーで切り裂く。


傷口から大量の泥水が流れ落ち、水竜芒霊は更に衰弱して元の鯉芒霊に戻ってしまう。


「兄さん、下顎部分を一気に砕くよ!」


-ドォォォォォン-


勇は黒いユミルに続き、フェザーセイバーを構えて鯉芒霊の下顎部分目掛けて突撃する。


『ウォォォォォン!!』


『避けろ!』


「え!?」


-ブシャァァァ-


-ビシャシャァ-


-チュドォォォォン-


-ドドドドドドォォォン-


鯉芒霊が放った泥水はユウ・ユミルを掠め、地面に降り注いだ泥水は反応を起こして爆発する。



旋回したユウ・ユミルは、鯉芒霊の動きに合わせて近づき…。


「ウォォォォォ!!」


-ゴォォォォ-


-バシュゥゥン-


フェザーセイバーを構えたユウ・ユミルが鯉芒霊の下顎部分目掛けて突撃し、面影を貫く。


-ビキッ-


『ギャァァァァァァ!!!!!』


-ビシビシビシビシシィッ-


-チュドォォォォン-


-ブシャァァァァァ-


面影を砕かれた鯉芒霊は耳障りな断末魔と共に崩壊し、爆発して大量の泥水が飛散する。





-ヴゥゥゥン-


-シュゥゥゥゥン-


最後の芒霊が消滅すると同時に…因果の黄昏の空間から通常空間へと戻っていく…。



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