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第一部・神さまは気まぐれ!?編 (6-1)


 6



 バスが駐車場で停車した。


 いよいよ第一の目的地へと到着したのだった。


「おーい、お前らこっちへ来い」


 バスを降りてきた生徒たちに、担任の市宮が手を振った。がっしりとした体型と長く伸ばした黒いあごひげが印象的な先生だ。生徒たちは大きなスペースへと集められる。見れば、他のクラスの生徒たちはそれぞれのバスから降り、それぞれ別のスペースへと集められている。クラス別での説明になるのだろう。


 集まった生徒に、市宮は神社のパンフレットを配った。生徒たちに行き渡ったところで、先生は太い声を張り上げ説明を始めた。


「これから神社に入る。神社の中からは班ごとに分かれて行動してもらうから、パンフレットを参考にしながら、班のメンバーと相談して自由に見学してくれ。お参りについては各自の判断に任せるが、由緒正しい神社だから、特別な理由がなければはぜひお参りしたらいいと先生は思う。ただし、神社の中には、一般の参拝者や観光客もたくさんいるから、くれぐれも周囲の迷惑にはならないよう、良識をもった行動をとるように。以上だ!」


 それからは班ごとに集まって、神社へと向かう。トモエの班のメンバーは、トモエ、アイラ、由梨の3人だった。木造の大きな橋を渡り右手に進むと、砂利で敷き詰められた参道に出た。道の両脇には、おおいしげる木々と、芝生に覆われた庭園がある。まさに日本らしい、風情のある光景だ。


(アイラ、こういうの好きそうだな)


 トモエはそう思ってアイラの方を見やると、案の定彼女は目をキラキラと光らせて方々へとカメラのシャッターを押していた。彼女は日本マニアなのだ。


 参道を歩いていると、やがて鳥居が見えてきた。一礼して鳥居をくぐる。その途端、あたりの空気が一瞬にして変わるのが分かった。濁りのない清浄な空気が肌を刺し、神聖な領域に足を踏み入れたのだと、トモエは思った。


 遠くから何者かの気を感じた。この気はどこからやって来るのだろう――と、トモエはパンフレットを開いて、この神宮の全景図を眺めてみた。今感じられている気は、どうやら正宮というところからやって来ているようだ。


(何だか呼ばれているような気がする。まっすぐ正宮へと向かった方がいいかな)


 トモエはそう思ったが、由梨とアイラはパンフレットを見ながら、まずどこから見学しようかと相談している。どうやら、このふたりには気は感じられないらしい。


(まぁ、急がないでもいいか)


 気はそれほど強いものではなく、むしろ柔らかく語りかけるようだった。今すぐにこっちに来い、というような命令じみたものではないのだろう。色んな場所を見たり、お参りしたりしているうちに、正宮にも赴くことになる。その時に正体をたしかめればいい。


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