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第四部・破滅の救済編 (7_1)


 7



 市宮をベンチに残し、愛稀たちは『氷の王国』へとやって来た。


「うわっ、寒っ……」


 中に入るや否や、愛稀はそれぞれの手で反対側の二の腕をさするポーズをとった。身体をちぢこめながらもふたたび歩き始める。はぁ、と息を吐くと、それは真っ白な煙となり空中に散っていった。


 “宇宙の意志の権化”の先導で歩いてゆく。半分ばかり進んだところで、彼は立ち止まった。顔を向けるのは、たくさんの氷のブロックで作られた壁だった。けれどそこは、トモエが消えていった場所でもあった。“宇宙の意志の権化”はふと愛稀たちを振り返った。


「ここがあちら側の宇宙とつながるゲートです」


 愛稀はキョトンとした顔をして、首をかしげた。


「壁にしか見えないよ?」


「通常このゲートは隠されています。でも、僕の力を与えると――」


 “宇宙の意志の権化”が念を送ると、そこに扉が浮き上がってきた。


「この後は、分かっていますよね?」


 愛稀は強く頷いた。


「うん、打ち合わせどおりにすればいいんだよね」


「そうです。――じゃあ、高島アイラに三都まどか、はじめようか」


 “宇宙の意志の権化”の言葉にアイラとまどかは頷き、魔法少女の姿へと変身した。変身を終えた彼女らは、互いの手と手をつなぎ合わせ、腕で大きな輪っかを作った。輪っかの内部にうっすらとした光が膜のように張った。愛稀はアイラとまどかの手と手のつなぎ目をまたいで、その輪の中をくぐった。


「……これでいいんだよね」


 愛稀は“宇宙の意志の権化”を振り返り訊いた。“宇宙の意志の権化”はこくりと頷いた。


「そうです。これであなたの身体には魔力のバリアが張られました。少しの間ですが、向こうの世界でも存在を保つことができるようになります。――それじゃあ、次に行こうか」


 “宇宙の意志の権化”はふたたびアイラとまどかに指示を出した。ふたりは腕の輪っかをやめ、扉に向かって手をかざす。すると扉はギギギギ、と軋む音をたて、ゆっくりと開いた。


「愛稀さん、その扉の中に入ってください。知っての通り、ここから先はあなたひとりで向かうことになります。それはその間、扉を開いたままにしておくために、魔法少女ふたりの力が必要になるからです。トモエのような強い力を持っていれば、ひとりの力で扉を開くこともできるのですが、あれだけの潜在魔力をもつ人間は、なかなかいないのです」


 愛稀はこくりと頷いた。


「OK。じゃあ、行ってくるね」


 そう云った愛稀に対し、アイラとまどかは笑顔で応えた。


「愛稀サン、トモエぜったいに連レテ帰っテネ」


「早く帰ってきてよ。私たち寒い中、ずっとここで扉を開け続けてるんだから」


 愛稀もふたりに笑顔で応え、それから真剣な表情で扉に向き直り、中へと進んでいった。


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