表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/70

第三部・魔界王国の野望編 (6_2)


 瞬間、スミノフの姿が消えた。


(うしろ……!)


 突然の気配に振り返ったその刹那、鋭い爪がトモエの背中をとらえた。


「ギャッ――!!」


 トモエは叫んで、前につんのめった。片足を前に出して踏みとどまり、腰の剣を抜き振り向きざまにふるう。


 ガキイィィン――!


 スミノフは爪で刃を受け止めた。そのまま剣の切っ先を握り、上下に勢いよく振った。トモエは浮き上がり、直後地面へと叩きつけられた。剣を引き抜こうとするも、スミノフの指はそれを離そうとしない。


「ふんっ!」


 スミノフは衝撃波を繰り出した。トモエは飛ばされ、壁に激突した。



 ――トモエ、大丈夫?――



 頭にイチコの声が響いた。


「ヤバい、アイツ強すぎる……」



 ――トモエ、臆するでない――



 今度はマオの声がした。


「どうすればいいかな?」



 ――奴のパワーの源が何なのか考えてみよ――



「パワーの源……?」


 トモエは少し考えて、はっとした。


「悪意の化身……!?」



 ――そうじゃ。あやつの心は、完全に悪意の化身に支配されておる。それがあやつの強さの源じゃ。むろん、あやつ自体も弱くはないのじゃろうが、悪意の化身に支配されることで、強さが格段に上がっておる――



「なるほどね――」


 トモエは立ち上がった。スミノフから受けた背中の傷が痛む。かなりの深手のはずだ。けれど、手当てをしている余裕などはあるはずもない。


「ほう、まだ立ち上がるか」


 スミノフは嬉しそうであった。トモエは辛うじて手放さなかった剣をふたたび構える。


「マオにイチコ、力を貸してよ!」


 胸元の石が緑に光った。それは拡がって、全身を覆うオーラとなる。


「はああああああっ!」


 トモエはスミノフめがけて突進した。


「愚かな……!」


 スミノフは腕を横に開き、トモエめがけて思い切り薙いだ。鋭い爪がトモエの首筋に迫る。その時――、


「はっ」


 トモエのてのひらから緑色の光が放たれた。


「うっ?」と、喰らったスミノフは一瞬ひるんだ。途端に、攻撃に勢いがなくなった。トモエはそれをさっとかわして、ジャンプした。


「やあああああああ!」


 全体重をかけ、スミノフの肩めがけて剣を振り下ろす。ズバアッ――と、傷口から緑色の血が噴き出した。


「ぐわあああっ! キ、キサマ……!!」


 スミノフは先ほどとは違う方の手で、パンチを繰り出してくる。トモエはオーラを纏った刃でそれを受け止めた。パワーがすっとしぼむのを感じた。そして拳をするりとかわし、スミノフのふところに潜り込む。


「たあああああああっ!」


 トモエは脇腹めがけて刃を突き刺した。


「ぐ、ぐふっ……」


 スミノフはたまらずその場に倒れた。


「やっぱり思った通り。浄化の力で悪意のパワーを一時的に抑えてやれば、こちらにも反撃の余地はある」


 状況は有利になったかに見えたが、マオは深刻そうな口調でトモエに云った。



 ――じゃがトモエよ、まだ安心するな。あやつまだ死んではおらん――



「分かってるよ」


 トモエは落ち着いたトーンで返す。


 スミノフは小刻みに震えながらもゆっくりと起き上がった。


「キ、キサマ、許さんぞ……!」


 その顔は、怒りで醜く歪んでいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ