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第三部・魔界王国の野望編 (4_2)


 しばらく歩いたところで、ドランブイはふたたび立ち止まった。天井を見上げながら、人差し指を立てて、腕を上方へと伸ばす。


「ちょうどこの上が魔界城の地下牢になる。そこにディタ姫がいるはずだ」


 トモエとソーホーはドランブイが指差す方を眺めた。しかし、そこは真っ黒な壁で覆われているだけで、それ以外には何も見えない。


「なぜそんなことが云える。第一、天井には抜け穴もないではないか」


 ソーホーは訝しげな目をドランブイに向けた。ドランブイは天井を見上げたまま、

「お嬢ちゃんなら分かるんじゃねえか」

 とトモエに云った。


「……云われてみればたしかに。壁の向こうに、誰かの気配を感じる。それも、禍々しい気配じゃなく、むしろ清らかな。あれがディタなのね?」


「そういうこった」


 ドランブイは大きく頷いてみせた。


(でも、どうして私にそれが分かるって分かったんだろう……?)


 トモエは内心不思議に思う。


「だが、抜け穴もないのに、どうやって上へ行くのだ」


 ソーホーはさらに疑問を投げかけた。


「お嬢ちゃん、お前さん瞬時に移動できる技を持ってるよな?」


「う、うん……」


 トモエは応えた。彼は近接ワープのことを云っているのだろうと思えた。このくらいの距離なら、移動することなど朝飯前だ。


「な、オールオッケーだろ」


 ドランブイは得意げに笑ってみせた。だが、トモエの疑問は増えるばかりであった。どうしてこれほどまでに、彼は色々なことを知っているのだろう。第一、気配を察知する能力も、近接ワープも、彼には見せたことがないはずなのに――。


「――まぁ、とにかくここまで来たんだ」


 行ってみるしかないよね――と、トモエは自分に云い聞かせるように云った。


「ソーホー――」


 彼女は手を差し伸べる。彼も一緒にワープさせるためだ。彼は「あ、ああ」と頷いて、トモエの手を取った。


「色々ありがとうね、おじいさん」


 トモエはドランブイを見て云った。


「ああ――」

 とドランブイは応えた後、慌てたように、

「そうだ、忘れるとこじゃった」

 と云ってふところから何かを取り出した。そして握った拳をトモエの方に差し出す。トモエは、ソーホーとつないでない方の手をドランブイに差し出した。彼から渡されたものは、黒く光る扁平な石であった。形だけ見れば、昨日カルーアからもらった石によく似ている。違うのは色だけだ。


「これは?」


 トモエは訊いた。


「これはな、ディタ姫を救い出すために必要なもんじゃ。ほら、姫さんは氷の中に閉じ込められておるんじゃろ。その魔法を解いてやるための石じゃよ。ディタ姫の前で、お前さんの魔力をこの石にこめてみるがいい。きっと、ディタの身体は自由になるじゃろう」


「どうしてこんなもの――。まったく、おじいさんは何者なの?」


 トモエはかねてからの疑問が、自然と口をついて出た。思えば、出逢った時から謎の多い老人だったと思う。


「そうさなあ――。ディタ姫を無事救い出せたら、教えてやるよ」


 ドランブイは頬を掻きながら云った。


「分かった。行ってくる」


「おう」


 トモエは上に手をかざし、てのひらに魔力を集中させた。分厚い壁の向こうに、空間があるのを確認した。まっすぐに魔力を放つ。目の前の空間がグニャリと歪んで、向こうとこちらの空間がつながっていった。そして、吸い込まれるように、ふたりは向こうの空間へと移動していった。


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