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第三部・魔界王国の野望編 (2_1)


 2



「今から数百年前、戦争が起こった。争いはこの地下世界全域に及び、百年以上も戦は続いた。それまで存在していた国はことごとく崩壊し、多くの人間が犠牲になった。……なに、お前らは人ではなく魔物であろう、じゃと?まあ、その件はすぐに分かるから、話を聞け――。とにかく、戦のせいで街は荒れ果て、この地下世界は無茶苦茶なありさまになってしまった。


 戦が終わってもしばらくの間、復興は進まず、多くの人が飢えや病にかかり死んでいった。生きるために他者を殺めたり、他者のものを盗んだりする輩も少なくなかった。人々は、心がすさみ、いつしか心に悪の巣食う、魔物へと変化していった。――これで、分かったじゃろう。俺らも、もとはお前さんらと同じ人間だったのじゃ。……なに、一緒にするな、じゃと? フン、肝に銘じておけ。人間だれしも、魔物になる素質を兼ね備えているのじゃ――。


 しかし、そんなある時、この状況を嘆き、何とかしたいと思った者がいた。その名はスミノフ――今の王さんだった。彼は、彼率いる一派とともに徐々に勢力を拡大し、領土を増やしてそれを魔界王国と名づけた。王によって統治された魔物たちの国じゃ。


 王さんは、苦しんでいた魔物たちを救済すべく、できる限りのことをしてくれた。しかし、文字通り“できる限り”――できる範囲には限りがあったのじゃ。日が照らない地下という環境では復興が遅く、差し伸べられる手も少なかったのだろう。その結果、格差が生まれた。つまり、貧富の差ができ、それはやがて身分の差へと発展していった。身分の高い者は、よい仕事を与えられ、よりよい暮らしが保障されるが、身分が低くなるにしたがって、労働環境も生活環境も悪くなり、仕事も家もない者も少なくない。特に、いちばん身分の低い連中は、市民としての権限も与えられず、以前と同じような殺伐とした生活をしている。他者を殺し、金品や食料を奪う、盗賊同様の生活をな」



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